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苦労して魔王を倒したと思ったら勇者パーティーを追い出された件

ベレット

脱出する件

「ひっ!」


「あれはまさか光精霊の力か?」


ガーフェナの風精霊では及ばない程の速度。
速い...いや、速いとは全く次元が違う。
正しくいうのならそれこそ瞬間移動というのが相応しいか。


そしてレオンを褒めるべきだろう。
まさか失禁だけで済んだとは...


「きたなっ!あ、あなた本当に信じられない人です!」


ローゼリッタは侮蔑の表情をレオンに投げ掛けながら一歩飛び退いた。


「ん?」


ふと、ローゼリッタの圧倒的な強さを目の当たりにし固まっていた兵士数人の額に汗が浮き出ているのが見えた。


そして次第に一帯の温度が上昇しているのを肌で感じ、レオンの上方の天井がまるでフライパンが熱せられているかのように真っ赤に変色していき。


「ロゼ!後ろに跳べ!」


「え?は、はい!」


直後ズズンと天井の一角が崩れ落ち誰かが降り立った。


「あらあら、何を手こずっていらっしゃるのかしら?あなた達は。そんな羽虫二匹にも勝てないのかしら?」


深紅のドレスに身を包んだ金色の長髪の女性が嫌みな笑顔を見せていた。
かなりの美人なその何者かにレオンが情けなくすり寄る。


「アテナ様...!もうしわけありません!もうすぐ駆逐出来ますので、今暫し猶予を...」


だがアテナと呼ばれた女性も穢らわしいものを見るような目付きで冷たく言い放つ。


「黙れ、俗物が!私に寄るんじゃない!穢らわしい!」


「ぎゃあああっ!」


すり寄ってきていたレオンを突き放すと間髪いれず炎で顔を焼いた。


「なに!?あれは火...いや、炎精霊か!」


「いえ、違います!姉様の力は...!」


姉だと...!?ならあの女は...


「第一皇女、アテナ御姉様の力は炎ではなく」


「そう...私の力は獄炎のイグニス!火精霊最強の精霊。火大精霊イグニスよ!」


「だい...精霊だと...冗談じゃねえ...!」


大精霊とはこの世界を構成する元素を司る精霊の言わば親玉だ。


世界に8体しかいない超レアで、俺達の持つ精霊なんかじゃ歯が立たない。


「姉様!ユウキ様は私に乱暴なんかしておりません!むしろお助けいただいた方で!!」


「...ふん!そんなもの知ってるわよ!」


なんだと...今知ってると言ったのか?


「なら何故!...まさか!」


「そうそのまさか。私は強い男が好きなの。魔王を倒せる程の男なら尚更ね!」


ローゼリッタをちらりと横目で見るが言っていないと首を横に振る。


「見れば判るわ。あの逃げ出した男が聖剣を抜けただけの雑魚で、あなたが特別な何かを内包している本物の強者くらい朝飯前よ?」


顔を焼かれうずくまっていたその雑魚はいつの間にか脱兎の如く逃げ出していた。


「痛い!熱い!いてえよ~、母さ~ん!」


情けないことこの上ないな。
同じ男として恥ずかしい。


「さてと...ならそろそろやりましょうか。ねえ、ユウキくん?」


「くっ!」


「不味いです!」


「「はあああっ!」」


アテナが焔滾る大剣を振るうと炎の海が牙を剥く。
俺とローゼリッタはほぼ感覚で危険を察知し、即座に剣を地面に突き立てる。


「洸牢陣!」


「影牢!」


光と影で出来た壁を形成し炎を押し留める。
その最中、兵士達の断末魔が聞こえてきていた。
なんとか炎が消え、霊技を消滅させるとそこにあったのは一面の煤と、焼死体だった。
匂いも酷く、まるでヘドロを焼いたような不快な匂いに鼻がもげそうになる。


「なんて事を...御姉様!」


「あら、別に良いじゃない。どうせいつかは私の為に死ぬんだし、いつ死んでも同じじゃない?」


なんだ、この女は...同じ人間なのか?
俺だって必要なら殺しもするがそんな風に考えたことはない。
死には礼節を持って向かい合うべきだ...
なのにこの女は...
狂ってやがる...


「あんた普通じゃねえな。」


「あら、ありがとう。なら楽しみましょう?英雄さん!」


「そりゃどうも!あんたの根性叩き直してやる!」


地面を蹴り二人して駆け出すとまたしても炎を出そうと剣を振ろうとする。
その時だった。
パシャンと何かが弾ける音が聞こえ、何かがアテナの身体に掛かった。


「なによこれ...まさか...油!?」


「しめた!今だ!はあっ!!」


「がっ!」


「ユウキさん走って!」


さすがに自分自身が火だるまになるのは致命的なのか炎を発せないでいたアテナに蹴りを放つ。
その蹴りがアテナの腹にめり込み壁まで吹き飛ばし、背中を壁に打ち付けた。
その衝撃に耐えきれずぐったりとしているアテナの横をローゼリッタの指示で通り抜ける様に一瞥すると。


「気に入ったわ。ユウキ...あなたは絶対に私の物にするわ....」


不気味な笑みを浮かべていた。
そのまま外に出るのと同時にローゼリッタが通路の天井付近にレイピアで突きを放つ。
すると光線が放たれ
こうはよくおうし
「光波翼楼刺!」


その一本の光線が分離し数多のレーザーになり通路を崩壊させた。


「「....はあ....しんど...」」


強敵を辛くも撃退し安堵したのか二人して笑いあった。


「はは...はあ...じゃあこれからどうするか...」


「そんなのここから逃げるしか無いでしょ!」


「!?」


背後からの声に握りっぱなしの漆黒の剣を突きつけるが。


「助けに来たのにいい態度じゃない、ユウキ。」


「が、ガーフェナ?なんだ...お前か...」


見知った顔に力が抜ける。


「あんた、私が向こう側ならどうすんのよ。」


「そうなのかよ!?」


「んなわけないでしょ、バーカ。...はい、これ。」


ガーフェナが手渡してきたのは馬と馬の手綱だった。


「悪いな...」


「いいわよ、別に...ただ一つだけ約束して。」


ローゼリッタを馬に上げながら聞き返す。


「なんだ?言ってみろ」


「絶対にローゼリッタ様を守ってあげて。その方はいずれこの国に必要になるお方だから。」


「...分かった...ガーフェナ、お前は行かないのか?」


その質問に首を振り、残念そうに呟く。


「ええ、行かないわ。あのバカを監視する役目を担う人が必要でしょ?...じゃあまた...」


俺が馬に跨がり手綱をしっかりと掴むなりバシンと馬の尻を叩き、走らせる。


「あんたは今日限りで勇者パーティーから追放よ!もうここに戻って来るんじゃないわよ!」


「ガーフェナ!」


振り返り一緒に来るように言おうかと思ったがそこには既にガーフェナの姿は影も形も見当たらなかった。



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