《完結》腐敗した世界の空で、世界最強のドラゴンは、3人の少女を竜騎士に育てます。
28-3.最後の戦い
「おいおい、こりゃ、どういうことだ」
と、ロンは翼を広げた人の姿で、滞空していた。
都市竜ダンピールは赤黒いウロコの、巨大なドラゴンだった。
赤いウロコのドラゴンは、個体数が多い。ダンピールも例に漏れない1匹だった。
そのダンピールは地上に墜落していた。老衰が来たのか――否。違う。
都市竜ダンピールは、同じぐらいの大きさのドラゴンに襲われているのだ。
《どうかしましたか?》
と、ハマメリスが尋ねてきた。
「いや。ダンピールが、どこかの都市竜に襲われてんぞ。あれはどこの都市竜だ」
《何かの間違いではありませんか? 帝都竜ヘルシングおよび、都市竜コスマス、ダミアノスは依然として、上空を飛んでいるはずですが》
「だが、あの大きさのドラゴンは――いや、あれは――」
沼地に沈んだはずの、都市竜クルスニクだ。かつてのシャルリスたちの故郷だった。しかしなぜ、そのクルスニクが動いているのか。死んだはずではなかったか。
よく見てみるとクルスニクの頭部に2人の人影があった。ひとりはバトリだった。赤くて長い髪は、間違いなく彼女のものだった。
そしてもう1人は、報告で聞いている。シャルリスの事を誘拐したディヌとかいう青年だ。
ロンはクルスニクの頭部へと近づいた。そして頭部へと降り立った。かつてはシャルリスとともに餌やりをした頭部だ。あれがもう3年前以上も前のことだなんて思えなかった。つい先日のことのように覚えている。
バトリがロンの存在に気づいたようだった。ニンマリと微笑みかけてきた。
「久しぶりじゃなァ。ロンよ。やはりオヌシが来ると思うておったぞ」
「いったい、これはどういうことだ」
「見てわからんか。沼地で死んでおった都市竜クルスニクを、ゾンビ化させたんじゃ。これは言うなれば、ドラゴン・ゾンビじゃ。このドラゴンはワシの傀儡じゃ。そして都市竜ダンピールを襲わせた」
「都市竜クルスニクを、ゾンビ化させただと? ドラゴンは、ゾンビにはならないはずだ」
「ワシはすでに、ドラゴンの血を攻略しておる」 と、バトリは舌舐めずりをして見せた。
「いつ、どうやって?」
「純粋なドラゴンや、オヌシのような竜人族からでは、攻略することは出来なんだがな。ワシにとっては好都合な存在がおってな。人間とドラゴンの、キメラじゃ」
「キメラだと? そんなのが、いったいどこに……」
いや。
そうだ。
たしか――。
「帝都竜ヘルシングに、リー・フォルトという青年がいての。人工的に造りだされた竜人族じゃ。あやつの細胞をいただいて、ワシはドラゴンへの攻略をついに成し遂げたのじゃ。その成果が、これじゃ」
「そうか」
帝都竜ヘルシングで、皇帝殺害の容疑をかけられて、ロンは捕まっていたことがあった。
あのときにシャルリスとリーは戦っている。あのときだ。あの戦いのときに、バトリはリーの細胞を手に入れたのだろう。
迂闊だった。
「このゲームは、ワシの勝ちじゃ。ついにゾンビの天敵であるドラゴンを、攻略することに成功した。オヌシとて、もはやワシの手にかかればゾンビになる」
今までゾンビにたいして無敵を誇ってきた竜人族も、バトリの前では無力と化すというわけだ。
「ツバキとサザンカは、どうした?」
「なんじゃそれは?」
と、バトリが首をかしげた。
「覚者だよ」
「ああ。途中でワシらに襲いかかってきた覚者が2人おったな。あやつらなら、これの餌にしてやった。良い感じでミンチになったようじゃぞ」 と、バトリはツマサキで、足元をこづいていた。
ゾンビになったクルスニクに、食わせたということだろう。たしかに都市竜相手では、さすがの覚者でも手に負えなかっただろう。
「そうか」
まさか最強とうたわれた8人のうち2人が、こうもアッサリと殺される事態が起こるとは思わなかった。
ツバキもサザンカもロンを慕ってくれていた。死んでしまったことには、悲憤をおぼえた。
「ワシは一度、人類にチャンスをやったんじゃ。ドラゴンを全滅させて、人類を治癒すれば良いだけじゃった。しかし人類はそうはしなかった。むしろ、ふたたびワシを餌にしようとした」
「ああ」
「ワシからのチャンスを不意にした。もう許してはおけぬ。やはりワシは、当初の目的通りに人類への復讐を果たす。人もドラゴンも、すべて腐った死体になり果てれば良い!」
バトリはそう言うと、足場であるクルスニク――もとい、ドラゴン・ゾンビの頭を強く踏みつけた。
それを合図にしたかのように、ドラゴン・ゾンビはダンピールに食ってかかっていた。
足場が大きく揺らいだ。ロンは翼を広げて、軽く浮き上がった。
「オレのほうも、バトリにチャンスをやったつもりだったんだがな」
「チャンスじゃと?」
「あのとき、シャルリスから分離したとき、オレはお前を捕まえることが出来た。だが、逃がしてやったつもりだった。餌として運用することに、同情があったからだ。が、こうしてまたしても被害を出す以上は、オレはお前を仕留めなくちゃならねェ」
「どのみち、ワシらは決着をつけなくてはならぬ存在じゃろう。ドラゴンをあやつる存在として生み出されたオヌシと、ドラゴンの餌として生み出されたワシなのじゃからな」
