おっさんの異世界生活は無理がある。
第212話
「つきましては九条様、来週までにしっかりとご準備をして頂きたく」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!状況が全然呑み込めないんだが……バカンスに行く?しかも来週?そんな話を聞いた覚えが一切無いんですけど!?」
「ふふっ、それは当然さ。マホの提案で九条さんには内緒にしていたからね。」
「いや、何でだよ!?」
「ふっふっふ………そんなの決まってるじゃないですか……その理由はですね……」
「り、理由は?」
「………おじさんのビックリする顔が見たかったからです!」
「………え、それだけ?」
「はい!それだけです!」
物凄く満蔵に微笑みながら力強く頷いたマホとしばらく見つめ合っていた俺は……全身から力が抜けてそのまま床の上にゆっくりと座り込んでいった………
「ふふっ、どうやらマホの目論見は成功したようだね。」
「そうですね!これも皆さんのご協力のおかげです!ありがとうございました!」
「いえいえ、これぐらいお安い御用でしてよ!おーっほっほっほ!」
「あ、あはは………でもあの、九条さん完全に放心しちゃったみたいですけど……」
「あっ、そうですね!………おじさんしっかりして下さい!」
「………もう、色々と疲れたんでほっといてもらえますかねぇ。」
「そうはいきません!私達の話はまだ終わっていないんですから!」
「……あぁもう分かったから、そんな強く手を引っ張るなっての。」
マホに手をグッと掴まれて引き起こされる様にゆっくりと立ち上がった俺は、すぐ近くに置いてあったソファーに腰を下ろして思いっきりため息を零した。
「……そんで、話ってのは何なんだよ。」
「あのですね、ご主人様には来週までにバカンスを満喫する為の準備をして貰いたいんですよ!」
「それはさっきリリアさんから聞いたけど……そもそも、その場所って何処なんだ?リゾート地としか聞いてないんだけど……もしかしてお前らが買ってきた袋の中身に関係してるのか?」
「あぁ、正解だよ九条さん。よく分かったね。」
「バカじゃねぇんだからそれぐらいは気づくっての……そんでその中には何が入ってるんだ?見せてくれよ。」
「それはダメです!」
「えぇ……何でダメなんだよ。」
「だって今すぐ見せたら勿体ないじゃないですか!」
「はぁ?どういう事だよ。それじゃあ意味が分からねぇぞ。」
「……袋の中には私達が着る水着が入ってる。だから今は見せられない。」
「…………へっ?」
置いてあった袋の1つを手に取ってサラッとそう言ったソフィと目が合った状態のまましばらく固まっていた俺は………っ?!
「み、水着?!」
「きゃ!もう、急に大きな声を出して立ち上がらないで下さいよおじさん!ビックリするじゃないですか!」
「い、いやだってソフィが水着って!しかも私達が着るって…………え、もしかしてそこに置いてある袋の中身って全部……」
「あぁその通り、私達が着る為の様々種類の水着が入っているよ。」
「さ、様々……だってそんな?!」
「何を想像してるんですかおじさん!」
「いってぇ?!何でいきなり尻を蹴るんだよ!?」
「おじさんの表情がいやらしかったからに決まってるじゃないですか!あのですね、何を想像しているのか大体見当は付きますがエッチな水着なんて買ってくる訳が無いじゃないですか!このバカ!」
「べ、別にそんな想像してねぇっての!言い掛かりは止めて頂こうか!」
「へぇー!じゃあ何を想像してたのかこの場で言ってくださいよ!さぁ、ほら!」
「そ、それはアレだよ!えっと、その……あっ!リゾート地は恐らく海辺に近い場所なんだろうなって考えてたんだよ!どうだ、正解か?!」
「くっ、確かに正解ですけど……!」
「よしっ!それじゃあもっと具体的な話を聞きたいからこの話はここで終わり!さぁ早く教えてくれ!そのリゾート地は何処にあるんだ?!」
ぷんすかしているマホから目を逸らしながら急いでソファーに腰を下ろした俺は、反射的に目が合ったライルさんに質問を投げかけた!
