おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第71話

・・・アニメやゲームだと、この後に起こりうるお約束の流れが2つ程ある。
1つは力及ばずにボコボコにされ人質になってしまい、マホ達が酷い目に遭ってしまうパターン・・・俺的にこの展開だけは絶対に避けたい!

もう1つは襲い掛かって来る数多くの敵と、ソファに座ってニヤついているボスを何とか倒し、傷だらけになって屋敷の外に出たら皆が涙を浮かべて俺に抱きついてくるパターン・・・これぞ王道!って感じだから俺はこれをしたかった・・・のだが、現実ってそんな単純じゃないよね!

「覚悟しろや!」

誰が言ったのか分からないその言葉を合図に、多種多様な武器を持ったゴロツキ達が一斉に襲い掛かって来た!

まず最初に短いナイフを持ったゴロツキが俺に連続で斬りかかって来たので、その攻撃を警棒で防いでいると今度は右の方から警棒で殴り掛かられた!

その瞬間、俺は左手でナイフを持っていたゴロツキの腕を掴むと思いっきり引っ張って体を引き寄せる。そのせいで警棒を腕に食らったゴロツキはナイフを離して絶叫を上げた!そうして攻撃をかわした俺は、同士討ちをして一瞬動きが止まったゴロツキの腹に風魔法込みの蹴りを当てる!

そいつを壁に向かって吹き飛ばした直後、俺の足に鎖が巻き付いて来た!?驚いているとその鎖が引っ張られ俺は体勢を崩して背中から倒れこんでしまった!何事かと思っていると部屋の奥に鎖鎌を持ったゴロツキがいた?!おいおい忍者かこいつ!?

(おじさん!大丈夫ですか?!)

(大丈夫じゃないんで少し待っててくれ!)

突然聞こえてきたマホの声に返事をしている最中も、俺の体はどんどん部屋の中央に引っ張られて行く!その途中でゴロツキの1人が足を振り上げて俺を踏みつぶそうとして来やがった。それを体を捻ってかわした俺は、振り下ろされた足のすねに警棒を思いっきりぶつける!

「ぎゃああああ!!」

骨が砕ける音が聞こえたと同時に、そいつはすねを押さえて地面に倒れこんだ。その瞬間、ゴロツキが手放した警棒を左手で掴むと俺は鎖の先に居る奴の顔面を目掛けて投げ飛ばす!

警棒は顔面に見事に命中して俺を引っ張る鎖が緩んだ!しかし安堵する暇も無く、今度は巨大な棍棒の様な物が上から振り下ろされてきた。それを後方に転がってかわした俺は、そのままの勢いで立ち上がると後ろに下がりつつ距離を取る。
その時に、俺は足に絡まっていた鎖も即座に外した。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

息を切らせつつ前を見ると、ゴロツキ達も立ち止まったままどう仕掛けるべきかと悩んで感じでこっちを見ていた・・・はぁー危ねぇ・・・ってか、自分の人間離れに若干の恐怖を感じる!ってそうだ!

(聞こえるかマホ!今は大丈夫だ!)

(本当ですか!良かったぁ・・・そっちはどんな状況ですか?)

(こっちか?えっと無傷で4人位潰した。そっちは?)

(こっちは今、進んできた道を戻っている所です!)

(そうなのか?)

(はい!最短距離で行くよりも、安全を確保した道から向かう方が良いと思われるので!)

(そうか、じゃあ気を付けて脱出しろよ!)

(ご主人様も、無茶しないでくださいね!怪我を1つする度にお説教1時間ですからね!)

(えぇ?中々に無茶な事を言うな・・・まぁ分かったよ。何とかノーダメージ縛りをやってみる。)

(はい!頑張ってくださいね!それじゃあまた後で!)

