《完結》腐敗した世界の空で、世界最強のドラゴンは、3人の少女を竜騎士に育てます。
17-4.チェイテとマオ
「シャルリス!」
チェイテはそう叫んだ。
バケモノにつかまれて、シャルリスは空へと誘拐された。一瞬しか見えなかったけれど、バケモノの風貌はリーとかいう、帝都の竜騎士にも見えた。シャルリスはどうにか、リーの手を振りほどいたようだ。
月明かりを背景にして、空で向かい合っている
影が見て取れた。
シャルリスを援護しようと思った。そのためには空に行く必要がある。竜舎にいるドラゴンが必要だ。
「アリエル。竜舎まで走れる?」
「はい」
アリエルはもう準備できていたようだ。いつものようにそのブロンドの髪をゴムでツインテールに束ねていた。
部屋は半壊していた。開いた壁穴から、屋根伝いに詰所から跳びおりた。
すぐ近くにあった竜舎から、自分たちのドラゴンを連れ出した。
こうして竜舎に来て、ようやっと地区の異変が伝わってきた。
ほかのドラゴンも出払っている。異変に気付いた竜騎士たちは、すでに出撃しているようだ。
すぐに鞍を装着してまたがった。ホントウは竜具も装備しておきたかったが、そこまでの余裕はない。
空。
シャルリスとリーのふたりが、月明かりを背景にして衝突しているのが見えた。
戦場は空だけではなかった。暴徒の連中が、なだれ込んで来ている。シャルリスも放ってはおけないが、暴徒の連中も放ってはおけない。
「アリエルは、民間人の保護に回って。私はシャルリスの援護に入る」
「わかりました」
アリエルは黄金色のドラゴンにまたがって、暴徒がなだれ込んで来ている城門棟のほうへと飛んで行った。それを確認して、チェイテは空へ向かうことにした。
が。
見慣れぬ竜騎士が1騎、チェイテに向かって飛びかかってきた。
チェイテはドラゴンの手綱を引いて、すぐに後ろへ引かせた。飛びかかってきたドラゴンが、チェイテの前に立ちふさがった。
右脇腹地区は土台もほとんど木造になっている。飛びかかってきたドラゴンが着地する衝撃で、足元の土台には亀裂が入って、木っ端が弾けとんだ。
木っ端の一部がチェイテの頬をかすめていく。頬に傷が入るのがわかった。傷ならもともとあるのだ。別に気にもならない。
頬の傷から漏れ出た血を、親指の腹でぬぐう。
「行かせねェよ。てめェの相手はオレだ」
「誰?」
ヘルムで顔が隠れているため、よくわからない。
「おっと、顔が見えねェと、わかんねェか」
ヘルムを脱いだ。
赤毛に赤い目をした青年だった。
マオ・ノスフィルト。
帝都の竜騎士のなかにいた独りだ。
チェイテは正直、マオのことを良くは知らない。個人的に何か話したわけでもないし、ケンカをしたこともない。ただ当主――すなわち父の妾の子とだけ聞いている。
たぶん。
義理の弟、ということになるのだろう。
「なんの用?」
「もちろん、殺しに来た。クルスニク人を皆殺しにしに来た。でもその前に、オレはノスフィルト家から受けた恨みを晴らしに来た」
と、マオは腰に佩していた剣を抜いた。
月明かりを受けて刀身が不気味にきらめいていた。
「ノスフィルト家から受けた恨み?」
「オレはノスフィルト家の親父と、妾とのあいだに生まれた。けれど、赤毛に赤目だったオレは、ノスフィルト家の子とは認知されず、母さんもノスフィルト家から追放されることになった」
「それで?」
たしかにノスフィルト家は、血統にこだわる家柄である。代代帝国の公爵家であることも、その原因かもしれない。
「妾の子であるオレを追放したノスフィルト家に、ザマァ展開をプレゼントしてやろうと思ってな。追放された妾の子が、本妻の子を実力で殺す。どこにでもある陳腐な話さ」
と、ドラゴンに騎乗したまま、マオは肩をすくめてみせた。
「そう」
たぶん、恨まれているのだろう。
けど、家の問題だ。
チェイテが個人的に何かしたわけではないので、恨まれてもどうしようもない。むろん謝る気もない。
「オレは本気でお前を殺しにかかる。てめェも本気で来いよ」
「わかった」
シャルリスの援護に入りたかったけれど、チョット難しそうだ。
クルスニク人を殺しに来たということは、暴徒【帝国の盾】に加担しているのだろう。
ならば鎮圧するまでだ。
