おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第647話

 似たもの親子の激闘が始まってから数時間後、山のふもとに戻って来た俺達の周りには勝敗の証として作製された雪だるまが数十個近く並べられていた。

「はぁ……はぁ……い、いい加減に諦めたらどうなんだ……」

「はぁ……はぁ……そ、そっちこそ負けを認めたらどうなのさ……」

「……2人共、そろそろ終わりにしないとマジで怪我しちゃいますよ。」

「そうだね。何度も連続して上級者コースを滑り続けるのはお勧め出来ないかな。」

「休憩も無しでずっと動き回ってましたからね……勝敗も半々になりましたし、もう止める時だと思います。」

「これ以上の無理は明日に影響する可能性がある。」

「いや、でも……!」

「あぁ、ここまで来て決着を付けない訳には……!」

「ったく、どっちも子供じゃ無いんだから引き際ぐらい考えなさいよね。」

「うむ、なんにしても更に滑るのは止めておいた方がよかろう。決着を付けるのなら他の方法を考えるんじゃな。」

「うっ……」

「むぐぅ……」

 俺達の言葉を聞いた2人がほぼ同時に押し黙ってから数秒後、ルーシーさんが急に両手をパンっと叩いて満面の笑みを浮かべ始めた。

「アルザンさん、ジーナちゃん、最後の勝負は2対2の雪合戦をしませんか?」

「……雪合戦?」

「えぇ、それなら危なくないでしょう?それに雪玉を作るのに最適な物も私達の手にあるじゃないですか。ほら。」

「あぁ、スノールリエイトですか。」

「はい。コレを使って決着を付ける……いかがですか?それに雪合戦が出来る場所があると、スキー場の係員の方が教えてくれましたので丁度良いと思いますよ。ね?」

 雪玉を手にしながらニッコリと微笑んでいるルーシーさんにそう聞かれた2人は、互いの顔をジッと見つめると……

「分かった、それで行くとするか。」

「ふふーん!お母さんの提案を無駄にする訳にはいかないもんね!私も良いよ!」

「うふふ、それじゃあ決まりですね。」

「うん!……だけど、2対にって事は私とお父さんは誰かとチームを組むって事?」

「そうよ、アルザンさんは九条さんと。」

「えっ、俺ですか?」

「はい。ここは男性と女性に別れて対決するのが面白いと思ったので。だからジーナちゃんはこの場に居る女の子から一人選んでチームを組んでね。」

「了解!それじゃあねぇ……」

「ジーナ、私に組ませて。」

「おっ、良いの?」

「うん、やらせて。」

「えへへ!分かった!それじゃあよろしくね、ソフィ!」

「すいませーん!もう一人だけこっちに人数を追加してもらえないでしょーか!どう考えても戦力差があり過ぎると思うんですけどもー!!」

「うふふ、ダメでーす。」

「九条さん、残念だけど覚悟を決めるしかないね。」

「え、えっと……大丈夫です!頑張ればその……きっと……」

「まぁ、骨は拾ってあげるから安心しなさい。」

「はっはっは!気張るんじゃぞ九条!負けるにしても派手にな!」

「……親父さん……」

「……何も言わないで下さい……」

 身体が温まって準備は万端な闘技場の元王者を仲間にしたジーナ対年齢層がほんの少しだけ高めのイケてるお兄さん達……さぁ、運命の女神はどちらに微笑むのか!?

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