異世界に来ましたが俺はスローライフを送りたいだけです

ベレット

幹部の住まう遺跡探訪

「はああああっ!せやあああっ!」
「「「おおー!」」」
三人揃って拍手すると智也が複雑そうな表情をさせている。
「君達も少しは働いたらどうなんだい?」
「お前バカか?俺達が戦ったら全滅するぞ!確実にな!」
「威張って言うことじゃ無いだろう!?」
いやあ、それにしても凄いな、あの剣。
振れば衝撃波を飛ばしモンスターを蹴散らし、どんな攻撃も遮断している。
売ったら値が張りそうだ。
「はあ......もういいよ.....行こうか.....」
「はーい」
「.......うん....」
「はいよ、後ろに隠れてるからよろしく」
「...........」
若干疲れが見えるのは気のせいだろう。


◇◇◇


あの沼を渡り歩き、森を進んだ中腹。
例の遺跡が姿を現した。
「どこが遺跡なんだよ!ダンジョンじゃねえか!」
「こ、これは....ほんの数日でここまで変わるなんて.....まさか幹部が.....」
今こいつ、何て言った?幹部がここを改造したのか?
だとしたらここは今、幹部専用ダンジョンという事になる。
は、入りたくねえ.....!
「行かないのかい?僕が守ってあげるから安心して」
「顔が良いからって調子のってますか?」
「........うわあ......です」
「........理解したよ....君達は確かにユウトの仲間だよ.....」
ざまあ。


ーー「妙だね....モンスターが一匹も居ないじゃないか....」
智也の言う通り、モンスターの影も形も見当たらない。
一体どうなってる?
豪腕のラズワールとは何者だ?
自分の実力に余程の自信があるのだろうか。
「ここ.....どうして......一本道?」
「どうしてだろうね。分からないな」
「あなたには聞いてないんですけど」
「.........すいません......」
なんだろう....凄い.....楽しいんですけど!
「ユウトくんはどう思う?」
「そうだな......一本道ということは、多人数に攻められにくくして、弓とか魔法とか使いにくくするためとか。その条件なら敗けない自信があるんだろうな。」
「ほあ~.....お兄ちゃん.....頭良いです.........。あいつとちげえな、兄貴は!......です」
智也が男泣きしながら項垂れている。草生える。
と、その瞬間だった。
「あ.....何か踏んだ」
おっと、それはいけませんね。
「皆!気を付けるんだ!何処から何が来るか.......え?」
「「「あ」」」
「うわあああああぁぁぁぁぁぁ..........」
リンカが踏んだ床スイッチが作動し、智也のいた地点の床がガタンと外れ、智也がまっ逆さまに落ちていった。
「........や、やべえ.....あいつはどうでもいいが、このままだと.....」
このまま幹部と遭遇でもしたりしたら...
「おい、お前達ここで何をしている」
「ふおおおおおおおお!」
「みぎゃああああああ!」
「あわわわわわっ!」
ままま、まさか幹部がほんとに.....?
三人揃って脅えすぎて肩を震わせ、ダンジョンの入り口に振り向くとそこに居たのは。
「なんじゃ、おぬしら。驚きおってからに」
つるはしを持った小さいおっさんが居た。
「す、すいません....」
小さいおっさんが俺達を見渡すとつるはしを持つ手に力を込めた。
「おぬしらここに何のようじゃ?まさか豪腕に手を出すつもりか?」
「いや、そんなことしませんけど。絶対勝てないですし」
「じゃあ何しに来たんじゃ。ここは危ないぞ?」
しげしげと俺の表情を窺う、白い髭を生やした老人の左手に黄色い鉱石を持っているのに気付きじろじろ見ていると。
「これが気になんのか?わけえの」
その鉱石を見せてくれた。
「これは何の石なんですか?綺麗ですけど」
「これは雷の属性石、グラージ石じゃ」
「そ、それが!?」
つい大声を張り上げてしまいダンジョンに反響してしまい、幹部が襲ってこないかと、三人揃って入り口側に後ずさった。
「これが欲しいんか?......ふむ」
「え、ええまあ。出来れば....」
少し考え込むとそのお爺さんが俺にグラージ石を握らせた。
「あの....良いんですか?」
「構わんよ、そんなもんここら辺に沢山あるんでな。.....小僧、おぬしは他の者と違うようじゃな.....もし何かあればこの近辺でうろついとるでな。話に来い。わしもたまには話したいのでな」
「は、はあ.....?どうも......」
そう告げるなり、ダンジョン入り口をつるはしで堀始めた。
「これで、神様クエスト完了かな?」
「多分な.....取り敢えず今日は帰ろうぜ」
「はい......行きますです.....」
そういえば智也落ちたまんまだな。.....まあいいか。
その内帰ってくるだろ。もう帰ろう。
「.........っ.....神?.....ふむ.....」



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