おっさんの異世界生活は無理がある。
第548話
「九条さん、ジーナさん、本日まで色々とお世話になりました。貴方達が居てくれたおかげで素敵な旅の思い出を作る事が出来ました。」
「いやいや、それはこっちも同じだって!皆との旅行、本当に楽しかったよ!今日でお別れだなんてとっても寂しいって思っちゃうぐらいに!ね、九条さん!」
「あぁ、かなり充実した時間を過ごせたからな……ルゥナさん、それに皆も、王都に戻っても元気でやれよ。」
前日の間に運良く王都行きの馬車を予約する事に成功した皆を見送る為に明け方の太陽が照らす正門前の広場にやって来た俺とジーナは、出発の予定時刻を迎えるまで他愛もない雑談と別れの挨拶を交わしていた。
「ハッ、それはこっちの台詞なんじゃねぇかよ。特にテメェの場合は望んでんのかは知らねぇが色々と厄介事に巻き込まれやすい質《たち》みてぇだからな。」
「うふふ、そうですね。本当でしたら九条さんが大怪我をしたりしない様に皆さんへお願いしたい所だったんですが……」
「残念な事に昨日の内には戻って来なかったからね。まぁ、皆さんの事だから僕達に言われなくても大丈夫ですよね。」
「うむ、この者が無茶をしない様に常日頃から見張っているであろうからな。しかしこの男の場合、一度決めたらトコトンまでやり切ってしまうからな……やれやれ……あの者達も苦労が絶えないな。」
「うんうん、私としても折角作ってあげた極上の武器を壊されたりとかしたからね!コレはもう、諦めるしかないって事なのかなぁ……」
「……君達、俺の事で勝手に盛り上がるの止めてくれる?」
「あ、あはは……九条さん、あまりロイドさん達に心配を掛けたりしない様にお願いしますね?大人として、立派な姿を見せてあげて下さい。」
「うぐっ……ど、努力します……」
呆れた様、何とも言えない様な表情を浮かべたルゥナさんに微笑みかけられながらそんな事を言われてしまい、思わず心にグサッときていると……
「皆さーん!ちょっとだけ私の方に集まって欲しいんですけど~!」
「ん?どうしたんだいオレット。」
「んふふ~実はねエルアちゃん!旅行の最期を飾るに相応しいイベントとして、皆で記念撮影でもどうかなって思ったんだよ!」
「記念撮影……ですか?」
「はい!これまでにも何度か写真は撮らせて貰ってましたけど、全員で集まってっていうのは無かったなと思いまして!」
「うふふ、そう言えばそうでしたね。クアウォートでも最後はバタバタしてしまい、そういうモノを撮る機械は無かったですね。」
「うんうん!良いんじゃないかな!」
「チッ、そんな面倒なもん誰が……って言いたい所だが、まぁ折角の機会だからその提案に乗っかってやっても良いぜ。」
「ふっ、我としても異存は無いぞ!」
「あはっ、それじゃあ決まりですね!はいはい皆さんこちらにどうぞっ!」
「はぁ……朝っぱらか元気だなぁ……ったく。」
思わず笑みを浮かべてしまいながらオレットさんの指示に従って立ち位置を決めていった俺達は、彼女から借りたカメラを手に持った御者さんの前に集まっていった。
「それではおじさん、合図をよろしくお願いします!」
「えぇ、分かりました。それではいきますよ~……はい、ポーズ。」
パシャッという音が広場に響いてからしばらくした後、出発の時刻を告げるベルの音が周囲に鳴り響き始めた。
「……そろそろ時間みたいですね。九条さん、ジーナさん、改めてになりますが今日まで本当にお世話になりました。また何時か、お会い致しましょうね。」
「うん!ルゥナさん、それに皆もまたね!あっ、約束はきちんと果たすから楽しみにしていてね!九条さんも!」
「はいはい……それじゃあな。学園生活、楽しんで来いよ。」
「えぇ、了解しました。」
「うふふ、先輩方は次の春で卒業ですからね。」
「うっ……そうなんだよねぇ……はぁ……無事に卒業したいなぁ……」
「オイオイ、頼むから同じ学年になるのだけは勘弁してくれよ。」
