異世界に来ましたが俺はスローライフを送りたいだけです

ベレット

ルカミディアは良いとこのお嬢さん?

「ここがルカミディアの家か.....でかくない?」
「うわあ.....ご立派ぁ.....」
ルカミディアに案内された先にあった家は、どちらかと言えば豪邸だった。
だが広すぎるからか整備が行き届いてなく汚れや埃、クモの巣がちらほら見える。
「両親と暮らしてるのか?お邪魔して大丈夫なのか?」
「大丈夫........お父さんも.....お母さんも......死んじゃったから......」
おおう......ヘビー級のストレートが来たぞ。
「そ、そうか。悪かったな......」
「可哀想....!ルカミディアちゃん!私をお母さんと思って良いからね!」
母性本能がくすぐられたのか、リンカがいきなりルカミディアを抱き締め、目を潤ませるが。
「いい.....リンカさんは.......お母さんっぽくない.....です」
やんわりとだが、はっきりと拒否した。
「おいリンカ、急に変なこと言い出すな。お前に母親は早いだろ。もっと頭よくなって、金稼いでから人の面倒見ろよ」
「ひどい!傷ついてるんだから優しくしてよぉ!」
「やだよ、めんどくさい.....それよりも腹へったな....」
リンカの腕からするりと抜け出したルカミディアが何か思い付いたように手招きしているので付いていくと台所に案内された。
「この棚に缶詰とか干し肉とかあるぜ!.....でも私.....やり方.....わかんない.....」
「ふっ!俺の出番の様だな!料理なら任せとけ!」
元々両親が共働きなので、案外得意だったりする。
「作れるの?手伝おっか?」
「じゃあ干し肉を切り分けて、湯煎してくれ。水分を足して、柔らかくするから」
俺はまな板と包丁を台所の下にある引き出しから。
リンカは棚から鍋を取り出し、水を汲みに行った。
「さて....じゃあやりますか」
「火.....つける....です」
そしてルカミディアはからっとした木の枝をくべて着火材を用いて火をくべた。
ようやくまともな生活が遅れそうだ。


ーー「こぉのバカがぁ!!お前もう向こう行ってろよ!なんで余計なことすんだ!塩ひとつまみっつったろが!袋丸々全部入れる奴がいるか!」
「うわあああん!ごめんなさーい!」
やはりリンカはリンカだった。
あいつに料理なんて高等な手法をまともに出来るわけなかった。
「あーあ、これどうすんだよ。もうこんなん、塩漬けじゃねえか.....待てよ?塩漬けか...なら....」
ルカミディアが井戸から汲んできてくれた水で一通り塩を洗い落とし、レタスのような葉っぱの野菜が裏に生っていたのでそれを木皿に盛り付け、数枚干し肉を乗っける。
それだけでは物足りないので他にスープを作ろうと、その塩が多量に含まれた水を捨て、新しくした水を火にかける。
「んー.....お、いいのあるじゃん。ルカミディア、これ使っていいか?」
「いいぜ、兄貴!好きに使ってくれ!あと、呼び方ルカで良いってお嬢が言ってるぜ!.....はうぅ」
真っ赤な顔をミゼットで隠している。
呪い以外は比較的まともだな、リンカと違って。
あいつはなにやらしても駄目だからな。
「ありがとよ、ルカ。じゃあもうちょい待っててくれ。......リンカ!それやめろ!腹立つ!」
「えぇ~....だってお腹すいたんだもん。ごっはっん!ごっはっん!ごっはっん!」
子供みたいにフォークとスプーンで机をドンドン叩いている。
バカなだけじゃなく、幼児退行してんのか、あいつは。
気を取り直し、缶詰の蓋を開け、煮立っている湯に缶詰の中身をぶちこみ、スプーンで砕きながら混ぜていく。
中身はホールトマトで、お湯を真っ赤に染め上げていく。
そこに余りの干し肉を刻んだのをパラパラと入れていくと、酸味と塩味が交じり、芳醇な香りが鼻をくすぐる。
「よし、出来たぞ。ルカ、取り分けるから持っていってくれ」
「.......うん.......おいしょ......おいしょ......」
「おおおいい!リンカ!お前はさわんなあっ!絶対こけるだろうがぁっ!」
自分も役にたとうと運ぼうとしていたが、台無しになるのが目に見えていたので、叱責すると机に突っ伏した。


ーー「お兄ちゃん......料理.....上手....」
「ほんとだよね!お母さんのより旨いかも!」
「はっはっは!こう見えて家事能力は高いからな!」
更に今回ので料理スキルを入手した俺に最早スキはない。
お金稼げたら店でも開いて、スローライフとしゃれこもうかな。






「ごちそうさまでした!」
「ふう.....旨かったな」
「ごちそうさま.....です」
綺麗に食べきり、台所で洗い物をしていると、ルカがその様子を眺めていた。
「どうした?」
「んーん......お兄ちゃん.....その........お嬢はお礼言いたいみたいだぜ!?ありがとうだってよ!......ミゼット.....私が言いたいのに.....」
ミゼットは本当はパペットではなく、独立した呪いアイテムなのではないかと思わないこともなくなってきた。
「気にすんな....こんな家に居候させて貰うんだ。このくらいやらせろよ」
と、手についた水分を布で拭き取り、ルカの頭を撫でてやると赤面して逃げていった。
「........この女たらし......最低.....」
「誤解ですぅ!!」





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