話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

彼女が魔女だって? 要らないなら僕が大切に愛するよ

necoaya

45.やっぱり青が似合うね

 婚約了承の意思を確認した。そう告げたとき、ニルスは嬉しそうに口元を緩めた。眼差しも柔らかくなり、心から喜んでくれているのが分かる。準備や面倒な手配を彼に任せ、僕は用意させたお茶に蜂蜜を垂らした。僕の分じゃなくて、トリシャの分だ。軽く回して溶かしてから、膝の上に座らせたトリシャの口元に運ぶ。

「自分で」

「トリシャは僕のお茶は嫌い? 飲めない?」

「い、いえ」

 焦った様子でカップの縁に口を付ける。可愛いな、本当に。彼女が指先一つ動かさないでいいよう、僕がずっと抱いて世話をしようか。侍女がする仕事でも、僕に任せてくれたらいいのに。着飾らせて、美しい髪を結って、細い首に飾り物を掛ける。僕は器用にこなす自信があるよ?

 こくんと動いた喉を確認して、傾けたカップを戻す。零すなんて無粋な心配は要らない。控えていたマルスがすぐにカップを受け取って、ソーサーに戻した。膝を突いて控える騎士は、うまくトリシャから死角になる位置を選ぶ。この辺、やっぱり僕の側近達は有能だと感心した。

 持ちこまれた大量の布見本を彼女の膝や肩に当てて、肌映りを確認していく。わりと白い肌してるから青や紫が似合う。ただ顔色が悪く見えるのが難点だった。もっと食べさせて血色がよくなってからならいいんだけど。迷う僕の脇で布見本を整理しながら、ソフィが提案した。

「ご無礼を承知で……失礼いたします。青いドレスに明るいピンクやオレンジのショールはいかがでしょうか」

「……それもいいな」

 盲点だった。男性はせいぜいが胸ポケットに差し色をしたり、リボンタイの色を変更する程度だけど。女性なら装飾品の類が多い。青や紫のドレスをしつらえて、デザインを肩見せにする。その後、品のいいボレロやショールで覆ってしまえば、顔周りに華やかな色を添えられるというわけか。

「装飾品を金にするから、ピンクかな」

 紫と青の中間色の布を手に取り、その上にピンクを数枚乗せる。色としては淡い方が美しい。金の装飾品が霞むから強いローズ系はやめよう。一度決まりかけると、あとはするすると自動的に決まった。

「うん、助かったよ。ありがとう……その制服、どこから持ってきたの」

 礼を言ったところで、ソフィのお仕着せに気づいた。もしかして、それ……前の職場の服? メイド服にしては品がないな。スカート丈が短すぎるし、首元はきっちり閉めたブラウスが望ましい。

「以前から着用していたものです」

「わかった。君の服も仕立てよう。宮殿のでもいいけど、トリシャの専属だし。特別感があって一目で地位が分かるドレスがいい」

 好きな色を選ぶよう命じ、トリシャに向き直った。美しい彼女という小鳥を引き立てる花が、あまり粗末な服装ではね。それに妃の専属メイドはレディースメイドの頂点に立つ。女主人に傅く侍女が、みすぼらしいかったり煽情的な服装では、トリシャの評判にかかるだろう。

 打算的な思いから決めたことだけど、トリシャは嬉しそうに目を輝かせた。

「ありがとうございます! エリク。私も気になっていて……」

「じゃあ、次の時は君が僕に強請って欲しいな」

 気になったことを僕に直接教えて。君が欲しいと思うモノは物でも者でも揃えてあげる。だから、僕だけに依存して、僕だけを頼ってね。

「彼女が魔女だって? 要らないなら僕が大切に愛するよ」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く