おっさんの異世界生活は無理がある。
第37話
加工屋にやって来た俺達を出迎えてくれたのは、いつものお姉さんだった。
「あ、いらっしゃい!今日は随分と大勢で来たね!なになに?何か良い物でも手に入ったの?」
「まぁ、良い物かどうかはわからないが珍しいものが手に入ったから見てもらおうと思って。」
俺はポーチからクリスタルを取り出すと、お姉さんに手渡した。お姉さんは受け取ったクリスタルを見ているが、首をかしげていた。
「んー?何だろうこれ。多分凄い物なんだろうけど私は見た事ないなー。」
「そうですか・・・」
「あ、ちょっと待っててね!今お父さん呼んでくるから!」
そう言ってお姉さんは店の奥の方へと走っていった。それから少ししてお姉さんは親父さんを連れて戻ってきた。
「どうも、お邪魔してます。」
「おぉ、いらっしゃい。それでさっき見せてもらったけどこのクリスタルの事を聞きに来たんだってな。」
「はい、それボスを倒した後に出てきた宝箱に入ってたんですけどどういう物かさっぱりで。」
「えぇ?!またボスを倒したの!?だってつい先週ぐらいにボスを倒したばっかりじゃない?それで!ボスの素材は!?こっちに送られてきてないんだけど!」
「あぁーそれが加工に使えそうな素材は片っ端から消し炭になったらしく使える物が無いとの事で・・・」
「えぇー!そんな勿体ないことしたの!もう何やってるの九条さっていたーー!!」
ボスを倒した事を聞いたお姉さんがテンション高めに詰め寄ろうとしたが、親父さんにまたもや拳骨を落とされていた。
「だからいい加減言葉遣いを考えろ。相手はお前の友達じゃなくてお客さんだ。それでクリスタルの事だったな。こいつはボスの心臓部分であるコアクリスタルって名前だ。分かりやすいだろ?」
親父さんは横でうずくまっているお姉さんを無視してニヤリと笑った。
(凄いですね、完全無視ですね。)
(触らぬ神に祟りなしだ。気にせず親父さんの言葉に頷いておこう。)
「確かにそうですね。」
「こいつはボスが生きている間にコアを直接攻撃する事で手に入る代物でな。ただ、基本的にはボスと共に消失する物だから手に入るのは本当に稀な事なんだ。」
「そうなんですのね・・・あの、それはどう使う物なのでしょうか。」
「このクリスタルは、主に武器の強化に使われる物だ。ブレードなら切れ味と耐久性。杖なら所持者の魔力の安定と魔法の威力があがるようになる。ただ、このクリスタルの大きさだと加工に使えるのは1個の武器だけだな。」
「1個だけか・・・じゃあどうする?ジャンケンでもするか?」
「いや、ここは九条さんがそのクリスタルを使ってくれ。」
「えぇ、そうですわね。」
「い、良いのか?」
「あぁ、私の武器はこだわり抜いた一級品の素材を使っているからね。クリスタルを使わなくても切れ味も耐久性もバッチリなんだ。」
「私の武器も一級品の素材を使っておりますので、どうぞご遠慮なさらずに。」
「私の杖はお二人に敵いませんが、上質な物を父が用意してくれました。ですから九条さん。どうぞクリスタルを使ってブレードを強化してください!」
「あぁ・・・ありがとう・・・」
(お、俺の武器だってボスの素材を使って作った武器なんだぞ!)
(まぁ初級ダンジョンのボスですけどね。)
(うるさい!それでも命懸けで倒して手に入れた素材なんだよ!)
