苦労して魔王を倒したと思ったら勇者パーティーを追い出された件
脱獄する件
「私を連れ出して下さい」
まるでおとぎ話や童話なんかで耳にするような言葉に現実味を帯びることが出来なかった。
「あんた、何言ってんのか分かってんのか?」
「はい。分かってます...」
解放された左手を振りながら問いかけるが彼女の表情は変わらず真剣な表情そのものだった。
「ここに居てもあの男の慰みものか、厄介者扱いされるだけですから。私は平民に堕ちても構いません。ここから出れるなら...」
そう告げたローゼリッタの眼は今までとは違い生気に満ちている。
姫を連れ出すなんてそれこそ大罪だろう。
だが俺としては目の前で困っている女の子を見捨てるなんて出来ないし、そもそも脱獄する方法だって分からない。
そもそも一つぐらい罪を重ねようが死罪なのは確定なので今更でもある。
「わかった。但し俺の言うことはちゃんと聞けよ?」
「は...はい!ユウキ様の言うことなら全て従います!」
彼女は祈るように両手を胸の前に出しながら心底嬉しそうに微笑んだ。
「とはいえまずは武器だな。...この右手じゃ大剣は無理。...なら長剣か槍が欲しいところだな。」
「でしたら私に考えがっ!」
するとローゼリッタは床に転がっていた小石を拾い上げ壁に図面を描いていく。
どうやらこの城の見取り図らしい。
細かくは描かれていないがある場所に円を描き、武器庫と書いた。
「まずはここに向かいましょう!」
「ああ。良い考えだ。採用しようか、ローゼリッタ君。」
「はい!ユウキ先生!」
ローゼリッタは可愛らしく敬礼し、にこやかに微笑んだ。
俺は周囲を確認すべく腰を落とし、牢屋から外の様子を確認するが看守らしき人物が見当たらないことに気が付いた。
「看守なら倒しましたよ?」
「...そ、そうか...なら行くか...」
一応警戒しつつ歩いていくと階段が見えてきており、その最下段に兵士が一人後頭部を鈍器で打ち付けられ気絶していた。
後ろを見るとてへっと舌をだしているローゼリッタの姿があった。
気を取り直し、階段を上がると広い空間に躍り出てしまい慌てて壁側に身を隠す。
「この先が武器庫ですね。」
「やはり厳重か...仕方ない...耳を貸せ」
「はい?」
...俺は武器庫に繋がる廊下の柱に隠れ、ローゼリッタの行く末を見守る。
ローゼリッタはというと...
「どなたか一緒に来てください!あちらに怪しい男が!」
「ローゼリッタ様?どうかなさいましたか?」
上手く誘導しようと四苦八苦していた。
だがそこはお姫様。周りの兵士も怪しむこと無く一緒に此方へと向かい始めていた。
だが全員ではない。4人中2人しか来ていないのを見て取ったローゼリッタはあわてて声を張り上げる。
「申し訳ありませんがそちらの方達も来てください!」
「わ、分かりました。おい、行くぞ。」
「ああ。」
残る二人も連れ出せたローゼリッタは4人を引き連れ予定地点の柱の真横を通りすぎた瞬間。
「な、なんだ!?」
「ふん!」
飛び出した俺は手近な兵士の顔を掴み、壁に打ち付けた。
何が起きているのか理解が遅れている兵士の1人を裏拳で吹っ飛ばす。
「て、敵襲!てき...がふっ...」
救援を呼ぼうとした兵士をローゼリッタが剣の鞘で喉を衝き、そして...
「せやっ!」
「がっ!?」
うずくまった兵士の顎を鞘で打ち上げると気を失った。
「ひっ!だ、だれか助けてくれ~!」
「ちっ!逃がすか!」
逃げようとする兵士に向かい、魔力を放出する。
「ブラッディハウンド!」
「ぎゃあああっ!」
狼をかたどった影が兵士に食らいつくと、噛み砕くのではなく、頭を影で覆い窒息させた。
「ユウキ様、魔法が使えるのですか!?」
「まあな。企業秘密だぞ?」
「は、はい!誰にも言いません!というか信じてもらえないですし!」
魔法は人間には使えない。
なら何故俺が使えるかというと、転生した先の親が人間と魔族で俺はハーフとして産まれたってだけだ。
因みに母親が魔族で、かの有名なハイエルフらしい。
「ふっ。行くぞ、ワトソン君。」
「はい!先生!」
シャーロックホームズを知らない筈だが偶然話が噛み合ってしまった。
...バカな事を考えていないで扉を開けよう...と、重い扉を片手で開く。
「ほう...悪くはないな。どれにするか。」
「あっ!私はこれにします!」
ローゼリッタが駆け足で寄っていった先は細剣がずらっと並べてある棚でその中でも実用的なノワールレイピアを手に取り、刃こぼれが無いか入念にチェックする。
俺は他に無いかと辺りを見渡すが特に目ぼしい物は無かったが突然右腕が痛み始めた。
なんだ?...と不思議に思い、動かそうとするがやはりびくともしない。
顔をしかめているとガシャンと何かが落ちる音がし、そこに視線を移すと見たこともない長剣が姿を現していた。
見た目は漆黒。だが鍔は恐らく今は亡き竜種の物だと推測できる。
光を反射しない程の深い漆黒の割には暗闇でも視認できる程くっきりと眼に写り込む。
それを何の気なしに拾い上げると右腕に黒い紋様が浮かび上がり、謎の長剣が砕け散った。
