おっさんの異世界生活は無理がある。
第615話
大勢の観客達で賑わいを見せていた闘技場が静けさを取り戻したその後、最後まで会場内に残っていた俺達は受付をしていた職員に案内されてガドルさんとサラさんが居る王者専用の豪勢な待機部屋にやって来ていた。
「ぱぱ、おめでとう。絶対に勝つって信じてた。」
「あぁ、ソフィの期待に応えられたのなら良かったよ。」
「ふふっ、それにしても驚きました。まさか皆さんがお仕事の都合で王都に来ているとは思ってもいませんでしたから。」
「あはは……すみませんサラさん、いきなり押しかける様な形になってしまって……ガドルさんも試合が終わった直後でお疲れだと言うのに……」
「いえ、お気になさらないで下さい。私の試合はあの1回だけでしたので、そこまで疲れているという訳でもありませんから。それよりも、そちらの皆さんにはご挨拶がまだでしたね。初めまして、ガドル・オーリアと言います。隣に居るのが……」
「妻のサラ・オーリアです。皆さんは確か、ソフィちゃんのお友達でお仕事の依頼主さんでもある……」
「えぇ、アシェン・セトグリアと申します。よろしくお願いします。」
「僕は息子のイリスです。」
「私はアシェンの夫でルバートと言います。お2人共、改めてにはなりますが本日は本当におめでとうございます。」
「ありがとうございます。試合の内容にはご満足して頂けましたか?」
「えぇ、それはもう。一瞬たりとも目が離せない素晴らしい試合でした。」
「ははっ、それならば良かったです。九条さん達も楽しんでもらえましたか?」
「勿論、最初から最後まで充実した時間を過ごさせて貰いましたよ。」
「えへへ!私、冬だって言うのに気が付いたら汗がいっぱい出ていました!」
「あらあら、そうなんですか?それではマホさんが風邪を引いてしまう前に、暖かい飲み物をご用意しますので少々お待ち下さいね。」
俺達に向かってニコっと微笑んでから部屋の奥に歩いて行くサラさんの姿を何の気なしに見つめていると、不意にこっちを見つめて来ているガドルさんと目が合った。
「……そう言えば九条さん、アレからその……変わった事はありませんか?」
「……アレから?……あぁ、まぁそうですね。特に変わり無く……な?」
「うん、何時も通り。」
「そうですか……特には……うん、それなら良かったです。」
「は、はぁ……?」
どういう訳か俺とソフィを交互に見ながら安堵しているっぽいガドルさんに対して小首を傾げていると、上品な紅茶の香りが漂ってくるティーカップをマホに手渡したサラさんがこっちを見ながらクスクスと微笑みだした。
「ガドルさん、そんなに気になるのならきちんと聞かないとダメですよ。九条さんとソフィちゃんの仲が何処まで進んでいるのかって。」
「………はいっ!?」
いきなり超ド級の爆弾を放り投げてきたサラさんに視線を送りながら思わず驚きの声を上げていると、ガドルさんが何とも言えない表情を浮かべ初めて……
「そ、それはそうなんだが……」
「シッカリして下さい。そんな事ではソフィちゃんと九条さんがお付き合いを始めた時にきちんと祝福出来ませんよ。」
「ちょ、ちょちょっ!サラさん!?何を言って……!」
「うふふ、恥ずかしがる事は無いじゃないですか。だって九条さん、ソフィちゃんの為にガドルさんと戦ったじゃないですか。つまり、それだけ大事に想ってくれているって事ですよね?」
「いや!確かに戦いはしましたけど……そう聞かれると答えに困るといいますか……ハッ!?こ、この気配はまさか……」
目には見えないはずの黒色のオーラが背後から漏れ出しているのを感じてゆっくり顔を後ろに向けてみると……それはもう、分かりやすいぐらいの反応をしている……
「うふふ……うふふふふふ…………サラさん……って、仰いましたよね?」
「えぇ、貴方は確か……イリスさんでしたよね?どうかしたんですか?」
「うふふ、そうですねぇ……大した事ではないんですが、一言だけお伝えしなければならない事がありまして……」
「……なんですか?」
「……九条さんは、僕の運命の人です。だからソフィさんとはお付き合いはしませんので、先程のお話についてはご心配なさらなくても大丈夫ですよ。」
「お、おいおいおいおい……イリスさん?あのさ……サラさんとは初対面なんだからいきなりそんな事を言われても困るだ……ろ……?」
お、おかしいなぁ……どうしてサラさんからイリスに負けず劣らずの黒いオーラが溢れ出している様に見えるんだろうか……
「ふふっ、面白い事を仰りますね。イリスさんが九条さんの運命の人ですか。それはつまり、私達の可愛い娘であるソフィちゃんが貴方に負けるという事ですか?」
「はい、その通りです。何か問題でも?」
「えぇ、問題だらけです。確かにイリスさんもソフィちゃんに負けないぐらい可愛いという事は認めますが……でも、最終的に選ぶのは九条さんですよね?だったら……貴方が負けてしまうという未来もあるんじゃないですか?……ねぇ?」
「……うふふ……」
「……ふふっ……」
えっ、何この状況?イリスとサラさん、微笑んでるけど目が全然笑ってないんですけども……
「お、おじさん!早く何とかして下さいよ!」
「は、はぁ!?んな無茶な……ロ、ロイド!ここは良い感じに……」
「すまない、私には無理だ。ここはそれぞれの家族に任せるとしないかい。」
「うふふ、ごめんなさい私ではお役に立てそうにありません。というより、私的にはこの状況をもう少しだけ楽しみたい気分です。」
「……九条さん、私ではご期待に応えられそうにありません……」
「……同じく。私も試合直後で体が動かせそうにありません。」
「え、えぇ……マジですか……!」
その後、全責任を押し付けられてしまった俺は決死の覚悟でどうにか2人の修羅を鎮めようと頑張るのだった……!
