おっさんの異世界生活は無理がある。
第289話
マホとロイドの協力を得て何とかイリスと距離を取る事に成功した後、俺は地面に転がったままのアイツのわき腹を小突く感じで蹴りを入れてやった。
「おい、起きろ。」
「うっ、ぐ……い、言われなくても………!」
俺の足を払って全身を震わせながら起き上がった中二病は、何故か息を荒げながらイリスに睨みつける感じの視線を送り始めた。
「うふふ、どうしてそんな目つきをしているのかな。」
「イ、イリス……我に……何をしたのだっ……!?」
「うーん……ちょっとした実験かな。本当は九条さんに使うつもりだったんだけど、こんなにすぐ効力が消えちゃうならあの薬の配合を増やして…………」
「おいっ!不吉な事を呟きながら微笑んでんじゃねぇよ!ってか、俺に何を使おうとしてんだよ!?」
「まぁまぁ、そんな事よりイリス君が来た理由を聞くのが先なんじゃないですか?」
「いや、俺としては身の危険を感じる方を優先したいんですけど?!」
「さぁイリス君、どうして君が九条さんに会いに来たのか説明してあげなよ。」
「お願いですからちゃんと俺の目を見て会話してくれませんかねぇ!?」
「ハッ!そうだ、九条透!俺は貴様に伝える事があって来たのだ!」
「ちきしょう!どいつもこいつも人の話を聞かない奴ばっかりかよ!?」
「ど、どうどう!落ち着いて下さいおじさん!ほら、お水ですよ!」
「うっ……ぐっ…………ぷはぁ!……はぁ……はぁ………わ、悪い………」
「い、いえいえ……それでクリフさん、今日はどういったご用事で?」
「そ、それはだな……えっと………」
「おやおや、もしかして緊張しているのかい?大丈夫、しっかり聞いてあげるよ。」
「うっ……その…だな……」
「……ロイド、可哀そうだからソイツをからかうのは止めて差し上げろ。」
「だ、誰が可哀そうだ!あまり舐めた口を利いていると、我の中の暗黒龍の血が暴れだして貴様の邪悪なる魂を食らい……ひっ!」
「うふふふ……クリフ君……九条さんの魂が………なに?」
「い、いや……その……‥おほんっ!く、九条透!貴様に勝負を申し込みに来た!」
静かだが圧のあるイリスにあっさりと屈した中二病はオロオロと狼狽えだしたかと思ったら、バッと変なポーズを決めつつ俺をビシッと指差しそんな事を言い放った。
「………勝負?」
「そうだ!今回こそ決着を付けて貴様が掛けた呪いを」
「いや、だから呪いなんて……ってそうだ!おいイリス、お前が受けた取材のせいでこんな事になったんだから何とかしてくれ!」
「取材?……あぁ、アレの事ですか。」
「そう、ソレの事だよ!ほら、お前から言ってやってくれ!あの新聞に載った内容はほとんどデタラメだって!」
俺は期待を込めた視線をイリスに送って何とか誤解を解いてもらおうとしたん……えっ、どうしてそんなニッコリと微笑みながらこっちを見てらっしゃるんですか?