・・・よしっ、マホの元気な声も聞けたし無事も確認出来て気合も入った!
俺は口元に若干の笑みを浮かべて警棒を握り構えると、ゴロツキ達を見据えた。さぁ第2ラウンド開始と行こうか!・・・そう意気込んだ瞬間、突然ソファに座っていた奴がゆっくりと乾いた拍手をし始めた。

「いやぁ、お見事お見事。こんだけの人数を相手によくやるもんだなぁおっさん。」

・・・あれぇ?俺ってそんな老けて見えるのか?おかしいな、まだまだ30代になったばかりのヤングマンだと言うのに・・・あれぇ?・・・あ!もしかして、マホが俺の事をおじさん呼ばわりしていたからかな?きっとそうだな!うん!
なんて軽く現実逃避をしている最中、ソファに座っている奴は更に言葉を続ける。

「だが息も切れているみたいだし、そろそろギブアップしたらどうだ?年寄りが無理するもじゃないぜ?なぁそう思うだろ?」

そう言って睨まれたゴロツキ達は、焦ったようにニヤニヤするとそいつの言葉に賛同していた。

「あ、あぁ!俺もそう思うぜ!なぁ?」
「も、勿論だ!」

その後も、そうだそうだと怯えながら賛同する言葉が部屋の中に溢れかえる・・・ははぁん、そういうタイプのボスなのか・・・・

「ほら。こいつらもこう言ってるし、大人しく降参した方が身の為」

「はいはい、偉そうな猿山の大将は黙っていようか。」

そいつの言葉を遮ってそう言った瞬間、部屋の中にピリッとした空気が漂い出す。そして数秒後、声を押し殺した感じでそいつが話しかけてきた。

「・・・今、何て言った。」

「あれ、聞こえなかったのかな?猿山の大将は黙ってろって言ったんだよ。何か偉そうにゴチャゴチャ言ってるけど、要はビビってるから戦いたくないって事だろ?
だったらそう言ってくれればいいのに、そしたら土下座の1つで勘弁してやるのにさ。ほらどうした?ごめんなさい、助けてくださいって土下座しな?」

うーん、相手をバカにする時だけ饒舌じょうぜつになる俺って悪い子かしら?
そう考えていると、ソファに座っている奴の顔にどんどん怒りが溢れ殺気が膨れ上がって行く。そして大声でゴロツキ達に命令を出した。

「おい!このクソジジイをぶっ殺せ!そして逃げたあの女達を連れてこい!こいつの前でメチャクチャにしてやる!」

「おいおい、結局自分で戦わずに命令するだけか?それにこんな状況で自分の性欲を優先させるとは、流石猿山の大」

俺がニヤニヤしながら言葉を続けようとした瞬間、目の前に背の低いテーブルが勢いよく飛んで来た。それをかわして何処から飛んで来たのか見ると、どうやらあいつが片手で投げ飛ばしたらしい・・・うわぁ、あのテーブル高そうなのに・・・
そんな事を考えていたら、そいつが立ち上がって俺を指さして大声でゴロツキ達に脅迫に近い指示を出す。

「さっさと殺れ!!テメェらも殺されてぇのか!」

その言葉を聞いた瞬間、またもやゴロツキ達が一斉に襲い掛かって来た。まず最初に攻撃を仕掛けて来たのは、デカく重そうな棍棒を持ったデブのゴロツキだった。

そいつは棍棒を思いっきり横に振って、周囲の物を薙ぎ払いながら攻撃を仕掛けて来た。その棍棒の上を棒高跳びの様に飛んでかわした俺は、そのまま後方回転して着地するとデブの腹に蹴りを入れる!

ただやっぱりデブって防御力が高いのね。若干怯んで後ろに下がりはしたが、すぐに体勢を立て直し今度は上から棍棒を振り下ろしてきやがった。棍棒が地面に衝突した瞬間、地面が揺れ土埃が舞い上がった。
そんな中で俺は振り下ろされた棍棒を駆け上がると、飛んでデブの顎を左足で蹴り飛ばした。そのまま着地して後ろに下がると、デブは棍棒から手を離し白目をむいて地面に倒れこんだ。

ホッとする間もなく、今度は土煙の向こうから両手に長さの違うブレードを持ったゴロツキが俺に向かって斬りかかって来る。上下左右の至る所から襲い掛かって来る攻撃を警棒で防いでいると、突然天井に魔方陣が展開された!

その次の瞬間、天井から木で出来た槍が俺を目掛けて降り注いできた!急いで横に飛んで槍をかわした瞬間、槍の間をすり抜ける様にブレードが飛んできた!
左手を地面につき小さく側転するように転がった俺は、体勢をすぐに体勢を立て直すとブレードを払うように殴った!そのおかげでブレードは壁に突き刺さったのが、今度はそこに魔方陣が現れた!

