おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第36話

斡旋所の前に着いた俺は、まず先にロイドに中に入ってもらう事にした。いや、だって中から女の子がキャッキャしている声がしているからからな。
ロイドは一度溜息をつくと、すぐに笑顔になり斡旋所の中に入っていった。すると・・・

「あっ!ロイド様聞きましたよ!またしてもボスを倒したのですよね!」
「こんなに短期間でボスを2匹も倒すなんて尊敬してしまいます!」
「あぁ!しかもお姿を見れば傷などほとんどないではありませんか!」
「今回も圧勝という事ですわよね!ロイド様!」

・・・・ワーオ凄い勢い。ロイドは中に入った瞬間、10数人の可愛い女の子達に囲まれてチヤホヤされ出した・・・何あの人気、改めて見ると妬ましいな!

「って皆さん何をしていますの?!」

突然横にいたリリアさんが驚いたような声を出して、女の子達の元へと歩いて行ってしまった!な、何事だ?
俺が疑問に思っていると、すすすっと俺の横にライルさんがやってきた。

「あの方たちは、皆さんロイド様のファンクラブに入会している人達です。」

「あぁ、なるほど。え、でもどうしてファンの人たちがこんなにいるんだ?」

「実は、昨日私が誘われた時に他にもファンクラブの人が何人かいまして・・・恐らくその方達が話を広めたんだと思います。」

「だからこんなに集まっている訳か。」

俺がライルさんと話している間も、ロイドとリリアさんはファンの人たちの相手をしていた。

「・・・・しばらく解放されそうにないから先に受付で報告済ませるか。」

「そ、そうですね。ちょっとあそこには近づけない感じですし・・・・」

俺は取り囲まれているロイド達を置き去りにし、その場からこっそりと離れて受付へと向かった。

(いいんですかご主人様、ロイドさん困っているみたいですけど。)

(俺にはどうする事も出来ん。それにあれはロイドが人気だからこそ起きた事故のような物だ。諦めるしかないな。)

(その人気に拍車をかけたのはご主人様が原因だとおもうんですけど・・・)

(ロイドも納得してくれていたろ?大丈夫、ロイドならなんとかなるさ!)

(なんて無責任な・・・)

「あ、いらっしゃいませ!凄いですねロイドさんの人気っぷりは!やっぱり短期間でボスを2匹も倒すなんて流石の実力者ですよ!」

「えぇ、そうですね。俺もロイドが同じギルドで鼻が高いですよ。それで、あっちはちょっと時間がかかりそうなんで、先に報酬とか手続きをしてもらっても良いですか?」

「分かりました!それではカードをお預かりしますね。」

「あ、私のもお願いします。」

俺とライルさんがカードを渡すと、お姉さんは機械に入れてチェックを始めた。
さて、今回はどんな感じかな。それからしばらくして、チェックを終えカードが帰ってきた。

「今回、買い取り用の素材の金額は九条さん達のパーティが10万Gほど。ライルさん達のパーティは4万Gくらいですね。」

「あれ、そっちはそんなに稼いでないんだな。」

「そうですね。今回は探索をあまりせず、とにかく最奥部分を目指していたのでモンスターともあまり戦ってないんですよ。そちらはやっぱりボスの金額がデカいみたいですね。」

「多分そうだろうな。あ、それとダンジョンの中で見つけた宝石もあったんだった。」

俺はポーチからダンジョン内で見つけた宝石と、ボスの体内にあったクリスタルを取り出してお姉さんに見せた。

「それじゃあちょっと見させていただきますね。・・・・・宝石の方は形が小さいのと少し状態が悪いみたいなので、全部で1、2万Gほどになりますね。ただ、この赤いクリスタルは他の宝石と違い特殊な物みたいですね。」

「特殊?それって一体どういう」

「やぁ・・・お待たせ。」

俺が紅いクリスタルについて聞こうとした瞬間、背後からロイドの声が聞こえた。後ろに振り返ると、笑顔がぎこちなくなって疲れ切っているロイドとぐったりしているライルさんが立っていた。

「はぁー・・・疲れましたわ。正直に全部説明をする訳にもいかないので、虚実織り交ぜて説明しておきましたわ。」

「なんというか、本当に悪いな。感謝している。」

「いえ、感謝をするならロイド様にお願いしますわ。疲れているにもかかわらず真摯に彼女達に対応してくださったのですから。」

「まぁそれが私の義務みたいな物だからね。」

「お疲れ様ロイド。お礼に今日はロイドの好きな物作ってやるぞ?」

「そうかい?じゃあハンバーグをお願いしようかな。」

「おう、とびっきり美味いの作ってやるよ。」

(私もお手伝いしますね!)

