おっさんの異世界生活は無理がある。
第84話
自己紹介と謝罪というよく分からない組み合わせが終わってからしばらくして、
俺達はフラウさんにミューズの街まで行く目的を聞かれたので話していた。
「それじゃあ、皆さんは旅行でミューズの街まで行くんですね?」
「はい、そうなんです!もしかしてフラウさんもご旅行ですか?」
「いえ、私はお仕事をしにミューズの街に行くんです。」
「お仕事ですか?」
「はい。街を取り仕切っている貴族の方達から是非にと言われて。」
「へぇ!凄いじゃないですか!一体どんなお仕事をなされているんですか?」
「あ、えっと、説明するより見て持った方が良いかな?マホさん、ちょっとこっちに来ていただけますか?」
「え?分かりました。」
フラウさんに呼ばれたマホは、きょとんとした顔で立ち上がると彼女の前まで歩いて行った。するとフラウさんはおもむろに羽織っていたローブを脱ぎだすと、それを丁寧にたたんで横の席に置いた・・・おぉ、すっ・・・て違う!見ては駄目だ!
見たらまた変態になる!・・・何とか雑念を振り払ってフラウさんに目を向けると、彼女は右手の袖を捲り上げると掌の表と裏を交互にマホに見せた。
「それじゃあよく見ててくださいね・・・はいっ!」
フラウさんが掛け声と共に指をパチンッ!と鳴らすと手を覆い隠すように白い煙が出現して、何もなかった右手にマホの髪と同じピンク色の小さな花が握られていた!
「おぉ、凄いね!」
「驚き・・・」
「ふわぁ!凄いです凄いです!今のはどうやったんですか!」
皆の驚きや興奮している声が聞こえる中、俺も内心で驚きを隠せないでいた。
いやだって、俺生まれて初めて手品を間近で見たんだからな!すっげぇ・・・
「ふふっ、企業秘密です。はいマホちゃん、これをどうぞ。」
ウィンクをしながら人差し指を口元に当てて微笑んだフラウさんは、手に持っていた花をマホに手渡した。マホはそれを満面の笑みで受け取ると、興奮したまま俺の方に駆け寄ってきて花を俺に見せてきた。
「おじさん見てましたか!フラウさん凄いですよ!何もない所からこんなに可愛い
お花を出しました!」
「あぁ、見てた見てた!いや本当にどうなってんだろうな!」
「ふふっ。そんなに驚いてもらえると私も嬉しいです。」
口元に手を当てて微笑むフラウさんは、袖を戻して一息つくとまたローブを羽織りなおした。
「これで私の職業が分かって貰えたでしょうか?」
「えぇ勿論。フラウさんはマジシャンの方ですよね?」
ロイドがそう答えると、フラウさんはにっこりと微笑んで小さく頷いた。
「はい、その通りです。でも正確にはちょっと違っていて、マジシャンでは無くて
魔術師という職業なんですけどね。」
「・・・それは違う物なの?」
フラウさんは隣で小首を傾げているソフィの言葉を聞いて、少しだけ考える様な
仕草をして苦笑いを浮かべていた。
「本当にちょっとだけですけどね。簡単に説明しますと、魔術師と言うのは手品や
マジックに魔法を応用する人達の事なんです。」
「魔法を?・・・もしかして、さっきの白い煙とか?」
「えぇ、その通りです!良くお分かりになりましたね!凄いです!」
「いや、あれ以外に魔法を使ってるような場面が無かったからなんだけど・・・
まぁ、ありがとう。」
凄い勢いで褒められて気恥ずかしくなった俺は、苦笑いを浮かべてフラウさんから視線を逸らした。
「ふむ、つまりフラウさんはその魔術を披露する為にミューズの街へ?」
「はい、ロイドさんの言う通りです。何でもミューズの街では大きなイベントが開催されるらしくて、それの前座として魔術を披露することになっているです。」
「え、前座なんですか?こんなに凄いのにメインじゃないですか?」
