《完結》腐敗した世界の空で、世界最強のドラゴンは、3人の少女を竜騎士に育てます。
27-1.救世主
シャルリスが帰って来ないという、ハマメリスの報告を受けて、ロンはすぐに地上都市クルスニクへと戻っていた。
(シャルリスに限って、大丈夫だとは思うが)
バトリの制御もできていたはずだし、ゾンビに襲われてもシャルリスなら問題ない。瘴気の影響も受けない。チェイテやアリエルといった優れた竜騎士たちも付いている。大したことはないだろうと、タカをくくっていた。
地上都市。
城の中庭。
穀物庫や武器庫のある中庭で、足元は緑の芝でおおわれている。
ロンが降り立つと、すぐにチェイテとアリエルが駆け寄ってきた。
「おかえりなさい」
「おかえり」
と、ふたりが出迎えてくれた。
駆け寄ってきたチェイテの背中には、大槌がかつがれていた。以前は小さかったチェイテが、この3年でもはやロンと並ぶほどの身長になっている。ずいぶんと大きくなったものだ。
「そっちもお疲れさま。ドワーフを運んできたんだってな。チェイテは、ミツマタの武器を継いだか」
「うん」
ミツマタの戦死についても、ハマメリスから聞いている。個人的な付き合いは薄かったけれど、同僚の死には悼むものがあった。
覚者アジサイの裁縫針を、アリエルが継いだ。 覚者ミツマタの大槌を、チェイテが継ぐことになった。
ロンの育てた見習いたちが、覚者たちの武器を継承したことに、運命的なめぐり合わせを感じずにはいられなかった。
アリエルの背後にはアジサイが、チェイテの背後にはミツマタが立っているように幻覚した。
「で、シャルリスが帰って来ないと聞いたが」
「それはもう大丈夫」
エレノアが捜索隊を出してくれたらしい。おかげでシャルリスを見つけることが出来た――と、アリエルとチェイテが交互にしゃべりながら教えてくれた。
「で、シャルリスはどこだ?」
シャルリスはいつも仔犬のように、ロンのもとに真っ先に駆け寄ってくる。そのシャルリスの姿が見当たらない。
「それが……。今は牢屋に」
「牢屋? 何やらかしたんだ?」
私のほうから説明させてもらおう――と、声が割り込んだ。
エレノアだ。
「久しぶりだな。ロン。都市竜たちとのコミュニケーションはうまくいっているか?」
「ボチボチってところですね」
各都市竜たちが老衰するまえに、すべての人類を安全な場所に避難させる。
それがロンたち覚者に与えられた、目下の役目だった。
ひとまず都市竜たちの寿命の程を探り出そうと思っているのだが、正直よくわからない。それに、今のところこの地上都市のほかに、人類の避難先がないのも問題だった。
「さて、シャルリスのことだがな。彼女は自分から牢屋に閉じこもったのだ。どうやら、【腐肉の暴食】の制御ができなくなったようだ」
「それは大問題ですね。シャルリスは無事なんですか?」
寄生されたという疑惑が出てから、今まで、そんなことは起きなかった。シャルリスの体内で休んでいるうちに、バトリはチカラを取り戻したということだろうか。
「理由はよくわからんが、彼女自身に問題はないと思う。みずから牢屋に閉じこもるという判断ができたぐらいだしな」
「これはまたオレが付きっ切りになる必要がありますかね」
「それよりも、シャルリスがひとつ面白いチカラを見せてくれてな」
エレノアが、おい、と遠くに呼びかけていた。
花の咲いていない生垣から、気まずそうに出てきた男がいた。青い髪を真ん中分けにしているメガネの男。ルエド・ノラインだった。
「はあ。彼が何か?」
正直、ロンはルエドにたいして、あまり良い思い出がない。
「ゾンビ化した彼を、シャルリスは連れ帰ったのだ。が、シャルリスは彼のことを、人間に戻してみせた」
「ゾンビから人間に戻した?」
そうだ、とエレノアがうなずいた。
「ずっと採血などを続けて、研究をしてきたのだがな。ついにシャルリスはその能力を開花させたようだ。シャルリス・ネクティリアには、ゾンビを人間に戻すチカラがあるのだ。彼が、その生きた証拠だ」
と、エレノアは、ルエドの背中を思いきり叩いていた。
ルエドはそのひょうしにズれたメガネを、薬指で持ち上げていた。
もしかすると、そうなるかもしれない――とロンは思っていた。しかしまさかホントウに、その能力が開花するとは思っていなかった。
