3Rの魔法師〜魔力零の異端児は今日も誰かの魔力を糧にする〜
第25話 帰り道
昼休みに若干の波乱があったものの、それ以外はこれと言って変わったことがないまま放課後になった。ホームルームが終わるや否や僕は人目を忍んで校舎の外へと出る。最近はグレイスという腕のいいハンターが僕の動向に目を光らせているから、相当気を遣うよ。それに今日だけはガルダンも僕が一人になるのを狙っていたみたいだね。本当、勘弁してほしい。
いつもならこのままクロエが出てくるのを待って護衛をしつつ城へと戻るんだけど、今日からはあの二人がいるから僕が護衛の任をはずれてもさして問題ないはず。……昼休みの時に見せたファラの様子が少しだけ気になるけど、そっちはファルとクロエに任せて僕は僕の仕事をしよう。学園では大した情報が得られなかっただけに、ここから頑張らないと。……まずは気が進まないけど、《デカ耳のノックス》の所からかな。
*
帰りの護衛を頼まれた双子は、クロエと待ち合わせをし、三人仲良く帰路についていた。
「レイ兄様は……任務でいないのかな?」
クロエが周囲の気配を探る。別になにかの達人というわけではないのだが、ことレイに関してだけは、近くにいるかいないかをなんとなく察知することができた。
「そうです。女王様から新しく任務依頼を受けたので、早速今日から調査に乗り出すようです」
「でも、あたし達ははぶなんだよー! ひどいと思わない!?」
「はぶ? どうして?」
レイが意地悪をして二人を任務から外すなんてことは絶対にありえない。だからこそ、二人が任務に参加できない理由があるはずなのだ。クロエの問いかけに双子は顔を見合わせると、バツの悪そうな表情を浮かべた。
「……昨日騒ぎを起こした罰です」
「……ちょっと派手にやりすぎたから怒られちゃった」
「あー……そういうことね」
クロエも双子の告白騒動は聞いている。あまりそういう噂が来ることのない自分の耳にまで届いているということが、二人がかなりやんちゃをした何よりの証拠だった。レイは甘いところも多々あるが、厳しいところは本当に厳しいので、罰として双子を任務から外したとしても何らおかしいところはない。
「だーかーらー! あたし達にはクロエっちの護衛くらいしかやることがないって事ー!」
「いいじゃない? こうやって楽しく話しながら帰れるんだから」
クロエが笑いかけると、ファルが鞄を持ちながら頭の後ろで指を組み、蛸のように唇を尖らせた。
「まぁ、そうなんだけどさー……」
「私は二人の話を聞きたいな! 学校、どうだった?」
少しだけ目を輝かせながらクロエが尋ねる。自分と仲のいい二人が同じ学園に通い始めたのが嬉しかったので、どうしても感想を聞いてみたかったのだ。
「どう、って言われてもまだよくわからないよねー。二日目だし」
「そうですね……ただ、思ったよりも貴族と平民に差があるのを感じました」
「あっそれわかるー! 教室にいたら色んな男子が話しかけてきたけど、あたし達が平民だってわかったら途端に冷めた顔見せるんだよねー! あれチョーむかつく!!」
ファルが鼻息を荒くしながら、シャドーボクシングよろしくシュッシュッと拳で宙を殴る。そのスピードの速さにクロエは若干引きつった笑みを浮かべた。
「だから、エステルっちみたいな子は初めてだったかな? あの人、結構偉い感じなんでしょ?」
「エステルは上級貴族だから貴族の中でも位は高い方だね」
「ノルトハイムって言ってましたっけ? 上級貴族なんですね、エステルさんって。なおのこと珍しいですよ」
「あたし達を見ても軽蔑した感じが一切なかった!! クロエっち、見る目あるよ!! あの子は絶対にいい子だ!!」
笑いながらファルがクロエの肩をポンポン叩く。姫様に対してここまで気安く振る舞えるのは彼女くらいなものだろう。
「いい子だって……ファル? エステルさんはあなたより年上なんですよ?」
「そうだよ? 年上のいい子だ!」