まるでおとぎ話や童話なんかで耳にするような言葉に現実味を帯びることが出来なかった。
「あんた、何言ってんのか分かってんのか?」
「はい。分かってます...」
解放された左手を振りながら問いかけるが彼女の表情は変わらず真剣な表情そのものだった。
「ここに居てもあの男の慰みものか、厄介者扱いされるだけですから。私は平民に堕ちても構いません。ここから出れるなら...」
そう告げたローゼリッタの眼は今までとは違い生気に満ちている。
姫を連れ出すなんてそれこそ大罪だろう。
だが俺としては目の前で困っている女の子を見捨てるなんて出来ないし、そもそも脱獄する方法だって分からない。
そもそも一つぐらい罪を重ねようが死罪なのは確定なので今更でもある。
「わかった。但し俺の言うことはちゃんと聞けよ?」
「は...はい!ユウキ様の言うことなら全て従います!」
彼女は祈るように両手を胸の前に出しながら心底嬉しそうに微笑んだ。
「とはいえまずは武器だな。...この右手じゃ大剣は無理。...なら長剣か槍が欲しいところだな。」
「でしたら私に考えがっ!」
するとローゼリッタは床に転がっていた小石を拾い上げ壁に図面を描いていく。
どうやらこの城の見取り図らしい。
細かくは描かれていないがある場所に円を描き、武器庫と書いた。
「まずはここに向かいましょう!」
「ああ。良い考えだ。採用しようか、ローゼリッタ君。」
「はい!ユウキ先生!」
ローゼリッタは可愛らしく敬礼し、にこやかに微笑んだ。
俺は周囲を確認すべく腰を落とし、牢屋から外の様子を確認するが看守らしき人物が見当たらないことに気が付いた。
「看守なら倒しましたよ?」
「...そ、そうか...なら行くか...」
一応警戒しつつ歩いていくと階段が見えてきており、その最下段に兵士が一人後頭部を鈍器で打ち付けられ気絶していた。
後ろを見るとてへっと舌をだしているローゼリッタの姿があった。
気を取り直し、階段を上がると広い空間に躍り出てしまい慌てて壁側に身を隠す。
「この先が武器庫ですね。」
「やはり厳重か...仕方ない...耳を貸せ」
「はい?」
...俺は武器庫に繋がる廊下の柱に隠れ、ローゼリッタの行く末を見守る。
ローゼリッタはというと...
「どなたか一緒に来てください!あちらに怪しい男が!」
「ローゼリッタ様?どうかなさいましたか?」
上手く誘導しようと四苦八苦していた。
だがそこはお姫様。周りの兵士も怪しむこと無く一緒に此方へと向かい始めていた。
だが全員ではない。4人中2人しか来ていないのを見て取ったローゼリッタはあわてて声を張り上げる。
「申し訳ありませんがそちらの方達も来てください!」
「わ、分かりました。おい、行くぞ。」
「ああ。」
残る二人も連れ出せたローゼリッタは4人を引き連れ予定地点の柱の真横を通りすぎた瞬間。
「な、なんだ!?」
「ふん!」
飛び出した俺は手近な兵士の顔を掴み、壁に打ち付けた。
何が起きているのか理解が遅れている兵士の1人を裏拳で吹っ飛ばす。
「て、敵襲!てき...がふっ...」
救援を呼ぼうとした兵士をローゼリッタが剣の鞘で喉を衝き、そして...
「せやっ!」
「がっ!?」
うずくまった兵士の顎を鞘で打ち上げると気を失った。
「ひっ!だ、だれか助けてくれ~!」
「ちっ!逃がすか!」
逃げようとする兵士に向かい、魔力を放出する。
「ブラッディハウンド!」
「ぎゃあああっ!」
狼をかたどった影が兵士に食らいつくと、噛み砕くのではなく、頭を影で覆い窒息させた。
「ユウキ様、魔法が使えるのですか!?」
「まあな。企業秘密だぞ?」
「は、はい!誰にも言いません!というか信じてもらえないですし!」
魔法は人間には使えない。
なら何故俺が使えるかというと、転生した先の親が人間と魔族で俺はハーフとして産まれたってだけだ。
因みに母親が魔族で、かの有名なハイエルフらしい。
「ふっ。行くぞ、ワトソン君。」
「はい!先生!」
シャーロックホームズを知らない筈だが偶然話が噛み合ってしまった。
...バカな事を考えていないで扉を開けよう...と、重い扉を片手で開く。
「ほう...悪くはないな。どれにするか。」
「あっ!私はこれにします!」
ローゼリッタが駆け足で寄っていった先は細剣がずらっと並べてある棚でその中でも実用的なノワールレイピアを手に取り、刃こぼれが無いか入念にチェックする。
俺は他に無いかと辺りを見渡すが特に目ぼしい物は無かったが突然右腕が痛み始めた。
なんだ?...と不思議に思い、動かそうとするがやはりびくともしない。
顔をしかめているとガシャンと何かが落ちる音がし、そこに視線を移すと見たこともない長剣が姿を現していた。
見た目は漆黒。だが鍔は恐らく今は亡き竜種の物だと推測できる。
光を反射しない程の深い漆黒の割には暗闇でも視認できる程くっきりと眼に写り込む。
それを何の気なしに拾い上げると右腕に黒い紋様が浮かび上がり、謎の長剣が砕け散った。
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