彼女は。
この世界の、救世主、になれる。
(シャルリスに限って、大丈夫だとは思うが)
バトリの制御もできていたはずだし、ゾンビに襲われてもシャルリスなら問題ない。瘴気の影響も受けない。チェイテやアリエルといった優れた竜騎士たちも付いている。大したことはないだろうと、タカをくくっていた。
地上都市。
城の中庭。
穀物庫や武器庫のある中庭で、足元は緑の芝でおおわれている。
ロンが降り立つと、すぐにチェイテとアリエルが駆け寄ってきた。
「おかえりなさい」
「おかえり」
と、ふたりが出迎えてくれた。
駆け寄ってきたチェイテの背中には、大槌がかつがれていた。以前は小さかったチェイテが、この3年でもはやロンと並ぶほどの身長になっている。ずいぶんと大きくなったものだ。
「そっちもお疲れさま。ドワーフを運んできたんだってな。チェイテは、ミツマタの武器を継いだか」
「うん」
ミツマタの戦死についても、ハマメリスから聞いている。個人的な付き合いは薄かったけれど、同僚の死には悼むものがあった。
覚者アジサイの裁縫針を、アリエルが継いだ。 覚者ミツマタの大槌を、チェイテが継ぐことになった。
ロンの育てた見習いたちが、覚者たちの武器を継承したことに、運命的なめぐり合わせを感じずにはいられなかった。
アリエルの背後にはアジサイが、チェイテの背後にはミツマタが立っているように幻覚した。
「で、シャルリスが帰って来ないと聞いたが」
「それはもう大丈夫」
エレノアが捜索隊を出してくれたらしい。おかげでシャルリスを見つけることが出来た――と、アリエルとチェイテが交互にしゃべりながら教えてくれた。
「で、シャルリスはどこだ?」
シャルリスはいつも仔犬のように、ロンのもとに真っ先に駆け寄ってくる。そのシャルリスの姿が見当たらない。
「それが……。今は牢屋に」
「牢屋? 何やらかしたんだ?」
私のほうから説明させてもらおう――と、声が割り込んだ。
エレノアだ。
「久しぶりだな。ロン。都市竜たちとのコミュニケーションはうまくいっているか?」
「ボチボチってところですね」
各都市竜たちが老衰するまえに、すべての人類を安全な場所に避難させる。
それがロンたち覚者に与えられた、目下の役目だった。
ひとまず都市竜たちの寿命の程を探り出そうと思っているのだが、正直よくわからない。それに、今のところこの地上都市のほかに、人類の避難先がないのも問題だった。
「さて、シャルリスのことだがな。彼女は自分から牢屋に閉じこもったのだ。どうやら、【腐肉の暴食】の制御ができなくなったようだ」
「それは大問題ですね。シャルリスは無事なんですか?」
寄生されたという疑惑が出てから、今まで、そんなことは起きなかった。シャルリスの体内で休んでいるうちに、バトリはチカラを取り戻したということだろうか。
「理由はよくわからんが、彼女自身に問題はないと思う。みずから牢屋に閉じこもるという判断ができたぐらいだしな」
「これはまたオレが付きっ切りになる必要がありますかね」
「それよりも、シャルリスがひとつ面白いチカラを見せてくれてな」
エレノアが、おい、と遠くに呼びかけていた。
花の咲いていない生垣から、気まずそうに出てきた男がいた。青い髪を真ん中分けにしているメガネの男。ルエド・ノラインだった。
「はあ。彼が何か?」
正直、ロンはルエドにたいして、あまり良い思い出がない。
「ゾンビ化した彼を、シャルリスは連れ帰ったのだ。が、シャルリスは彼のことを、人間に戻してみせた」
「ゾンビから人間に戻した?」
そうだ、とエレノアがうなずいた。
「ずっと採血などを続けて、研究をしてきたのだがな。ついにシャルリスはその能力を開花させたようだ。シャルリス・ネクティリアには、ゾンビを人間に戻すチカラがあるのだ。彼が、その生きた証拠だ」
と、エレノアは、ルエドの背中を思いきり叩いていた。
ルエドはそのひょうしにズれたメガネを、薬指で持ち上げていた。
もしかすると、そうなるかもしれない――とロンは思っていた。しかしまさかホントウに、その能力が開花するとは思っていなかった。
彼女は。
この世界の、救世主、になれる。
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