おっさんの異世界生活は無理がある。
第75話
「いらっしゃい!おぉ、随分と久しぶりの顔ぶれじゃねぇか。」
加工屋に入ってすぐ、受付に座っていた親父さんが笑顔で挨拶をしてくれた。
俺は軽く会釈をすると、受付に向かって歩いて行った。
「どうも、ご無沙汰しています。今日は・・・」
「あぁ、分かってるからちょっと待ってな。おーい!九条さん達が来たぞー!」
親父さんが奥にある工房に向けて大声を出すと、そこで作業をしていたお姉さんが驚いた顔でこっちを見てきた。そして作業を中断すると、凄い勢いで俺の方へ駆け寄ってきた!?
「もう九条さん何やってたの!?折角私が腕によりをかけて九条さんの武器を加工してあげたって言うのに全然来てくれないんだもん!」
「いやぁーちょっと色々あって武器の事をすっかり忘れてて・・・」
頬を膨らませながら詰め寄って来たお姉さんにたじろぎながら、俺は正直に忘れていたという事を伝えた。
「えぇ?!そ、そんな・・・」
お姉さんは口元に手を当てて驚くと、そのままよろよろと後ろに下がって地面に座り込んだ・・・そしてしくしくと声を出して泣き真似をし始めた・・・
「うぅ・・・私は九条さんに武器を渡す日を心待ちにしていたのに、それなのに忘れていたなんて・・・・ひどい・・・しくしく・・・」
・・・周囲にいた数人のお客さんが、まるで外道を見るような目で俺の事を見ている気がする・・・!ってか、実際にマホは俺をそういう目で見ている!
「うわぁ、女性を泣かせるとかないですね・・・これだからモテないんですよ。」
「いやいや、どう見ても嘘泣きだろ!?ほら、今だってチラチラこっち見てるし!
ていうかロイドとソフィは武器を眺めてないで俺を助けてくれよ!」
俺はそう言うと、店内をうろつきながら普通に武器を眺めている2人に助けを求めた・・・のだが。
「ふふっ、頑張って九条さん。ここが男の見せ所だよ。」
ロイドは爽やかな笑みを浮かべてサムズアップを決めてきて・・・
「・・・早く武器が見たい。」
ソフィに至ってはこっちを見向きもせずに、ただ武器の催促をするばっかり!
「み、味方がいねぇ・・・!」
自分の仲間が俺を助けてくれる気配が全く無い事に驚愕していると、親父さんが立ち上がってお姉さんの後ろへと歩いて行った。そして・・・
「店の中で騒ぐな!」
「あうっ!」
堅い拳骨を泣き真似をしていたお姉さんの頭に振り下ろした。それを見たお客さんは、あぁいつもの事か・・・的な表情をして買い物に戻った。ってか、分かってたなら俺を冷ややかな目で見たのは何なの?!ノリが良すぎだろうが!
「だ、だって~」
お客さんのノリの良さにも驚愕していると、お姉さんが涙目で親父さんの事を見上げていた。そんなお姉さんの腕を持って強制的に立ち上がらせた親父さんは、呆れた感じでお姉さんを見た。
「だってもクソもあるか。九条さん達が忙しかったのはお前も知ってるだろうが。」
「そりゃそうだけど・・・でも、忘れてたのはショックだったんだもん・・・」
お姉さんは目に涙を浮かべてしょんぼりすると、さっきまで親父さんが座っていた椅子に座った・・・本当に申し訳ないってか、今なんてった?
「あの、俺達が忙しかったのを知ってるってどうして・・・?」
「ん?まぁこういう仕事していると、色々な噂が入ってくるんだよ。例えば、闘技場で王者を倒したのに王座に座らなかったとかな。」
親父さんはそう言うと、チラッとソフィの方へ目を向けた。だが当の本人は、何だかよく分からない武器に目を光らせていた・・・いや、どんだけ自分の事に無関心?
「それに、今朝配られてた号外にも九条さん達の事が書いてあったしな。」
「・・・は?号外?」
自分たちの事が書いてると言われて驚いていると、親父さんも不思議そうにこっちを見ていた。
「え、見てないのか?じゃあちょっと待ってろよ・・・」
親父さんは受付に戻ると、置いてあった一枚の紙を持って俺に手渡してきた。
戸惑いながらそれを見てみると、そこにはデカデカと【ウィスリム邸に襲撃者あり!解決したのはロイド様とギルドの仲間達?】という見出しが書いてあった。
そしてその見出しの下には、ロイドが侵入者と戦っている所が載っていた。
「はっ?え、こんなのが出回ってんのか?・・・てか何だこれカッコいいな・・・」
ドレス姿のロイドが警棒を握って侵入者と戦っている所を見て、俺は思わずそんな事を呟いていた。その時、俺は背後から人の気配を感じたのでバッと振り返った。
「どうもありがとう。」
「うおっ・・・ビックリするから突然背後に立つんじゃない、ロイド。」
「ふふっ、すまないね。」
背後に立ったロイドがそう言って微笑みながら俺の顔を覗き込んで来たって近いんだよ!ある程度の距離は平気だけど、美少女の至近距離は心臓に悪いっての!
