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おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第70話

捕まった女の人を救出する為に、俺達はエリオさんの執務室を目指していた訳なんだが・・・

「まさか、ここまで簡単に廊下の突き当り近くまで辿り着けるとは・・・」

そう言って部屋の奥に手足を縛った侵入者を運んだ俺は、立ち上がりながら手をはたいた。そんな俺をマホがジトッとした目で見てきた。

「・・・何だよ。」

「いえ?あれだけ格好つけていた割には、ソフィさんの活躍しか見てないなーって思ってただけですよ。」

「ぐっ・・・それに関しては、返す言葉もありません・・・」

・・・マホの言う通り、ここまで来れたのは全てソフィのおかげだ。彼女は巡回している侵入者を見つけると、一瞬で間合いを詰めるてそいつらの意識を刈り取っていった・・・俺はというと、その後始末しかしてないんだよね・・・そんな現実に落ち込み始めていると、マホが両手でガッツポーズを作りながら俺に話しかけてきた。

「ほら、おじさんはやればできる子なんですから落ち込んでないで頑張ってください!」

「・・・俺が落ち込む要因のほとんどはマホだぞ?」

てか懐かしいな・・・俺も昔はやればできる子!ってよく言われたもんだ!まぁ、結局何にもやらずに流されて生きていきましたけどね。なんて考えていたら、マホがきょとんとした表情で俺の事を見てきた。

「えぇ、気のせいじゃないですか?」

「いや気のせいじゃ・・・あぁもういい、とっとと行くぞ。こんな事話してる場合じゃないしな。」

そう言って一足先に部屋を出ようとした瞬間、頭の中にロイドの声が響いてきた。

(九条さん、今大丈夫かい?アリシアさんに関する情報が手に入った。)

(本当か?じゃあ早速聞かせてくれ。)

俺達は廊下に出ると慎重に廊下の奥に向かって行く。その道中、ロイドがアリシアさんに関する事を説明してもらった。

(まず一番大事な事を言っておくが、捕まっているのは間違いなくアリシアさんだ。)

(・・・やっぱりそうか・・・その情報は誰から?)

(彼女のビジネスパートナーさ。怒り心頭でアリシアさんが屋敷に向かったと報告してきたよ。)

(なるほど・・・って何で怒り心頭?)

(何でも、彼女に思いっきりビンタされたそうだよ。)

(はぁ?な、何でそんな事に・・・)

(どうやら会場に避難した後、シアンさんを迎えに行きたいから一緒に来て欲しいと言われたそうだ。)

(へぇ・・・アリシアさんって妹想いなんだな。)

(そうだね。ただビジネスパートナーの彼は、わざわざ危険を冒してまでそんな事に付き合う義理は無い。そんな事する価値も無い。と言い放ったそうだよ。)

(あららー・・・そりゃビンタも食らうわな。)

(まぁ自業自得だね。それでだ、彼女はビジネスパートナーに強烈なビンタくらわせた後こっそりと会場を抜け出していたようだ。)

(そんで屋敷の裏まで来て、奴らに捕まってしまったと・・・)

(そういう事になるだろうね。)

(・・・分かった。何とかしてアリシアさんを助け出すから、そっちも俺達の救助頼んだぞ。)

(了解。落ち着き次第すぐに向かうよ。それまで気を付けて。)

(あぁ、分かってるよ。)

ロイドとの会話を終わらせた俺は、改めて周囲に注意を払って廊下の奥へと進んで行く。

「・・・さい!」

廊下の突き当り近くまで来た瞬間、女の子の声が聞こえてきたので俺達は立ち止まって互いの顔を見て確認する。

「聞こえたよね。」

「あぁ急ぐぞ!」

俺達はなるべく足音を立てない様に突き当りまで走って行く。そして執務室が近づくにつれて、女の子の声がどんどんと鮮明に聞こえてきた!

「離してください!こんな事をしてただで済むと思っているんですか!」

「うるせぇな!さっきから何度も同じことを言うんじゃねぇよ!てか、俺達の心配よりもお前の心配をしたほうが良いんじゃねぇのかぁ?」

「ど、どういう事ですか!」

「なぁに、これからたっぷりと可愛がってやるって事だよ!貴族のお嬢様には刺激が強すぎるかもしれねぇがな!」

「い、いや!離して!誰か・・・誰か!」

「はっ!助け何か来ねぇよ!」

俺達は廊下の突き当りの陰に潜みながら、後少しで執務室に入れられるという所で抵抗しているアリシアさんを発見した!てか、何その会話!?どうしてこいつらはテンプレ丸出しの台詞しか言わねぇんだよ!ってそんな馬鹿な事を考えている場合か!

