彼女が魔女だって? 要らないなら僕が大切に愛するよ
23.手出しは逆効果だよ
トリシャという天使を手に入れると知ってたら、事前にもっと準備が出来たんだけど。真っ白な離宮の装飾は金、カーテンは青だけど。
「トリシャの好む色に変更させる予定だよ」
彼女は緑の方が似合いそうだ。それに柔らかい色はトリシャを際立たせる。
元が客間として使用する離宮だったから、豪華さや見栄えを重視して作られていた。青いカーテンも、建築当初は赤だったんだ。趣味が悪いよね。
「綺麗ですね」
「ありがとう。新築したいくらいだけど、これはこれで歴史もあって重厚感はあるね」
まさかと目を見開く彼女に、本気だよと微笑んだ。右上位のマナーに従い、彼女は左側を歩く。僕としては君が右側でもいいくらいだけど。まあ、女帝なんて面倒を君に押し付ける気はないから、いいか。
「一番眺めの美しい部屋を選んでおいたから」
やたら凝った階段を上り、廊下を進んだ奥からニ番目の扉を開いた。この部屋は突き当たりの扉の部屋と繋がっている。帝都を見下ろせる離宮の景色は、評判が良かったから気に入ってくれるかな。
「っ……見事、ですね」
良かった。君が気に入らないと言ったら、都の景色ごと作り直すところだった。一番大きな部屋は、続き部屋が3つある。リビングとして使える突き当たりの部屋、反対側にクローゼット、その隣に化粧室があり、奥は風呂やトイレに繋がる。
リビングを挟んだ向こう側に僕の部屋を用意させた。扉を開けていきなり君の寝室だと、僕の自制心がもたない。将来的には間の部屋の扉をなくして、自由に行き来したいけど。
今は結婚まで手を出せないからね。僕の理性を示す扉は残しておかないと。
「トリシャの寝室として用意させた。家具もすべて入れ替えたよ。誰かが使った寝台なんて、君に使わせられないよ」
天蓋付きの大きなベッドは縦横同じくらいの巨大サイズだ。もちろん、将来的に一緒に寝る予定だよ。結婚式までどのくらいかかるかな。最短で準備させても1年くらい? 脅してもそんなに短くならないよね。
一日でも早く君の肌に溺れたいのに。君を優しく抱いて、ぐずぐずに溶かしたい。甘やかして僕がいないと生きられないように……。
いけない、暴走しかけた。ひとつ深呼吸して気持ちを落ち着ける。一度手を離して、彼女に他の部屋も見てくるよう促した。テラスは大きく外へ開く扉がある。そこへ出て、少し頭を冷やした。テラスの手摺りに寄りかかり、ふと違和感を覚える。
侍女のソフィと一緒にクローゼットやリビングを回る彼女に気づかれないよう、マルスを手招きした。ぐらりと手摺りが傾き、僕の体が宙に舞う。だが、手を伸ばしたマルスに引き戻される方が早かった。手摺りは完全に崩れず、傾いただけ。どうやら僕が体重をすべてかけなかったのが、壊れなかった原因らしい。
ここに手をかけて身を乗り出すと、ぐしゃりと根本が折れて落下する仕組みのようだ。斜めに力をかけたため、不完全に作動した。つまり、悪意ある工作というわけか。
マルスの表情が強張る。双子の弟アレスが騎士に指示を出す。双子は宮廷騎士の中でも、皇帝騎士と呼ばれる特別な地位にある。軍だけでなく、宮廷内のあらゆる部署に指示を出す権限を与えていた。生まれた時から僕と一緒に育った、絶対に裏切れない騎士だ。
「探せ」
「はっ」
手摺りに細工ができる者は限られる。この短い期間で、僕が婚約者を連れてくると知った貴族か。家具の入れ替えに入った者に手回しできるなら、それなりの地位にいる者だろう。離宮の改修を担当した貴族は、確か娘がいた。何度も偶然を装って引き合わされたっけ。あの辺りかな。僕の心当たりは、いつも一緒にいた護衛の双子はよく知っている。
馬鹿だな。こんな分かりやすい方法を使うなんて。もし僕がいない時にトリシャに傷ひとつでも負ったら、この宮廷内にいる人間を全員殺しても足りないのに。僕に善政を敷く大人しい皇帝でいて欲しいなら、天使への手出しは逆効果だよ。
