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おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第130話

足場の上から笑顔で戻ってきたエルアは、俺達の前に立ち止まるとそのままお辞儀をしてきた。

「皆さん、本当にありがとうございました!皆さんのサポートのおかげでボスを倒す事が出来ました!」

「ふふっ、喜んでもらえた様でなによりだよ。それとおめでとうエルア。
よく頑張ったね。」

「うん、初めてのボス相手の上出来だった。おめでとう」

(うぅ・・・素晴らしかったですよエルアさん!私、感動しました!)

(いや、聞こえないってば。)

(うるさいですよご主人様!この熱い思いはきっと伝わるはずです!っていうか、家に帰ったら改めて伝えます!)

(そうでっか・・・)

「・・・はい!どうもありがとうございます!・・って、あ、あれ?」

2人に褒められて喜んでいたエルアだったが、突然ふらふらっとして床の上に座り込んでしまった。

「お、おい、大丈夫か?」

「あ、す、すみません九条さん・・・なんか、急に足の力が抜けちゃって・・・」

「ふむ、恐らくボス戦の緊張感から解放されて安心して力が抜けたんだろう。」

「ボス戦は命懸けだから仕方がない。」

「す、すみません。情けない姿をお見せしてしまって・・・」

「いや、別に情けなくなんかないっての。それより床には雪があるんだから、濡れる前に掴まれ。」

「あ、ありがとうございます九条さん。」

俺はしゃがみ込んでるエルアに向けて手を・・・差しのべ・・・って、あ、あれ?
なんか、首元にうっすら赤い線が・・・って、まさか!?

「エルア!ちょっとジッとしてろ!」

「は、ひゃい?!」

俺は座ってるエルアの肩をガッと掴むと首元に走っている赤い線を至近距離で確認する!いやいやいや、え、嘘だろ?だって、これがニックさんにバレたら・・・!

「あ、あの・・・ち、近い・・・です・・・!」

「九条さん、どうしたんだい?そんな真剣な眼差しでエルアの首元を見て。」

「き、傷薬・・・」

「え?」

「き、傷薬を用意するんだ!エルアが怪我をしている!!」

「怪我?・・・あぁ、確かに少し首元が切れている様だね。」

「え、そ、そうなんですか?・・・いたっ」

「不用意に触れると傷口が広がるだろ!待ってろ!今すぐに治療してやるからな!」

「あ、あの、別にそんなに慌てなくても、放っておけばなおりま」

「何を言っているんだ!エルアは女の子なんだぞ!傷跡が残ったらどうするんだ!」

そしてその傷跡がもしニックさんにバレたらどうなると思ってるんだ!顔に出来た傷じゃないから大丈夫とは言わないだろあの人は!エルアが傷を負ったという事実がバレた瞬間の体に倍以上に切り傷が出来る可能性があるんだからな!

「・・・・・」

「お、おいどうした?まさか何か状態異常が起きる様な攻撃を受けたのか?急に顔が赤く」

「な、何でもありません!なんでもありません!僕はぜんっぜん元気です!」

「そ、そうか?まぁなら良いんだが、何かあったらすぐに言えよ!必ず何とかしてやるからな!」

「は、はい・・・」

さぁ、さっさと傷薬で治療しないと!早く塗れば傷跡も残らないですぐに消えるかもしれないからな!

「そんじゃあロイドかソフィ!エルアの治療を頼んだ!」

「おや、私達が治療するのかい?」

「当たり前だろうが!俺にエルアの首元を触る根性などない!」

「ふむ、確かにね。」

「うん、九条さんには無理。」

「よく分かってるじゃないか!そんじゃあ、後はよろしく!俺はその間にボスの残骸を納品してくるからな!」

「あぁ、よろしくね。それじゃあエルア、傷薬を塗らせてもらうよ。少しだけ滲みるかもしれないけど我慢してくれ。」

「・・・は、はい・・・」

よぉし、そんじゃあボスのが倒された場所に行くとするか。それにしても、まさか首元に傷が出来てるとは・・・一体いつできたんだ?吹っ飛ばされた時か?それとも砕けたボスの破片が傷つけたのか?・・・まぁ、早めに発見出来て良かったぜ。

(・・・ご主人様。)

(ん?どうかしたのか?)

(んー・・・何と言うか・・・何て言うんでしょうねぇ・・・)

(はぁ?どうしたんだお前?)

(・・・・いえ、何でもありません!このままにしておいた方が面白そうですし!)

(な、なんじゃそりゃ?まぁ、何でもないなら良いけどさ・・・)

よく分からないが楽しそうなマホと話しながらボスの残骸がある場所に辿り着いた俺は、ごろごろ転がっているボスの破片らしき氷を次々と納品していく。その途中、ボスのコアである白い宝箱が転がっている事に気が付いた。

(お、宝箱発見。)

(ご主人様!ちょっと振って中身を確認してみましょうよ!)

(はいよ・・・っと)

マホに言われた通り宝箱をもって軽く振ってみると、中からこすれる様な音が微かに聞こえてきた。

(おっ、なんか入ってるっぽいぞ。)

(な、何が入ってるんですか!?も、もしかしてボスのコアですかね!)

