おっさんの異世界生活は無理がある。
第56話
家の中に鳴り響くアラート音を聞きながら外に出た俺は、少し離れた所で魔法で明かりを出して立っている3人を見つけ早足で向かって行く。
「悪い、色々やってたら時間がかかった。こっちは平気っ!?」
俺が平気だったかどうかを聞こうとした瞬間、突然マホが俺の腹に突進して抱き着いてきた!ぐっ、結構痛い・・・しかしそんな事、涙目になりながら俺を見上げているマホに言える訳もないがな。
「ご主人様ご無事ですか!?お怪我とかしてませんか!?ご主人様に何かあったらわたしは・・・!」
「そんな心配しなくても大丈夫だっての。怪我も無くぴんぴんしてるよ。」
「よ、良かったです・・・本当に、本当に!」
マホはぐじゅぐじゅ鼻を鳴らしながら俺にしがみついていた。そんなマホの頭を、俺は優しく撫でていた。
「ふふっ、とても大事に思われているね。羨ましい限りだよ。」
「右に同じ。」
いや、そんな温かい目で俺達を見ないで!恥ずかしいから!俺は何とも言えないこの空気を破壊する為、急いで話題を変える!
「そ、それよりもそっちは何もなかったのか?」
「いや、実はこっちの方も停電したんだ。」
「そうなのか?」
「あぁ、ただこちらはすぐに復旧したけどね。その直後、私の家の方から物凄い音が聞こえて急いで駆け付けたという訳さ。」
ロイドがそう言った直後、マホが俺から離れ鼻をすすりながら詳しい事を話してくれた。
「そ、その通りです。急いで駆け付けたら玄関が壊されていて、中からアラート音とひ、悲鳴のような物が聞こえてきて・・・もしかしてご主人様の身に何かあったのかと不安に思った瞬間、お二人が走って家の中へ入っていきました。」
「あぁ・・・悪い、その悲鳴は俺が侵入者を攻撃した時のだな。」
「そ、それなら良かったです。」
マホは安堵しながらため息を吐き、涙目のまま微笑んで俺の事を見てきた。そ、その表情は不謹慎だがかなりドキッとするんだが・・・ってそんな事よりもだ。
「なぁ、さっきから鳴ってるこのアラート音は何なんだ?」
「これかい?これは私の家に非常事態が発生した時に鳴るように鳴っているのさ。これが鳴ると、まず私の実家にいる護衛部隊に非常事態を告げる連絡が行く。その後、街の警備兵を引き連れてこの家にやってくると言う訳さ。」
「って事は、あと少しで護衛部隊と警備兵が列をなしてやってくるのか。」
「あぁそうだね。恐らく後5分くらいで来るんじゃないかな。」
ロイドがそう言うと、突然ソフィが家の方へ向かい歩き出した。俺はその事に驚きつつ、ソフィの肩を掴んで止める。
「ちょ、ちょっとどこに行く気だ?」
「家の中。侵入者の事を調べる。」
「いや、それは警備兵とか専門の人に任せた方が良くないか?」
「そうかもしれない。でも自分の目で確かめる事も大切だってぱぱに教わった。だから、警備兵が来ていない今の内に調べて来る。」
「いやだから・・・はぁ、もう分かったよ。俺も行く。」
俺がそう言うと、ソフィは不思議そうな顔をしてこれ顔を見てきた。
「・・・どうして?」
「当たり前だろ。子供を危険な所に行かせるのに、大人だけ安全地帯でのんびりしてられるか。」
ソフィは俺の言葉を聞いて、不思議そうにこっちを見てきた。
「・・・よく分からない。」
「分からないならそれでも良いよ。まぁそんな訳で、俺達は家の中に行ってくるよ。ロイドとマホはここで警備兵が来るまで待機しててくれ。何かあったらすぐに叫び声をあげろよ?」
「了解した。」
「分かりました!ご主人様、ソフィさん、お気をつけて!」
それから俺とソフィはアラートが鳴っている家の中に戻って行った。さて、まずは玄関の所で気絶しているこいつから調べるか・・・とは思った物の。
「それで、一体何を調べるんだ?」
「こいつらが持っている装備。または身分が分かる物。」
そう言ってソフィは侵入者の傍にしゃがみ込むと、落ちている武器や装備品などをテキパキと確認していく。
「何か、随分と手慣れてるな。」
「うん。やり方をぱぱに教わったから。」
「いや、一体どんな教育されてんだよ・・・」
ソフィの親父さんに若干引いていると、ソフィはすっと立ち上がり俺の事を見た。
「どうだ、何か分かったか?」
「うん。持っている武器や装備品はかなり上質な物。ただ、こいつらが何者かを知る為の物は無かった。」
「そうか。よし、じゃあ次は風呂場の方の奴らを調べるか。」
「分かった。」
まぁ、俺は調べ方とか分からないから完全に役立たずなんですけどね・・・それから風呂場に向かったソフィは同じように侵入者の事を調べていく。ただ、さっきの奴と同じでめぼしい情報は持っていないようだ。俺は腕を組み、気絶してる侵入者を見て考える。
「うーん、マジでこいつら何者だ?この家に侵入してきたって事は、狙いがロイドなのは間違いないだろうけど・・・それに、持っている武器が上物ってのも気になるな。なぁソフィ、この武器はそんなに良いものなのか?」
「うん。この街では出回ってないと思う。あるとすれば王国の方の武器屋。」
「そっか・・・はぁーあ・・・」
俺はその場で膝に手をつくと、がっくりと肩を落としてデカい溜息を吐く。そりゃ落ち込みもするわ。だって今日まで平和で充実した毎日だったんだぞ?
