おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第409話

「おぉ!随分と広々とした部屋じゃのう!それに内装も土地柄に合わせて落ち着いておるし……うむ!何とも素晴らしいではないか!」

「レミさんレミさん!それだけじゃありませんよ!こっちには簡易的ではありますが綺麗なキッチンがありますし、棚の中に置いてある茶葉の種類も豊富な上に飲み放題みたいですよ!それに部屋の奥には外を一望する事が出来る露天風呂までっ!」

「ふふっ、2人が喜んでくれているみたいで良かったよ。」

「はっはっは!ここに寝泊まり出来ると知って喜ばぬ者はおらんに決まっておろう!いやはや、エリオとカレンには感謝せねばならんな!これ九条!2人に買うお土産はしっかりと物を選ぶんじゃぞ!」

「はいはい、言われなくても分かってるよ。」

 何処となく前の世界に似た雰囲気がする室内を目にしてほんの少しだけ懐かしさを感じていた俺は、興奮しているらしいレミの言葉を軽く流すと持っていた荷物を床に置いて部屋の中央にあったソファーにドカッと座り込んだ。

 それからしばらくするとリリアさんとライルさんが部屋にやって来たので、俺達は明日からの予定について話し合う事にするのだった。

「それではまず初めに……皆様が加工屋の方達にご依頼された素材集めに関してなのですが、私達もご協力させて頂くという事でよろしいですわね?」

「いやまぁ、そうしてくれると助かるんだが……でも、本当に良いのか?それなりに量があるから結構大変だぞ。」

「構いませんわ!ロイド様のお役に立てる事が私達にとっての喜びなのですから!」

「そ、そうです!それに依頼を早く終わらせる事が出来れば、ロイドさんとご一緒に温泉巡りが……!」

「……うむ、お主達ならそう言うと思ったわい。」

「協力してくれるが分かりやすい。」

「ふふっ、それでは2人の期待を裏切らない様に急いで依頼を終わらせようか。」

「はい!ロイド様の為、そして私達の為に全力で頑張らせて頂きますわ!」

「ロ、ロイドさんの期待に応えられる様に努力してみせます!」

「うん、頼りにしているよ。」

「はっはっは!羨ましいぐらいのモテっぷりじゃのう。そうは思わんか、九条。」

「ケッ、やかましいわ。」

「まぁまぁ、そう不貞腐れないで下さいよ。おじさんには私達が付いてますから!」

「はっはっは、そりゃどうも……ってか、さっきの話の流れからすると素材を集めるのは明日からで観光はソレが終わってからで構わないって事か?」

「えぇ、九条さんの仰る通りですわ。これだけの人数ですもの、効率的にクエストをこなして行けば素材集めなんてあっと言う間に終わりますわよ!」

「うーん、まぁそりゃそうかもだけど……」

「おや、どうしたんだい九条さん。何か不安要素でも?」

「いや、ただちょっとな……初めて訪れた土地だから、運良く効率的に素材を集める事が出来たとしても半分ぐらいが限界じゃねぇかと思ってな。」

「あー、確かにそうかもしれませんね。それに天候が悪ければ、街の外に出る事すら難しいと思いますし……」

「大丈夫です!ロイド様への愛があればどんな障害だって乗り越えてみせますわ!」

「あ、あの!私、ノルウィンドの周辺に出現するモンスターの情報が載っている本を持ってきているんです!だからそれを参考にして、どうすれば効率的に回れるのかを考えてみます!」

「ライル、その本なら私も持ってる。」

「あっ、でしたらご協力をお願い出来ませんか!」

「うん、任せて。」

「おーっほっほっほ!それでは明日以降に訪れるであろう輝かしい未来の為!全力で効率的に素材集めが出来る作戦を考えてみせますわ!おーっほっほっほ!」

「……いやはや……愛とは……凄いものじゃのう……」

「あぁ……ちょっとした恐怖も感じるけどな……」

「ちょ、ちょっとおじさん!……気持ちはまぁ……分からなくも無いですけど……」

「ふふっ、これは私達も頑張らないといけないみたいだね。」

 こうしてロイドファンの思惑がガッツリと絡んだ予定が半強制的に決まって思わず肩を落としてしまった後、俺達は晩飯を食べる為に街中へ繰り出して行くのだった。

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