「うむ、それは流石に情けなさすぎるからな。」
「わ、分かってるよぉ!が、頑張ってみせるもん!」
「オレットさん、何か困った事があれば力になりますから大丈夫ですよ。」
「う、うぅ……最後の最後にするのがこんなやり取りなんて嫌だよ~!」
……そんなオレットさんの叫びを最後にして皆が乗り込んだ馬車が視界から消えるまで見送った俺とジーナは、ほぼ同時に伸びをして互いの方に向き合った。
「それじゃあ九条さん、私は仕事場の方に戻るね。皆の為に作らなきゃいけない物が沢山あるから!」
「おう、シッカリ頼むぜ。」
「うん!それじゃあばいば~い!……ふぁ~……その前に二度寝しよ……」
「……やれやれ、あの調子で大丈夫かねぇ。」
大きなあくびをしながら歩き去って行くジーナの後姿を眺めながらうなじの辺りに右手を置いた俺は、軽くストレッチをしてから帰路を進み始めた。
それからしばらくして、誰も居ない家の前に辿り着いた俺は扉を開く為にポケットから鍵を取り出そうと……
「ごっしゅじんさまぁ~~~!!!!!!」
「ん?ぐふぉっ!?!!?!!」
「お久しぶりですご主人様!ただいまですご主人様!マホです!マホですよ!元気にしていましたかご主人様!んぎゅ~!!」
「ぐ、ぐぐ……!おまっ、帰って来てたのか……!?って、それより何より背後からタックルをかましてくるんじゃねぇよ……!腰がへし折れたかと思ったぞ……!」
「もう!何を言ってるんですかご主人様!コレは私のとびっきりの愛情表現ですよ!ほらほら!もっと私の愛情を感じて下さい!」
「ぐ、ぐおおおお………!」
「ふふっ、朝から楽しそうで何よりだ。どれ、私も混ぜてもらおうかな。」
「うん、マホだけズルい。私もやる。」
「はっ!?ちょっ?!ロイドにソフィ!?お前ら何を……って、両側から思いっきり腕に抱き着いてくんな!おいっ!聞いてんのかこのやろおおおおっ!!!!」
……その後、久々に再会した俺達は積もりに積もった話をする為に一緒に家の中に入って行くのだった。
「いやいや、それはこっちも同じだって!皆との旅行、本当に楽しかったよ!今日でお別れだなんてとっても寂しいって思っちゃうぐらいに!ね、九条さん!」
「あぁ、かなり充実した時間を過ごせたからな……ルゥナさん、それに皆も、王都に戻っても元気でやれよ。」
前日の間に運良く王都行きの馬車を予約する事に成功した皆を見送る為に明け方の太陽が照らす正門前の広場にやって来た俺とジーナは、出発の予定時刻を迎えるまで他愛もない雑談と別れの挨拶を交わしていた。
「ハッ、それはこっちの台詞なんじゃねぇかよ。特にテメェの場合は望んでんのかは知らねぇが色々と厄介事に巻き込まれやすい質《たち》みてぇだからな。」
「うふふ、そうですね。本当でしたら九条さんが大怪我をしたりしない様に皆さんへお願いしたい所だったんですが……」
「残念な事に昨日の内には戻って来なかったからね。まぁ、皆さんの事だから僕達に言われなくても大丈夫ですよね。」
「うむ、この者が無茶をしない様に常日頃から見張っているであろうからな。しかしこの男の場合、一度決めたらトコトンまでやり切ってしまうからな……やれやれ……あの者達も苦労が絶えないな。」
「うんうん、私としても折角作ってあげた極上の武器を壊されたりとかしたからね!コレはもう、諦めるしかないって事なのかなぁ……」
「……君達、俺の事で勝手に盛り上がるの止めてくれる?」
「あ、あはは……九条さん、あまりロイドさん達に心配を掛けたりしない様にお願いしますね?大人として、立派な姿を見せてあげて下さい。」
「うぐっ……ど、努力します……」
呆れた様、何とも言えない様な表情を浮かべたルゥナさんに微笑みかけられながらそんな事を言われてしまい、思わず心にグサッときていると……
「皆さーん!ちょっとだけ私の方に集まって欲しいんですけど~!」