それがこうもあっさりと崩壊するとはねぇ・・・何だろうか。やはり俺のフラグ的な発言がいけなかったのだろうか。でも、こんな事になると誰が思うんだよ。
「大丈夫?」
俺が落ち込んでいると、ソフィが俺の事を見てそう言ってきた。表情はあまり変化していないが、どうやら心配させてしまったようだ。まぁここは正直に言った方がいいな。
「いや、正直かなりがっくり来てる。」
「そう・・・」
「あぁ。でもずっと落ち込んでてもしょうがないから、そろそろ無理やりにでも元気出すか!」
俺はそう言って両頬を軽く叩いた。だって思いっきり叩いたら痛いじゃん。そんな事をしていると、ソフィが微笑みながら俺を見た。
「うん。落ち込んでいる九条さんよりも元気な方が良い。」
「だろ?」
ソフィの言葉にニヤリと笑ってそう返し、俺達は玄関の方へ戻って行った。すると、外の方からざわざわと沢山の人の話し声が聞こえて来た。
「あれ、もしかしてもう来たのか?」
「そうだと思う。」
俺達が外に出ると、そこには武装した集団が2組いた。1つは緑色の鎧を着た警備兵の集団。もう1つは、黒い装備品を身につけた集団。あの人たちが、ロイドの家の護衛部隊の人達だろうな。そんな事を考えながらロイドとマホの元へと歩いて行くと、2人もこっちに気づいたようだ。
「やぁ2人共、何か収穫はあったかい?」
「まぁ色々とな。」
「そうか、なら後で教えてもらおうかな。」
「おじさん、侵入者の様子はどうでした?」
「まだ気絶していたよ。」
「はぁ・・・良かったです・・・こういう時、戻ったらいなくなってるってパターンもありますからね。」
「確かに。この間読んだ本にそんな展開があった。」
「いや、お前達はラノベの見過ぎ。まぁ、俺も少しは考えなかったわけじゃないけど・・・」
俺達がそんな話をしていると、突然黒い装備を着た人がこっちに来てロイドに敬礼をして話しかけて来た。
「ロイド様、お話し中に失礼いたします。皆様に自己紹介をさせていただいてもよろしいでしょうか。」
「あぁ、構わないよ。」
ロイドがそう言うと、その人は俺達の方を見て再び敬礼をして挨拶をした。
「皆様初めまして。私、ロイド様のご実家で護衛部隊を率いている『カーム・ダイス』と申します。以後、お見知りおきを。」
「は、初めまして。俺は九条透です。」
「私はマホと申します!」
「ソフィ・オーリア。」
カームさんの挨拶に驚きながらも、俺達も挨拶を返す。うーん、俺より少し年上って感じか?
