異世界に来ましたが俺はスローライフを送りたいだけです

ベレット

次なるお題は金稼ぎ

「ただいまー」
「おかえりー、遅かったね」
「まあなー。なんか変なのに絡まれて....」
家に着くなりリンカがソファーから顔だけ覗かせた。
こいつは長年連れ添った嫁か。
ごろごろだらだらしやがって。
「ルカ、皿用意してくれ。すぐ飯にするぞ」
「うん.....用意する.....ね」
パタパタとスリッパを弾ませながら皿を両手にちょっとずつ運び始め、俺は落としてもよさそうな具材をリンカに投げつけた。
「お前も働かんかいぃぃっ!」
「いったぁぁいっ!私の扱い酷い!優しくして!もっと私に優しくして!」
「もっと役にたったら考えてやるよ!だからさっさと行け!この豚が!」
ひえ~んと泣きながら食材を貯蔵室に抱えていった。
あ~、すっきりした。


◇◇◇


「じゃあその.....女騎士さんから.....目をつけられた.....の?」
「まあな。迷惑な話だぜ....」
「自業自得でしょ。外れてる訳じゃないし.......あっ!私のロールキャベツ返してよぉ!うああん、ごめんなさーい!ごめんなさーい!」
こいつは本当に腹立つな。
今後飯はルカにだけに作ろうかな。
「ったく、お前は.......って事だから今後はより細々と活動していくこととする。以上。」
「いいよ.....でも次の神様クエスト.....どうする.....の?」
神様クエストか....確か次のお題は一万セルカを稼ぐんだったか。
確かにそろそろしっかりと稼がないと生活が成り立たんしな。
「どう稼ぐかだな....ギルドの仕事は余りしたくないし」
「.....アルバイトとか......は.....どう?」
「いや、それは.......なあ?」
俺がリンカをちらっと見ると、頭のよろしいルカ様は理解したのか、こくりと小さく頷いた。
アルバイトを三人でやればそれなりの額に届くだろう。
だがいかんせん、リンカの行う破壊行動....ではなくドジの弁償代が高くつくだろうという目算だ。
クエストにしてもリンカが使い物になるなら悪くはないが、はっきりいって戦闘に関する才能は俺よりも酷いだろう。
残るは取得物の売買だがそこらで取得出来る薬草や鉱石なんかでは二束三文が良いところだ。
「はあ.....取り敢えずギルドに行くかあ.....」
「うん......ご馳走さまです.....旨かったぜぇ!兄貴の飯ぃ!......です」
お前は食ってないだろが。.....あれ....キャベツ口についてるだけど食べたの?ねえ、食べたの?
お前本当に人形なの?
「ひゃっふう!ロールキャベツうまぁっ!」
「うわあ.....ですぅ」
「はあ......こいつはほんとに....」
幼女にまで呆れさせるなんてお兄さん困惑します。


◇◇◇


「やはり討伐クエストが一番かと。それとアルバイトの件ですが、ユウトさん以外は雇いたくないと町中の店から言われていまして....」
「そ、そうですか....なんかすいません....あ、あと討伐クエストはちょっと...」
留守番している二人のやらかしが既に広まっているらしく、絶対に雇いたくないとのこと。
またしても詰んだ。
するとお姉さんがカードを見せてほしいと言うので、取り出して渡すと、スキルを確認しながら、うんうんと唸り出した。
「ユウトさん、この鍛冶スキルなんですけど、これでペンダントとか作れますか?」
「ペンダントですか?出来ますけど。あっ、これ俺が作ったんですけど」
首から下げていたライトニングスロープを手渡すと鑑定眼鏡で覗き込み目をぎょっとさせた。
「こ、これBランクのアクセサリーじゃないですか!しかもユニークアイテムの」
「あれ?もしかして俺やっちゃい....」
「これなら一万セルカなんてあっという間ですよ!」
「あ、はい」
それはありがたいけどそのセリフ言ってみたかったんだけどな。
「.....それで、どうしたら?」
気を取り直して訊ねると、お姉さんがカウンターの引き出しからいつもの様に一枚の紙を取り出し、カウンターの上にペンと一緒に置いた。
「こちらは営業許可証です。今からお伝えする手段を取って貰えれば一万セルカなんてあっという間ですよ?では説明致します」


ーーお姉さんの説明を要約するとこういう事らしい。
①町の鍛冶屋にアクセサリー制作、販売の許可を取る。
②鉱石を一通り揃える。
③商店街で公開制作をする。
という手法なら稼げるのでは、との事だ。
「一つ聞きたいのですが、ステータスアップ系や女性向けも可能ですか?」
「んー、ステータスアップ系はやり方分からないですけど女性向けアクセなら何か見本があれば....」
「見本ですか......あっ!そうだ!」
お姉さんがパンッと手を叩き、紙切れに地図を描き、手渡してきた。
それを覗き込むと本屋の場所が記されていた。
「ここならアクセの見本本とか、鍛冶スキル派生取得本もありますから一度覗いてみては?」
「へえ、そんな本もあるんですか。ありがとうございます。ひとまず行ってみますね。」
「分かりました。お仕事始まりましたらお邪魔しますね」
なかなかこの町での生活もいたについてきたのかも、と少しワクワクし始め、足取り軽くギルドを後にした。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品