「ん?どうしたんだいオレット。」
「んふふ~実はねエルアちゃん!旅行の最期を飾るに相応しいイベントとして、皆で記念撮影でもどうかなって思ったんだよ!」
「記念撮影……ですか?」
「はい!これまでにも何度か写真は撮らせて貰ってましたけど、全員で集まってっていうのは無かったなと思いまして!」
「うふふ、そう言えばそうでしたね。クアウォートでも最後はバタバタしてしまい、そういうモノを撮る機械は無かったですね。」
「うんうん!良いんじゃないかな!」
「チッ、そんな面倒なもん誰が……って言いたい所だが、まぁ折角の機会だからその提案に乗っかってやっても良いぜ。」
「ふっ、我としても異存は無いぞ!」
「あはっ、それじゃあ決まりですね!はいはい皆さんこちらにどうぞっ!」
「はぁ……朝っぱらか元気だなぁ……ったく。」
思わず笑みを浮かべてしまいながらオレットさんの指示に従って立ち位置を決めていった俺達は、彼女から借りたカメラを手に持った御者さんの前に集まっていった。
「それではおじさん、合図をよろしくお願いします!」
「えぇ、分かりました。それではいきますよ~……はい、ポーズ。」
パシャッという音が広場に響いてからしばらくした後、出発の時刻を告げるベルの音が周囲に鳴り響き始めた。
「……そろそろ時間みたいですね。九条さん、ジーナさん、改めてになりますが今日まで本当にお世話になりました。また何時か、お会い致しましょうね。」
「うん!ルゥナさん、それに皆もまたね!あっ、約束はきちんと果たすから楽しみにしていてね!九条さんも!」
「はいはい……それじゃあな。学園生活、楽しんで来いよ。」
「えぇ、了解しました。」
「うふふ、先輩方は次の春で卒業ですからね。」
「うっ……そうなんだよねぇ……はぁ……無事に卒業したいなぁ……」
「オイオイ、頼むから同じ学年になるのだけは勘弁してくれよ。」
「うむ、それは流石に情けなさすぎるからな。」
「わ、分かってるよぉ!が、頑張ってみせるもん!」
「オレットさん、何か困った事があれば力になりますから大丈夫ですよ。」
「う、うぅ……最後の最後にするのがこんなやり取りなんて嫌だよ~!」
……そんなオレットさんの叫びを最後にして皆が乗り込んだ馬車が視界から消えるまで見送った俺とジーナは、ほぼ同時に伸びをして互いの方に向き合った。
「それじゃあ九条さん、私は仕事場の方に戻るね。皆の為に作らなきゃいけない物が沢山あるから!」
「おう、シッカリ頼むぜ。」
「うん!それじゃあばいば~い!……ふぁ~……その前に二度寝しよ……」
「……やれやれ、あの調子で大丈夫かねぇ。」
大きなあくびをしながら歩き去って行くジーナの後姿を眺めながらうなじの辺りに右手を置いた俺は、軽くストレッチをしてから帰路を進み始めた。
それからしばらくして、誰も居ない家の前に辿り着いた俺は扉を開く為にポケットから鍵を取り出そうと……
「ごっしゅじんさまぁ~~~!!!!!!」
「ん?ぐふぉっ!?!!?!!」
「お久しぶりですご主人様!ただいまですご主人様!マホです!マホですよ!元気にしていましたかご主人様!んぎゅ~!!」
「ぐ、ぐぐ……!おまっ、帰って来てたのか……!?って、それより何より背後からタックルをかましてくるんじゃねぇよ……!腰がへし折れたかと思ったぞ……!」
「もう!何を言ってるんですかご主人様!コレは私のとびっきりの愛情表現ですよ!ほらほら!もっと私の愛情を感じて下さい!」
「ぐ、ぐおおおお………!」
「ふふっ、朝から楽しそうで何よりだ。どれ、私も混ぜてもらおうかな。」
「うん、マホだけズルい。私もやる。」
「はっ!?ちょっ?!ロイドにソフィ!?お前ら何を……って、両側から思いっきり腕に抱き着いてくんな!おいっ!聞いてんのかこのやろおおおおっ!!!!」
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