「ど、どうしましょうお姉様が!お姉様が!」

「おじさん急いでください!早くしないとアリシアさんが!」

「あぁもう分かってるよ!ソフィ行くぞ!」

「了解。」

俺達は武器を持って廊下に飛び出すと、一直線に見張りに向かって行く。

「な、何だお前ぐわぁ!」

俺より一足先に奥の見張りの前に立ったソフィは、警棒を華麗に叩き込んで地面に叩き伏せた!それを見て驚いていたもう一人の見張りは、すぐさま手に持った警棒でソフィに襲い掛かろうとした!だがそのおかげで、どうやら俺の存在には気が回っていなかったみたいだ。俺は背を向けた見張りに向かって思いっきりドロップキックをかます!

「ぐうぇ!」

突然の攻撃に対応できなかったそいつは、俺達がきた反対側の廊下の奥に転がりながら吹っ飛んで行った!よしっ!後はアリシアさんを救うだけだ!

「な、何が起きたんだ!くそっ!早く入れ!」

「いや!助けて!」

廊下の奥を見るとすでに男が執務室の扉に手をかけていた。俺達は急いでアリシアさんに向かって走り出そうとしたが・・・その瞬間、ソフィが倒したはずの見張りが意識を取り戻し俺達に向けて魔法を撃とうとしていた。

「よろしく。」

「うん。」

俺はソフィの方を見ずにそう言うと魔法を使って風をまとい、移動速度を上げ廊下の奥へ一直線に向かって行く。それと同時にソフィは振り返って倒れている見張りに電撃を撃った。

背後で見張りの叫び声を聞きながら、俺は目の前で執務室を開けようとしている奴の顔面に飛び蹴りを食らわせる!そいつは俺に蹴られた衝撃で扉をぶっ壊しながら執務室の中へと吹っ飛んで行った・・・のだが・・・

「・・・・あれ・・・これは・・・まずくね?」

俺は執務室に入ってすぐの所に着地して目の前を見渡したのだが・・・武装した人が沢山いるなぁ・・・こりゃ多分、10人以上はいるのかな?

「おいごらぁ!何だテメェ!」
「いい度胸してんじゃねぇか!」
「ぶっ殺されてぇのか!あぁ?!」

仲間が蹴り飛ばされてきた事を認識したゴロツキ連中は、武器を手に持ち殺気を放ちながら罵声を浴びせてきた・・・あーあ、こりゃ逃げ切るのは無理そうだな・・・そう考えた俺は、脳内でマホに話しかける。

(あーマホ聞こえる?)

(ご、ご主人様!?どうしたんですか突然!アリシアさんは!)

(えっとアリシアさんは無事。)

(そ、そうですか・・・あれ、でもどうして)

(マホ、先に謝っとく。マジゴメン。)

(え、は?)

(説教は後で聞くから、今は許してくれ!)

(な、何を言って。)

俺は慌てたマホの声を聞きながら、ぶっ壊れた扉の枠を魔力を込めながら拳で軽く叩く。それと同時に枠の上の方から横に向かって木の柱が出現し、出入り口を塞いでいく。それを見たゴロツキ達が更に怒声を浴びせてきた・・・あーあ、うっせ・・・

「何しているですかおじさん!」

突然、背後からマホの声が聞こえてきたので振り返るとふくれっ面のマホが俺の事を睨みつけていた。その後ろでは尻もちをついたアリシアさんと、寄り添うように座っているシアンさんが居た。ソフィはというと・・・何か目がジトッとしている気がするけど・・・気のせいかな?

「答えてください!何をしているんですか!」

怒ったマホが俺に向かって大声でそう言ってきたので、俺は前を見たまま武器を手に持って後ろに下がって行く。

「いやぁ、見てわかるだろ?この人数を相手に逃げ切るのは至難の業だ。つうか絶対捕まるっての。」

「だからって、どうしてこんな!」

今にも泣きそうな声を出すマホを見て、俺は警棒を逆手に持つとグッと親指を立ててニヤリと笑う!

「ふっ・・・なぁに安心しろ。後で必ず追いつく。だからお前たちは先に行け!」

「ちょっとおじさん!何で死亡フラグかましてるんですか!バカですか!?」

「マホ、無事に帰れたらお前に伝えたい事が・・・!」

「いや、連発しすぎですから!本当に死にますよ!」

「ふっふっふ、知らないのかマホよ。」

「な、何をですか・・・」

「死亡フラグとは乱立すると逆に死なないのだ!」

「このバカ!おバカ!そんなの本の世界だけですから!現実問題この人数相手にどう立ち回るつもりですか!」

「まぁ、死ぬ気で頑張りゃ何とかなるだろ。」

「えぇ?!プランぜロですか!?」

「おいおい、俺が今まで土壇場でプランを立てて行動した事があるか?」

「そう言われると、そうなんですけど!」

「それにマホも言ってたろ?」

「え、一体私が何を・・・」

「俺はやればできる子!」

「こういう時に使うべき言葉じゃないですから!」

マホとそんなやり取りをしていると、エリオさんが座っていた椅子に座って偉そうに机に足をのせている全身宝石なんかでじゃらじゃらしたデブのおっさんが、葉巻を吸いながら魔法通信機器を手に持って話しかけてきた。

