彼女が魔女だって? 要らないなら僕が大切に愛するよ

necoaya

25.細やかな気遣い(SIDEベアトリス)

*****SIDE ベアトリス



 離宮まで丁寧に送り届けてもらい、部屋の中で一息つきます。扉の外には女性の騎士が2人もいました。随分としっかり警護されていますが、もしかして逃亡防止かしら。

「ソフィ、一緒にお茶を飲みましょう」

「ありがとうございます、お嬢様。ですが」

 ちらりと扉へ視線を向けるソフィの仕草に、私も気づきました。監視されてたら困る、ということね。公爵家にいた頃も監視がついていたわ。交代制で侍女や侍従が、ずっと見張っていた。今はそれほどの窮屈さを感じないから、平気だと思うのだけれど。

 頑なに拒むソフィの気持ちも分かります。皇帝陛下が……エリクが怖いのでしょう。全く怖くないといえば嘘になります。ただ、あの方のふとした時の表情や、私を見つめる優しい眼差しに、信じたいと思ったのです。人の心を知らない悪魔ではないはずですわ。

 これほど細やかな気遣いが出来るのですもの。急遽模様変更をしたのでしょうね。カーテンは落ち着くミントグリーンで柔らかく、足首まで埋まりそうな絨毯はオフホワイトです。クローゼットは淡いオレンジの絨毯でした。居心地がよく落ち着きます。

「ディナーまでどのくらいお時間があるかしら」

「あと2時間弱です」

 ソフィが聞いた時刻まで、思っていたより時間がありました。エリクは急いでいたので、仕事が入ったのでしょう。お邪魔をしたくありませんし、恩人に逃げると思われるのも嫌でした。この部屋で出来ることを考えていると、ソフィが提案してくれました。

「お部屋にはたくさんのドレスや小物がございました。確認されてはいかがでしょうか」

「そうね! せっかくだもの、着替えてディナーに向かえば喜んでくださるかも」

 微笑むソフィに促され、クローゼットに続く扉を潜った。公爵令嬢だった私の私室より広いクローゼット内に、素晴らしいドレスが飾られています。手に触れるまでもなく、縫製が確かで美しい生地とデザインの服ばかり。華やかなものから、少しお淑やかなドレスも。胸元をあまり強調するデザインはなく、安心しました。

 人並みにはあると思っていますが、強調するのは下品ですし。ステンマルク国で谷間を見せるドレスが流行した時は、卒倒しそうでした。確か、王太子殿下のお好みだったと聞いています。私は決して着ませんでした。それが殿下の怒りを買ったのは、承知しております。

 この部屋にあるのは品があり、上質なものばかり。手触りのいいファーに触れ、素晴らしさに吐息が漏れます。引き出しを開いたソフィに誘われて、宝飾品の棚の前に立ちました。

 お店のように立体的に飾られたネックレスは、それひとつで領地が買えそうなほど。お付き合いで目が肥えておりますから、金額を想像して怖くなりました。首飾りの棚の下は、引き出しで指輪や耳飾りを始めとした細々としたジュエリーが並んでいます。びっしりと宝石が連なったベルトまでありました。どんな時に着けるのでしょうか。

「お嬢様を大切にしてくださる方で、安心いたしました。お幸せになってくださいませ」

 虐げられた過去を知るから、ソフィは泣き笑いの顔でそう言ってくれました。まるで実の姉のよう。嬉しくて微笑んで頷く私の頬にも、涙が伝っていました。

「皇帝陛下に心配されてしまいます。まだお時間がありますので、湯に浸かって着替えをなさってください」

 そうね、お化粧が流れてしまうわ。指先で涙を拭い、私は今度こそ微笑んでソフィの手を取りました。

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