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おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第317話

「そこの馬車、止まれ!……荷台に乗せているのは乗客だな?全部で何人だ?」

「えっと……人間のお客様が5名、魔人種のお客様が3名です。」

「なるほど。それではこれからその者達が持ってきた荷物の検査とファントリアスを訪れた目的を尋ねるので協力する様に伝えるのだ。」

「あっ、はい……そういう訳ですので、少々お時間よろしいでしょうか?」

「えぇ、俺達は別に構いませんけど……」

「私達も問題ありません。」

「ありがとうございます。それでは警備隊の皆さん、よろしくお願いします。」

御者さんの言葉を合図にして馬車を止めた警備隊の人達が後方に回って来たみたいなんだが、まさかこんな感じで厳重に護られているなんて思いもしなかったな。

まぁ、昔も今も色々と問題を抱えているみたいだから仕方ないとは思うんだが……悪い事をしてないのに警備隊の人に呼び止められるってのはあんまり心臓によろしく無いからさっさと終わって欲しいんですけど……

「それでは失礼する。」

「……へっ?」

馬車を呼び止めた男性の声ではなく張りのある女性の声が聞こえてきた事に驚いて乗り込んで来た人の方をバッと見てみると、警備隊の恰好をした気の強そうな黒髪でショートの美人さんが立っていて……何故か訝し気な視線を俺に送っていた!?

「そこのお前、どうしてそんな表情をしているのか詳しく説明してもらおうか。」

「えっ!?あ、いやその!てっきり男性の方がいらっしゃるのかと思っていたので、ちょっとビックリしてしまったと言うか……す、すみませんでした!」

「……まぁ良い、それよりもこれから手荷物の検査とこの街に訪れた理由を聞かせてもらう。全員、嘘偽りなく真実だけを話す様に……それではまず、リザードさん達がこの街に来た理由を聞かせて下さい。」

「はい。私達は王都での仕事が終わったのでファントリアスに帰って来ました。」

「なるほど、お仕事お疲れ様です。それでは次に荷物検査を行いますので、皆さんの荷物をこちらの方に持ってきて頂けますか。」

「分かりました、すみませんが少しだけ待っていて下さい。」

ウィルさんはそう返事をするとキャシーさんとクラリスを連れて馬車の奥に歩いて行くと、自分達に荷物を持って女性の前で中身を広げて見せた。

「……皆さん、ご協力ありがとうございました。」

「いえいえ、何時もの事ですから。」

「あっ、ローザおねえちゃん!このあめ、あげる!おいしいからたべてみて!」

「ありがとう、クラリス。後で頂くとするよ。」

「うん!どういたしまして!」

「……さて、次は貴様達の番だ。」

「おやおや、彼らとは随分と扱いが違うみたいだね。」

「気に障ったのなら謝罪しよう。しかしこの街を警備する者としては、人間相手こそより注意を引き締めなくてはならない相手なんでな。」

「ふむ、それはやはり魔人種の敵対視しておる者達がおるからか?」

「あぁ、その通りだ。ではまず、この街に来た目的を聞かせて貰おうか。」

「えっと、私達はこの街で開催されるイベントに招待されたので来ました!」

「……イベントだと?それはもしや、数日後に魔術師が開催するあの?」

「そ、そうです!」

「……招待されたという証拠はあるか?」

「は、はい!おじさんのバッグの中にチケットが入ってます!」

「分かった。それでは確認と同時に検査を行うので荷物を持って来る様に。」

「わ、分かりました!すぐに持ってきまぁす!」

うぅ……美人の睨みマジで怖ェ!しかも目つきがキリっとしてるから迫力が凄くて心臓バックバクなんですけど!?冷や汗が出てきそうだぜ……!

急かされてる訳でもないのに慌てて荷物を持って自分の席に戻った俺は、そこからチケットの入った封筒と取り出すと目の前に居る女性にサッと手渡した!