(いや・・・どうだろう、なんかカラカラ音を立てながら転がっちゃいるけど・・・)

(カラカラですか?・・・ボスのコアって歪な形をしていて、転がるとは思えないんですけど・・・)

(だよなぁ・・・とりあえず、ボスの納品が終わったら皆と一緒に確認してみるか。)

(ですね!それじゃあ納品の続きを頑張ってください!)

(あぁ、あらかた納品し終えてるからすぐ終わるけどな。)

残っていた適当に小さい破片を納品した俺は白い宝箱を抱え上げると、皆がいる所に運んで行った・・・うん、治療も終わってエルアも落ち着いたみたいだな。

「ご苦労様、九条さん。」

「おう、そっちもエルアの治療ご苦労さん。エルア、傷は大丈夫か?」

「あ、だ、大丈夫です!」

「そうか、違和感があったらすぐ言えよ?」

「わ、分かりました!」

「ふふっ、ずいぶんと過保護なんだね九条さん。」

「まぁ、師匠として弟子を心配するのは当たり前ってな・・・っと。」

ロイドに微笑まれながら茶化された俺は、誤魔化す様に答えながら持ってきた白い宝箱を床の上に置いた。

「九条さん、中身は何?」

「いや、皆で見ようと思ってたからまだ確認してない。」

「そうなのかい?それじゃあこの宝箱は、エルアに開けてもらうとしようか。」

「え、ぼ、僕ですか?」

「・・・それもそうだな。ボスを倒したのはエルアだし。」

「それじゃあエルア、お願いね。」

俺達の視線に戸惑っていたエルアだったが、俺達が動く気配が無いのを察して静かに宝箱の前に移動してしゃがみ込んだ。

「そ、それじゃあ・・・開けますよ・・・」

ゆっくり慎重に宝箱を蓋を開けたエルアはその中を静かに覗き込むと、入っていた何かを手に取って持ち上げた・・・そして、エルアの手に握られていたのは・・・

「おや、随分と素敵なクリスタルだね。」

「うん。透き通っていて綺麗。」

「は、はい・・・それにこれ、ネックレスみたいですね。」

エルアはそう言いながらクリスタルに繋がっている黒い紐を俺達に見せてきた。
これが、レアダンジョンのボスを倒した報酬か・・・ちょっとしょぼい気もするが、女性陣が見惚れてる辺り良い物なんだろうな。

「・・・・・あ!え、えっと、これどうしましょうか?」

「ん?どうするって?」

「で、ですからこれを換金して報酬としたりとか・・・」

「ふむ・・・エルアはどうしたいんだい?」

「え、ぼ、僕ですか?」

「あぁ、どうしたい?お金に換金してしまうかい?それとも・・・」

腕を組んだロイドにそう尋ねられたエルアは、手に持ったクリスタルのネックレスをジッと見つめると・・・・

「ぼ、僕は・・・これを、換金せずに残しておきたいです・・・」

うつ向きながら小さな声でそう答えた・・・それを聞いたロイドは満足そうに微笑むと、ネックレスを丁寧に手に取りエルアの首にそっとつけてあげた。

「・・・え?」

「これは、エルアが頑張ってボスを倒した記念だからね。エルアが身につけるべきだと思うよ・・・そうだろう?」

な、なんて男前なんだロイド!そんな爽やかな笑みを向けられて異論を挟むような奴がいるだろうか!いやいないね!っていうか、そんな事する意味がそもそも無いからな!

「おう、ロイドの意見に賛成だ。」

「私も、それはエルアが持つべきだと思う。」

「み、皆さん・・・」

エルアは俺達の顔を見て戸惑いの表情を浮かべていたが、胸元のクリスタルに手を伸ばしてギュッと握りこむと嬉しそうに笑った。

「・・・ありがとうございます・・・・僕、このネックレスを大事にしますね。」

「あぁ、そうしてくれ。」

「うん、それにエルアに良く似合ってるしね。」

「素敵だよ。」

「あ、あはは・・・な、何だか恥ずかしいです・・・」

照れくさそうに微笑むエルアを見て疲れが吹き飛ぶ・・・と、思っていたら腹の辺りに突然寒さを感じた?

「・・・あ、そう言えば服が破かれたんだった・・・って、ぶうぇっくしょい!」

(あぁもうご主人様!折角良い雰囲気なのに台無しじゃないですか!)

(しゃ、しゃあないだろうが!体が冷えてきたんだから!てか、本当に寒いんだが!)

「ふふっ、それじゃあ帰るとしようか。九条さんが風邪をひく前にね。」

「うん。明日風邪をひかれたら困る。」

「そ、そうでした!明日は皆さんで街を回る予定でしたね!それじゃあ、急いで帰りましょう!」

「そ、そうしてくれ・・・へ、へっくしゅい!」

ボスに破かれた服の間から激寒の風に襲われた俺は、歯をガチガチと鳴らしながら皆と一緒に街まで戻るのだった・・・うぅ、今回怪我はしなかったけどマジで全身がメチャクチャ冷やされてマジで地獄だった・・・・

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