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おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第16話

薬の効果のおかげで出血は収まったが全身を襲う痛みのせいで歩く事すらしんどくなっていた俺は、ロイド達に肩を借りながら広間を後にしようとしたんだが……

「そう言えばロイド、ボスに変化したあの宝箱ってどうなったんだ?」

「あぁ、アレは中の宝石を頂いた後に灰になるまで燃やし尽くしておいたよ。新たなボスが生まれてしまう可能性があるからね。」

「ははっ、確かにそうだな……」

「ふふっ、それではお喋りはここまでにしてこの場を後にするとしようか。」

「は、はい!あっ、帰りは私もアイテムを使って戦いますんで安心して下さいね!」

「………うん、無理しない程度に頑張ってくれ。」

女の子のやる気が空回りしない様に心の中で祈りながら広間を出て歩いて来た道を戻り始めたんだが、やっぱりと言うべきなのかどうか分からないが俺達を襲って来るモンスターは1匹も現れなかった。

そして無事にダンジョンを脱出した俺達を出迎えてくれたのは、血だらけになった俺を見た女の子達の叫び声だった。

まぁたった数十分の間にズタボロの血まみれになったおっさんが、憧れの人であるロイドに抱えられて現れたらそうなりますよねぇ……

そんな事を考えながらまた罵倒されるのかしら?なんて思っていたんだが、予想に反して何故だかメチャクチャ普通に心配されてしまった。

あまりの態度の違いに最初の内は戸惑ったりもしていたんだが、罵倒されるよりは全然良いって事でとりあえず気にしない事にした!

そしてその後もロイドに助けて貰いながら街に帰ろうとして……いや、マジで俺が居ない間に何があったの?女の子達がアイテムを使ってモンスターと戦うだなんて、ここに向かってる時の彼女達とは別人みたいなんですけど……

その心境の変化に驚きつつも何とか街まで戻って来た俺は、ロイドに感謝の言葉を伝えてから痛む体を引きずって離れて行くのだった。

「ふぅ……これで後は斡旋所で報告を済ませるだけだな。」

「うん、だけどその前に……君達、今回の目的がきちんと達成されているのか教えて貰っても良いかな。」

ロイドがそう呼びかけると女の子達は一斉にカードを取り出して確認すると、嬉しそうにレベルが上がっている事を報告してくるのだった。

(えへへ!やりましたねご主人様!)

(あぁ、ボスと戦ってた時に一緒だった女の子は他の子よりも貰った経験値が多くてレベルが1個だけ上だったみたいだが……それもまぁ許容範囲って事で良いだろ。)

(はい、そうですね!)

マホの嬉しそうな返事を聞きながら笑顔を浮かべている女の子達を見ていた俺は、小さなため息を零した後にわざと咳払いをして彼女達の注目を集めた。

「これで俺の役目も終わったから、ここら辺でそろそろ失礼させて貰うな。報告とか面倒事はこっちで片付けておくから………そんじゃあな。」

「あ、あの!ちょっと待って下さい!」

軽く頭を下げてその場から立ち去ろうとした瞬間、ボス部屋に来た女の子が大きな声を出して俺の事を呼び止めてきた……?何事かと思って振り返ってみると、何故か女の子達が横一列に並んで真剣な表情を浮かべていて……いや、どういう状況なの?

「……九条様、今日は本当に申し訳ございません!」
「「「「申し訳ございません!!」」」」

「…………はぇ?」

「九条様に命を護って頂きながら数々の暴言をぶつけその心を深く傷つけてしまった事は、人として本当に最低な行いだったと思います……」

「な、なるほど………」

(正直、ラノベで見た展開が現実に起きてる!?って思いながら喜んでた部分があるから、傷ついたかって言われると微妙な所なんだよなぁ………どっちかって言うと、おじさんって呼ばれる事の方がグサッとなったしさ。)

(はぁ……ご主人様ったら難しいお年頃なんですねぇ………)