俺は早足でロイドと距離を取ると、大きく息を吐いて改めて号外を見てみた。
「はぁ・・・それにしても、まさかこんな物が出回ってるとはな。」
「まぁ、昨日の襲撃事件はかなり大きな事件だったからね。号外が出るのも仕方ないさ。」
「ふーん、そう言うもんか・・・てか、このロイドの写真って勝手に載せて良いのか?別に許可とか求められてないだろ?」
「うん、そうだね。でも下着が見えている訳でもないし、カッコいいと思われるなら私は構わないよ。それに変な物を掲載したら、そこは父に消されるだろうしね。」
「あぁ、そういう事ね。相手も一応は考えて載せてるって事か。」
「でも、本当にこのロイドさんカッコいいですよね!きっとこれでもっとファンの人が増えますよ!」
いつの間にかマホが俺の体の前に入り込むように立っていて、号外の写真を見ながら興奮した様子でそう叫んでいた。そして何故だかその言葉を聞いたお客さん達が、うんうんと頷いている様子が見えた・・・何だこの店、客のノリが良すぎて怖い!
「もーーう!そんな事よりも武器だよ武器!そういう話は帰ってからしてよね!
ここは加工屋なんだから武器の話しをしよーよ!」
お客さんの反応に軽く恐怖していると、受付の椅子に座ったお姉さんが駄々をこねる様にそう叫んだ。それを見て、親父さんが額を押さえて首を横に振っていた。
「お前なぁ・・・」
「私別に間違った事言ってないもん!って言う事で、九条さんは早くカードを出してよね!」
「あぁはいすみません。それじゃあ、これを。」
俺は小走りで受付に向かうと、ぷんすかという擬音が似合いそうな表情のお姉さんにポーチから取り出したカードを手渡した。お姉さんはカードを受け取ると、うん!と頷いて機械にカードを入れた。それから少しして、お姉さんはカードを俺に返してくれた。
「はい!しっかりと引き換えデータを読み取ったから、武器を持ってくるね!」
お姉さんはとびっきりの笑顔を浮かべると、そのまま店の奥へと戻っていった。
・・・そんなお姉さんを見た後に、俺はマホに視線を向けた。
「どうかしましたか?」
「いや、何て言うか・・・喜怒哀楽激しさがマホに似てるなーって。」
「えぇ、そうですかね?私はもう少し大人っぽいとおもいますけど・・・」
「ハッ。」
「ちょっと、なんで鼻で笑うんですか!もーう!」
マホは俺に詰め寄って来ると、服を掴んで激しく揺さぶって来た。だから、こういう所が似てるっての・・・自覚なしかい。それからしばらくして、お姉さんが大きなケースを抱えて戻って来た。
「はい!これがコアクリスタルで強化した九条さんの武器だよ!確認してみて!」
お姉さんはケースの鍵を開けると、俺達に中身を見せる様にケースを開いた。
・・・そこには、刀身が紅く輝くショートブレードが収まっていた!
「お、おぉ・・・!凄い、カッコイイ!!」
「でしょでしょ!いやぁ、コアクリスタルで強化すると刀身が紅くなるんだね!私、初めて知ったよ!ほらほら持ってみてよ!」
「お、おおぅ・・・!」
俺は疼く厨二心を鎮めながら、震える手で武器を掴もうとした!しかしその瞬間、いつの間にか近くに来ていたソフィが俺の武器を横取りしたぁ!ひどい!
「ちょ、おま!」
「・・・凄い。持っただけで凄さが伝わってくる・・・凄い・・・!」
「いや、それ俺の武器!何でソフィが先に持つんだよ!」
「約束。使わせてくれるって。」
「したけど!それは使う時の話であって持つのは俺が先です!ほら、返しなさい!」
ソフィに手を向けると、彼女は無表情のまましぶしぶ俺に手渡してきた。
全く、油断も隙もねぇや・・・あぁ、紅い、よく斬れそうだわァあああ!!