「………うふふ、僕は嘘なんて1つも言った覚えはないですよ。」
「………はい?」
「九条さんと初めて出会ったあの日、僕の心は確かに惑わされて……虜にされて……そして奪われました……その事実だけは、誰に何と言われても覆りません。」
「うわぁ……恋する乙女にまっしぐらって感じですね……」
「ふふっ、聞いている私達の方が恥ずかしくなってしまうよ。」
「……凄い。」
イリスの真っすぐな瞳に見つめられながらそう断言されてしまった俺は、しばらく言葉を失ってしまった訳で………いや、マジで恥ずかしくて死にそうなんだが……
「ふ、ふふふ………どうだ九条透……やはりあの新聞に書かれていた事は事実だったという事ではないか!」
「うぇ!?い、いやそれはだな!」
「言い訳は無用!さぁ、九条透!我との勝負を受けて決着を付けるのだ!」
「いや、だから断るっての!そもそもお前は負けて俺に絡まないって約束だろうが!さぁ、とっとと帰れ!そして面倒だから2度と俺の前に姿を現すんじゃねぇ!」
「あっ、待つんだ九条透!逃げるんじゃない!」
呼び止めてきたアイツの声を無視して皆と一緒に家の中に戻って行った俺は、扉を閉めると急いで鍵を掛けてやった。
「ふぅ……よしっ、今日は自室でゴロゴロしながら過ごそうか!」
「こ、コラ!出て来い九条透!我と勝負をするのだ!」
「あー聞こえない聞こえない!さぁ、そろそろ使い終わった食器を洗うとするか!」
「お、おじさん……本当に良いですか?」
「いやいや、良いに決まってるじゃねぇか。だって俺は二度と絡んで来ないって約束させた勝負に勝った訳なんだからな。」
「そ、それはそうですけど……扉、さっきから物凄い勢いで叩かれてますよ。」
「く、九条透!我との勝負を受けるのだ!そ、そうしなければ……!おい!頼むから出て来い!そして勝負をしろ!」
「おやおや、この間の時とは違って随分と必死だね。どうしたんだろうか?」
「さぁな、俺の知ったこっちゃねぇや。ほら、リビングに戻るぞ。」
「九条透!我と勝負をするのだ!こ、このままでは……わ、我の小遣いが無駄に!」
「………はぁ?何を言い出してんだアイツは?」
いきなり出て来た謎の発言に思わず足を止めて首を傾げていると、マホが俺の横を通り抜けて扉をコンコンと叩き出した。
「あのークリフさんのお小遣いと勝負に何の関係があるんですか?」
「そ、れは……だな……」
「うふふふ……実はクリフ君ってばここに来る前に闘技場に寄って今日の勝負の為に使用料を既に前払いしちゃってるんですよ。」
「えっ!?そ、そうなんですか!?」
「はい。11時から30分、料金にして5万Gと言った所ですね。」
「おやおや、それはそれは……」
「だからここで九条さんが勝負を断って時間が過ぎてしまったら、クリフ君が払ったお金は無駄になってしまうって事ですね。」
「ア、アホすぎるだろ……」
そもそも勝負を受けるかどうかも分からないのに闘技場を借りるって……どんだけ自分の思う通りに事が運ぶと思ってたんだよ。
「さ、さぁ九条透!我との勝負を受けて闘技場までやって来るといい!その時こそ、貴様が人々に掛けた呪いが解けるのだ!」
「……必死だね。」
「まぁ、学生である彼の身からしたら5万Gは大金だからね。」
「……おじさん、今回は諦めて勝負を受けてあげましょうよ。5万Gが無駄になってしまったらそれこそクリフさんに恨まれちゃいますって。」
「はぁ…………もうちょい後先を考えて行動しろよなぁ………」