マホの呆れた感じの口調に少しだけイラっとしていると、頭を下げたまま謝罪してくれていた女の子が顔を上げて真剣な眼差しを俺に送って来た。

「……それにこんな謝罪の言葉だけで許されるとは思ってもいません。」

「いや、そんな事はないんだけども……」

「そう言う訳ですので九条様、私達が何でも致しますのでして欲しい事があるならば仰ってみて下さい!」

両手を胸の前に持ってきてグッと握り締めた女の子が大きな声でそう叫んだ瞬間、俺の全身に雷が駆け巡っていくのだった!!

(な、何でもだとっ!?しかもこんなに大勢の女の子が俺の為にぃ?!)

(ご~しゅ~じ~ん~さ~ま~!?)

(……いや、違うんだよ!これはお約束だから言ってみただけで、俺はロリコンでも犯罪者でもないから彼女達に対して酷い事をしようだなんて思ってないから!)

「九条さん、私にも出来る事があるのなら何でもさせて貰うから。彼女達があの様な態度を取ってしまったのには私にも責任があるからね。」

(ロ、ロイドも!?って、そうじゃねぇ!夢の様な台詞に胸を躍らせてる場合か!)

(……分かっているとは思いますけど、彼女達の反省しているって弱みに付け込んで酷い事をしようとしたら許しませんからね!)

(いや、そんな鬼畜外道な事をする訳が無いだろ!?俺を何だと思ってんだよ!)

「……それでどうだろうか九条さん、私達にして欲しい事はないかな。」

真っすぐ俺を見つめてくるロイドと女の子達と目を合わせてキョドりまくっていた俺は………俺は…………!

「いやぁ!悪いんだけど特に何も思いつかなんだよ!そんな訳で今回は保留って事で良いよな?また機会があった時にでもお願いさせて貰うからさ!」

「……九条さんがそう言うなら、了解したよ。」

「よしっ、そんじゃあ俺は病院に行くから!また今度な!」

「あ、九条さん!」

ロイドの呼び止める声が聞こえないふりをしてその場から急いで逃げ去った俺は、痛みに耐えながら大通りを真っすぐ進んで行くのだった!

いやもうマジで色々な意味で心臓に悪すぎるぞ!?あいつ等の言葉もそうだけど、通行人から向けられてた視線が犯罪者を見る感じのだったからな!あのままだったら居るかどうか分からない警察に通報されて俺の人生が1発で終わる所だったぞ!

(うんうん、私はご主人様の事を信じていましたよ!)

(本当かよ……ってそれよりも、病院までの案内をさっさとしてくれ。)

(分かりました!それじゃあですねー………)

明るい声のマホに案内されてやって来たのは、怪我の治療等を専門的に行っている病院って言うか治療施設だった……どうやらここは冒険者を優先的に診てくれる場所らしくて、風邪なんかの病気の場合はそれ専門の病院が近場にあるらしい。

建物内に入ると他にも冒険者っぽい格好しているのが何人か居たんだが……流石に大量出血しているのが目に見えて分かるのは俺ぐらいしかいなくて、ありがたい事に優先的に治療してくれるそうだ。

「……傷は多いですが深くはないですし、すぐに傷薬を塗ったみたいなので跡が残る事は無いでしょうね。ですがしばらくの間はご自宅でゆっくりとお休みになった方が良いでしょう。食後に飲む痛み止めと傷の治りが早くなる塗り薬を出してますので、お風呂上がりに塗ってみて下さい。それではお大事にどうぞ。」

先生にそう診断された後に治療施設のロビーにあるソファーに座った俺は、名前を呼ばれるまでボーっと壁にある張り紙を眺めていた。

(うーん、体に傷跡が残っていた方が貫禄が出て良いと思うんですけどね。思い出になったりもしますし。)

(アホか、俺は自分の傷跡を眺めながら過去を振り返る様な趣味はねぇんだよ。)

(ぶぅ……まぁ、それならそれで無敵の戦士って感じでいきましょうか!)