「はい。今回のイベント年に一度しか開催されない物らしくて、メインはまたの機会にお願いしたいとの事らしいです。」
「そうなんですか・・・おじさん、年に1度のイベントって何なんですかね?」
「いや、俺に聞かれても・・・フラウさんは心当たりは?」
「・・・すみません。ちょっと分からないですね。」
「そうですか・・・ロイドは?何か知ってるか?」
「うーん、私も幼い頃に行ったっきりだからね。すまないが心当たりはないかな。」
「そうか。ロイドが覚えてないって事は、ここ数年の間で開催される様になったのかもな。」
「あぁ、その可能性はあるかもね。」
「って事は、イベントの内容が分かるのは街に着いてからか・・・」
「うぅー気になります!」
マホが軽く地団駄を踏んでいると、馬車の中にジリリリと時計の目覚ましの様な
音が鳴り響いた。何事かと驚いていると、御者の人が声をかけてきた。
「お客さん。そろそろお昼時だから、馬車を停車させて休憩に入るよ。」
その言葉を合図に前を進んでいた馬車が次々と停車していき、全ての馬車が路肩に停められた。
「それじゃあお客さん、次に出発するのは40分後ですからそれまでにお昼を食べておいてくださいね。もしもお昼を忘れたなら、外で炊き出しをやっていますので無料で貰えますよ。それと、このペースだと後2,3時間後には王都に着きますので。」
御者の人は俺達に一礼すると、そのまま運転席から降りて行き何処かへ歩いて行ってしまった。恐らく、炊き出しの料理を貰いに行ったんだろうな。
「さて、それじゃあ私達もお昼にしようか。」
「あぁそうだな、一応弁当も作ってきた事だしな。」
「はい!とっても楽しみです!あっ、フラウさんも一緒に食べましょうよ!」
「え、よろしいんですか?」
「勿論ですよ!それに一緒に食べた方が美味しいですよ!」
マホの言葉を聞いて、フラウさんは嬉しそうに笑って小さく頷いた。
「ふふっ、そうですね。それではお言葉に甘えさせてもらいます。」
「はい!それじゃあお天気も良いですから、お外で食べましょうよ!」
・・・その後、俺達はマホ提案に乗って外で昼飯を食べる事にした。その時に、
俺が弁当を作った事をフラウさんに伝えると、何故だか尊敬の眼差しで見られる事
となった・・・何でも、彼女は料理が全くできないんだとか・・・
うん、完璧に見える美人のちょっとした弱み・・・凄く良いね!いつかその手料理を食べてみたい物だなぁ・・・
俺達はフラウさんにミューズの街まで行く目的を聞かれたので話していた。
「それじゃあ、皆さんは旅行でミューズの街まで行くんですね?」
「はい、そうなんです!もしかしてフラウさんもご旅行ですか?」
「いえ、私はお仕事をしにミューズの街に行くんです。」
「お仕事ですか?」
「はい。街を取り仕切っている貴族の方達から是非にと言われて。」
「へぇ!凄いじゃないですか!一体どんなお仕事をなされているんですか?」
「あ、えっと、説明するより見て持った方が良いかな?マホさん、ちょっとこっちに来ていただけますか?」
「え?分かりました。」
フラウさんに呼ばれたマホは、きょとんとした顔で立ち上がると彼女の前まで歩いて行った。するとフラウさんはおもむろに羽織っていたローブを脱ぎだすと、それを丁寧にたたんで横の席に置いた・・・おぉ、すっ・・・て違う!見ては駄目だ!
見たらまた変態になる!・・・何とか雑念を振り払ってフラウさんに目を向けると、彼女は右手の袖を捲り上げると掌の表と裏を交互にマホに見せた。
「それじゃあよく見ててくださいね・・・はいっ!」
フラウさんが掛け声と共に指をパチンッ!と鳴らすと手を覆い隠すように白い煙が出現して、何もなかった右手にマホの髪と同じピンク色の小さな花が握られていた!