バトリはそう言うと、肉の腕を伸ばしてきた。
と、ロンは翼を広げた人の姿で、滞空していた。
都市竜ダンピールは赤黒いウロコの、巨大なドラゴンだった。
赤いウロコのドラゴンは、個体数が多い。ダンピールも例に漏れない1匹だった。
そのダンピールは地上に墜落していた。老衰が来たのか――否。違う。
都市竜ダンピールは、同じぐらいの大きさのドラゴンに襲われているのだ。
《どうかしましたか?》
と、ハマメリスが尋ねてきた。
「いや。ダンピールが、どこかの都市竜に襲われてんぞ。あれはどこの都市竜だ」
《何かの間違いではありませんか? 帝都竜ヘルシングおよび、都市竜コスマス、ダミアノスは依然として、上空を飛んでいるはずですが》
「だが、あの大きさのドラゴンは――いや、あれは――」
沼地に沈んだはずの、都市竜クルスニクだ。かつてのシャルリスたちの故郷だった。しかしなぜ、そのクルスニクが動いているのか。死んだはずではなかったか。
よく見てみるとクルスニクの頭部に2人の人影があった。ひとりはバトリだった。赤くて長い髪は、間違いなく彼女のものだった。
そしてもう1人は、報告で聞いている。シャルリスの事を誘拐したディヌとかいう青年だ。
ロンはクルスニクの頭部へと近づいた。そして頭部へと降り立った。かつてはシャルリスとともに餌やりをした頭部だ。あれがもう3年前以上も前のことだなんて思えなかった。つい先日のことのように覚えている。
バトリがロンの存在に気づいたようだった。ニンマリと微笑みかけてきた。
「久しぶりじゃなァ。ロンよ。やはりオヌシが来ると思うておったぞ」
「いったい、これはどういうことだ」
「見てわからんか。沼地で死んでおった都市竜クルスニクを、ゾンビ化させたんじゃ。これは言うなれば、ドラゴン・ゾンビじゃ。このドラゴンはワシの傀儡じゃ。そして都市竜ダンピールを襲わせた」
「都市竜クルスニクを、ゾンビ化させただと? ドラゴンは、ゾンビにはならないはずだ」
「ワシはすでに、ドラゴンの血を攻略しておる」 と、バトリは舌舐めずりをして見せた。
「いつ、どうやって?」
「純粋なドラゴンや、オヌシのような竜人族からでは、攻略することは出来なんだがな。ワシにとっては好都合な存在がおってな。人間とドラゴンの、キメラじゃ」
「キメラだと? そんなのが、いったいどこに……」
いや。
そうだ。
たしか――。
「帝都竜ヘルシングに、リー・フォルトという青年がいての。人工的に造りだされた竜人族じゃ。あやつの細胞をいただいて、ワシはドラゴンへの攻略をついに成し遂げたのじゃ。その成果が、これじゃ」
「そうか」
帝都竜ヘルシングで、皇帝殺害の容疑をかけられて、ロンは捕まっていたことがあった。
あのときにシャルリスとリーは戦っている。あのときだ。あの戦いのときに、バトリはリーの細胞を手に入れたのだろう。
迂闊だった。
「このゲームは、ワシの勝ちじゃ。ついにゾンビの天敵であるドラゴンを、攻略することに成功した。オヌシとて、もはやワシの手にかかればゾンビになる」
今までゾンビにたいして無敵を誇ってきた竜人族も、バトリの前では無力と化すというわけだ。
「ツバキとサザンカは、どうした?」
「なんじゃそれは?」
と、バトリが首をかしげた。
「覚者だよ」
「ああ。途中でワシらに襲いかかってきた覚者が2人おったな。あやつらなら、これの餌にしてやった。良い感じでミンチになったようじゃぞ」 と、バトリはツマサキで、足元をこづいていた。
ゾンビになったクルスニクに、食わせたということだろう。たしかに都市竜相手では、さすがの覚者でも手に負えなかっただろう。
「そうか」
まさか最強とうたわれた8人のうち2人が、こうもアッサリと殺される事態が起こるとは思わなかった。
ツバキもサザンカもロンを慕ってくれていた。死んでしまったことには、悲憤をおぼえた。
「ワシは一度、人類にチャンスをやったんじゃ。ドラゴンを全滅させて、人類を治癒すれば良いだけじゃった。しかし人類はそうはしなかった。むしろ、ふたたびワシを餌にしようとした」
「ああ」
「ワシからのチャンスを不意にした。もう許してはおけぬ。やはりワシは、当初の目的通りに人類への復讐を果たす。人もドラゴンも、すべて腐った死体になり果てれば良い!」
バトリはそう言うと、足場であるクルスニク――もとい、ドラゴン・ゾンビの頭を強く踏みつけた。
それを合図にしたかのように、ドラゴン・ゾンビはダンピールに食ってかかっていた。
足場が大きく揺らいだ。ロンは翼を広げて、軽く浮き上がった。
「オレのほうも、バトリにチャンスをやったつもりだったんだがな」
「チャンスじゃと?」
「あのとき、シャルリスから分離したとき、オレはお前を捕まえることが出来た。だが、逃がしてやったつもりだった。餌として運用することに、同情があったからだ。が、こうしてまたしても被害を出す以上は、オレはお前を仕留めなくちゃならねェ」
「どのみち、ワシらは決着をつけなくてはならぬ存在じゃろう。ドラゴンをあやつる存在として生み出されたオヌシと、ドラゴンの餌として生み出されたワシなのじゃからな」
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