《完結》腐敗した世界の空で、世界最強のドラゴンは、3人の少女を竜騎士に育てます。
18-3.アリエルの戦い Ⅲ
シャングの両親ともに、竜騎士だった。今はもう2人とも殉職している。「帝都を守護する竜騎士となれ」というのが、両親のクチ癖だった。
厭だとは思わなかった。両親のカッコウ良い背中を見て育ったのだ。自分も帝都に仕える竜騎士になろうと決意していた。
全身を包帯で巻きつけているのは、人体実験によるものだった。
リー・フォルトが受けた実験。人工的に竜人族をつくりだすという実験だ。
実験に使われる子供は、おもに貧民街の子どもたちだった。子どもたちを実験体にするのは、あまりに胸が痛んだ。
後世のために、竜人族の存在が必要だというのは理解できた。
だからシャングはみずから、その被験体として志願したのだ。
好きなように使ってくれて構わないと言った。それで1人でも多くの実験体となる子供たちを救えると思った。
結果は、失敗だった。
まるで適合しなかった。
それでも何度も執拗に実験をつづけてもらった。
しだいに皮膚がボロボロになってしまったのだ。
包帯を巻きつけることになったことに、後悔はない。自分が選んだことだ。帝都のため、全力を尽くしたと思う。
後悔があるとすれば、自分がリー・フォルトの代わりになってやれなかったことぐらいだ。
リーだけじゃない。
ゴウ・ゼレイド。
自分が受け持った生徒だったのに、救うことが出来なかった。この手は、このカラダは、人を救うには、あまりに貧弱だ。
【クルスニク人抹殺作戦】
これは私憤ではない、と言った。
そのつもりだった。
しかしゴウをゾンビ化させられたことが、自分のなかで大きな原動力になっていることは、たしかだった。
間違えているとは思わない。
この命をなげうってでも、帝都の民を守る。
クルスニク人を抹殺して見せる。
「私の愛した帝都を、何人たりとも傷つけさせはしまい!」
クルスニク人が来たせいで、この右脇腹地区に住んでいた貧民たちが、行き場を失ってしまった。それもまた、クルスニク人の罪だ。
シャングは、アジサイに向かって長刀で斬りかかった。ドラゴンを足場にして跳びあがる。そして大上段からの振り下ろし。
「は? 事情なんかどうでも良いんだよ。美人を傷つけんなって話しかしてねェ」
シャングの一刀。
アジサイが受けようとしてきた。
「バカめ。この振り下ろしを受け切れるものなら、受け止めてみよッ」
これだけ勢いのついた振り下ろしを、受け切れるはずがない。叩き潰す勢いで振り下ろす。
剣と剣。結び合った。
アジサイは右手だけで支えた針で、見事に受け止めていた。これが、覚者。人間離れしている。
しかし。
次手。
剣を引く。
アジサイの左脇腹を狙っての切り上げ。この長刀で切り上げてくるとは思わなかったのだろう。
それにアジサイは剣を受け止めた衝撃で麻痺していた。
シャングの剣が、アジサイの腹を切り上げた。
「獲ったァ!」
剣は、確実にアジサイの脇腹を通っていた。
「へぇ。やるじゃねェか」
アジサイの装備していた針が地面に落っこちた。
アジサイは血を吐いたが、不敵に微笑んでいた。
「これでも帝都の竜騎士長だ。しかし貴様に左手があったなら、私が負けていただろう。見事だ」
「まだ、オレは負けちゃいねェけどな」
「最後まで、戯言を吐くか」
瞬間。
せやぁぁ――ッ……とアリエルが跳びかかってきた。
まだ動けたのか。想定外だ。
アリエルはアジサイの針を手に持つと、シャングに突き刺しかかってきた。
アジサイの左脇腹を切り上げた剣を引こうとした。
が、抜けない。
「なにッ」
シャングをつつんでいる包帯。袖のあたりがアジサイに縫い付けられている。そのせいで腕が動かないのだ。
「オレさまの勝ちだ」
アジサイがそう言った。
アリエルのにぎった針が、シャングの脇腹に深々と突き刺さった。
「ま、まさかこの私が……ッ」
リー。
マオ。
それにゴウ。
自分が手塩にかけていた見習い竜騎士たちの笑顔が、脳裏に明滅した。いや。もう見習いではなく、竜騎士だったな、と思いだした。