「おぉ、凄いね!」
「驚き・・・」
「ふわぁ!凄いです凄いです!今のはどうやったんですか!」
皆の驚きや興奮している声が聞こえる中、俺も内心で驚きを隠せないでいた。
いやだって、俺生まれて初めて手品を間近で見たんだからな!すっげぇ・・・
「ふふっ、企業秘密です。はいマホちゃん、これをどうぞ。」
ウィンクをしながら人差し指を口元に当てて微笑んだフラウさんは、手に持っていた花をマホに手渡した。マホはそれを満面の笑みで受け取ると、興奮したまま俺の方に駆け寄ってきて花を俺に見せてきた。
「おじさん見てましたか!フラウさん凄いですよ!何もない所からこんなに可愛い
お花を出しました!」
「あぁ、見てた見てた!いや本当にどうなってんだろうな!」
「ふふっ。そんなに驚いてもらえると私も嬉しいです。」
口元に手を当てて微笑むフラウさんは、袖を戻して一息つくとまたローブを羽織りなおした。
「これで私の職業が分かって貰えたでしょうか?」
「えぇ勿論。フラウさんはマジシャンの方ですよね?」
ロイドがそう答えると、フラウさんはにっこりと微笑んで小さく頷いた。
「はい、その通りです。でも正確にはちょっと違っていて、マジシャンでは無くて
魔術師という職業なんですけどね。」
「・・・それは違う物なの?」
フラウさんは隣で小首を傾げているソフィの言葉を聞いて、少しだけ考える様な
仕草をして苦笑いを浮かべていた。
「本当にちょっとだけですけどね。簡単に説明しますと、魔術師と言うのは手品や
マジックに魔法を応用する人達の事なんです。」
「魔法を?・・・もしかして、さっきの白い煙とか?」
「えぇ、その通りです!良くお分かりになりましたね!凄いです!」
「いや、あれ以外に魔法を使ってるような場面が無かったからなんだけど・・・
まぁ、ありがとう。」
凄い勢いで褒められて気恥ずかしくなった俺は、苦笑いを浮かべてフラウさんから視線を逸らした。
「ふむ、つまりフラウさんはその魔術を披露する為にミューズの街へ?」
「はい、ロイドさんの言う通りです。何でもミューズの街では大きなイベントが開催されるらしくて、それの前座として魔術を披露することになっているです。」
「え、前座なんですか?こんなに凄いのにメインじゃないですか?」
「はい。今回のイベント年に一度しか開催されない物らしくて、メインはまたの機会にお願いしたいとの事らしいです。」
「そうなんですか・・・おじさん、年に1度のイベントって何なんですかね?」
「いや、俺に聞かれても・・・フラウさんは心当たりは?」
「・・・すみません。ちょっと分からないですね。」
「そうですか・・・ロイドは?何か知ってるか?」
「うーん、私も幼い頃に行ったっきりだからね。すまないが心当たりはないかな。」
「そうか。ロイドが覚えてないって事は、ここ数年の間で開催される様になったのかもな。」
「あぁ、その可能性はあるかもね。」
「って事は、イベントの内容が分かるのは街に着いてからか・・・」
「うぅー気になります!」
マホが軽く地団駄を踏んでいると、馬車の中にジリリリと時計の目覚ましの様な
音が鳴り響いた。何事かと驚いていると、御者の人が声をかけてきた。
「お客さん。そろそろお昼時だから、馬車を停車させて休憩に入るよ。」
その言葉を合図に前を進んでいた馬車が次々と停車していき、全ての馬車が路肩に停められた。
「それじゃあお客さん、次に出発するのは40分後ですからそれまでにお昼を食べておいてくださいね。もしもお昼を忘れたなら、外で炊き出しをやっていますので無料で貰えますよ。それと、このペースだと後2,3時間後には王都に着きますので。」
御者の人は俺達に一礼すると、そのまま運転席から降りて行き何処かへ歩いて行ってしまった。恐らく、炊き出しの料理を貰いに行ったんだろうな。
「さて、それじゃあ私達もお昼にしようか。」
「あぁそうだな、一応弁当も作ってきた事だしな。」
「はい!とっても楽しみです!あっ、フラウさんも一緒に食べましょうよ!」
「え、よろしいんですか?」
「勿論ですよ!それに一緒に食べた方が美味しいですよ!」
マホの言葉を聞いて、フラウさんは嬉しそうに笑って小さく頷いた。
「ふふっ、そうですね。それではお言葉に甘えさせてもらいます。」
「はい!それじゃあお天気も良いですから、お外で食べましょうよ!」
・・・その後、俺達はマホ提案に乗って外で昼飯を食べる事にした。その時に、
俺が弁当を作った事をフラウさんに伝えると、何故だか尊敬の眼差しで見られる事
となった・・・何でも、彼女は料理が全くできないんだとか・・・
うん、完璧に見える美人のちょっとした弱み・・・凄く良いね!いつかその手料理を食べてみたい物だなぁ・・・
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