「ご挨拶ありがとうごいます。折角の機会ですので皆様と親睦を深めたいと思うのですが、これから賊を護送用の馬車に乗せて取り調べを行わなければいけません。ですので、残念ですが失礼させていただきます。」
そう言ってカームさんは護衛部隊と警備兵の人達に指示を飛ばし始めた。その後、警備兵の人達がロイドの家の中へと入っていき護衛部隊は周囲の巡回を始めた。
その様子を、少し離れたと事で俺達は見ていた。
「何というか、カームさんって凄い出来る人みたいだな。」
「あぁ。父が最も信頼しているのが彼だからね。それに以前は警備兵を率いていて、今でも警備兵の人達はカームを慕っているんだ。」
「そうなのか?それがどうして今は護衛部隊を率いているんだ?」
「父がお願いしたんだよ。是非とも我が家の護衛部隊を率いてくれないかと。そうしたら快く引き受けてくれたそうだ。それに、彼は私の武術の先生でもあるんだよ。」
「って事は、ロイドさんの強さはカームさんのおかげってことですね!」
「そう言う事になるかな。」
「でも、そういう人って最後裏切るイメージがある。」
「おい、だから本の読みすぎってかラノベの読みすぎだから。」
「はははっ!そうなったら、涙ながらに決闘してカームを超えて見せるさ。」
「いや、もう少しカームさんを信じてやれよ・・・」
そんなやり取りをしていると、突然カームさんがこっちに駆け寄ってきて俺に話しかけて来た。
「申し訳ありません九条様。賊が侵入してきた時の事を詳しく聞きたいので、ご同行して頂いてもよろしいですか?」
「あぁ分かりました。それじゃあ行ってくる。」
「分かったよ。」
「ちゃんと説明してあげてくださいねおじさん!」
「もしかしたら不意に襲われるかもしれないから気を付けて。」
「いやだから・・・はぁ、もう行きましょう。」
「え?わ、分かりました。」
何を言われているのかと戸惑っているカームさんと一緒に、俺は家の中へと戻って行った。その後、俺は護衛部隊と警備兵の数人に囲まれながら状況の説明をしていった。その最中、気絶していた侵入者は警備兵に担がれ家の外へと運び出されて行った。そして最後に、風呂場で説明をして俺の話は終わった。
「・・・あの、1つ質問してもよろしいですか?」
突然、カームさんが俺にそう言ってきた。え、何か気になる事があったのか?多分、かなり詳しく説明したからこれ以上話せる事ないんだけど・・・
「えっと、何ですか?」
「九条様は、どうしてロイド様のご自宅のお風呂に入浴していたのでしょうか?」
「あぁ、その事ですか。いえ、実は時々借りているんですよ。ほら、見ての通り広いですからのんびり出来て気持ちいいので。」
俺の言葉を聞いて、
「あぁ、そうなんですか!いやぁ、てっきり九条様はロイド様とそういうご関係なのかと思いまして。」
そう言う?・・・そういう・・・・はぁ?!
「いやいやいや!全く持ってそんな滅相も無い!ロイドとはただの仲間ってだけですから!」
「はっはっは!そんなに慌てなくてもよろしいじゃないですか。」
「いや慌てますよ。歳の差どんだけと思ってるんですか・・・」
「確か1回りほど離れているのですよね?以前ロイド様から聞きました。」
「だったら分かるでしょ?ロイドとそう言う関係になる事はありえませんよ。」
「おやおや、そうとは言い切れませんよ?世の中は何が起こるか分かりませんからね。それに、ロイド様も九条様を良く思っているはずですからね。」
「だとしても、それは仲間としての事であって男女間の事ではないですよってか何の話ですか!」
俺がそう言うと、カームさんは笑顔のまま俺に謝罪をした。
「いやぁすいません、つい気になってしまいまして。失礼しました。」
「本当ですよ・・・」
何だろうか、当初あったお堅いイメージが瞬時にして崩れ去ってしまったんだが・・・
「さて、それでは外に戻りましょうか。きっと皆さんお待ちですよ。」
それからカームさん達と一緒に外に出て行くと、侵入者を乗せた馬車はもういなくなっていた。そして護衛部隊と警備兵の人達もいつの間にか数が少なくなっていた。多分、護送車についていったんだろうな。
その後、落ち着いてきたところでカームさんが俺達に別れの挨拶をする為にやってきた。
「それではロイド様、私達はこれで失礼させていただきます。何か御用がおありでしたら、ロイド様の家を見張っている警備兵に仰ってください。」
「あぁ分かった。」
「それでは失礼いたします!」
カームさんが敬礼をしてそう言うと、護衛部隊と警備兵の人達も同様に敬礼をした。その後、見張りの警備兵以外は街へ戻って行った。俺達も警備兵の人達にお辞儀をし、家の中へ戻って行った。
「悪い、色々やってたら時間がかかった。こっちは平気っ!?」
俺が平気だったかどうかを聞こうとした瞬間、突然マホが俺の腹に突進して抱き着いてきた!ぐっ、結構痛い・・・しかしそんな事、涙目になりながら俺を見上げているマホに言える訳もないがな。
「ご主人様ご無事ですか!?お怪我とかしてませんか!?ご主人様に何かあったらわたしは・・・!」
「そんな心配しなくても大丈夫だっての。怪我も無くぴんぴんしてるよ。」
「よ、良かったです・・・本当に、本当に!」
マホはぐじゅぐじゅ鼻を鳴らしながら俺にしがみついていた。そんなマホの頭を、俺は優しく撫でていた。
「ふふっ、とても大事に思われているね。羨ましい限りだよ。」
「右に同じ。」
いや、そんな温かい目で俺達を見ないで!恥ずかしいから!俺は何とも言えないこの空気を破壊する為、急いで話題を変える!
