おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第570話

「皆さん、ここが今日の目的地となります!どうですか?中々の雰囲気でしょう!」

 満面の笑みを浮かべながらそう言ったポーラの背後には……錆びついた鉄格子……雑草だらけで荒れ放題の庭先……今にも朽ち果てそうなボロボロのバカでかい屋敷が圧倒的な存在感を放ちながら存在していた……!

「ふふっ、コレは凄い。トリアルの街中にこんな所があるなんて知らなかったよ。」

「うん、何時幽霊が出て来てもおかしくない。」

「あはっ、ですよね!それに見て下さい!さっきまで晴れていた空がいきなり曇ってきましたよ!コレは、もしかしたら本物の幽霊とご対面出来るかもしれませんね!」

「うぅ……どうしてそんなに瞳をキラキラさせているんですか……」

「マホ……そういうのは聞くだけ無駄だ……ってかポーラ、ここまで来たのは良いがこれからどうするつもりなんだ?まさかとは思うけど、屋敷の中に入って調査をするとか言うつもりじゃないだろうな?」

「いえいえ、流石に屋敷の中までは入りませんよ!許可も取らずに侵入したら、最悪捕まってしまうかもしれませんからね!」

「だ、だよな……ん?ちょっと待てよ。屋敷の中まではって事は……敷地内には入るつもりなのか?」

「はい!そこまでなら大丈夫とエリオさんに許可を貰っていますから!」

「へぇ、何時の間にそんな許可を?」

「今日、皆さんの所に向かう前にです。あっ、先に説明しますけど本当なら私1人で調査をするつもりだったんですよ?ロイドさんの密着取材を終えた後にでもって……そうしたら幸運な事に素敵なご提案をして頂きまして……ありがとうございます!」

「ふふっ、ポーラの行動の速さには驚かされるね。まさかそんなタイミングで予定を任せる事になるなんて予想もしていなかったよ。」

「九条さん、やったね。」

「おじさん……やっちゃいましたね……」

「あぁ……もう、どうして俺は……」

 後悔先に立たず……そんなことわざ思い出しながら両手で顔を覆った俺は、自分の呪われっぷりに膝から崩れ落ちそうになっていた……

「さぁさぁ皆さん!時間は有限、急いで調査に取り掛かりますよ!」

「了解、力になれるように頑張らせてもらうよ。」

「……幽霊……会えると思う?」

「わ、分かりませんが……私は会いたくありませんっ!」

「はぁ……マジで帰りてぇ……」

 ガクッと肩を落としながら鉄格子の扉を開けて敷地内に入って行ったポーラの後に続こうとした……その直後、不意に何処からか誰かに見られている様な気配を感じた俺はゆっくりと顔を上げて周囲を見渡してみた……

「……おじさん?急にキョロキョロとしてどうかしたんですか?……ま、まさか……幽霊の気配を感じ取ったんですか!?」

「えっ!?幽霊?!九条さん、幽霊の気配があったんですか!?何処に!??」

「ちょっ!近い近い!別に何にも感じてねぇから!気のせいだから!」

「……むぅ、そうなんですか?本当の所はどうなんですか?」

「だ、だから本当だっての!それよりもほら、時間は有限なんだろ?さっさと調査を始めないと雨が降って来ちまうかもしれねぇぞ。」

「あっ、そうでした!九条さん、何か感じたらすぐに知らせて下さいね!」

「はいはい、分かったよ……」

 背中を向けて早足て歩き去って行く興奮気味のポーラの背中を目で追いかけながら後頭部をガシガシと掻いた俺は、右腕をマホに捕まれたまま敷地内に足を踏み入れて行くのだった。

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