(ありがとう、二人共。)

「ちょっと待ってください。どうしてロイド様の食べる物を九条様が・・・」

まずい!ファンクラブ会長にロイドが家に泊まっていることがバレたら俺はきっとファン全員に血祭りにあげられる!急いで誤魔化さねば!

「ってそんな事より!紅いクリスタルの事なんですけど!?」

「いえ!もう少し詳しくお聞きしたいのですがロイド様のお食事の事を!」

「まぁまぁリリアさん。紅いクリスタルの事を聞こうじゃないか。」

「ロ、ロイド様がそう言うならば・・・ですが、後できちんと聞かせて頂きますからね!」

よし!後はうやむやにして逃げ切ってやる!

「じゃあ聞いても良いですか?紅いクリスタルの事を。」

「あ、はい。このクリスタルはどうも宝石等とは違い特殊な素材で出来ているみたいですね。ただ、どのような性質を持っているかなどはここではちょっと分からないんです。」

「うーん・・・ってことは加工屋の主人に聞けば何か分かるかもな・・・」

「そうですね、その方が良いと思います。なので、こちらのクリスタルはお返ししますね。それでは次に加工用の素材についてご説明しますね。」

「あ、お願いします。」

「今回の加工用の素材なんですが、ボスの体内が激しく燃焼してしまっていて武器の加工素材としては使えないみたいです。」

「あぁ、やっぱりそうですか・・・」

「ただ、ボスの体を構築していた表面部分の植物については実は嬉しい報告があるんです!」

「嬉しい報告ですか?それは一体なんですの?」

「なんと、その植物のほとんどが効能が高い物でして傷薬としても美容液としてもとても優秀なんです!という事で傷薬か美容液に加工して、専用の容器に入れお渡ししたいと思います!どちらになさいますか?」

俺の周りはとってもわかりやすい反応を示していた。だって美容液と行った瞬間空気が若干変わったもの。

「それじゃあ私は美容液をもらおうかな。」

「私も、同じく美容液をお願いしますわ。」

「じゃあ私も同じものを。」

「それで九条さんはどっちにするんだ?やっぱり傷薬かい?」

「いや、俺も美容液にする。」

「え?九条様も美容液になさいますの?」

「ん?そんなに驚く事か?」

「えぇ・・・男性なら美容の事には興味ないと思いましたもの。」

「まぁ若い頃ならそれでいいかもしれないが、もう色々対策しておかないと将来後悔することになりそうだからな。男も美容に気を使っていかないといけないだろ。」

「ふふっ、そうだね。じゃあ美容液を4つ」

「あ、悪い美容液5つで良いか?」

「おや?どうしたんだい?」

「ほら、マホにもやらないといけないだろ?女の子なんだし。」

(ご、ご主人様・・・!ありがとうございます!)

(まぁ、仲間外れにする訳いかないだろ。)

(そうだね。良かったねマホ。)

「それじゃあ美容液の入った物を5つ用意してもらえるかい?」

「かしこまりました!少々お時間頂きますのでまた後でいらしてください!」

それから報酬をもらった俺達は斡旋所の外へと出て行った。途中リリアさんとライルさんが俺に報酬を渡そうとしてきたが丁重にお断りしておいた。
いや、流石によその報酬を受け取れるほど神経が太くないもんで。

「さて、美容液が出来るまで少し時間がかかる様だからちょっと加工屋に行きたいんだが良いか?」

「クリスタルの事を聞きに行くんだね。」

「そうだ、どんな物なのか確かめとかないとな。もし、またボスとして復活されても厄介だからな。」

「そうですわね、安全性も確かめませんと・・・」

「じゃあ私達も同行させてもらいますね!」

「そうですわね。どんな物なのかも興味がありますし。」

「じゃあ早速加工屋に行くか。」

俺達は、紅いクリスタルの事を聞くために加工屋へと向かった。

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