もう後ろには下がれない!だった取るべき道は1つだけだ!俺は前を見据えると、ブレードを持ってニヤつくゴロツキ目掛けて走り出す!その瞬間、魔方陣から同じ様に木の槍が射出された。
だがそんな事はどうでもいい!そう考えて一直線に向かった先に居るゴロツキは、ブレードを思いっきり俺の顔面目掛けて突き出してきた!突き出されるブレードを見たまま頭をずらしてそれかわした俺は、警棒でゴロツキの顔を殴りつける!

その攻撃で体勢を崩したゴロツキに向かって、得意の吹き飛ばし効果付きの蹴りを食らわせる!飛んで行ったゴロツキは、魔法と撃っていたゴロツキにぶつかりエリオさんの執務用の机に勢いよくぶつかった!ってやべぇ!机壊れた!あーあー大事そうな書類が宙を舞ってしまった!後で怒られるかもヤバい!!

けど何とか半分以上潰してやったぞ。これであの偉そうなボスを除けば・・・そう思って残りのゴロツキを数えようと部屋の奥を見たら、何故だか残っていたゴロツキ達が全員血を流して倒れていた。
そしてその中に、全身を赤く染めたボスがゴロツキ達を見下ろして立っていた。

「チッ、使えねぇ雑魚共が。邪魔だから寝てろクソが。」

そう言って目の前で倒れているゴロツキの腹を蹴り飛ばして壁の方へ吹き飛ばしたボスは、俺の事を歪な笑顔を浮かべ睨みつけていた。その手に赤く染まったトゲ付きのメリケンサックをハメながら。

「お前、随分と好き勝手暴れてくれたじゃねぇか・・・」

ボスはそう言ってゆっくり俺の前に歩いてくると、目を閉じて首をゴキゴキと鳴らし始めた・・・チャーンス!そう思った俺は、ボスの腹に前蹴りを入れて吹き飛ばした!先ほどのゴロツキと同じ様に壊れたエリオさんの机にぶつかったボスは、大声をあげながら立ち上がって来た。

「何しやがるテメェ!!」

「いや、あんな隙だらけの状態で目の前に立たれたら攻撃するだろ。ってか、あれで気絶しとけばいいのに・・・お前も運が無いな。」

そう言って笑った俺を見て、ボスの額に血管が浮かび上がる・・・怒ってるねぇ。

「そりゃこっちの台詞だ・・・お前を潰したら、次はお前の仲間だ。目の前で泣こうが喚こうがグチャグチャにしてやるよ!」

「おいおい、寝言は寝てから言ってくれよ。」

そう言って肩をすくめて笑った俺は、犬を呼ぶように手を叩いて両手を広げ大声を出して手招きをする。

「ほら、遊んでやるからかかってこいよ!1人ぼっちの猿山の大将さん。」

俺がそう言った瞬間、ボスは後ろにある机を破壊して猛スピードで俺に殴り掛かって来た!ボスの攻撃は今まで戦っていたどのゴロツキよりも素早く、威力もかなりの物があった。スピードに関して言えば、恐らく闘技場で戦った時のソフィと同等の物かもしれない。そして威力に関しては、自称勇者より少しだけ劣っているレベルだ。

・・・少し前の俺ならば、最初に考えていたどっちかの展開が訪れていたかもしれない。だがレベルもステータスも上がり、あいつらを傷つけようとしている奴相手に負ける通りなんか何処にもねぇんだよ!それと傷1つ負う度に説教1時間は絶対に嫌だから、無傷で勝たなきゃいけないんだよ!

そんな決意を秘めながら、俺はボスの攻撃を次々と防いでいく。ただ少しでも気を抜くと、思わぬ方向から攻撃が飛んでくるから全く油断できない!

「オラオラ!防いでばっかりじゃ俺は倒せねぇぞ!」

ボスが凶悪な笑顔を浮かべてそう言うと、下からアッパーを仕掛けて来た。警棒を両手で掴み、それを防ぐ事に成功したがその衝撃で俺の体が若干だが宙に浮いてしまった!身動きがとれないその隙に、今度は右手のストレートが俺に襲い掛かる!
何とかそれも防げたが、俺は吹き飛ばされ壁に叩きつけられた!

