おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第630話

「ご主人様、明日の朝には出発するんですから忘れ物はしない様にして下さいよ。」

「おう、任せとけ!不安になって既に3回は確認作業をやってるからな!」

「はぁ……全くもう、そんな事を威張ってどうするんですか?」

 アシェンさんからの追加依頼を片付けてから数日後、斡旋所を通してされた依頼の終了をアシェンさんから告げられた俺達は帰りの馬車を予約したその日の夜に宿屋で帰り支度を始めていた。

「ふふっ、まぁ良いじゃないか。それにしても本当に名残惜しいね。私達の冒険譚はまだ半分程しか話していなかったから、もう少し語りたかったんだけど。」

「いや、それだと後何日ここに居なきゃいけないのか分からないだろ?宿泊費だってバカにならないんだから、今回はここまでって事にしておこうぜ。それに本音を言うなら、イリスの親御さんから報酬を受け取るのも辞退したいぐらいなんだが……」

「そういう訳にはいきませんって、結局は押し切られちゃいましたねぇ。」

「うん。だけど、報酬を貰うのは大切な事。」

「そうだね。契約は契約、そこをシッカリしないと相手も気持ちが良くないだろう?九条さんの考えには同意したい所だけど、そこはきちんとしないといけないね。」

「はいはい、分かってますよ。相手が誰であろうと貰えるものは貰う。そうしないとアシェンさんが仕事の依頼をした相手に金を払わなかったーなんて噂が広まっちまうかもしれないからな。そんな迷惑は掛けられん。」

「えぇ、だから皆さんに感謝をしながら受け取る事にしましょう!っと、もうこんな時間なんですね。そろそろ寝ないと明日に響くかもしれませんね。」

「あー確かになぁ……明日も早ぇし……ってか、天気は大丈夫なんだろうな?今日も朝から雪が降ってやがったけど……」

「多分、大丈夫だと思うよ。さっき窓の外を見てみたら綺麗な月が顔を覗かせていたからね。」

「ふーん、なら雪のせいでトリアルに戻れなくなるって事は起こらなそうだな。」

「えへへ、仮にそうなったらそうなったでイリスさんは凄く喜びそうですけどね。」

「うん、私達が帰る事を寂しがってくれていた。」

「ふふっ、それを言うなら九条さんと別れる事を……じゃないかな?

「……こっちを見て同意を求めてくるんじゃない。ってか、さっさと寝ないと明日に響くんじゃなかったのか?忘れ物をしてないかの確認も終わったし、マジでそろそろ寝るとしようぜ。」

「はーい……それではご主人様、おやすみなさい。」

「あいよ、おやすみ。」

 マホ達と別れて小さめの寝室に向かって行った俺は、使い慣れてきたベッドの中に潜り込むと明日に備えて眠りにつくのだった。

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