(いや、俺はごくごく普通に生きて行きたいだけなんだが……)

そんな雑談をしていると名前を呼ばれたので受付に向かって行った俺は、治療費を支払うと2つの薬が入った袋を手にして外に出て行ったんだが………

「あれ、ロイド?お前こんな所で何をしてるんだ?」

「さっきは話の途中だっただろ?だから九条さんの後を追いかけて来たんだよ。」

「あぁー……なるほど………」

「そして改めてにはなるけれど、今日は本当にありがとうね。九条さんが居なければ彼女達を護り切る事は出来なかったと思う。」

「別にそんな事は無いと思うが……ほとんどのモンスターはロイドが倒した訳だし、俺なんてその他の少数とボスの相手をしたぐらいだしさ……」

「それは違うよ。九条さんが囮となってボスの相手をしてくれたからこそ、彼女達を安全に逃がす事が出来たんだ。本当にありがとう、感謝しているよ。」

「お、おう………えっと……‥どういたしまして…………」

(あれあれ、どうしたんですかご主人様ぁ?もしかして照れてるんですかぁ?)

(やかましい!こう……面と向かって礼を言われる事に慣れてなんだよ……!)

(はぁ~……どんな人生を歩んで来てるんですか………)

(……灰色の……いや、真っ暗闇の人生で………これ以上は聞いてくれるな……)

(………分かりました。)

当時の記憶が蘇ってきてテンションが一気に落ちてしまった俺は、無理やり笑顔を浮かべるとロイドと目を合わせた。

「えっと、それじゃあ斡旋所に行かなきゃだから俺はこれで………ロイドはこの後はどうするんだ?」

「ふふっ、私もボスと戦った時に少しだけ傷を負ったから治療していくつもりだよ。放置して悪化するのだけは避けたいからね。」

「そっか……うん、それじゃあまたな。」

「あぁ、またね。」

治療施設に入って行ったロイドを見送った後に静かにため息を零した俺は、改めて斡旋所に向かって歩き始めるのだった。

(……そう言えば、ロイドさんって何者なんですかね?)

(さぁな、どうせ貴族のお嬢さんとかそんな感じだろ。どうせもう会う事も無いんだから気にするだけ無駄だっての。)

(えっ?それじゃあお礼はどうするんですか?)

(そんなのは面倒だからどうでも良い。あの手の連中と関わるとろくな事にならないってのは昔から決まってるからな。)

(もう、折角の異世界なんですからもっと人生を楽しみましょうよ!上手くいけば、ご主人様にもハーレムが訪れるかもしれませんよ!)

(さっきも言ったと思うがお前はアホか?ハーレムなんて幻想が叶った所で最後には女の子に裏切られて絶望する未来しか俺には待ってねぇよ……)

(どれだけネガティブなんですか?!そこは明るい未来を夢見ましょうよ!私と言う可愛い女の子が一緒に居るんですから、ね?)

(うわぁ、それは夢が見れるなぁ………さて、そんな事よりも今回の戦闘でどれだけレベルが上がったか確認してみるか。)

(もう!そんな事ってどういう意味ですか?!ちょっと、聞いてるんですか!?)

(はいはい、聞いてますよっと………おっ、レベルが10に上がったみたいだな。)

(えっ!本当ですか?!やりましたよご主人様!これでようやく妖精の状態ではない私の真の姿をお見せする事が出来ます!)

(あぁ、そう言えば……だけどここでその姿を見せるのは止めとけよ。誰かに見られでもしたら色々と面倒だからな。)

(ふふーん、了解しました!さぁ、早く斡旋所で報酬を貰ってお家に帰りましょう!)

上機嫌になったマホに急かされながら歩き始めた俺は、少しだけドキドキしながら斡旋所に行くのだった。

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