異世界に来ましたが俺はスローライフを送りたいだけです

ベレット

また厄介そうな少女に出会ってしまった

「なんか便利屋に有用なスキルないもんかね」
未だスキルブックの棚をうろつき、店員さんを待っていると、少し離れた棚の前。
戦闘スキル関連の棚の前で魔法使いっぽい格好をした小さい女の子が唸りながら、一生懸命腕を伸ばしている。
「んしょ....んしょ。あと少し....う~ん!」
全然届いとらんが。
「仕方ないな....」
子供が困っているのを見過ごすわけにもいかず、女の子が欲しがっている本を棚から取り出す。
「ほっ!はっ!ていっ!あと少しなのに~!.....ふえ?」
「ほらこれだろ?どうぞ」
可愛らしくジャンプをしている少女の頭にポンと置くと、大人しく本を胸元に抱え込んだ。
「..............」
受け取ったそれを大事に抱えながら俺の顔を伺うように上目遣いをするが.....次第に少女の顔が歪み始めた。
「へ、変態さんですか?痴漢さんですか?ロリコンさんですか?気持ち悪いです」
なんか思いもよらない暴言を吐かれた....
えぇ.....なんなの、この娘.....親のしつけどうなってんの....?
「ロリコンじゃないし、変態でもないわ!困ってたから取ってあげたんだろ!?ちゃんとお礼くらい言ったらどうだよ!」
「頼んでませんです。余計なお世話です。そうやって女児につけ込むんですね。気持ち悪くてうざいので殺していいです?」
と、どこからともなく自分より大きい杖を出現させ、先端のオーブを虹色に光らせる。


この世界に来てからこんな女ばっかりだな。
本当に辟易する....あの女騎士にしろ、リンカにしろ、ルカ....は、まあまともな部類だが....
なんにしろこのパープルツインテ魔法少女もあいつらと同じ匂いというか雰囲気がするので、漏れなくイカれてると思われる。
「そういう事言うのはどうかと.....」
「...........殺します......鬱陶しいから」
話が通じない!
本当に殺す気満々なのか、灰色の目をぎらつかせ、杖に魔力を蓄えていく。
このままじゃやばい....とにかく買い物よりもこの娘から逃げるのが先決だと判断し、後退りをしていると。
「お客様がた、どうかされましたか?」
戻ってきた店員さんが不可解な表情を見せており、俺と魔法使い少女の動きがピタリと固まった。
「.....ちっ....運のいい男です..........お姉ちゃん、これ丁度です」
「は、はい。ありがとうございます。またのお越しを~」
魔法を取り消し、捨て台詞を吐きながら、ローブからお金を取り出すと店員さんの手に握らせ、そのまま去っていった。
「はあ~.....ったく、一体なんなんだ、あいつは....」
「災難でしたね。彼女と鉢合わすなんて.....」
「え?どういう意味?」
店員さんがポリポリと頬を掻いて、苦笑いをしている。
「クルフェさんはなんでも極度の男性恐怖症のようで、近づいてくる男なら老若問わず魔法をぶっぱなすそうで」
「はあ!?な、なんて危険人物なんだ....」
ほとんどテロリストじゃねえか。男限定の。
「本当に困りますよね....。早く王都に帰って頂けると有り難いのですけど」
「ああ、確かに...........?.....今なんて?王都?」
「はい、そうらしいですよ?なんでもある人の手伝いで来ているとか....」
王都.....ある人.....なんだか嫌な予感がして堪らない。
もしかして協会で襲撃してきたシンクレアーの知り合いじゃなかろうな。
「うへえ....もう二度と会いたくねえなぁ」
もうこりごりだと、肩を落としていると気を遣ってくれたアヌビスさん(仮)が雑誌を差し出してきた。
「はは.........あのぉ、話変わるんですけど、これなんていかがでしょうか?」
それを受け取り表紙を確認する。
「ありがと.....んーと、『王都で今、大人気!若者向けアクセサリー!身につけてきらびやかになろう!』か....これ中身、見ても大丈夫かな?」
「勿論です。拝見してみて下さい」
にこやかにそう告げたアヌビスさん(仮)から目線をずらし、パラパラ捲っている雑誌に向ける。
「おぉ.....これなら確かにこの田舎で作れたらお客さんバンバン来そうだな.....」
見た感じ、若者向けの商品ばかりなので先に型さえ作っておけばなんとなりそうだ。
鍛冶屋のおっさんか、ラズアールのじいさんに頼めばなんとかなるだろう。
雑誌に載っているのもペンダントや髪留め、イヤリング等で比較的作りやすそうだ。
しかも女性ものばかりかと思いきや、しっかりと男性ものも少しばかりだが記載されていた。
バングルやチョーカー等だがこれなら冒険者向けに能力付与装備品として売り出せば儲けが出そうだ。
「これ、買うよ。結構いいじゃんか。助かったよ」
「ふふ。ならお手伝いした甲斐がありました。ではカウンターまでお願いしますね」


ーー合計で1500セルカ。
持ち金の半分も使ってしまったがこれなら工夫次第でなんとかなるだろう。
よし....じゃあ次は店の備品作りだな。
一旦家に帰ってリンカ達を連れて力仕事といこうかな。

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