(まぁ命懸けになったのはご主人様の油断が招いたことですけどね。)
(・・・・反論できねぇ・・・・)
「じゃあお前さんのブレードを強化するって事で良いな。じゃあその強化は・・・」
「はい!はい!私がやりたい!ボスのコアを使って武器を強化したいです!お願いします親方やらせてください!」
いつの間にやら回復していたお姉さんが勢いよく手を挙げてアピールを始めたと思ったらそのまま一気に直角にお辞儀をした!す、凄い勢いだな・・・
「・・・それを頼むなら俺じゃなくて、お客さんにだ。」
親父さんさんがそう言うと、お姉さんはこちらに向き直りまたも凄い勢いで直角にお辞儀をした。
「お願いします!クリスタルが貴重な事も滅多に手に入らないという事も分かっています!ですがやらせてくださいお願いします!私はまだまだ見習いの身ですが、絶対に成功させて見せます!お願いします!」
「な、なんでそんなに?」
「私はもっともっと仕事の勉強をして、いつか大陸一の職人になりたいんです!その為に多くの経験が必要なんです!どうかお願いします!クリスタルを使った強化をさせてください!」
「・・・うん、別にいいよ。」
「え?!い、良いんですか?」
「あぁ、別に断る理由ないし。じゃあ後よろしくね。」
俺は腰につけたブレードをお姉さんに渡した。お姉さんはブレードを大事そうに抱えると嬉しそうに笑った後、気合の入った表情になった。
「よーし!頑張るぞ!じゃあ親方、早速クリスタルを使った強化加工を教えてください!やるぞー!」
お姉さんはそのまま店の奥に入っていった。その後ろ姿を見て、親父さんは少し嬉しそうに笑っていた。
「まったく・・・ありがとうな。娘に託してくれて。」
「いえいえ、やる気がある子には頑張ってもらいたいですから。」
「ふふっ、彼女とても嬉しそうだったね。」
「えぇ、これは出来上がるのが楽しみですわね。」
「そうですね!あのやる気満々な感じからして凄いのが出来ますよきっと!」
「って事で、後はよろしくお願いします。」
「あぁ、きっちりしごいて最高の武器を渡してやるよ。出来るのに1週間かかるからまた来週取りに来てくれ。」
「分かりました。あ、代金はどれくらいかかりますか?」
「そうだな・・・今回はクリスタルを使っての加工だから5万Gだな。」
「5万Gですか、分かりました。」
俺は財布から代金を取り出し支払った。その後、親父さんにカードを手渡して引き換えの為のデータを入れてもらい店の外に出た。
そしてそのまま斡旋所へと向かい、美容液を貰い外に出ると陽はもう傾き始めていた。
「さて、じゃあ今日は解散って事で良いな。」
「えぇ。ロイド様、今日は本当にお疲れ様でした。」
「そうだね、リリアさんもライルさんもお疲れ様。本当に楽しい一日だったよ。」
「私も皆さんと冒険が出来て楽しかったです!」
「じゃあ、今日はお疲れ様。リリアさんもライルさんも気を付けて帰ってくれよ。」
「はい、じゃあこれで失礼しますわね。」
「それでは、おやすみさい。」
それから二人は一緒に街の中へと消えて行った。・・・・よしっ!ロイドが家に泊まっていた件はうやむやに出来た!これで血祭りにされずに済む!
そう思った直後、体中から一気に疲れが湧き出てきた。
「はぁー・・・・マジで疲れた・・・・」
「おやおや、まるでおじさんの様な深いため息だね。」
「実際、おっさんなんでな。やっぱり一日動きっぱなしってのはしんどいんだよ。ロイドは平気なのか?」
「私はまだ若いからね。そこまで疲れ切ってはいないよ。」
「へっ、そうですか・・・じゃあ俺らも帰るか。」
「あぁそうだ。確か今日はハンバーグを作ってくれるんだったね。」
「えぇ?もう疲れたから明日でも良いか?」
「いや、今日はもうハンバーグが食べたい日になったから駄目だね。もし断るなら、ファンクラブの子達に色々言ってしまいそうだ。」
「はいはい分かったよ。」
(悪いんだが、料理手伝ってくれるか?)
(もちろんです!一生懸命手伝いますね!)