厭だとは思わなかった。両親のカッコウ良い背中を見て育ったのだ。自分も帝都に仕える竜騎士になろうと決意していた。
全身を包帯で巻きつけているのは、人体実験によるものだった。
リー・フォルトが受けた実験。人工的に竜人族をつくりだすという実験だ。
実験に使われる子供は、おもに貧民街の子どもたちだった。子どもたちを実験体にするのは、あまりに胸が痛んだ。
後世のために、竜人族の存在が必要だというのは理解できた。
だからシャングはみずから、その被験体として志願したのだ。
好きなように使ってくれて構わないと言った。それで1人でも多くの実験体となる子供たちを救えると思った。
結果は、失敗だった。
まるで適合しなかった。
それでも何度も執拗に実験をつづけてもらった。
しだいに皮膚がボロボロになってしまったのだ。
包帯を巻きつけることになったことに、後悔はない。自分が選んだことだ。帝都のため、全力を尽くしたと思う。
後悔があるとすれば、自分がリー・フォルトの代わりになってやれなかったことぐらいだ。
リーだけじゃない。
ゴウ・ゼレイド。
自分が受け持った生徒だったのに、救うことが出来なかった。この手は、このカラダは、人を救うには、あまりに貧弱だ。
【クルスニク人抹殺作戦】
これは私憤ではない、と言った。
そのつもりだった。
しかしゴウをゾンビ化させられたことが、自分のなかで大きな原動力になっていることは、たしかだった。
間違えているとは思わない。
この命をなげうってでも、帝都の民を守る。
クルスニク人を抹殺して見せる。
「私の愛した帝都を、何人たりとも傷つけさせはしまい!」
クルスニク人が来たせいで、この右脇腹地区に住んでいた貧民たちが、行き場を失ってしまった。それもまた、クルスニク人の罪だ。
シャングは、アジサイに向かって長刀で斬りかかった。ドラゴンを足場にして跳びあがる。そして大上段からの振り下ろし。
「は? 事情なんかどうでも良いんだよ。美人を傷つけんなって話しかしてねェ」
シャングの一刀。
アジサイが受けようとしてきた。
「バカめ。この振り下ろしを受け切れるものなら、受け止めてみよッ」
これだけ勢いのついた振り下ろしを、受け切れるはずがない。叩き潰す勢いで振り下ろす。
剣と剣。結び合った。
アジサイは右手だけで支えた針で、見事に受け止めていた。これが、覚者。人間離れしている。
しかし。
次手。
剣を引く。
アジサイの左脇腹を狙っての切り上げ。この長刀で切り上げてくるとは思わなかったのだろう。
それにアジサイは剣を受け止めた衝撃で麻痺していた。
シャングの剣が、アジサイの腹を切り上げた。
「獲ったァ!」
剣は、確実にアジサイの脇腹を通っていた。
「へぇ。やるじゃねェか」
アジサイの装備していた針が地面に落っこちた。
アジサイは血を吐いたが、不敵に微笑んでいた。
「これでも帝都の竜騎士長だ。しかし貴様に左手があったなら、私が負けていただろう。見事だ」
「まだ、オレは負けちゃいねェけどな」
「最後まで、戯言を吐くか」
瞬間。
せやぁぁ――ッ……とアリエルが跳びかかってきた。
まだ動けたのか。想定外だ。
アリエルはアジサイの針を手に持つと、シャングに突き刺しかかってきた。
アジサイの左脇腹を切り上げた剣を引こうとした。
が、抜けない。
「なにッ」
シャングをつつんでいる包帯。袖のあたりがアジサイに縫い付けられている。そのせいで腕が動かないのだ。
「オレさまの勝ちだ」
アジサイがそう言った。
アリエルのにぎった針が、シャングの脇腹に深々と突き刺さった。
「ま、まさかこの私が……ッ」
リー。
マオ。
それにゴウ。
自分が手塩にかけていた見習い竜騎士たちの笑顔が、脳裏に明滅した。いや。もう見習いではなく、竜騎士だったな、と思いだした。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
58
-
-
23252
-
-
52
-
-
969
-
-
381
-
-
70810
-
-
35
-
-
2
-
-
24251
コメント