ため息を零しながら後頭部をガシガシと掻いた俺は、鍵を外し扉を開くと焦ってる感じが見えまくりのアイツと対峙するのだった……
「ど、どうやら観念したようだな!九条透!」
「はいはい……仕方ねぇから勝負を受けてやるよ………」
「そ、それで良い!では、我は先に闘技場にて貴様を待たせてもらうとしよう!」
中二病はそう言うと高らかに笑い声を上げながら立ち去って行った……そして後に残された俺達はと言うと………
「九条さんと彼の試合か……ふふっ、どうなるか楽しみだね。」
「はい、九条さんの戦う姿が見られると思うと………うふふふふふ………」
「闘技場、借りれば九条さんと戦えるの?」
「………勘弁して下さい。」
「おじさん、とりあえず頑張ってくださいね……」
マホに背中をポンポンと叩かれながら思いっきり肩を落とした俺は、面倒だという感情を隠そうともしないまま出掛ける準備を始めるのだった………
「おい、起きろ。」
「うっ、ぐ……い、言われなくても………!」
俺の足を払って全身を震わせながら起き上がった中二病は、何故か息を荒げながらイリスに睨みつける感じの視線を送り始めた。
「うふふ、どうしてそんな目つきをしているのかな。」
「イ、イリス……我に……何をしたのだっ……!?」
「うーん……ちょっとした実験かな。本当は九条さんに使うつもりだったんだけど、こんなにすぐ効力が消えちゃうならあの薬の配合を増やして…………」
「おいっ!不吉な事を呟きながら微笑んでんじゃねぇよ!ってか、俺に何を使おうとしてんだよ!?」
「まぁまぁ、そんな事よりイリス君が来た理由を聞くのが先なんじゃないですか?」
「いや、俺としては身の危険を感じる方を優先したいんですけど?!」
「さぁイリス君、どうして君が九条さんに会いに来たのか説明してあげなよ。」
「お願いですからちゃんと俺の目を見て会話してくれませんかねぇ!?」
「ハッ!そうだ、九条透!俺は貴様に伝える事があって来たのだ!」
「ちきしょう!どいつもこいつも人の話を聞かない奴ばっかりかよ!?」
「ど、どうどう!落ち着いて下さいおじさん!ほら、お水ですよ!」
「うっ……ぐっ…………ぷはぁ!……はぁ……はぁ………わ、悪い………」
「い、いえいえ……それでクリフさん、今日はどういったご用事で?」
「そ、それはだな……えっと………」
「おやおや、もしかして緊張しているのかい?大丈夫、しっかり聞いてあげるよ。」
「うっ……その…だな……」
「……ロイド、可哀そうだからソイツをからかうのは止めて差し上げろ。」
「だ、誰が可哀そうだ!あまり舐めた口を利いていると、我の中の暗黒龍の血が暴れだして貴様の邪悪なる魂を食らい……ひっ!」
「うふふふ……クリフ君……九条さんの魂が………なに?」
「い、いや……その……‥おほんっ!く、九条透!貴様に勝負を申し込みに来た!」
静かだが圧のあるイリスにあっさりと屈した中二病はオロオロと狼狽えだしたかと思ったら、バッと変なポーズを決めつつ俺をビシッと指差しそんな事を言い放った。
「………勝負?」
「そうだ!今回こそ決着を付けて貴様が掛けた呪いを」
「いや、だから呪いなんて……ってそうだ!おいイリス、お前が受けた取材のせいでこんな事になったんだから何とかしてくれ!」
「取材?……あぁ、アレの事ですか。」
「そう、ソレの事だよ!ほら、お前から言ってやってくれ!あの新聞に載った内容はほとんどデタラメだって!」
俺は期待を込めた視線をイリスに送って何とか誤解を解いてもらおうとしたん……えっ、どうしてそんなニッコリと微笑みながらこっちを見てらっしゃるんですか?