「ぱぱ、おめでとう。絶対に勝つって信じてた。」
「あぁ、ソフィの期待に応えられたのなら良かったよ。」
「ふふっ、それにしても驚きました。まさか皆さんがお仕事の都合で王都に来ているとは思ってもいませんでしたから。」
「あはは……すみませんサラさん、いきなり押しかける様な形になってしまって……ガドルさんも試合が終わった直後でお疲れだと言うのに……」
「いえ、お気になさらないで下さい。私の試合はあの1回だけでしたので、そこまで疲れているという訳でもありませんから。それよりも、そちらの皆さんにはご挨拶がまだでしたね。初めまして、ガドル・オーリアと言います。隣に居るのが……」
「妻のサラ・オーリアです。皆さんは確か、ソフィちゃんのお友達でお仕事の依頼主さんでもある……」
「えぇ、アシェン・セトグリアと申します。よろしくお願いします。」
「僕は息子のイリスです。」
「私はアシェンの夫でルバートと言います。お2人共、改めてにはなりますが本日は本当におめでとうございます。」
「ありがとうございます。試合の内容にはご満足して頂けましたか?」
「えぇ、それはもう。一瞬たりとも目が離せない素晴らしい試合でした。」
「ははっ、それならば良かったです。九条さん達も楽しんでもらえましたか?」
「勿論、最初から最後まで充実した時間を過ごさせて貰いましたよ。」
「えへへ!私、冬だって言うのに気が付いたら汗がいっぱい出ていました!」
「あらあら、そうなんですか?それではマホさんが風邪を引いてしまう前に、暖かい飲み物をご用意しますので少々お待ち下さいね。」
俺達に向かってニコっと微笑んでから部屋の奥に歩いて行くサラさんの姿を何の気なしに見つめていると、不意にこっちを見つめて来ているガドルさんと目が合った。
「……そう言えば九条さん、アレからその……変わった事はありませんか?」
「……アレから?……あぁ、まぁそうですね。特に変わり無く……な?」
「うん、何時も通り。」
「そうですか……特には……うん、それなら良かったです。」
「は、はぁ……?」
どういう訳か俺とソフィを交互に見ながら安堵しているっぽいガドルさんに対して小首を傾げていると、上品な紅茶の香りが漂ってくるティーカップをマホに手渡したサラさんがこっちを見ながらクスクスと微笑みだした。
「ガドルさん、そんなに気になるのならきちんと聞かないとダメですよ。九条さんとソフィちゃんの仲が何処まで進んでいるのかって。」
「………はいっ!?」
いきなり超ド級の爆弾を放り投げてきたサラさんに視線を送りながら思わず驚きの声を上げていると、ガドルさんが何とも言えない表情を浮かべ初めて……
「そ、それはそうなんだが……」
「シッカリして下さい。そんな事ではソフィちゃんと九条さんがお付き合いを始めた時にきちんと祝福出来ませんよ。」
「ちょ、ちょちょっ!サラさん!?何を言って……!」
「うふふ、恥ずかしがる事は無いじゃないですか。だって九条さん、ソフィちゃんの為にガドルさんと戦ったじゃないですか。つまり、それだけ大事に想ってくれているって事ですよね?」
「いや!確かに戦いはしましたけど……そう聞かれると答えに困るといいますか……ハッ!?こ、この気配はまさか……」
目には見えないはずの黒色のオーラが背後から漏れ出しているのを感じてゆっくり顔を後ろに向けてみると……それはもう、分かりやすいぐらいの反応をしている……
「うふふ……うふふふふふ…………サラさん……って、仰いましたよね?」
「えぇ、貴方は確か……イリスさんでしたよね?どうかしたんですか?」
「うふふ、そうですねぇ……大した事ではないんですが、一言だけお伝えしなければならない事がありまして……」
「……なんですか?」
「……九条さんは、僕の運命の人です。だからソフィさんとはお付き合いはしませんので、先程のお話についてはご心配なさらなくても大丈夫ですよ。」
「お、おいおいおいおい……イリスさん?あのさ……サラさんとは初対面なんだからいきなりそんな事を言われても困るだ……ろ……?」
お、おかしいなぁ……どうしてサラさんからイリスに負けず劣らずの黒いオーラが溢れ出している様に見えるんだろうか……
「ふふっ、面白い事を仰りますね。イリスさんが九条さんの運命の人ですか。それはつまり、私達の可愛い娘であるソフィちゃんが貴方に負けるという事ですか?」
「はい、その通りです。何か問題でも?」
「えぇ、問題だらけです。確かにイリスさんもソフィちゃんに負けないぐらい可愛いという事は認めますが……でも、最終的に選ぶのは九条さんですよね?だったら……貴方が負けてしまうという未来もあるんじゃないですか?……ねぇ?」
「……うふふ……」
「……ふふっ……」
えっ、何この状況?イリスとサラさん、微笑んでるけど目が全然笑ってないんですけども……
「お、おじさん!早く何とかして下さいよ!」
「は、はぁ!?んな無茶な……ロ、ロイド!ここは良い感じに……」
「すまない、私には無理だ。ここはそれぞれの家族に任せるとしないかい。」
「うふふ、ごめんなさい私ではお役に立てそうにありません。というより、私的にはこの状況をもう少しだけ楽しみたい気分です。」
「……九条さん、私ではご期待に応えられそうにありません……」
「……同じく。私も試合直後で体が動かせそうにありません。」
「え、えぇ……マジですか……!」
その後、全責任を押し付けられてしまった俺は決死の覚悟でどうにか2人の修羅を鎮めようと頑張るのだった……!
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