おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第629話

 純白のタキシードに着替えて綺麗なドレス姿になった女性陣と女神像の前で合流をしてから1時間ぐらい経った後、職員さんに様々な写真を撮って貰った俺達は聖堂を後にするとセトグリア家へと戻って来ていた。

「皆さん、本日はどうもありがとうございました。皆さんのおかげでルバートさんと結婚式を挙げた時の事を思い出せる様な写真や、素敵な家族写真を撮影して貰う事が出来ました。女神様が降臨なさってくれなかったのは残念でしたけどね。」

「うーん、やっぱり人数が多いと会う事は出来ないんでしょうか?」

「いや、そんな人見知りみたいな感じに言わんでも……」

「ふふっ、きっと女神様は恥ずかしがり屋さんなんだろうね。」

「……何時か、会えたら良いな。私達も九条さんとの仲を祝福されたいから。」

「うふふ、何だかすみません。」

「むぅ~!イリスさん!勝ち誇っていられるのも今の内だけですからね!私達だって絶対に女神様から祝福を授けて貰いますよ!」

「あぁ、九条さんと私達の仲を甘く見てもらってはこまるよ?」

「九条さんは渡さない。」

「……お前等、頼むからその話はそれぐらいにしてくれ……!」

 人を挟んでとんでもない会話を繰り広げてやがる皆を何とか制した後、会話を再びイベントの話題に戻した俺は撮影した写真についての話をしてるイリスの方に視線を向けた。

「そう言えば花嫁衣裳を着てる母さんと僕に挟まれて父さんが困っている写真、早く見てみたいよね。」

「あはは、個人的にあの写真は恥ずかしい限りなんだが……そうだね、どんな写真になっているのか待ち遠しいよ。」

「ふふっ、皆さんに喜んで貰えたのならば良かった。私達としても満足のいく写真を何枚か撮って貰えたので、アシェンさんからされた依頼はお互いにとって素晴らしい物になったと思いますよ。」

「えへへ、本当に楽しいイベントでしたね!おじさんも私を含めたとびっきり可愛い女の子と沢山の写真を撮れたから嬉しいんじゃないですか?」

「それは……うん、どうだろうなぁ……」

 マホ、ロイド、ソフィ、そんでもってイリスとサシで撮ったのとか、ハーレム系の漫画とかで見た事ある花嫁衣裳を着た美少女に囲われて撮ったのとかもあったし?

 でも、だからってマホの意見をこんな所で肯定してたまるかっ!だってそんな事をしたら確実にロイドから弄られるに決まってるからな!ただでさえ羞恥心でいっぱいなのにこれ以上は完全にキャパオーバーですっ!

「はぁ……おじさん、何を考えているのか何となく分かっちゃうので言わせてもらいますけどソレって無駄な抵抗だと思いますよ?だって明日にはガチガチに緊張してるおじさんが写っている写真を受け取りにいくんですからね。」

「諦めた方が早い。」

「九条さん、私からは逃げられないからね。分かっているだろう?」

「ぐ、ぐぬぬぅ……!」

 えっ、何なのこの子達?俺みたいな冴えないおっさんをイジメてそんなに楽しい?こちとら綺麗に着飾った美少女と並んで写真を撮られた事に負い目すら感じているんだからもう少しぐらい優しくしてくれても罰は当たらないと思うんですけどねぇ?!

「うふふ、皆さんは本当に仲が良いですね。イリスさん、私とルバートさんも応援をしていますから彼女達に負けない様に頑張って下さいね。貴方達が今日の衣装を来て並び立っている姿を見るのが私の夢になったんですから。」

「うん、その夢を叶えられる様に努力していくね。」

 隠す気が無いのかってぐらい普通にそんな会話をしているイリスとアシェンさんを見つめながらガクッと肩を落とした俺は、グダグダになりつつある部屋の空気を一変させる為に手をパンパンと叩いて自分の意識を切り替えた。

「はいはい!お喋りはこれぐらいにして片付いてないもう1つ依頼の方を始めていきましょうか!まだ時間に余裕もある事ですし!」

「えぇ~!もう少しだけイベントの事をお話しましょうよ~!折角ポイントを貯めて素敵な思い出を作ってきたんですよ?コレで終わりなんて勿体ないですよ!」

「お黙りなさい!それは写真を貰って来た明日でも構わないでしょうが!ほらほら、さっさとする!」

 面倒事を後回しにしたって良い事なんて1つも無い……そんな事は分かってるが、今この瞬間からだけは敵前逃亡をさせてくれ……!

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品