異世界に来ましたが俺はスローライフを送りたいだけです

ベレット

一日を終えるには

神様クエスト『ギルドクエストを完了せよ』を無事クリアし、次の課題をこなす前にしなければいけないことがあり、俺達は噴水広場の噴水に並んで腰かけている。
「ユウトさん、相談って何ですか?も、もしかして.....わ、私達まだ知り合ったばっかりなのにそんな....」
「リンカくん、もじもじするのを止めて貰えるかな。真剣な話なんだ............今日の寝床どうしよう....」
今の今まで本当に気付いていなかったらしいリンカが目が飛び出そうなくらい見開いている。
「そ、そういえばそうですよね!私達、お金も無いですし....」
「そうなんだよ。あるものって言えばこの取りすぎて余ったこのキノコぐらいだからな。」
キノコの入った麻袋を持ち上げ、リンカに見せた。
食事は少々ひもじいが、キノコを焚き火なんかで焼けば数日は食い繋げるだろうし、水はこの噴水のを拝借すれば問題はない。
だが、野宿は嫌だ。リンカが女の子だとかそんな事ではなく、ただただ俺が野宿したくない。
「はあ.....どうしよう.......リンカ?どうした?」
「あのー....あの子迷子でしょうか?」
リンカの目線を追い、噴水広場の一番遠いベンチに年端もいかない女の子が腰掛けていた。
俺達は見合せ、仕方ないなと立ち上がり。
「どうかしましたか?お母さんは?」
「......ぐす....お母さん....どこか行っちゃったの....」
なんという誤解を招きそうな言い方を....
うちのリンカさんが誤解を....しましたね。
「そんな!こんな小さい子を置いて!」
....やっぱりそうだ。観察スキルで見てみると、迷子タグがついている。
「おい、リンカ。その子ただの迷子だぞ」
「........あ、はい。そうでしたか....なら探してあげましょう!」
やっぱりそうなりますか。はい、分かりました。


ーーだが探せど探せど見つからない。
それはそうかもしれない、この町は特別大きいわけではないが、小さいということでも無いので、人一人見つけるのは案外大変なのだ。
「お母さんどこ~?」
「なあ、お母さんとどこではぐれたんだ?」
すると、とんでもない答えが返ってきた。
「おうちではぐれたの....」
「じゃあ家に行けばいいだろ、それ」
「.....ですね....ユウトさん、観察スキルで分かりませんか?」
そんな何でも出来るわけじゃねえんだよな、これ。
どうやら人探しには他に、地図スキルとマッピングスキルに特定検索スキル、それとタグ付けスキルがいるらしい。
今あるのはマッピングスキルだけだ。
さっき歩いてたら発現した。
「ねえねえ、お家はどこなのかな?」
「うーんとね...あそこ」
指差した方向は目の前の家屋だった。
「.........はい。」
「.....ノックしてきます....」
困った顔をしながら女の子を見ているとリンカがこんこんとノックする。
するとガチャリと扉が開いた。
「はい....どなたですか?こんな夜更けに....すいませんが今、それどころでは....」
「ママー!うわあああん!」
ようやく母親とご対面し、安堵した女の子は泣きながら抱きつきに突進した。
「ごふぅっ!......い、勢い....つよ....」
大変だな、子守りって。

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