「ふふっ、その顔はマホに相談をしている顔だね。」
「人の思考を読むんじゃねぇよ。さて、とっとと食材買って帰るか。ほら買い物行くから行くぞ。美味いハンバーグが食いたいならしっかりと食材を見極めろよロイド。」
「了解、それが私の仕事だからね。」
それから食材の買い出しを終えた俺達は家へと帰っていった。そしてマホと一緒にハンバーグを作り、全員で食事をした。
そしてすぐに風呂に入り、俺は自室に戻りそのまま眠ってしまった。やはり奪われた体力はまだまだ戻ってはいなかったんだろう。翌日は俺の朝食の当番だったが、寝過ごしてしまったせいでマホに怒られたからな。
「あ、いらっしゃい!今日は随分と大勢で来たね!なになに?何か良い物でも手に入ったの?」
「まぁ、良い物かどうかはわからないが珍しいものが手に入ったから見てもらおうと思って。」
俺はポーチからクリスタルを取り出すと、お姉さんに手渡した。お姉さんは受け取ったクリスタルを見ているが、首をかしげていた。
「んー?何だろうこれ。多分凄い物なんだろうけど私は見た事ないなー。」
「そうですか・・・」
「あ、ちょっと待っててね!今お父さん呼んでくるから!」
そう言ってお姉さんは店の奥の方へと走っていった。それから少ししてお姉さんは親父さんを連れて戻ってきた。
「どうも、お邪魔してます。」
「おぉ、いらっしゃい。それでさっき見せてもらったけどこのクリスタルの事を聞きに来たんだってな。」
「はい、それボスを倒した後に出てきた宝箱に入ってたんですけどどういう物かさっぱりで。」
「えぇ?!またボスを倒したの!?だってつい先週ぐらいにボスを倒したばっかりじゃない?それで!ボスの素材は!?こっちに送られてきてないんだけど!」
「あぁーそれが加工に使えそうな素材は片っ端から消し炭になったらしく使える物が無いとの事で・・・」
「えぇー!そんな勿体ないことしたの!もう何やってるの九条さっていたーー!!」
ボスを倒した事を聞いたお姉さんがテンション高めに詰め寄ろうとしたが、親父さんにまたもや拳骨を落とされていた。
「だからいい加減言葉遣いを考えろ。相手はお前の友達じゃなくてお客さんだ。それでクリスタルの事だったな。こいつはボスの心臓部分であるコアクリスタルって名前だ。分かりやすいだろ?」
親父さんは横でうずくまっているお姉さんを無視してニヤリと笑った。
(凄いですね、完全無視ですね。)
(触らぬ神に祟りなしだ。気にせず親父さんの言葉に頷いておこう。)
「確かにそうですね。」
「こいつはボスが生きている間にコアを直接攻撃する事で手に入る代物でな。ただ、基本的にはボスと共に消失する物だから手に入るのは本当に稀な事なんだ。」
「そうなんですのね・・・あの、それはどう使う物なのでしょうか。」
「このクリスタルは、主に武器の強化に使われる物だ。ブレードなら切れ味と耐久性。杖なら所持者の魔力の安定と魔法の威力があがるようになる。ただ、このクリスタルの大きさだと加工に使えるのは1個の武器だけだな。」
「1個だけか・・・じゃあどうする?ジャンケンでもするか?」
「いや、ここは九条さんがそのクリスタルを使ってくれ。」
「えぇ、そうですわね。」
「い、良いのか?」
「あぁ、私の武器はこだわり抜いた一級品の素材を使っているからね。クリスタルを使わなくても切れ味も耐久性もバッチリなんだ。」
「私の武器も一級品の素材を使っておりますので、どうぞご遠慮なさらずに。」
「私の杖はお二人に敵いませんが、上質な物を父が用意してくれました。ですから九条さん。どうぞクリスタルを使ってブレードを強化してください!」
「あぁ・・・ありがとう・・・」
(お、俺の武器だってボスの素材を使って作った武器なんだぞ!)
(まぁ初級ダンジョンのボスですけどね。)
(うるさい!それでも命懸けで倒して手に入れた素材なんだよ!)
