おっさんの異世界生活は無理がある。
第616話
「皆さん、今日はお会い出来て本当に良かったです。特にイリスさんとは、今後ともお付き合いしていきたい所ですね。」
「うふふ、僕もサラさんとはもっとお話をしたいと思っていますよ。」
「はいはい、その事については俺達が居ない所で進めて下さい。それじゃあソフィ、今日は家族だけの時間を思いっきり楽しんで来いよ。」
「うん、そうする。皆、また明日ね。」
「はい!また明日です!」
「ふふっ、またね。」
久々に再会した両親と手を繋ぎながら通りの向こうへと歩いて行くソフィの後姿を見送った後、俺達はそれぞれに顔を見合わせた。
「それでは皆さん、私達もここで失礼させて頂きます。イリス、あんまり帰りが遅くならない様にね。」
「うふふ、私としては明け方に帰って来ても構いませんよ。」
「……アシェンさん、そういう事はサラッと口にしない方が良いですよ……ってか、夕飯を食べてこの時間帯にしかやってないイベントを幾つかやったらイリスはご自宅までお送りますのでどうぞご安心をっ!」
「まぁ、それは残念ですね。」
「えぇ、僕としても期待すらさせてくれないのかと落ち込んでしまいます。」
「2人共、あまり九条さんにご迷惑をお掛けしない様に……それでは皆さん、今日はお疲れ様でした。また明日、よろしくお願いします。」
困り顔のまま小さくお辞儀をしてくれたルバートさんに心の中で感謝をした俺は、遠ざかって行く2人の背中を見つめながらホッと胸を撫で下ろしていた。
「ふぅ……心臓に悪いったら無いな……さて、そんじゃあ俺達もそろそろ」
「あっ、おじさん!私とロイドさんもお先に失礼させてもらいますね!」
「……は?どうしたんだ急に?一緒に晩飯を食べに行くんじゃないのか?」
「うん、私達は別のお店で食事を済ませる事にするよ。今はイベントの時間、つまり2人の邪魔をする訳にはいかないって事さ。」
「えっ、いや邪魔って……」
「マホさん、ロイドさん、そんなに気を遣って頂かなくても僕なら大丈夫ですよ?」
「いえいえ!……本当は一緒にお食事に行きたかったですけど、私達はおじさんとは毎日一緒に過ごしていますから今日はイリスさんにお譲りします!」
「ふふっ、そういう事だからまた明日ね。」
有無を言わさず手を繋いで人混みの中に消えて行ってしまった2人のせいで呆然としていると、イリスが何事も無かったかの様な表情を浮かべてこっちを見てきた。
「うふふ、後に残されたのは僕達だけみたいですね。九条さん、どうしますか?」
「ど、どうしますかって……まぁ、とりあえず晩飯を食いに行くとするか。」
「分かりました。それでは……良いですよね?もう僕達の他に誰も居ませんし。」
「……はいよ。好きにしろ。」
「えぇ、では好きにします。うふふ。」
何が楽しいんだか分からないけど慣れた感じでイリスに腕を組まれた俺は、静かにため息を零しながら大通りの方に向かって歩き始めた。
「で?イリスは何か食べたい物とかあるのか?」
「うーん、そうですねぇ……美味しい物が食べたいです。」
「なんじゃそりゃ……ったく、よく分からねぇから飲食店が沢山ある通りまで行ってみるとするか……」
王都の地図を思い出しながら人の流れに沿ってしばらく歩き続けていると、隣から妙な視線を感じたので顔をそっちの方に動かしてみた。
「……うふふ。」
「……どうしたんだよ。俺の顔に何か付いてるか?」
「いえ、そうでは無くて……実は九条さんのお話したい事があるんです。」
「ん?話したい事?」
「はい。九条さんは今日の闘技場で賭けられるのがお金だけでは無くて、ポイントもだって事は知っていましたか?」
「あぁ、まぁな……俺はそっち系はマジで弱いから手は出してないけど……イリス、まさかとは思うが……やったのか?」
「えぇ、報告が遅れてしまって申し訳ありません。2ポイントだけお借りして勝負をさせてもらいました。」
「ふーん、別にそれっぽっちならすぐに貯められるから謝る必要はねぇんだけど……その話題を振って来るって事は、もしかして勝ったのか?」
「はい、何とか。」
「へぇ、そりゃ良かったな。それで?どんだけポイントが増えたんだ?」
「32ポイントです。」
「おぉ、32ポイントも………えっ?32ポイン……はぁっ!?」
「うふふ、驚きましたか?」
「お、驚いたに決まってんだろ!つーか、ちょっと待ってくれ!それってつまり……既に合計のポイントが40を超えたって事じゃないのか?」
「はい、そういう事ですね。だから明日のクエストを頑張れば、目標の50ポイント達成も夢じゃないですね。」
「マ、マジかよ……!まさかイリスにそんな才能があるだなんて……」
「僕、お役に立てましたか?」
「あ、当たり前だろ!ってか、役に立ったところの話じゃないっての!……よしっ、そうと決まれば今日は俺の奢りだ!雰囲気良さげの高めの店に連れてってやる!」
「えっ、良いんですか?」
「おう!って言っても、何処にそんな店があるか俺は分かんねぇなら……」
「九条さん、安心して下さい。僕がそういうお店までご案内させて貰いますから。」
「ははっ、了解。そんじゃあ頼んだぞ。」
「分かりました。うふふ。」
俺の知らない所で大活躍をしていたらしいイリスに腕を引かれてやって来た大人の雰囲気が溢れまくっている店で晩飯を食べた俺は……うん、後悔はしてないよ……?ただ、薄くなってしまった財布を見て……少しだけ……笑みが零れただけさ……