「グハッ!」

・・・・クッソ!力だけで俺を壁まで吹き飛ばすとかどんだけだよ!あぁ痛ぇな!痛む背中を自分でさすりながら前を見ると、両手を広げて目をギラつかせながら俺を見るボスがそこにいた。

「ハッ!散々大口を叩いていた割にその程度か!オラ!もっと楽しませてくれよ!」

そう言って俺がさっきやったように手招きをしているボスを見ていると、頭の中にロイドの声が聞こえてきた。

(九条さん、こっちは無事にゴロツキの制圧が終わった!そっちは今どんな状況だ!)

(ご苦労さん。こっちは今、エリオさんの執務室にてボス戦中だ。)

(何?!)

(あぁそれと、他の皆は勝手口で脱出予定だから救出よろしく。)

(ちょっと待て!それは九条さん1人で戦っているという事か!)

(そういう事だ・・・悪いが後は頼んだぞ、俺はボス戦に集中するから。)

俺はロイドにそう告げると、返事も聞かずにネックレスを外して胸ポケットにしまい込む。戦闘中に話しかけられて意識がそれて、攻撃を受けるとかそんなお約束したくないからな。

「よし、じゃあ最終ラウンドを始めるか。」

「・・・面白れぇ!潰れるのはテメェだけどな!」

そうボスが叫んだ瞬間、俺は足に力を込めて身を屈めて走り出す!それを迎え撃つように、ボスは俺に向かって拳を振り下ろしてきた。俺はそれを下から叩き上げて逸らし、ボスの体にひじを当てる!

「グッ!!」

痛みに耐える様に歯を食いしばって後ろに下がるボスは、目を見開いて俺の事を見ていた・・・おぉ驚いているねぇ。でもまだまだこんな物じゃないから覚悟しとけ!そう意気込んだ俺は、よろけるボスの顔に向かって飛び膝蹴りをかます!

その攻撃を両腕を使って防いだボスだったが、痛みで力が入らなかったのか両腕はそのまま頭の上にいった!その隙を見逃さず、俺はボスの顔面に警棒を右から叩きつける!そしてその振り切った警棒で、今度は反対側から顔面を殴る!

「ク、ソがああああ!」

顔面の至る所から血を流して絶叫をしたボスは、力任せに俺の顔面を殴ろうと襲い掛かって来た。だがその攻撃に先ほどまでの正確性は無く、俺は簡単にその攻撃を防ぐ事に成功した・・・そう思った瞬間ボスの口元がニヤリと変わり、カチッと音が聞こえた。何の音かと思う暇も無く、ボスのメリケンサックについていたトゲが俺の顔に向かって飛んで来た!

「うわっ!」

体を後ろに反らしてボスから距離を取ると、今度は反対側のメリケンサックからトゲが飛んで来た!かわす事が不可能だと判断した俺は、左腕でそのトゲを受け止めた!その瞬間、グサッと突き刺さる痛みが全身を襲ってきた。
その痛みに耐えながらボスと距離をった俺は、左手を握りしめながらボスを睨みつける。

「随分と姑息な真似をしてくれるじゃねぇか、なぁ?」

「うるせぇ!何をしても勝ちゃいいんだよ!それにそのトゲは、ただのトゲじゃねぇぞ・・・」

「何だと?」

俺がボスの言葉に返事をした瞬間、左腕のひじから先の力がいきなり無くなった?!突然の事に驚きの表情を浮かべていると、ボスが嬉しそうに大声で笑い始めた。

「ひゃーっはっはっは!お前の腕に刺さったトゲには微量だが毒が塗ってあってな。
傷口に触れた瞬間その効果を発揮するんだよ!その効果は、傷口周辺を麻痺させるって物だ!これでお前の左腕は使い物にならねぇなぁ!」

そう言ってまた面白そうに笑うボスを見て、俺は内心とても焦っていた・・・!
だってノーダメ縛りが失敗したんだぞ?!という事は、この傷がバレたら説教1時間コースじゃねぇか!しかも毒付きだとしたら、更に時間が伸びそうな気がする!
そんな俺の焦りを別の意味で捉えたらしいボスは、俺を睨みつけながら大声を上げる。

「焦ったってもう遅ぇ!ジジイはここで死にやがれ!」

ボスはそう叫ぶと血だらけの顔面で狂った笑みを浮かべた。その瞬間、ボスの周囲に風が吹き始め・・・姿が消えたと思ったら、俺の前に現れて笑顔のままアッパーを仕掛けて来た。
・・・うん。お前は勝利を確信しているんだろうが、この程度のスピードで俺を潰せると本気で思ったのか?