「………うふふ、僕は嘘なんて1つも言った覚えはないですよ。」
「………はい?」
「九条さんと初めて出会ったあの日、僕の心は確かに惑わされて……虜にされて……そして奪われました……その事実だけは、誰に何と言われても覆りません。」
「うわぁ……恋する乙女にまっしぐらって感じですね……」
「ふふっ、聞いている私達の方が恥ずかしくなってしまうよ。」
「……凄い。」
イリスの真っすぐな瞳に見つめられながらそう断言されてしまった俺は、しばらく言葉を失ってしまった訳で………いや、マジで恥ずかしくて死にそうなんだが……
「ふ、ふふふ………どうだ九条透……やはりあの新聞に書かれていた事は事実だったという事ではないか!」
「うぇ!?い、いやそれはだな!」
「言い訳は無用!さぁ、九条透!我との勝負を受けて決着を付けるのだ!」
「いや、だから断るっての!そもそもお前は負けて俺に絡まないって約束だろうが!さぁ、とっとと帰れ!そして面倒だから2度と俺の前に姿を現すんじゃねぇ!」
「あっ、待つんだ九条透!逃げるんじゃない!」
呼び止めてきたアイツの声を無視して皆と一緒に家の中に戻って行った俺は、扉を閉めると急いで鍵を掛けてやった。
「ふぅ……よしっ、今日は自室でゴロゴロしながら過ごそうか!」
「こ、コラ!出て来い九条透!我と勝負をするのだ!」
「あー聞こえない聞こえない!さぁ、そろそろ使い終わった食器を洗うとするか!」
「お、おじさん……本当に良いですか?」
「いやいや、良いに決まってるじゃねぇか。だって俺は二度と絡んで来ないって約束させた勝負に勝った訳なんだからな。」
「そ、それはそうですけど……扉、さっきから物凄い勢いで叩かれてますよ。」
「く、九条透!我との勝負を受けるのだ!そ、そうしなければ……!おい!頼むから出て来い!そして勝負をしろ!」
「おやおや、この間の時とは違って随分と必死だね。どうしたんだろうか?」
「さぁな、俺の知ったこっちゃねぇや。ほら、リビングに戻るぞ。」
「九条透!我と勝負をするのだ!こ、このままでは……わ、我の小遣いが無駄に!」
「………はぁ?何を言い出してんだアイツは?」
いきなり出て来た謎の発言に思わず足を止めて首を傾げていると、マホが俺の横を通り抜けて扉をコンコンと叩き出した。
「あのークリフさんのお小遣いと勝負に何の関係があるんですか?」
「そ、れは……だな……」
「うふふふ……実はクリフ君ってばここに来る前に闘技場に寄って今日の勝負の為に使用料を既に前払いしちゃってるんですよ。」
「えっ!?そ、そうなんですか!?」
「はい。11時から30分、料金にして5万Gと言った所ですね。」
「おやおや、それはそれは……」
「だからここで九条さんが勝負を断って時間が過ぎてしまったら、クリフ君が払ったお金は無駄になってしまうって事ですね。」
「ア、アホすぎるだろ……」
そもそも勝負を受けるかどうかも分からないのに闘技場を借りるって……どんだけ自分の思う通りに事が運ぶと思ってたんだよ。
「さ、さぁ九条透!我との勝負を受けて闘技場までやって来るといい!その時こそ、貴様が人々に掛けた呪いが解けるのだ!」
「……必死だね。」
「まぁ、学生である彼の身からしたら5万Gは大金だからね。」
「……おじさん、今回は諦めて勝負を受けてあげましょうよ。5万Gが無駄になってしまったらそれこそクリフさんに恨まれちゃいますって。」
「はぁ…………もうちょい後先を考えて行動しろよなぁ………」
ため息を零しながら後頭部をガシガシと掻いた俺は、鍵を外し扉を開くと焦ってる感じが見えまくりのアイツと対峙するのだった……
「ど、どうやら観念したようだな!九条透!」
「はいはい……仕方ねぇから勝負を受けてやるよ………」
「そ、それで良い!では、我は先に闘技場にて貴様を待たせてもらうとしよう!」
中二病はそう言うと高らかに笑い声を上げながら立ち去って行った……そして後に残された俺達はと言うと………
「九条さんと彼の試合か……ふふっ、どうなるか楽しみだね。」
「はい、九条さんの戦う姿が見られると思うと………うふふふふふ………」
「闘技場、借りれば九条さんと戦えるの?」
「………勘弁して下さい。」
「おじさん、とりあえず頑張ってくださいね……」
マホに背中をポンポンと叩かれながら思いっきり肩を落とした俺は、面倒だという感情を隠そうともしないまま出掛ける準備を始めるのだった………
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