おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第543話

 ダールトンから貰った薬のおかげでルゥナさんの体調があっと言う間に良くなってから2日後、帰り支度を済ませた俺達は早朝からリビングに集まってこれまで世話になってきた使用人の方達に改めてお礼を告げていた。

「皆さん、色々とありがとうございました。皆さんのおかげで充実した時間を過ごす事が出来ました。」

「こちらこそありがとうございます。そう言って頂けると本当に嬉しいです。」

「はっはっは!今回の事はしっかりエリオに報告しておくからのう!もしかしたら、何かご褒美が出るかもしれんから楽しみにしておるんじゃぞ!」

「ったく、適当な事を言ってるんじゃないわよ。まぁ、アンタ達が頑張ってくれてたおかげで楽しい時間が過ごせたってのは否定しないけどね。」

「うふふ、僕としても奉仕の心得をメイド長さんからご指導して頂きましたので凄く有意義な旅行になりました。」

「……イリスの発言については後で追及するとして……皆さん、重ねてになりますが本当にありがとうございました。」

「うむ、我としても満喫させてもらったぞ!褒めてやろうではないか!」

「ハァ、どうしてテメェがそんなに偉そうにしてんだよ……まぁ良い、オレとしても珍しく満足出来たからな!」

「えへへ、ご飯はどれも美味しかったしお風呂も広かったから最高だったよね!また遊びに来たいなって思っちゃったよ!ね?」

「はい!寝間着姿で素の表情を見せる可愛い女の子達……こんなにも素晴らしい画が撮れる場所は他にありませんねっ!」

「いや、ここはそういう目的を果たす為の所じゃないんだが……」

「あっ、オレット。後で撮影した写真は僕達の方で調べさせてもらうから無駄な抵抗だけはしないでね。」

「え、えぇっ!?聞いてないよエルアちゃん!どうしてそんな酷い事を!?」

「うふふ、酷い事も何も撮影して言いなんて誰が……イイマシタカ?」

「そうですね。旅の思い出になりそうな物は特別に許可しますが、それ以外となると流石に許容する訳にはいきませんね。」

「まぁ、諦めきれないっつうならそれでも良いぜ?その場合、犠牲になるのは……」

「う、うぐぐ……!九条さん、どうにかなりませんか!?私達の大切な思い出が!」

「うん、俺を巻き込まず素直に諦めてくれ。」

「そ、そんなぁ~!!!」

 ……という何とも気の抜けたやり取りをしていると、馬車に乗ってクアウォートを離れる時間が近づいて来た。

「皆様。道中、どうかお気を付けてお帰りになって下さいませ。そしてまた何時か、こちらにお越し下さる事を心よりお待ちしておりますね。」

「えぇ、その時が来たらまたお願いします。それでは、お世話なりました。」

 外まで見送りに来てくれたメイド長さんを始めとする使用人の方達にお辞儀をした俺達は、別荘前に停まっていた馬車に乗り込んでクアウォートを後にするのだった。

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