「え、えっとですね、私達が来週行くのはクアウォートの街と言う所です。」
「クアウォート街か!それってどんな所なんだ?」
「ふむ、一言で表すならミューズの街に近い感じかな。」
「な、なるほど………それじゃあ観光客とかに向けて力を入れている街って事か?」
「あ、はい。クアウォートの街には真っ白な砂浜と青くて透き通るくらい綺麗な海があるんです。」
「その他にも大陸の内外から珍しい品物が色々集まっておりますから、それを目当てに足を運ぶ方もいらっしゃる程ですのよ。」
「そ、そうなのか!そんな所に行けるなんて凄く楽しみ…………ん?」
「……どうしたんですかおじさん、急に首を傾げたりして。」
「…………そもそも疑問なんだが、何でそんな所に行く事になったんだ?」
「聞いていた無かったんですか?バカンスを満喫する為に行くんですよ。」
「いや、それはさっき聞いたけどさ……そこに至るまでの流れが分からん。」
「……あぁ、そう言えば詳しい事は説明していませんでしたね。」
マホは手の平に拳をポンッと落として小さく頷くと、そのまま何故かロイドの方に視線を向けた?
「え、もしかして今回の事にはロイドが関係してるのか?」
「私……と言うよりも、ウィスリム家とソルティア家の関係かな。」
「家の関係?どういうこった。」
「実は数年に1度だけですが、両家が長期休暇に入る時期が被る事がございますの。その時に一緒に旅行に行くというのが習慣としてありまして。」
「それで今回の旅行先として選ばれたのが、クアウォートの街という事さ。」
「……よく分からん習慣だな。」
「ふふっ、まぁそう言わずに折角の旅行を楽しもうじゃないか。」
「そうですわ!ロイド様、そして皆様と一緒にご旅行が出来るだなんて夢の様な話に文句を言う事はこの私が許しませんわよ!」
「あぁはいはい分かったよ!分かったからそんな睨むんじゃないっての!」
メチャクチャ怖い顔で睨みつけてくるリリアさんと目を合わせない様に両手で視界を隠した俺は、しばらくした後にふぅっと息を吐き出した。
「それにしても2週間とは随分長い休暇だな。そんなに休んでも大丈夫なのか?」
「あぁ、父さんもこの日に合わせてきちんと仕事の調整しているからね。まぁ緊急性のある問題が発生した場合はすぐに戻る事になるだろうけど。」
「そんな事には絶対になりませんわ!えぇなりませんとも!もしそんな問題を起こす様な輩が現れたりしたら………私、一切の容赦をするつもりはありませんわ。」
「あ、あははは………」
「……おじさん、無事にバカンスが終わる様に祈っておきましょうね。」
「そうだな………あっ、そう言えばライルさんのご家族も今回のバカンスに?」
「あ、はい。運良く都合を付ける事が出来ましたから。」
「そっか、そりゃ良かったな。」
「ふふふ、そうですね。」
口元に手を当てて上品に微笑むライルさんを見て思わず心がほっこりしていると、マホが両手をパンっと叩いてこの場の空気を切り替えさせた。
「さて、それではそろそろおじさんがする準備についてお話しをしましょうか。」
「そうだね。」
「そう言えばそれが残っていたね。」
「つってもなぁ……そんなに色々と必要になるか?」
「そりゃそうですよ!だって2週間も滞在するんですから、いつものバッグだと荷物が入りきらないと思いますよ。」
「着替えもいっぱい必要。」
「それに海で泳ぐ為の水着も幾つか用意しておいた方がいいだろうね。」
「いや、男物の水着なんて別に……」
「そんな考えじゃダメですよ!おじさんの場合、いつ何が起きるか分からないんですから色々と備えておかないと!」
「ふ、不吉な事を言うなよ………まぁ、そこまで言うなら準備するけどさ。」
「そうして下さい。それからですね………」
それから俺が準備するべき荷物について全員で話し合った結果、かなりの量になりそうだという事が分かったのでとりあえず今日は解散する事になった。
