おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第555話

 外で待たせっぱなしにするのも悪いと思いポーラをリビングに案内してから手早く身支度を整えていった俺は、彼女と一緒にすぐ隣にあるロイドの家に足を運ぶと事の顛末を順を追って報告していくのだった。

「……という訳で、俺達がしてきた事は全て無駄に終わったって訳だ。」

「あはは、何だかすみません。私のせいで皆さんの苦労を台無しにしてしまって。」

「いや、君が謝る事は無いよポーラ。これは私達が勝手にした事だからさ。」

「そうですね、バレてしまった事は残念ですがコレばっかりは仕方ありませんよ。」

「うん。でも、約束はさっきした約束は守って欲しい。」

「えぇ、それは勿論ですよ!ロイドさんが九条さんと同じ屋根の下で暮らしている~なんて事がファンの方達に発覚してしまったら大変な事にぃ……いや、それはそれで面白い記事が出来上がる可能性が……?」

「おいっ!」

「あはっ、冗談ですよ!私としても折角お知り合いになれた九条さんが酷い目に遭うのは見たくありませんからね!それにもしそんな事になってしまったら、オレットに怒られちゃいますもん!だから安心して下さい!」

「……マジで頼むからな……」

 ため息を零しつつそんなやり取りを終えた後、俺達はポーラに聞かせる為に今日の予定を改めて確認していくのだった。

「さてと、それじゃあ事なんだが実は皆でクエストに行こうと思っているんだが……ポーラ、君は戦闘経験はあまり無いんだったよね。」

「はい、申し訳ありませんが私の武器はこのカメラだけですので……クエストにお供したとしても、お邪魔にしかならないと思います!」

「そこまで堂々と宣言されると逆に感心するな……」

「あ、あはは……でもポーラさん、戦えなくても取材は行うんですよね?」

「えぇ、ロイドさんの戦う姿をカメラに収められるなんて貴重ですからね!ファンの方達もそういう写真を望んでいると思いますので、頑張って同行させて貰います!」

「うん、了解。九条さん、悪いんだけど彼女の護衛を頼めるかな。」

「あいよ。」

「あはっ、ご迷惑をお掛けしますがどうぞよろしくお願いします!」

「おう、任せとけ。」

「ソフィー、私と一緒にモンスターの討伐を頼んだよ。」

「うん、頑張る。」

「私は皆さんの無事をお祈りしながらお昼ご飯を作っておきます!ポーラさんの分も用意しておきますので、楽しみにしていて下さいね!」

「えっ、良いんですか!それではお言葉に甘えて楽しみにさせて頂きますね!」

「……よしっ、そんじゃあ出発するとしますかね。」

「はい!皆さんのご活躍、しっかり記録として残させてもらいます!」

 オレットさんが持っていた物よりも高性能そうなカメラを構えているポーラさんを目にして少しだけ苦笑いを浮かべながら、俺達はマホに見送られてロイドの家を後にするのだった。

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