「どうどう??私的に大満足な感じなんだけど!」
「あぁ、流石だぜ・・・!こりゃ次のモンスターとの戦いが楽しみだなぁ・・・」
武器を手に持ってうっとりとしていると、お姉さんが突然手を叩いてこっちを見てきた。
「そう言えば!今回はギリギリ間に合ったけど、次からは余裕を持って武器を取りに来てよね!もしも引き換え期限を過ぎちゃったら、その武器は売りに出される所だったんだからね!」
「えっ?!マジでか!」
「マジマジ!冒険者って命懸けの職業でしょ?だから武器を預けて亡くなる人も少なくないの。だから引き換え期限が過ぎた武器は、持ち主が死亡したとみなされて王国の武器屋で売られちゃうんだよ。」
「そ、そうなのか・・・って事は、明日になってたらこの武器は・・・」
「うん、王国行きが決定してたね。」
・・・俺は大きく息を吐くと改めて武器をマジマジと見た。この最高にカッコいい武器が明日になったら無くなってた?・・・危なかったぁ!
「九条さん。」
「・・・ん?」
俺が心の中で安堵していると、目をキラキラさせたソフィが俺の袖をクイクイッと引っ張っていた。
「行こう。モンスターと戦いに。」
「おぉ、随分とやる気だね。そんなに九条さんの武器が気に入ったのかい?」
「うん、早く斬りたい。」
「・・・その発言は怖すぎるからな?」
「でもきっと、それだけ楽しみって事ですよね!私もその武器を使って戦うおじさんが見てみたいです!」
全員が俺の持っている武器を見て興奮していると、親父さんが声も高々に笑い声をあげた。
「がっはっは!娘が鍛え上げた武器にそこまで喜んでもらえると、指導した俺も鼻が高いってもんだ!なぁ?」
「うん!鍛え上げた私も鼻が高いってもんだ!・・・あ、そうだ!武器を使った時の感想とか後で聞かせてもらえると嬉しいな!今後の参考になるかもしれないし!」
「あぁ、分かった。今度来た時に感想を言わせてもらうよ。」
「絶対だよ!次はなるべく早く来てよね!」
笑顔を浮かべるお姉さんと、厳つい顔でニッコリと笑う親父さんと別れた俺達は
久しぶりにクエスト斡旋所に行くのだった・・・さて、武器の斬れ味を確かめるとしようじゃないかぁ!
加工屋に入ってすぐ、受付に座っていた親父さんが笑顔で挨拶をしてくれた。
俺は軽く会釈をすると、受付に向かって歩いて行った。
「どうも、ご無沙汰しています。今日は・・・」
「あぁ、分かってるからちょっと待ってな。おーい!九条さん達が来たぞー!」
親父さんが奥にある工房に向けて大声を出すと、そこで作業をしていたお姉さんが驚いた顔でこっちを見てきた。そして作業を中断すると、凄い勢いで俺の方へ駆け寄ってきた!?
「もう九条さん何やってたの!?折角私が腕によりをかけて九条さんの武器を加工してあげたって言うのに全然来てくれないんだもん!」
「いやぁーちょっと色々あって武器の事をすっかり忘れてて・・・」
頬を膨らませながら詰め寄って来たお姉さんにたじろぎながら、俺は正直に忘れていたという事を伝えた。
「えぇ?!そ、そんな・・・」
お姉さんは口元に手を当てて驚くと、そのままよろよろと後ろに下がって地面に座り込んだ・・・そしてしくしくと声を出して泣き真似をし始めた・・・
「うぅ・・・私は九条さんに武器を渡す日を心待ちにしていたのに、それなのに忘れていたなんて・・・・ひどい・・・しくしく・・・」
・・・周囲にいた数人のお客さんが、まるで外道を見るような目で俺の事を見ている気がする・・・!ってか、実際にマホは俺をそういう目で見ている!
「うわぁ、女性を泣かせるとかないですね・・・これだからモテないんですよ。」
「いやいや、どう見ても嘘泣きだろ!?ほら、今だってチラチラこっち見てるし!
ていうかロイドとソフィは武器を眺めてないで俺を助けてくれよ!」
俺はそう言うと、店内をうろつきながら普通に武器を眺めている2人に助けを求めた・・・のだが。
「ふふっ、頑張って九条さん。ここが男の見せ所だよ。」
ロイドは爽やかな笑みを浮かべてサムズアップを決めてきて・・・
「・・・早く武器が見たい。」
ソフィに至ってはこっちを見向きもせずに、ただ武器の催促をするばっかり!