リリアさんとライスさんはリゾート地に出発するその日になるまで色々とやる事があるそうなので、再会するのはまた今度になりそうだ。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!状況が全然呑み込めないんだが……バカンスに行く?しかも来週?そんな話を聞いた覚えが一切無いんですけど!?」
「ふふっ、それは当然さ。マホの提案で九条さんには内緒にしていたからね。」
「いや、何でだよ!?」
「ふっふっふ………そんなの決まってるじゃないですか……その理由はですね……」
「り、理由は?」
「………おじさんのビックリする顔が見たかったからです!」
「………え、それだけ?」
「はい!それだけです!」
物凄く満蔵に微笑みながら力強く頷いたマホとしばらく見つめ合っていた俺は……全身から力が抜けてそのまま床の上にゆっくりと座り込んでいった………
「ふふっ、どうやらマホの目論見は成功したようだね。」
「そうですね!これも皆さんのご協力のおかげです!ありがとうございました!」
「いえいえ、これぐらいお安い御用でしてよ!おーっほっほっほ!」
「あ、あはは………でもあの、九条さん完全に放心しちゃったみたいですけど……」
「あっ、そうですね!………おじさんしっかりして下さい!」
「………もう、色々と疲れたんでほっといてもらえますかねぇ。」
「そうはいきません!私達の話はまだ終わっていないんですから!」
「……あぁもう分かったから、そんな強く手を引っ張るなっての。」
マホに手をグッと掴まれて引き起こされる様にゆっくりと立ち上がった俺は、すぐ近くに置いてあったソファーに腰を下ろして思いっきりため息を零した。
「……そんで、話ってのは何なんだよ。」
「あのですね、ご主人様には来週までにバカンスを満喫する為の準備をして貰いたいんですよ!」
「それはさっきリリアさんから聞いたけど……そもそも、その場所って何処なんだ?リゾート地としか聞いてないんだけど……もしかしてお前らが買ってきた袋の中身に関係してるのか?」
「あぁ、正解だよ九条さん。よく分かったね。」
「バカじゃねぇんだからそれぐらいは気づくっての……そんでその中には何が入ってるんだ?見せてくれよ。」
「それはダメです!」
「えぇ……何でダメなんだよ。」
「だって今すぐ見せたら勿体ないじゃないですか!」
「はぁ?どういう事だよ。それじゃあ意味が分からねぇぞ。」
「……袋の中には私達が着る水着が入ってる。だから今は見せられない。」
「…………へっ?」
置いてあった袋の1つを手に取ってサラッとそう言ったソフィと目が合った状態のまましばらく固まっていた俺は………っ?!
「み、水着?!」
「きゃ!もう、急に大きな声を出して立ち上がらないで下さいよおじさん!ビックリするじゃないですか!」
「い、いやだってソフィが水着って!しかも私達が着るって…………え、もしかしてそこに置いてある袋の中身って全部……」
「あぁその通り、私達が着る為の様々種類の水着が入っているよ。」
「さ、様々……だってそんな?!」
「何を想像してるんですかおじさん!」
「いってぇ?!何でいきなり尻を蹴るんだよ!?」
「おじさんの表情がいやらしかったからに決まってるじゃないですか!あのですね、何を想像しているのか大体見当は付きますがエッチな水着なんて買ってくる訳が無いじゃないですか!このバカ!」
「べ、別にそんな想像してねぇっての!言い掛かりは止めて頂こうか!」
「へぇー!じゃあ何を想像してたのかこの場で言ってくださいよ!さぁ、ほら!」
「そ、それはアレだよ!えっと、その……あっ!リゾート地は恐らく海辺に近い場所なんだろうなって考えてたんだよ!どうだ、正解か?!」
「くっ、確かに正解ですけど……!」
「よしっ!それじゃあもっと具体的な話を聞きたいからこの話はここで終わり!さぁ早く教えてくれ!そのリゾート地は何処にあるんだ?!」
ぷんすかしているマホから目を逸らしながら急いでソファーに腰を下ろした俺は、反射的に目が合ったライルさんに質問を投げかけた!