「そ、それよりもそっちは何もなかったのか?」
「いや、実はこっちの方も停電したんだ。」
「そうなのか?」
「あぁ、ただこちらはすぐに復旧したけどね。その直後、私の家の方から物凄い音が聞こえて急いで駆け付けたという訳さ。」
ロイドがそう言った直後、マホが俺から離れ鼻をすすりながら詳しい事を話してくれた。
「そ、その通りです。急いで駆け付けたら玄関が壊されていて、中からアラート音とひ、悲鳴のような物が聞こえてきて・・・もしかしてご主人様の身に何かあったのかと不安に思った瞬間、お二人が走って家の中へ入っていきました。」
「あぁ・・・悪い、その悲鳴は俺が侵入者を攻撃した時のだな。」
「そ、それなら良かったです。」
マホは安堵しながらため息を吐き、涙目のまま微笑んで俺の事を見てきた。そ、その表情は不謹慎だがかなりドキッとするんだが・・・ってそんな事よりもだ。
「なぁ、さっきから鳴ってるこのアラート音は何なんだ?」
「これかい?これは私の家に非常事態が発生した時に鳴るように鳴っているのさ。これが鳴ると、まず私の実家にいる護衛部隊に非常事態を告げる連絡が行く。その後、街の警備兵を引き連れてこの家にやってくると言う訳さ。」
「って事は、あと少しで護衛部隊と警備兵が列をなしてやってくるのか。」
「あぁそうだね。恐らく後5分くらいで来るんじゃないかな。」
ロイドがそう言うと、突然ソフィが家の方へ向かい歩き出した。俺はその事に驚きつつ、ソフィの肩を掴んで止める。
「ちょ、ちょっとどこに行く気だ?」
「家の中。侵入者の事を調べる。」
「いや、それは警備兵とか専門の人に任せた方が良くないか?」
「そうかもしれない。でも自分の目で確かめる事も大切だってぱぱに教わった。だから、警備兵が来ていない今の内に調べて来る。」
「いやだから・・・はぁ、もう分かったよ。俺も行く。」
俺がそう言うと、ソフィは不思議そうな顔をしてこれ顔を見てきた。
「・・・どうして?」
「当たり前だろ。子供を危険な所に行かせるのに、大人だけ安全地帯でのんびりしてられるか。」
ソフィは俺の言葉を聞いて、不思議そうにこっちを見てきた。
「・・・よく分からない。」
「分からないならそれでも良いよ。まぁそんな訳で、俺達は家の中に行ってくるよ。ロイドとマホはここで警備兵が来るまで待機しててくれ。何かあったらすぐに叫び声をあげろよ?」
「了解した。」
「分かりました!ご主人様、ソフィさん、お気をつけて!」
それから俺とソフィはアラートが鳴っている家の中に戻って行った。さて、まずは玄関の所で気絶しているこいつから調べるか・・・とは思った物の。
「それで、一体何を調べるんだ?」
「こいつらが持っている装備。または身分が分かる物。」
そう言ってソフィは侵入者の傍にしゃがみ込むと、落ちている武器や装備品などをテキパキと確認していく。
「何か、随分と手慣れてるな。」
「うん。やり方をぱぱに教わったから。」
「いや、一体どんな教育されてんだよ・・・」
ソフィの親父さんに若干引いていると、ソフィはすっと立ち上がり俺の事を見た。
「どうだ、何か分かったか?」
「うん。持っている武器や装備品はかなり上質な物。ただ、こいつらが何者かを知る為の物は無かった。」
「そうか。よし、じゃあ次は風呂場の方の奴らを調べるか。」
「分かった。」
まぁ、俺は調べ方とか分からないから完全に役立たずなんですけどね・・・それから風呂場に向かったソフィは同じように侵入者の事を調べていく。ただ、さっきの奴と同じでめぼしい情報は持っていないようだ。俺は腕を組み、気絶してる侵入者を見て考える。
「うーん、マジでこいつら何者だ?この家に侵入してきたって事は、狙いがロイドなのは間違いないだろうけど・・・それに、持っている武器が上物ってのも気になるな。なぁソフィ、この武器はそんなに良いものなのか?」
「うん。この街では出回ってないと思う。あるとすれば王国の方の武器屋。」
「そっか・・・はぁーあ・・・」
俺はその場で膝に手をつくと、がっくりと肩を落としてデカい溜息を吐く。そりゃ落ち込みもするわ。だって今日まで平和で充実した毎日だったんだぞ?