「うふふ、僕もサラさんとはもっとお話をしたいと思っていますよ。」
「はいはい、その事については俺達が居ない所で進めて下さい。それじゃあソフィ、今日は家族だけの時間を思いっきり楽しんで来いよ。」
「うん、そうする。皆、また明日ね。」
「はい!また明日です!」
「ふふっ、またね。」
久々に再会した両親と手を繋ぎながら通りの向こうへと歩いて行くソフィの後姿を見送った後、俺達はそれぞれに顔を見合わせた。
「それでは皆さん、私達もここで失礼させて頂きます。イリス、あんまり帰りが遅くならない様にね。」
「うふふ、私としては明け方に帰って来ても構いませんよ。」
「……アシェンさん、そういう事はサラッと口にしない方が良いですよ……ってか、夕飯を食べてこの時間帯にしかやってないイベントを幾つかやったらイリスはご自宅までお送りますのでどうぞご安心をっ!」
「まぁ、それは残念ですね。」
「えぇ、僕としても期待すらさせてくれないのかと落ち込んでしまいます。」
「2人共、あまり九条さんにご迷惑をお掛けしない様に……それでは皆さん、今日はお疲れ様でした。また明日、よろしくお願いします。」
困り顔のまま小さくお辞儀をしてくれたルバートさんに心の中で感謝をした俺は、遠ざかって行く2人の背中を見つめながらホッと胸を撫で下ろしていた。
「ふぅ……心臓に悪いったら無いな……さて、そんじゃあ俺達もそろそろ」
「あっ、おじさん!私とロイドさんもお先に失礼させてもらいますね!」
「……は?どうしたんだ急に?一緒に晩飯を食べに行くんじゃないのか?」
「うん、私達は別のお店で食事を済ませる事にするよ。今はイベントの時間、つまり2人の邪魔をする訳にはいかないって事さ。」
「えっ、いや邪魔って……」
「マホさん、ロイドさん、そんなに気を遣って頂かなくても僕なら大丈夫ですよ?」
「いえいえ!……本当は一緒にお食事に行きたかったですけど、私達はおじさんとは毎日一緒に過ごしていますから今日はイリスさんにお譲りします!」
「ふふっ、そういう事だからまた明日ね。」
有無を言わさず手を繋いで人混みの中に消えて行ってしまった2人のせいで呆然としていると、イリスが何事も無かったかの様な表情を浮かべてこっちを見てきた。
「うふふ、後に残されたのは僕達だけみたいですね。九条さん、どうしますか?」
「ど、どうしますかって……まぁ、とりあえず晩飯を食いに行くとするか。」
「分かりました。それでは……良いですよね?もう僕達の他に誰も居ませんし。」
「……はいよ。好きにしろ。」
「えぇ、では好きにします。うふふ。」
何が楽しいんだか分からないけど慣れた感じでイリスに腕を組まれた俺は、静かにため息を零しながら大通りの方に向かって歩き始めた。
「で?イリスは何か食べたい物とかあるのか?」
「うーん、そうですねぇ……美味しい物が食べたいです。」
「なんじゃそりゃ……ったく、よく分からねぇから飲食店が沢山ある通りまで行ってみるとするか……」
王都の地図を思い出しながら人の流れに沿ってしばらく歩き続けていると、隣から妙な視線を感じたので顔をそっちの方に動かしてみた。
「……うふふ。」
「……どうしたんだよ。俺の顔に何か付いてるか?」
「いえ、そうでは無くて……実は九条さんのお話したい事があるんです。」
「ん?話したい事?」
「はい。九条さんは今日の闘技場で賭けられるのがお金だけでは無くて、ポイントもだって事は知っていましたか?」
「あぁ、まぁな……俺はそっち系はマジで弱いから手は出してないけど……イリス、まさかとは思うが……やったのか?」
「えぇ、報告が遅れてしまって申し訳ありません。2ポイントだけお借りして勝負をさせてもらいました。」
「ふーん、別にそれっぽっちならすぐに貯められるから謝る必要はねぇんだけど……その話題を振って来るって事は、もしかして勝ったのか?」
「はい、何とか。」
「へぇ、そりゃ良かったな。それで?どんだけポイントが増えたんだ?」
「32ポイントです。」
「おぉ、32ポイントも………えっ?32ポイン……はぁっ!?」
「うふふ、驚きましたか?」
「お、驚いたに決まってんだろ!つーか、ちょっと待ってくれ!それってつまり……既に合計のポイントが40を超えたって事じゃないのか?」
「はい、そういう事ですね。だから明日のクエストを頑張れば、目標の50ポイント達成も夢じゃないですね。」
「マ、マジかよ……!まさかイリスにそんな才能があるだなんて……」
「僕、お役に立てましたか?」
「あ、当たり前だろ!ってか、役に立ったところの話じゃないっての!……よしっ、そうと決まれば今日は俺の奢りだ!雰囲気良さげの高めの店に連れてってやる!」
「えっ、良いんですか?」
「おう!って言っても、何処にそんな店があるか俺は分かんねぇなら……」
「九条さん、安心して下さい。僕がそういうお店までご案内させて貰いますから。」
「ははっ、了解。そんじゃあ頼んだぞ。」
「分かりました。うふふ。」
俺の知らない所で大活躍をしていたらしいイリスに腕を引かれてやって来た大人の雰囲気が溢れまくっている店で晩飯を食べた俺は……うん、後悔はしてないよ……?ただ、薄くなってしまった財布を見て……少しだけ……笑みが零れただけさ……
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