「おい、そのくだらないやり取りをいつまで見せるつもりだ?てか、お前ら何者だ?」

「あれ、ご存じない?折角ロイドの家を襲撃した連中を撃退したってのにね。」

そう言ってニヤリと笑うと、おっさんはイライラした様子で俺の事を睨みつけてきた。

「てめぇか・・・俺達の邪魔をしやがったのは・・・!」

「はぁ?俺が入浴中に襲ってきたお前らがマヌケなんだろ?ってか、こんな人数で襲撃とか何考えてんの?ばかなの??絶対に無理に決まってんだろ。」

心底馬鹿にした表情と声色で俺はおっさんの事を挑発する・・・おぉおぉ、ここまで歯ぎしりが聞こえてきそうだねぇ・・・そんな事を考えていると、突然おっさんが机を思いっきり叩いた。そしてニヤニヤとしながらこっちを見てきた。

「馬鹿はお前らだ・・・こんな人数で街で一番の貴族を襲う訳ないだろうが・・・・やれ。」

おっさんが通信機に向かってそう言った瞬間、またもや爆発音が聞こえてきて屋敷全体が揺れた!

「何しやがった!」

おっさんを睨みつけて大声でそう聞くと、おっさんは気色の悪い笑顔を浮かべて話しかけてきた。

「くっくっく、最初の爆発は貴族連中を会場に閉じ込める為の物さ。そして今の爆発は、屋敷の外で待機しているゴロツキ連中が会場を襲い出す合図だ!」

その言葉を聞いた俺は、急いで会場に居るロイドに話しかける!

(おいロイド大丈夫か!)

(すまない!今話している余裕はない!先ほどの爆発で門が壊され、ゴロツキが大量に流れ込んで来た!強さに問題ないが数か多い!片付けたらこっちから連絡する!)

そう言ってロイドの声は途切れてしまった・・・黙り込んだ俺を見て、おっさんは更に大声で話しかけてきた。

「はっはっは!ショックで言葉も出ないか!だった次は、そこにいるお仲間の心配をするんだな!おい、侵入者だ!全員女だから、捕まえたら好きにしていいぞ!がっはっは!」

・・・俺は目の前のクソジジイにイラつきながら、後ろに居るソフィに声をかける。

「ソフィ、皆を連れて急いで脱出しろ。」

「九条さんは?」

「俺か?決まってんだろ、なぁ?」

そう言って俺は目の前でニヤニヤしているゴロツキ連中に視線を向ける。そして警棒を空いている片方の手に軽く叩きつける。

「大人として、若者の道を正してあげないとなぁ・・・それに、あの豚を挽肉にしないと気が済まねぇ・・・」

「・・・分かった。」

「おじさん!」

マホがすぐ後ろにやって来て、俺に向けて声をかける。振り返ると心配そうな表情を浮かべたマホが俺の事を見ていた。そんなマホに笑顔を向けて、俺は自分の頭を人差し指で叩きながら話しかける。

「なに、不安ならこっちに話しかけろ。いつでも会話してやるよ。」

マホは俺の言葉を聞いてしばらく俺を見つめると、ゆっくりと頷いて俺から離れていった。そしてニッコリと笑うと俺の事を見た。

「おじさん、無事に帰ってきたら・・・・覚えていてくださいね?」

「・・・・・は、はい・・・」

あれ、マホの目が笑ってないぞ?あれ、俺ここで生き残っても最終的に死ぬんでねぇか?・・・えぇい!視界が滲むが気にしてられるかぁ!俺は何故だか震える声で、ソフィに声をかける。

「ソフィ!皆を頼んだぞぉ!」

「うん。任せて。」

ソフィがそう返事をすると、遠ざかっていく足音が聞こえた。そして完全に足音が聞こえなくなった瞬間、目の前の豚が手を叩いて大声で笑い始めた。

「はっはっは!どうやらお前は見捨てられたようだなぁ!なぁに、心配しなくてもすぐに会わせてやるよ!まぁその頃には散々あそばれたあどおおおおおおお!!!」

俺は良く喋る豚に手を向けると、少し強めの電撃を撃って感電させる。それから豚が地面に転げ落ちた瞬間、俺を見るゴロツキの連中の殺気が増えた・・・んだけど、どうもあのソファに座っている奴は雰囲気が違うな・・・まぁどうせゴロツキのボスとかだろ。後でぶちのめせばいいよね?

そう考えて警棒を手に持って構えると、何だか自然に口角が上がってきた・・・・まさかこの青春ボッチが、ゴロツキを相手取る日がこようとはな。俺の人生って本当にどうなってんだろうな!そんな事を思いながら、俺はゴロツキ連中との戦いを始めた!

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