「トリシャの好む色に変更させる予定だよ」
彼女は緑の方が似合いそうだ。それに柔らかい色はトリシャを際立たせる。
元が客間として使用する離宮だったから、豪華さや見栄えを重視して作られていた。青いカーテンも、建築当初は赤だったんだ。趣味が悪いよね。
「綺麗ですね」
「ありがとう。新築したいくらいだけど、これはこれで歴史もあって重厚感はあるね」
まさかと目を見開く彼女に、本気だよと微笑んだ。右上位のマナーに従い、彼女は左側を歩く。僕としては君が右側でもいいくらいだけど。まあ、女帝なんて面倒を君に押し付ける気はないから、いいか。
「一番眺めの美しい部屋を選んでおいたから」
やたら凝った階段を上り、廊下を進んだ奥からニ番目の扉を開いた。この部屋は突き当たりの扉の部屋と繋がっている。帝都を見下ろせる離宮の景色は、評判が良かったから気に入ってくれるかな。
「っ……見事、ですね」
良かった。君が気に入らないと言ったら、都の景色ごと作り直すところだった。一番大きな部屋は、続き部屋が3つある。リビングとして使える突き当たりの部屋、反対側にクローゼット、その隣に化粧室があり、奥は風呂やトイレに繋がる。
リビングを挟んだ向こう側に僕の部屋を用意させた。扉を開けていきなり君の寝室だと、僕の自制心がもたない。将来的には間の部屋の扉をなくして、自由に行き来したいけど。
今は結婚まで手を出せないからね。僕の理性を示す扉は残しておかないと。
「トリシャの寝室として用意させた。家具もすべて入れ替えたよ。誰かが使った寝台なんて、君に使わせられないよ」
天蓋付きの大きなベッドは縦横同じくらいの巨大サイズだ。もちろん、将来的に一緒に寝る予定だよ。結婚式までどのくらいかかるかな。最短で準備させても1年くらい? 脅してもそんなに短くならないよね。
一日でも早く君の肌に溺れたいのに。君を優しく抱いて、ぐずぐずに溶かしたい。甘やかして僕がいないと生きられないように……。
いけない、暴走しかけた。ひとつ深呼吸して気持ちを落ち着ける。一度手を離して、彼女に他の部屋も見てくるよう促した。テラスは大きく外へ開く扉がある。そこへ出て、少し頭を冷やした。テラスの手摺りに寄りかかり、ふと違和感を覚える。
侍女のソフィと一緒にクローゼットやリビングを回る彼女に気づかれないよう、マルスを手招きした。ぐらりと手摺りが傾き、僕の体が宙に舞う。だが、手を伸ばしたマルスに引き戻される方が早かった。手摺りは完全に崩れず、傾いただけ。どうやら僕が体重をすべてかけなかったのが、壊れなかった原因らしい。
ここに手をかけて身を乗り出すと、ぐしゃりと根本が折れて落下する仕組みのようだ。斜めに力をかけたため、不完全に作動した。つまり、悪意ある工作というわけか。
マルスの表情が強張る。双子の弟アレスが騎士に指示を出す。双子は宮廷騎士の中でも、皇帝騎士と呼ばれる特別な地位にある。軍だけでなく、宮廷内のあらゆる部署に指示を出す権限を与えていた。生まれた時から僕と一緒に育った、絶対に裏切れない騎士だ。
「探せ」
「はっ」
手摺りに細工ができる者は限られる。この短い期間で、僕が婚約者を連れてくると知った貴族か。家具の入れ替えに入った者に手回しできるなら、それなりの地位にいる者だろう。離宮の改修を担当した貴族は、確か娘がいた。何度も偶然を装って引き合わされたっけ。あの辺りかな。僕の心当たりは、いつも一緒にいた護衛の双子はよく知っている。
馬鹿だな。こんな分かりやすい方法を使うなんて。もし僕がいない時にトリシャに傷ひとつでも負ったら、この宮廷内にいる人間を全員殺しても足りないのに。僕に善政を敷く大人しい皇帝でいて欲しいなら、天使への手出しは逆効果だよ。
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