あっけらかんと言い放ったファルに、ファラはため息を吐くほかない。人差し指で眼鏡を軽く上げると、クロエに向き直った。
「ボスの友人の方達も私達と普通に接してくれましたね。えーっと……ニックさん、でしたか? 彼はあまり私と目を合わせてくれませんでしたが」
「そういえばそうだったね。ファルとは楽しそうに話が弾んでいたのに」
「ニックちんもいい人だ! それに面白い!」
「それは傍から見ててすごく感じました。だからこそ、ボスの友人でもありますし、少しはお話してみたかったのですが……」
ファラが残念そうに睫毛を落とすと、ファルが曖昧な笑みを浮かべる。
「いやー……それは無理っしょ? だって、あの人は純情そうだもん」
「どういう意味ですか?」
「エステルっちともまともに話してなかったでしょ? つまり、そういう事だよ!」
「あっ、言われてみれば……って、どういう意味だか全然分からないんですけど」
「なるほど、そういうことね」
眉を顰めるファラに対して、ファルの言っている意味に気が付いたクロエは納得したように頷いた。ニックがエステルに抱く気持ちは丸わかりであるため、当事者以外は周知の事実である。
「えっ? クロエさんは分かったんですか?」
ファラが驚きの表情で目をやると、クロエは悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「うーん……どうだろう? 憶測の域は出ないから明言はできないね」
「もう! ボスみたいな言い方しないでください!」
ふくれっ面になったファラを見て、二人が笑い合う。ジト目を向けていたファラも、二人につられる形で笑みを浮かべた。
「それにしてもグレイっちは綺麗だったなぁ……スタイルも抜群だったし、なんか高貴な感じもしたよー」
「そうなんだよ! グレイスは羨ましいくらい美人なんだよね!」
「ところで、ファラはなんであんなにグレイっちを敵視してたのさ?」
今日の朝ごはんはなんだった?くらいのトーンでファルが尋ねると、ファラの身体がビクッと震える。
「グレイっちの事、知ってたの?」
「……いえ、今日初めて会いましたが……なんとなく苦手なタイプで……」
いつもははっきりと言うことが多いファラにしては珍しく、歯切れの悪い様子で答えた。苦手というよりはどちらかというと、嫌いに近かったようにも思える。ファルとクロエはさっと視線を交わし、とりあえず今はまだこの話題は触れないでおこう、という結論に至った。
「ファルとファラは同じクラスになれた?」
「うん! ばっちし! 女王様が気を利かせてくれたのかな?」
「そうもしれないね。レイ兄様の時も私たち同じクラスになれるように取り計らってくれたみたいだし」
あからさまな話題転換。それでも自然と話をする二人を見て、ファラは心の中でお礼を言いながら、その流れに乗っかることにする。
「私達は二組なんです……それで疑問に思ったのですが、どうして二年生や三年生のクラスは『ナイト』や『ビショップ』という名前なのに、一年生は数字なんでしょうか?」
「あっ、やっぱり普通は気になるよね、それ!」
「はい。気になります」
「あたしは気づきもしなかったけどね!」
元気よくVサインを見せるファルをスルーしつつ、クロエは説明し始めた。
「セントガルゴ学院は三ヶ月に一度、クラス対抗戦を行うの。その成績に応じてクラスの名前がキング、クイーン、ルーク、ナイトの四つになるんだよ。一年生はまだ対抗戦をやっていないからクラス名が数字になってるってわけだね!」
「なるほど……確かボスやクロエさんのクラスはクイーンだったから」
「クイーンが一番強いクラスってことだね!?」
ファラのセリフをかっさらう感じでファルが言うと、クロエは苦笑いを浮かべながら首を左右に振る。
「残念ながら私達のクラスは上から二番目だよ」
「え!? ボスがいるのに!?」
予想外の答えにファルが素っ頓狂な声をあげた。ファラも隣でかなり驚いている様子。二人を見て、困ったように笑いながらクロエは話を続ける。