それがこうもあっさりと崩壊するとはねぇ・・・何だろうか。やはり俺のフラグ的な発言がいけなかったのだろうか。でも、こんな事になると誰が思うんだよ。
「大丈夫?」
俺が落ち込んでいると、ソフィが俺の事を見てそう言ってきた。表情はあまり変化していないが、どうやら心配させてしまったようだ。まぁここは正直に言った方がいいな。
「いや、正直かなりがっくり来てる。」
「そう・・・」
「あぁ。でもずっと落ち込んでてもしょうがないから、そろそろ無理やりにでも元気出すか!」
俺はそう言って両頬を軽く叩いた。だって思いっきり叩いたら痛いじゃん。そんな事をしていると、ソフィが微笑みながら俺を見た。
「うん。落ち込んでいる九条さんよりも元気な方が良い。」
「だろ?」
ソフィの言葉にニヤリと笑ってそう返し、俺達は玄関の方へ戻って行った。すると、外の方からざわざわと沢山の人の話し声が聞こえて来た。
「あれ、もしかしてもう来たのか?」
「そうだと思う。」
俺達が外に出ると、そこには武装した集団が2組いた。1つは緑色の鎧を着た警備兵の集団。もう1つは、黒い装備品を身につけた集団。あの人たちが、ロイドの家の護衛部隊の人達だろうな。そんな事を考えながらロイドとマホの元へと歩いて行くと、2人もこっちに気づいたようだ。
「やぁ2人共、何か収穫はあったかい?」
「まぁ色々とな。」
「そうか、なら後で教えてもらおうかな。」
「おじさん、侵入者の様子はどうでした?」
「まだ気絶していたよ。」
「はぁ・・・良かったです・・・こういう時、戻ったらいなくなってるってパターンもありますからね。」
「確かに。この間読んだ本にそんな展開があった。」
「いや、お前達はラノベの見過ぎ。まぁ、俺も少しは考えなかったわけじゃないけど・・・」
俺達がそんな話をしていると、突然黒い装備を着た人がこっちに来てロイドに敬礼をして話しかけて来た。
「ロイド様、お話し中に失礼いたします。皆様に自己紹介をさせていただいてもよろしいでしょうか。」
「あぁ、構わないよ。」
ロイドがそう言うと、その人は俺達の方を見て再び敬礼をして挨拶をした。
「皆様初めまして。私、ロイド様のご実家で護衛部隊を率いている『カーム・ダイス』と申します。以後、お見知りおきを。」
「は、初めまして。俺は九条透です。」
「私はマホと申します!」
「ソフィ・オーリア。」
カームさんの挨拶に驚きながらも、俺達も挨拶を返す。うーん、俺より少し年上って感じか?