「な、なに?!」

ボスが驚きの表情を浮かべながら、誰もいなくなった眼前を睨みつけていた。その表情を見ながら、俺はがら空きになったボスの腹にひざをめり込ませる。

「ご、ぼぇ!」

口から唾液を垂らし、腹を押さえて倒れこんだボスに向かって俺は手を向ける。

「・・・覚えとけ、次に俺や仲間に危害を加えたら」

手の先に眩しいほどの輝きを放った魔方陣が展開される。そして魔方陣の中から、バチバチと激しい音が聞こえてきた。

「容赦なく殺す。」

そう言った瞬間、ピカッと部屋の中が激しく光ったと思ったら強烈な電撃がボスの体を駆け巡った。

「ぎゃあああああああ!!!!」

ボスが全身を痙攣けいれんさせて、大声で叫ぶこと数秒・・・光は消えてボスはピクピクとして動かなくなった・・・

「・・・あれ、これって大丈夫か?」

体からプスプス音を出しながら動かなくなったボスを見て不安になった俺は、慌てて脈を確認する。

「ふぅ、危うく人殺しになる所だった・・・」

右手で冷や汗を拭いながら立ち上がった俺は、部屋の中をジックリと見渡した。
・・・うん、何と言うか死屍累々って言った感じだな。そんな事を考えていた瞬間、部屋の奥で豚が腰を抜かして驚きの声を上げていた・・・あぁ、意識を取り戻したのか。そう思った俺はネックレスを取り出して首につけると、警棒を手に豚に近づいてく。

「ひ、ひぃいいいい!助けてくれぇええええ。」

「おいおい、人聞きの悪い事を言うなよ。まるで俺が悪役みたいじゃないか。」

「た、頼む助けてくれ!金ならいくらでもやる!だから見逃してくれ!」

そう言って豚は身につけていた宝石を手に取ると、俺に向かって差し出してきた。俺がその姿を見てニッコリと笑顔を浮かべると、豚は嬉しそうに笑っていた・・・・うんうん、甘いよね。

「ダーメ。」

「ひ、ひぃいいいいい!」

俺はニッコリと笑顔を浮かべたまま、豚に向かって手を向ける。そして同じ様に、バチバチと音の鳴る魔方陣を展開する。

「あいつにも言ったけど、もう一度言うよ?今度また、俺や仲間に危害を加えたら・・・」

「た、助けてぇええええ!!」

「ぶっ殺すぞ?」

そう言った瞬間、またもや部屋の中に眩いばかりの光が炸裂した・・・そして光が収まった瞬間、マホの声が聞こえてきた。

(ご主人様!返事をして下さいご主人様!)

(あぁーはいはい聞こえてるよ。)

(もう!一体何をしていたんですか!話しかけても良いって言ったのに!なのに話しかけても声が聞こえなくて私・・・私・・・!)

(ふっ・・・そんな泣きそうな声を出すなよ。こっちは無事に終わったよ。そっちは?)

(うぅ・・・ぐず・・・私達も無事にロイドさん達と合流しましたぁ・・・今は屋敷内を制圧中です・・・ぅう・・・)

(そうかぁ・・・あぁ、やっと終わったな。)

(はぃ・・・ご主人様は、ご無事ですか?)

(あぁ、もちろ・・・ん)

・・・ヤバい!!腕を怪我していることがバレたら説教される!急いで何とかしないと!そう思って俺は執務室の中を漁り始めた!マジすいませんエリオさん!でも、緊急事態なので勘弁して下さい!

(・・・ご主人様?どうしたんですか?)

(あぁいや何でもない!何でもないから!あ、あれぇ?声が、遠くなって来たぞぉ?)

(いや、そんなはず・・・ご主人様!?)

頭の中に響くマホの声を聞きながら、俺は負傷した事を隠す為に行動を始めた。
それからしばらくして、傷の手当ても何とか終わり、敵を全員拘束した辺りでカームさんが護衛部隊を引き連れて救助にやって来た。

その事をマホに伝えた後、俺はカームさん達に連れられて屋敷の外に向かった。
その途中で屋敷の制圧はどんな感じだったのか聞くと、ほとんどソフィが倒していたので楽に制圧できたらしい・・・流石、闘技場の元王者だね!

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