「対抗戦はクラスの代表五人が戦うんだけど、レイ兄様は出てないのよ。ほら、兄様は私のためになるべく目立たないようにしているから」
「あー……そういうことですか」
「納得ー」
レイが学院に通う理由はただ一つ、クロエ王女を守ること。だが、「知られない事」が第零騎士団の掟となっている上に、護衛として張り付く事でクロエに窮屈な思いをさせたくないと思った彼は、目立たず影から見守る事を選んだのだ。
「それでもあのクラスは中々戦える人が多かったと思うけどなー。一緒にご飯を食べたニックちんにエステルっち、クロエっちだって学生相手ならわけないんじゃないの?」
「セントガルゴ学院の生徒はすごい人が多いの。エステルやニック君だって易々と勝てるわけじゃないんだ」
「ほへーそんなんだー」
ファルが意外そうな表情を浮かべる。
「……でも、あの人は別格ですよね? 私達の殺気をもろともしていませんでしたし」
「グレイスの事? うん、あの子は他の生徒達とは違うね。あの歳でBランク冒険者だし……なにより、学院唯一のレベルⅤだからね」
「レベルⅤ……どうりで」
ファルが両手を自分の後頭部に回しながら、感心したように口笛を吹いた。
「でも、グレイスは対抗戦とかそういうのに興味がないから出ないんだよ。クラスの人達もあまりグレイスに出てくれって言えないみたいだし」
「……確かに、そんな感じを受けました」
ファラが苦々しげな顔で告げる。そんな所も、自分の大嫌いなあの女と似ている気がした。
「ま、まぁ、とにかくあたしとファラがいればクラス対抗戦なんて余裕だね! 一番のクラスはなんて名前になるのクロエっち!?」
「キ、キングだよ!」
不穏な空気を察したファルが慌ててクロエに話しかける。クロエもあたふたしながらそれに答えた。
「……そうですね。私達はボスのように実力を隠す必要などないですからね。平民を舐め腐ってる貴族達に目にもの見せてやりましょうか」
「……やっぱ昼間の事引きずってたんだねー」
ファルが少しだけ呆れた口調で呟く。自分もさる事ながら、ファラの前では絶対にレイの悪口を言ってはいけない、と改めて思い知ったのであった。
いつもならこのままクロエが出てくるのを待って護衛をしつつ城へと戻るんだけど、今日からはあの二人がいるから僕が護衛の任をはずれてもさして問題ないはず。……昼休みの時に見せたファラの様子が少しだけ気になるけど、そっちはファルとクロエに任せて僕は僕の仕事をしよう。学園では大した情報が得られなかっただけに、ここから頑張らないと。……まずは気が進まないけど、《デカ耳のノックス》の所からかな。
*
帰りの護衛を頼まれた双子は、クロエと待ち合わせをし、三人仲良く帰路についていた。
「レイ兄様は……任務でいないのかな?」
クロエが周囲の気配を探る。別になにかの達人というわけではないのだが、ことレイに関してだけは、近くにいるかいないかをなんとなく察知することができた。
「そうです。女王様から新しく任務依頼を受けたので、早速今日から調査に乗り出すようです」
「でも、あたし達ははぶなんだよー! ひどいと思わない!?」
「はぶ? どうして?」
レイが意地悪をして二人を任務から外すなんてことは絶対にありえない。だからこそ、二人が任務に参加できない理由があるはずなのだ。クロエの問いかけに双子は顔を見合わせると、バツの悪そうな表情を浮かべた。
「……昨日騒ぎを起こした罰です」
「……ちょっと派手にやりすぎたから怒られちゃった」
「あー……そういうことね」
クロエも双子の告白騒動は聞いている。あまりそういう噂が来ることのない自分の耳にまで届いているということが、二人がかなりやんちゃをした何よりの証拠だった。レイは甘いところも多々あるが、厳しいところは本当に厳しいので、罰として双子を任務から外したとしても何らおかしいところはない。
「だーかーらー! あたし達にはクロエっちの護衛くらいしかやることがないって事ー!」
