《完結》腐敗した世界の空で、世界最強のドラゴンは、3人の少女を竜騎士に育てます。

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――第3章エピローグ――

「なにグズグズしてるっスか。ほら、さっさと下りるっスよ」


「急かすなよ! ホントウにマスクをしなくても良いンだろうな」


「大丈夫っスよ。怖がってないで、さっさと行くっスよ」
 と、不安がる者たちを、シャルリスは叱咤していた。


 廃都内にいるゾンビはすでに、覚者たちが掃討してくれている。
 瘴気も払われた。


 世界はいまだに瘴気に満ちているけれど、廃都のなかだけは景色が鮮やかだ。円筒状の魔防壁シールドで、廃都が包まれているかのようにも見えた。


 帝都竜ヘルシングは、廃都内に着地していた。
ロンが誘導したのだ。


 クルスニク人たちは、リフトを使って地上へと移住していた。前回の【都市竜クルスニク脱出作戦】のことを考えると、ずいぶんと楽だ。住民の移住を、シャルリスは手伝っている。


「シャルリスはクチを出さないほうが良い」
 と、チェイテに注意された。


「そうっスね。ボクがやるとケンカになっちゃうっスからね。こういうのは、アリエルに任せるっスよ」


 アリエルはさきほどから、手際良く住民たちを地上へとおろしている。
 さすがの人望である。


 エレノアをはじめとする竜騎士たちも、荷物の運搬を手伝ってくれていた。


「まさか地上に住むことになるなんて、思わなかった」
 と、チェイテが呟くように言った。


「そりゃボクだって、想定してなかったっスよ。ボクたちだけじゃなくて、誰も思ってなかったんじゃないっスかね」


「これも、シャルリスのおかげ」


「なんでボクなんっスか?」


「シャルリスの血から、瘴気を払う魔法が作られたと聞いている」


「らしいっスけど、でもみんなのおかげっスよ」


 クルスニク人をここまで守り続けてきた竜騎士たち。シャルリスの血から魔法を開発した、覚者ヒペリカム。帝都竜ヘルシングを誘導したロン。


 そのなかには、暴徒たちからクルスニク人を守った自分たちの存在もくわえて良いと思う。


「たしかに」


「暴徒の連中はどうなったっスかね。何か聞いてるっスか?」


「シャングはアリエルがトドメを刺したから、首謀者死亡ってことになってる。ほかの者たちは謹慎処分」


「マオ・ノスフィルトとは話をしたっスか?」


「うん。マオはノスフィルト家への恨みをなくしてはいない。だけど、すこしは打ち解けることが出来たと思う」


「そうっスか」


「そっちは? リー・フォルトとは何か話をした?」


「いちおう謝ってはくれたっスよ。【腐肉の暴食】を制御できてるってわかると、リーも安心したみたいっス。それにクルスニク人が出て行ってくれるなら、文句はないってことで」


 謹慎処分ということで、ふたりの竜騎士たちは独房に入れられていた。会いに行って、すこし話をしたのだ。


「そう」


 シャングによって行われた、今回の暴徒騒ぎ。


 シャング決死の作戦は、功を奏したと見るべきなのだろう。それによって、クルスニク人が帝都を出て行く決定打となったのだ。あんな騒ぎがあった後では、クルスニク人だって、帝都に留まろうとは思わない。


「じゃあ、下ろしますよー」
 と、アリエルが声をあげた。


 シャルリスたちの乗っていたリフトが、地上へと降下してゆく。


「アリエルは、なんかたくましくなった気がするっスよ。一歩先に行かれた感じというか」


「私も、負けてられない」


「もちろんボクもっスよ」


 リフトが地上についた。シャルリスはリフトえある木造の板から降りて、地上へと足をつけた。


 おもいきり空気を吸い込んだ。


 人類は、ついに地上に居場所を確保した――ということで良いのだろうか。


 腹をえぐられるような喜びを覚えた。今、自分は歴史の節目にいるのだ。しかしそんな喜びに水をさすような感覚を受けた。


 シャルリスの腹の奥で、バトリが微笑んだ気がしたのだった。

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