「……確かにこのチケットはイベントの招待券の様だな。それと荷物の中にも不審な物は無いみたいだな。」

「ふぅ………そ、そうですか………」

「……貴様、どうしてそんなにホッとしているのだ?まさか隠している事でも……」

「そ、そんな滅相も無い!これは俺が小心者ってだけの話です!」

「そ、そうなのか……忠告させてもらうが、あまりそういう事を人前で言わない方が男としては良いと思うぞ。」

「は、はい……俺もそう思います………」

「おじさん……ちょっと情けなさすぎですよ……」

「ふふっ、それが九条さんらしいって気もするけどね。」

「堂々としている方が不自然。」

「おい、言いたい放題かこんにゃろう……!」

「おほんっ……話の最中に申し訳ないが、お前達はファントリアスに来るのは初めてという事で間違いは無いな。」

「えぇ、まぁそうですね……」

「それならば、この街で過ごす際の禁止事項を説明しておこう。」

「き、禁止事項?そんなのがあるんですか?」

「あぁ……それを話す前に、まずは馬車の外に出て来てくれるか。」

「は、はぁ……」

美人さんに言われるがまま馬車を降りてみた俺達は、警備隊の人達に囲まれながら目の前に現れたバカみたいにデカい山々に思わず見入ってしまっていた。

「うわぁ……おっきいですねぇ………」

「うむ、それにこの辺りの木々には紅葉があるみたいじゃな。」

「どうやらウィルさんの話は本当だったみたいだね。」

「ちょっ、私語は慎みなさい……それであの、どうして馬車の外に?」

「それはだな……あの山の頂上に存在している城をその目で見てもらう為だ。」

「し、城?………お、おぉ………おおぉう………?!」

お姉さんがビシッと人差し指を向けた山頂には………禍々しい雰囲気が漂っているのがここからでも分かる、ガチでヤバそうな城が暗雲の下に存在していた訳で………つーかアレ……もしかしなくても魔王城ってやつじゃねぇですかね?!

「お、おじさん……」

「お、落ち着けマホ……大丈夫……大丈夫だから……!」

「やれやれ、あんなに遠くにある城に怯えてどうするんじゃ。」

「ふふっ、2人の気持ちは分からなくも無いけどね。」

「……あの城、何?」

「あれは数百年前、悪しき神と契約をした愚かな王が住んでいたと言われる城だ。」

「うぇっ!?そ、それってこの街に伝わっているおとぎ話だったんじゃ………」

「あぁ、確かにおとぎ話だ。しかしその物語の始まりである城は、今もああして山の頂上にしっかりと存在しているという訳だ。」

「ふむ……それでは禁止事項と言うのは、あの城に関わる事なのかい?」

「その通り。この街にある禁止事項はただ1つ、あの城には誰であろうと決して立ち入るなという事だ。」

「ふむ、それはどうしてなんじゃ?王様とやらが住んでいた頃ならいざ知らず、今は誰もおらぬのじゃろう?」

「……これは人から聞かされた話で私も信じている訳ではないが、あの城には悪しき神を復活させてしまう何かが封印されているらしい。」

「は、へっ!?」

「そしてその封印が解かれた時、数百年前に起こった悲劇がまた繰り返されると言い伝えられているんだ。」

「悲劇……それはもしかしなくても、人間と魔人種の戦争の事かな。」

「あぁ、恐らくは……」

「で、でもでも!そんな物が本当にあるなんて……」

「だから私も信じている訳ではないと言っただろう?しかし、その可能性が無いとも断言する事が出来ないからあの城への立ち入りを禁止しているんだ。」

「な、なるほど……」

おいおい、マジで勘弁してくれよ……こっちはフラウさんに会う為だけにここまで来たって言うのに、激ヤバなフラグがビンビンじゃねぇか……!

「まぁ、そういう事だから街中では大人しく過ごすんだぞ。何か問題を起こしたら、私達がすぐに駆け付けるからな。」

「は、はい……」

「それでは馬車に乗ってファントリアスに入るがいい。」

「それではお言葉に甘えて、そうさせてもらうよ。」

心の中に特大級の不安を抱える事になりながら馬車の中に戻った俺達は、警備隊の人達に見送られながら街の中に入って行くのだった……!

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