「いいじゃない? こうやって楽しく話しながら帰れるんだから」
クロエが笑いかけると、ファルが鞄を持ちながら頭の後ろで指を組み、蛸のように唇を尖らせた。
「まぁ、そうなんだけどさー……」
「私は二人の話を聞きたいな! 学校、どうだった?」
少しだけ目を輝かせながらクロエが尋ねる。自分と仲のいい二人が同じ学園に通い始めたのが嬉しかったので、どうしても感想を聞いてみたかったのだ。
「どう、って言われてもまだよくわからないよねー。二日目だし」
「そうですね……ただ、思ったよりも貴族と平民に差があるのを感じました」
「あっそれわかるー! 教室にいたら色んな男子が話しかけてきたけど、あたし達が平民だってわかったら途端に冷めた顔見せるんだよねー! あれチョーむかつく!!」
ファルが鼻息を荒くしながら、シャドーボクシングよろしくシュッシュッと拳で宙を殴る。そのスピードの速さにクロエは若干引きつった笑みを浮かべた。
「だから、エステルっちみたいな子は初めてだったかな? あの人、結構偉い感じなんでしょ?」
「エステルは上級貴族だから貴族の中でも位は高い方だね」
「ノルトハイムって言ってましたっけ? 上級貴族なんですね、エステルさんって。なおのこと珍しいですよ」
「あたし達を見ても軽蔑した感じが一切なかった!! クロエっち、見る目あるよ!! あの子は絶対にいい子だ!!」
笑いながらファルがクロエの肩をポンポン叩く。姫様に対してここまで気安く振る舞えるのは彼女くらいなものだろう。
「いい子だって……ファル? エステルさんはあなたより年上なんですよ?」
「そうだよ? 年上のいい子だ!」
あっけらかんと言い放ったファルに、ファラはため息を吐くほかない。人差し指で眼鏡を軽く上げると、クロエに向き直った。
「ボスの友人の方達も私達と普通に接してくれましたね。えーっと……ニックさん、でしたか? 彼はあまり私と目を合わせてくれませんでしたが」
「そういえばそうだったね。ファルとは楽しそうに話が弾んでいたのに」
「ニックちんもいい人だ! それに面白い!」
「それは傍から見ててすごく感じました。だからこそ、ボスの友人でもありますし、少しはお話してみたかったのですが……」
ファラが残念そうに睫毛を落とすと、ファルが曖昧な笑みを浮かべる。
「いやー……それは無理っしょ? だって、あの人は純情そうだもん」
「どういう意味ですか?」
「エステルっちともまともに話してなかったでしょ? つまり、そういう事だよ!」
「あっ、言われてみれば……って、どういう意味だか全然分からないんですけど」
「なるほど、そういうことね」
眉を顰めるファラに対して、ファルの言っている意味に気が付いたクロエは納得したように頷いた。ニックがエステルに抱く気持ちは丸わかりであるため、当事者以外は周知の事実である。
「えっ? クロエさんは分かったんですか?」
ファラが驚きの表情で目をやると、クロエは悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「うーん……どうだろう? 憶測の域は出ないから明言はできないね」
「もう! ボスみたいな言い方しないでください!」
ふくれっ面になったファラを見て、二人が笑い合う。ジト目を向けていたファラも、二人につられる形で笑みを浮かべた。
「それにしてもグレイっちは綺麗だったなぁ……スタイルも抜群だったし、なんか高貴な感じもしたよー」
「そうなんだよ! グレイスは羨ましいくらい美人なんだよね!」
「ところで、ファラはなんであんなにグレイっちを敵視してたのさ?」
今日の朝ごはんはなんだった?くらいのトーンでファルが尋ねると、ファラの身体がビクッと震える。
「グレイっちの事、知ってたの?」
「……いえ、今日初めて会いましたが……なんとなく苦手なタイプで……」