「み、味方がいねぇ・・・!」
自分の仲間が俺を助けてくれる気配が全く無い事に驚愕していると、親父さんが立ち上がってお姉さんの後ろへと歩いて行った。そして・・・
「店の中で騒ぐな!」
「あうっ!」
堅い拳骨を泣き真似をしていたお姉さんの頭に振り下ろした。それを見たお客さんは、あぁいつもの事か・・・的な表情をして買い物に戻った。ってか、分かってたなら俺を冷ややかな目で見たのは何なの?!ノリが良すぎだろうが!
「だ、だって~」
お客さんのノリの良さにも驚愕していると、お姉さんが涙目で親父さんの事を見上げていた。そんなお姉さんの腕を持って強制的に立ち上がらせた親父さんは、呆れた感じでお姉さんを見た。
「だってもクソもあるか。九条さん達が忙しかったのはお前も知ってるだろうが。」
「そりゃそうだけど・・・でも、忘れてたのはショックだったんだもん・・・」
お姉さんは目に涙を浮かべてしょんぼりすると、さっきまで親父さんが座っていた椅子に座った・・・本当に申し訳ないってか、今なんてった?
「あの、俺達が忙しかったのを知ってるってどうして・・・?」
「ん?まぁこういう仕事していると、色々な噂が入ってくるんだよ。例えば、闘技場で王者を倒したのに王座に座らなかったとかな。」
親父さんはそう言うと、チラッとソフィの方へ目を向けた。だが当の本人は、何だかよく分からない武器に目を光らせていた・・・いや、どんだけ自分の事に無関心?
「それに、今朝配られてた号外にも九条さん達の事が書いてあったしな。」
「・・・は?号外?」
自分たちの事が書いてると言われて驚いていると、親父さんも不思議そうにこっちを見ていた。
「え、見てないのか?じゃあちょっと待ってろよ・・・」
親父さんは受付に戻ると、置いてあった一枚の紙を持って俺に手渡してきた。
戸惑いながらそれを見てみると、そこにはデカデカと【ウィスリム邸に襲撃者あり!解決したのはロイド様とギルドの仲間達?】という見出しが書いてあった。
そしてその見出しの下には、ロイドが侵入者と戦っている所が載っていた。
「はっ?え、こんなのが出回ってんのか?・・・てか何だこれカッコいいな・・・」
ドレス姿のロイドが警棒を握って侵入者と戦っている所を見て、俺は思わずそんな事を呟いていた。その時、俺は背後から人の気配を感じたのでバッと振り返った。
「どうもありがとう。」
「うおっ・・・ビックリするから突然背後に立つんじゃない、ロイド。」
「ふふっ、すまないね。」
背後に立ったロイドがそう言って微笑みながら俺の顔を覗き込んで来たって近いんだよ!ある程度の距離は平気だけど、美少女の至近距離は心臓に悪いっての!
俺は早足でロイドと距離を取ると、大きく息を吐いて改めて号外を見てみた。
「はぁ・・・それにしても、まさかこんな物が出回ってるとはな。」
「まぁ、昨日の襲撃事件はかなり大きな事件だったからね。号外が出るのも仕方ないさ。」
「ふーん、そう言うもんか・・・てか、このロイドの写真って勝手に載せて良いのか?別に許可とか求められてないだろ?」
「うん、そうだね。でも下着が見えている訳でもないし、カッコいいと思われるなら私は構わないよ。それに変な物を掲載したら、そこは父に消されるだろうしね。」
「あぁ、そういう事ね。相手も一応は考えて載せてるって事か。」
「でも、本当にこのロイドさんカッコいいですよね!きっとこれでもっとファンの人が増えますよ!」
いつの間にかマホが俺の体の前に入り込むように立っていて、号外の写真を見ながら興奮した様子でそう叫んでいた。そして何故だかその言葉を聞いたお客さん達が、うんうんと頷いている様子が見えた・・・何だこの店、客のノリが良すぎて怖い!
「もーーう!そんな事よりも武器だよ武器!そういう話は帰ってからしてよね!