「え、えっとですね、私達が来週行くのはクアウォートの街と言う所です。」
「クアウォート街か!それってどんな所なんだ?」
「ふむ、一言で表すならミューズの街に近い感じかな。」
「な、なるほど………それじゃあ観光客とかに向けて力を入れている街って事か?」
「あ、はい。クアウォートの街には真っ白な砂浜と青くて透き通るくらい綺麗な海があるんです。」
「その他にも大陸の内外から珍しい品物が色々集まっておりますから、それを目当てに足を運ぶ方もいらっしゃる程ですのよ。」
「そ、そうなのか!そんな所に行けるなんて凄く楽しみ…………ん?」
「……どうしたんですかおじさん、急に首を傾げたりして。」
「…………そもそも疑問なんだが、何でそんな所に行く事になったんだ?」
「聞いていた無かったんですか?バカンスを満喫する為に行くんですよ。」
「いや、それはさっき聞いたけどさ……そこに至るまでの流れが分からん。」
「……あぁ、そう言えば詳しい事は説明していませんでしたね。」
マホは手の平に拳をポンッと落として小さく頷くと、そのまま何故かロイドの方に視線を向けた?
「え、もしかして今回の事にはロイドが関係してるのか?」
「私……と言うよりも、ウィスリム家とソルティア家の関係かな。」
「家の関係?どういうこった。」
「実は数年に1度だけですが、両家が長期休暇に入る時期が被る事がございますの。その時に一緒に旅行に行くというのが習慣としてありまして。」
「それで今回の旅行先として選ばれたのが、クアウォートの街という事さ。」
「……よく分からん習慣だな。」
「ふふっ、まぁそう言わずに折角の旅行を楽しもうじゃないか。」
「そうですわ!ロイド様、そして皆様と一緒にご旅行が出来るだなんて夢の様な話に文句を言う事はこの私が許しませんわよ!」
「あぁはいはい分かったよ!分かったからそんな睨むんじゃないっての!」
メチャクチャ怖い顔で睨みつけてくるリリアさんと目を合わせない様に両手で視界を隠した俺は、しばらくした後にふぅっと息を吐き出した。
「それにしても2週間とは随分長い休暇だな。そんなに休んでも大丈夫なのか?」
「あぁ、父さんもこの日に合わせてきちんと仕事の調整しているからね。まぁ緊急性のある問題が発生した場合はすぐに戻る事になるだろうけど。」
「そんな事には絶対になりませんわ!えぇなりませんとも!もしそんな問題を起こす様な輩が現れたりしたら………私、一切の容赦をするつもりはありませんわ。」
「あ、あははは………」
「……おじさん、無事にバカンスが終わる様に祈っておきましょうね。」
「そうだな………あっ、そう言えばライルさんのご家族も今回のバカンスに?」
「あ、はい。運良く都合を付ける事が出来ましたから。」
「そっか、そりゃ良かったな。」
「ふふふ、そうですね。」
口元に手を当てて上品に微笑むライルさんを見て思わず心がほっこりしていると、マホが両手をパンっと叩いてこの場の空気を切り替えさせた。
「さて、それではそろそろおじさんがする準備についてお話しをしましょうか。」
「そうだね。」
「そう言えばそれが残っていたね。」
「つってもなぁ……そんなに色々と必要になるか?」
「そりゃそうですよ!だって2週間も滞在するんですから、いつものバッグだと荷物が入りきらないと思いますよ。」
「着替えもいっぱい必要。」
「それに海で泳ぐ為の水着も幾つか用意しておいた方がいいだろうね。」
「いや、男物の水着なんて別に……」
「そんな考えじゃダメですよ!おじさんの場合、いつ何が起きるか分からないんですから色々と備えておかないと!」
「ふ、不吉な事を言うなよ………まぁ、そこまで言うなら準備するけどさ。」
「そうして下さい。それからですね………」
それから俺が準備するべき荷物について全員で話し合った結果、かなりの量になりそうだという事が分かったのでとりあえず今日は解散する事になった。
リリアさんとライスさんはリゾート地に出発するその日になるまで色々とやる事があるそうなので、再会するのはまた今度になりそうだ。
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