「ご挨拶ありがとうごいます。折角の機会ですので皆様と親睦を深めたいと思うのですが、これから賊を護送用の馬車に乗せて取り調べを行わなければいけません。ですので、残念ですが失礼させていただきます。」
そう言ってカームさんは護衛部隊と警備兵の人達に指示を飛ばし始めた。その後、警備兵の人達がロイドの家の中へと入っていき護衛部隊は周囲の巡回を始めた。
その様子を、少し離れたと事で俺達は見ていた。
「何というか、カームさんって凄い出来る人みたいだな。」
「あぁ。父が最も信頼しているのが彼だからね。それに以前は警備兵を率いていて、今でも警備兵の人達はカームを慕っているんだ。」
「そうなのか?それがどうして今は護衛部隊を率いているんだ?」
「父がお願いしたんだよ。是非とも我が家の護衛部隊を率いてくれないかと。そうしたら快く引き受けてくれたそうだ。それに、彼は私の武術の先生でもあるんだよ。」
「って事は、ロイドさんの強さはカームさんのおかげってことですね!」
「そう言う事になるかな。」
「でも、そういう人って最後裏切るイメージがある。」
「おい、だから本の読みすぎってかラノベの読みすぎだから。」
「はははっ!そうなったら、涙ながらに決闘してカームを超えて見せるさ。」
「いや、もう少しカームさんを信じてやれよ・・・」
そんなやり取りをしていると、突然カームさんがこっちに駆け寄ってきて俺に話しかけて来た。
「申し訳ありません九条様。賊が侵入してきた時の事を詳しく聞きたいので、ご同行して頂いてもよろしいですか?」
「あぁ分かりました。それじゃあ行ってくる。」
「分かったよ。」
「ちゃんと説明してあげてくださいねおじさん!」
「もしかしたら不意に襲われるかもしれないから気を付けて。」
「いやだから・・・はぁ、もう行きましょう。」
「え?わ、分かりました。」
何を言われているのかと戸惑っているカームさんと一緒に、俺は家の中へと戻って行った。その後、俺は護衛部隊と警備兵の数人に囲まれながら状況の説明をしていった。その最中、気絶していた侵入者は警備兵に担がれ家の外へと運び出されて行った。そして最後に、風呂場で説明をして俺の話は終わった。
「・・・あの、1つ質問してもよろしいですか?」
突然、カームさんが俺にそう言ってきた。え、何か気になる事があったのか?多分、かなり詳しく説明したからこれ以上話せる事ないんだけど・・・
「えっと、何ですか?」
「九条様は、どうしてロイド様のご自宅のお風呂に入浴していたのでしょうか?」
「あぁ、その事ですか。いえ、実は時々借りているんですよ。ほら、見ての通り広いですからのんびり出来て気持ちいいので。」
俺の言葉を聞いて、
「あぁ、そうなんですか!いやぁ、てっきり九条様はロイド様とそういうご関係なのかと思いまして。」
そう言う?・・・そういう・・・・はぁ?!
「いやいやいや!全く持ってそんな滅相も無い!ロイドとはただの仲間ってだけですから!」
「はっはっは!そんなに慌てなくてもよろしいじゃないですか。」
「いや慌てますよ。歳の差どんだけと思ってるんですか・・・」
「確か1回りほど離れているのですよね?以前ロイド様から聞きました。」
「だったら分かるでしょ?ロイドとそう言う関係になる事はありえませんよ。」
「おやおや、そうとは言い切れませんよ?世の中は何が起こるか分かりませんからね。それに、ロイド様も九条様を良く思っているはずですからね。」
「だとしても、それは仲間としての事であって男女間の事ではないですよってか何の話ですか!」
俺がそう言うと、カームさんは笑顔のまま俺に謝罪をした。
「いやぁすいません、つい気になってしまいまして。失礼しました。」
「本当ですよ・・・」
何だろうか、当初あったお堅いイメージが瞬時にして崩れ去ってしまったんだが・・・
「さて、それでは外に戻りましょうか。きっと皆さんお待ちですよ。」
それからカームさん達と一緒に外に出て行くと、侵入者を乗せた馬車はもういなくなっていた。そして護衛部隊と警備兵の人達もいつの間にか数が少なくなっていた。多分、護送車についていったんだろうな。
その後、落ち着いてきたところでカームさんが俺達に別れの挨拶をする為にやってきた。
「それではロイド様、私達はこれで失礼させていただきます。何か御用がおありでしたら、ロイド様の家を見張っている警備兵に仰ってください。」
「あぁ分かった。」
「それでは失礼いたします!」
カームさんが敬礼をしてそう言うと、護衛部隊と警備兵の人達も同様に敬礼をした。その後、見張りの警備兵以外は街へ戻って行った。俺達も警備兵の人達にお辞儀をし、家の中へ戻って行った。
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