いつもははっきりと言うことが多いファラにしては珍しく、歯切れの悪い様子で答えた。苦手というよりはどちらかというと、嫌いに近かったようにも思える。ファルとクロエはさっと視線を交わし、とりあえず今はまだこの話題は触れないでおこう、という結論に至った。
「ファルとファラは同じクラスになれた?」
「うん! ばっちし! 女王様が気を利かせてくれたのかな?」
「そうもしれないね。レイ兄様の時も私たち同じクラスになれるように取り計らってくれたみたいだし」
あからさまな話題転換。それでも自然と話をする二人を見て、ファラは心の中でお礼を言いながら、その流れに乗っかることにする。
「私達は二組なんです……それで疑問に思ったのですが、どうして二年生や三年生のクラスは『ナイト』や『ビショップ』という名前なのに、一年生は数字なんでしょうか?」
「あっ、やっぱり普通は気になるよね、それ!」
「はい。気になります」
「あたしは気づきもしなかったけどね!」
元気よくVサインを見せるファルをスルーしつつ、クロエは説明し始めた。
「セントガルゴ学院は三ヶ月に一度、クラス対抗戦を行うの。その成績に応じてクラスの名前がキング、クイーン、ルーク、ナイトの四つになるんだよ。一年生はまだ対抗戦をやっていないからクラス名が数字になってるってわけだね!」
「なるほど……確かボスやクロエさんのクラスはクイーンだったから」
「クイーンが一番強いクラスってことだね!?」
ファラのセリフをかっさらう感じでファルが言うと、クロエは苦笑いを浮かべながら首を左右に振る。
「残念ながら私達のクラスは上から二番目だよ」
「え!? ボスがいるのに!?」
予想外の答えにファルが素っ頓狂な声をあげた。ファラも隣でかなり驚いている様子。二人を見て、困ったように笑いながらクロエは話を続ける。
「対抗戦はクラスの代表五人が戦うんだけど、レイ兄様は出てないのよ。ほら、兄様は私のためになるべく目立たないようにしているから」
「あー……そういうことですか」
「納得ー」
レイが学院に通う理由はただ一つ、クロエ王女を守ること。だが、「知られない事」が第零騎士団の掟となっている上に、護衛として張り付く事でクロエに窮屈な思いをさせたくないと思った彼は、目立たず影から見守る事を選んだのだ。
「それでもあのクラスは中々戦える人が多かったと思うけどなー。一緒にご飯を食べたニックちんにエステルっち、クロエっちだって学生相手ならわけないんじゃないの?」
「セントガルゴ学院の生徒はすごい人が多いの。エステルやニック君だって易々と勝てるわけじゃないんだ」
「ほへーそんなんだー」
ファルが意外そうな表情を浮かべる。
「……でも、あの人は別格ですよね? 私達の殺気をもろともしていませんでしたし」
「グレイスの事? うん、あの子は他の生徒達とは違うね。あの歳でBランク冒険者だし……なにより、学院唯一のレベルⅤだからね」
「レベルⅤ……どうりで」
ファルが両手を自分の後頭部に回しながら、感心したように口笛を吹いた。
「でも、グレイスは対抗戦とかそういうのに興味がないから出ないんだよ。クラスの人達もあまりグレイスに出てくれって言えないみたいだし」
「……確かに、そんな感じを受けました」
ファラが苦々しげな顔で告げる。そんな所も、自分の大嫌いなあの女と似ている気がした。
「ま、まぁ、とにかくあたしとファラがいればクラス対抗戦なんて余裕だね! 一番のクラスはなんて名前になるのクロエっち!?」
「キ、キングだよ!」
不穏な空気を察したファルが慌ててクロエに話しかける。クロエもあたふたしながらそれに答えた。
「……そうですね。私達はボスのように実力を隠す必要などないですからね。平民を舐め腐ってる貴族達に目にもの見せてやりましょうか」
「……やっぱ昼間の事引きずってたんだねー」
ファルが少しだけ呆れた口調で呟く。自分もさる事ながら、ファラの前では絶対にレイの悪口を言ってはいけない、と改めて思い知ったのであった。
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