(まぁ命懸けになったのはご主人様の油断が招いたことですけどね。)
(・・・・反論できねぇ・・・・)
「じゃあお前さんのブレードを強化するって事で良いな。じゃあその強化は・・・」
「はい!はい!私がやりたい!ボスのコアを使って武器を強化したいです!お願いします親方やらせてください!」
いつの間にやら回復していたお姉さんが勢いよく手を挙げてアピールを始めたと思ったらそのまま一気に直角にお辞儀をした!す、凄い勢いだな・・・
「・・・それを頼むなら俺じゃなくて、お客さんにだ。」
親父さんさんがそう言うと、お姉さんはこちらに向き直りまたも凄い勢いで直角にお辞儀をした。
「お願いします!クリスタルが貴重な事も滅多に手に入らないという事も分かっています!ですがやらせてくださいお願いします!私はまだまだ見習いの身ですが、絶対に成功させて見せます!お願いします!」
「な、なんでそんなに?」
「私はもっともっと仕事の勉強をして、いつか大陸一の職人になりたいんです!その為に多くの経験が必要なんです!どうかお願いします!クリスタルを使った強化をさせてください!」
「・・・うん、別にいいよ。」
「え?!い、良いんですか?」
「あぁ、別に断る理由ないし。じゃあ後よろしくね。」
俺は腰につけたブレードをお姉さんに渡した。お姉さんはブレードを大事そうに抱えると嬉しそうに笑った後、気合の入った表情になった。
「よーし!頑張るぞ!じゃあ親方、早速クリスタルを使った強化加工を教えてください!やるぞー!」
お姉さんはそのまま店の奥に入っていった。その後ろ姿を見て、親父さんは少し嬉しそうに笑っていた。
「まったく・・・ありがとうな。娘に託してくれて。」
「いえいえ、やる気がある子には頑張ってもらいたいですから。」
「ふふっ、彼女とても嬉しそうだったね。」
「えぇ、これは出来上がるのが楽しみですわね。」
「そうですね!あのやる気満々な感じからして凄いのが出来ますよきっと!」
「って事で、後はよろしくお願いします。」
「あぁ、きっちりしごいて最高の武器を渡してやるよ。出来るのに1週間かかるからまた来週取りに来てくれ。」
「分かりました。あ、代金はどれくらいかかりますか?」
「そうだな・・・今回はクリスタルを使っての加工だから5万Gだな。」
「5万Gですか、分かりました。」
俺は財布から代金を取り出し支払った。その後、親父さんにカードを手渡して引き換えの為のデータを入れてもらい店の外に出た。
そしてそのまま斡旋所へと向かい、美容液を貰い外に出ると陽はもう傾き始めていた。
「さて、じゃあ今日は解散って事で良いな。」
「えぇ。ロイド様、今日は本当にお疲れ様でした。」
「そうだね、リリアさんもライルさんもお疲れ様。本当に楽しい一日だったよ。」
「私も皆さんと冒険が出来て楽しかったです!」
「じゃあ、今日はお疲れ様。リリアさんもライルさんも気を付けて帰ってくれよ。」
「はい、じゃあこれで失礼しますわね。」
「それでは、おやすみさい。」
それから二人は一緒に街の中へと消えて行った。・・・・よしっ!ロイドが家に泊まっていた件はうやむやに出来た!これで血祭りにされずに済む!
そう思った直後、体中から一気に疲れが湧き出てきた。
「はぁー・・・・マジで疲れた・・・・」
「おやおや、まるでおじさんの様な深いため息だね。」
「実際、おっさんなんでな。やっぱり一日動きっぱなしってのはしんどいんだよ。ロイドは平気なのか?」
「私はまだ若いからね。そこまで疲れ切ってはいないよ。」
「へっ、そうですか・・・じゃあ俺らも帰るか。」
「あぁそうだ。確か今日はハンバーグを作ってくれるんだったね。」
「えぇ?もう疲れたから明日でも良いか?」
「いや、今日はもうハンバーグが食べたい日になったから駄目だね。もし断るなら、ファンクラブの子達に色々言ってしまいそうだ。」
「はいはい分かったよ。」
(悪いんだが、料理手伝ってくれるか?)
(もちろんです!一生懸命手伝いますね!)
「ふふっ、その顔はマホに相談をしている顔だね。」
「人の思考を読むんじゃねぇよ。さて、とっとと食材買って帰るか。ほら買い物行くから行くぞ。美味いハンバーグが食いたいならしっかりと食材を見極めろよロイド。」
「了解、それが私の仕事だからね。」
それから食材の買い出しを終えた俺達は家へと帰っていった。そしてマホと一緒にハンバーグを作り、全員で食事をした。
そしてすぐに風呂に入り、俺は自室に戻りそのまま眠ってしまった。やはり奪われた体力はまだまだ戻ってはいなかったんだろう。翌日は俺の朝食の当番だったが、寝過ごしてしまったせいでマホに怒られたからな。
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