チェイテはそう叫んだ。
バケモノにつかまれて、シャルリスは空へと誘拐された。一瞬しか見えなかったけれど、バケモノの風貌はリーとかいう、帝都の竜騎士にも見えた。シャルリスはどうにか、リーの手を振りほどいたようだ。
月明かりを背景にして、空で向かい合っている
影が見て取れた。
シャルリスを援護しようと思った。そのためには空に行く必要がある。竜舎にいるドラゴンが必要だ。
「アリエル。竜舎まで走れる?」
「はい」
アリエルはもう準備できていたようだ。いつものようにそのブロンドの髪をゴムでツインテールに束ねていた。
部屋は半壊していた。開いた壁穴から、屋根伝いに詰所から跳びおりた。
すぐ近くにあった竜舎から、自分たちのドラゴンを連れ出した。
こうして竜舎に来て、ようやっと地区の異変が伝わってきた。
ほかのドラゴンも出払っている。異変に気付いた竜騎士たちは、すでに出撃しているようだ。
すぐに鞍を装着してまたがった。ホントウは竜具も装備しておきたかったが、そこまでの余裕はない。
空。
シャルリスとリーのふたりが、月明かりを背景にして衝突しているのが見えた。
戦場は空だけではなかった。暴徒の連中が、なだれ込んで来ている。シャルリスも放ってはおけないが、暴徒の連中も放ってはおけない。
「アリエルは、民間人の保護に回って。私はシャルリスの援護に入る」
「わかりました」
アリエルは黄金色のドラゴンにまたがって、暴徒がなだれ込んで来ている城門棟のほうへと飛んで行った。それを確認して、チェイテは空へ向かうことにした。
が。
見慣れぬ竜騎士が1騎、チェイテに向かって飛びかかってきた。
チェイテはドラゴンの手綱を引いて、すぐに後ろへ引かせた。飛びかかってきたドラゴンが、チェイテの前に立ちふさがった。
右脇腹地区は土台もほとんど木造になっている。飛びかかってきたドラゴンが着地する衝撃で、足元の土台には亀裂が入って、木っ端が弾けとんだ。
木っ端の一部がチェイテの頬をかすめていく。頬に傷が入るのがわかった。傷ならもともとあるのだ。別に気にもならない。
頬の傷から漏れ出た血を、親指の腹でぬぐう。
「行かせねェよ。てめェの相手はオレだ」
「誰?」
ヘルムで顔が隠れているため、よくわからない。
「おっと、顔が見えねェと、わかんねェか」
ヘルムを脱いだ。
赤毛に赤い目をした青年だった。
マオ・ノスフィルト。
帝都の竜騎士のなかにいた独りだ。
チェイテは正直、マオのことを良くは知らない。個人的に何か話したわけでもないし、ケンカをしたこともない。ただ当主――すなわち父の妾の子とだけ聞いている。
たぶん。
義理の弟、ということになるのだろう。
「なんの用?」
「もちろん、殺しに来た。クルスニク人を皆殺しにしに来た。でもその前に、オレはノスフィルト家から受けた恨みを晴らしに来た」
と、マオは腰に佩していた剣を抜いた。
月明かりを受けて刀身が不気味にきらめいていた。
「ノスフィルト家から受けた恨み?」
「オレはノスフィルト家の親父と、妾とのあいだに生まれた。けれど、赤毛に赤目だったオレは、ノスフィルト家の子とは認知されず、母さんもノスフィルト家から追放されることになった」
「それで?」
たしかにノスフィルト家は、血統にこだわる家柄である。代代帝国の公爵家であることも、その原因かもしれない。
「妾の子であるオレを追放したノスフィルト家に、ザマァ展開をプレゼントしてやろうと思ってな。追放された妾の子が、本妻の子を実力で殺す。どこにでもある陳腐な話さ」
と、ドラゴンに騎乗したまま、マオは肩をすくめてみせた。
「そう」
たぶん、恨まれているのだろう。
けど、家の問題だ。
チェイテが個人的に何かしたわけではないので、恨まれてもどうしようもない。むろん謝る気もない。
「オレは本気でお前を殺しにかかる。てめェも本気で来いよ」
「わかった」
シャルリスの援護に入りたかったけれど、チョット難しそうだ。
クルスニク人を殺しに来たということは、暴徒【帝国の盾】に加担しているのだろう。
ならば鎮圧するまでだ。
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