ここは加工屋なんだから武器の話しをしよーよ!」
お客さんの反応に軽く恐怖していると、受付の椅子に座ったお姉さんが駄々をこねる様にそう叫んだ。それを見て、親父さんが額を押さえて首を横に振っていた。
「お前なぁ・・・」
「私別に間違った事言ってないもん!って言う事で、九条さんは早くカードを出してよね!」
「あぁはいすみません。それじゃあ、これを。」
俺は小走りで受付に向かうと、ぷんすかという擬音が似合いそうな表情のお姉さんにポーチから取り出したカードを手渡した。お姉さんはカードを受け取ると、うん!と頷いて機械にカードを入れた。それから少しして、お姉さんはカードを俺に返してくれた。
「はい!しっかりと引き換えデータを読み取ったから、武器を持ってくるね!」
お姉さんはとびっきりの笑顔を浮かべると、そのまま店の奥へと戻っていった。
・・・そんなお姉さんを見た後に、俺はマホに視線を向けた。
「どうかしましたか?」
「いや、何て言うか・・・喜怒哀楽激しさがマホに似てるなーって。」
「えぇ、そうですかね?私はもう少し大人っぽいとおもいますけど・・・」
「ハッ。」
「ちょっと、なんで鼻で笑うんですか!もーう!」
マホは俺に詰め寄って来ると、服を掴んで激しく揺さぶって来た。だから、こういう所が似てるっての・・・自覚なしかい。それからしばらくして、お姉さんが大きなケースを抱えて戻って来た。
「はい!これがコアクリスタルで強化した九条さんの武器だよ!確認してみて!」
お姉さんはケースの鍵を開けると、俺達に中身を見せる様にケースを開いた。
・・・そこには、刀身が紅く輝くショートブレードが収まっていた!
「お、おぉ・・・!凄い、カッコイイ!!」
「でしょでしょ!いやぁ、コアクリスタルで強化すると刀身が紅くなるんだね!私、初めて知ったよ!ほらほら持ってみてよ!」
「お、おおぅ・・・!」
俺は疼く厨二心を鎮めながら、震える手で武器を掴もうとした!しかしその瞬間、いつの間にか近くに来ていたソフィが俺の武器を横取りしたぁ!ひどい!
「ちょ、おま!」
「・・・凄い。持っただけで凄さが伝わってくる・・・凄い・・・!」
「いや、それ俺の武器!何でソフィが先に持つんだよ!」
「約束。使わせてくれるって。」
「したけど!それは使う時の話であって持つのは俺が先です!ほら、返しなさい!」
ソフィに手を向けると、彼女は無表情のまましぶしぶ俺に手渡してきた。
全く、油断も隙もねぇや・・・あぁ、紅い、よく斬れそうだわァあああ!!
「どうどう??私的に大満足な感じなんだけど!」
「あぁ、流石だぜ・・・!こりゃ次のモンスターとの戦いが楽しみだなぁ・・・」
武器を手に持ってうっとりとしていると、お姉さんが突然手を叩いてこっちを見てきた。
「そう言えば!今回はギリギリ間に合ったけど、次からは余裕を持って武器を取りに来てよね!もしも引き換え期限を過ぎちゃったら、その武器は売りに出される所だったんだからね!」
「えっ?!マジでか!」
「マジマジ!冒険者って命懸けの職業でしょ?だから武器を預けて亡くなる人も少なくないの。だから引き換え期限が過ぎた武器は、持ち主が死亡したとみなされて王国の武器屋で売られちゃうんだよ。」
「そ、そうなのか・・・って事は、明日になってたらこの武器は・・・」
「うん、王国行きが決定してたね。」
・・・俺は大きく息を吐くと改めて武器をマジマジと見た。この最高にカッコいい武器が明日になったら無くなってた?・・・危なかったぁ!
「九条さん。」
「・・・ん?」
俺が心の中で安堵していると、目をキラキラさせたソフィが俺の袖をクイクイッと引っ張っていた。
「行こう。モンスターと戦いに。」
「おぉ、随分とやる気だね。そんなに九条さんの武器が気に入ったのかい?」
「うん、早く斬りたい。」
「・・・その発言は怖すぎるからな?」
「でもきっと、それだけ楽しみって事ですよね!私もその武器を使って戦うおじさんが見てみたいです!」
全員が俺の持っている武器を見て興奮していると、親父さんが声も高々に笑い声をあげた。
「がっはっは!娘が鍛え上げた武器にそこまで喜んでもらえると、指導した俺も鼻が高いってもんだ!なぁ?」
「うん!鍛え上げた私も鼻が高いってもんだ!・・・あ、そうだ!武器を使った時の感想とか後で聞かせてもらえると嬉しいな!今後の参考になるかもしれないし!」
「あぁ、分かった。今度来た時に感想を言わせてもらうよ。」
「絶対だよ!次はなるべく早く来てよね!」
笑顔を浮かべるお姉さんと、厳つい顔でニッコリと笑う親父さんと別れた俺達は
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