《完結》腐敗した世界の空で、世界最強のドラゴンは、3人の少女を竜騎士に育てます。
14-2.始祖
「こうして君のカラダを調べてみると、いくつかわかったことがあるよ」
ヒペリカムはそう言った。
さっきから、シャルリスの知らない魔法陣をいくつも展開していた。
魔法陣の放つ光によって、拷問室が彩られている。薄気味悪さは払拭されていた。
「何かわかったっスか」
自分のカラダが解明されていくのは、シャルリスにとっても嬉しいことだった。自分のカラダの状態がわからないというのは、不安でもあるのだ。それに解明されることによって、世界を救えるかもしれないのだ。
チョット前までは、バトリのことを自分の中から引きはがす方法も見出して欲しいと思っていた。
今は、あまりそうは思わない。
バトリとの同居に、慣れてきた。それに、バトリのチカラは、シャルリスの武器にもなる。
「君は、始祖と同じようなチカラを持っているということだよ」
「始祖って、【腐肉の暴食】とかマシュ・ルーマンのことっスか」
「《不死の魔力》は通常の人間には扱えない魔力だ。だから通常の人間に付与したときは、理性を失ったバケモノになる」
「ゾンビっすね」
うん、とヒペリカムはうなずいた。
「しかし始祖と言われる連中は、この《不死の魔力》を自在にあやつるチカラを持っている。だから理性を保つことが出来ているわけだ。《不死の魔力》を操ることによって、みずあらの肉体を変形させたり、増殖させたり、他人に付与したりする――ということだね」
「なるほど」
勉強はあまり好きではないけれど、自分のカラダのことなので、シャルリスはガンバって理解しようとつとめた。
「君も、同じだ」
と、ヒペリカムはシャルリスを指差した。
「ボクも?」
「君も《不死の魔力》を操ることが出来るんだ。だから、理性を失わないし、自在に肉を生やしたりすることも出来る。チョットやって見せてよ」
「どんな感じでもいいっスか?」
「うん」
シャルリスは自分の着ている布の鎧を引っ張って、右肩を露出させた。右肩から肉の腕が生えてくる。
「こんな感じっスね」
「おぉ! まさしくゾンビの腕だ……。うつくしいね」
と、ヒペリカムの紫色の目玉が、らんらんと輝いていた。風貌は不気味だけれど、目はとってもキレイだった。ロンやアジサイと同じだ。子供みたいにキラキラした目をしている。
「うつくしい――っスかね……」
そんなことを言われたのは、はじめてだ。
っていうか、自分で見てもグロテスクだと思う。
「オレは、生身の人間には触れないんだよ。対人接触は苦手なんだ。だけど、死んでるものには触れる。ゾンビとか、こういう腕とかね」
と、ヒペリカムはシャルリスの生えている肉の腕に触れてきた。死んでるのか。この腕は。たしかに白いし、生きた人間の腕には見えないけれど。
「じゃあ、人と握手とかできないっスか?」
「まあね。妻がゾンビになってから、そうなってしまったんだ。病気――なのかな。わからないけどね。この腕に感覚はあるのかい?」
「あるっスよ。ボクの体内にいる【腐肉の暴食】の意思で生やした物には、ボクの感覚はないっスけど、ボクの意思で発生させたものには、チャント感覚があるっス」
腕も自在にあやつれるし、翼だって生やすことが出来る。
竜読みの巫女が巨大種となったときがキッカケだった。バトリのチカラを借りた。それ以来、シャルリスはバトリのチカラを使うことを覚えた。バトリの意思ではなくて、シャルリスの意思で肉の翼だって操ることが出来るのだ。
「それもヤッパリ《不死の魔力》を利用してるわけだ」
「《不死の魔力》って言うのに、死んでるってのはチョット変な感じっスけど……」
「状態としては、死体みたいなものだからさ。ほら、生やしている腕は、こんなにも冷たいし」
と、ヒペリカムが、シャルリスの生やしている腕に頬ずりしてきた。チョット気味が悪い。
「そう――っスかね」
「失礼。つい興奮してしまった。つまり何が言いたいかって言うとね。君もまた始祖だってことだ」
「ボクが、始祖?」
「うん。《不死の魔力》を操って、他人をゾンビ化させることも、出来るはずだよ」
「マジっスか」
どうやってそんなチカラを使うのかわからないし、わかりたくもなかった。
「もう少し感覚をつかめば出来るだろうね。でも、他の人にはあまり言わないほうが良いよ。危険視されるだろうから」
自分でも、自分の存在が怖ろしくなってきた。これもすべては、バトリに寄生された影響なのだろう。
しかし――。
「どうしてボクは、そんなことが出来るんっスかね? だって普通は、ゾンビになっちゃうっスよね」
ヒペリカムはシャルリスの腕から離れると、神妙な表情になった。
「きっと何か重大な意味があるんだろうね。今は、適合した、ということぐらいしか言えないけれど」
と、ヒペリカムは、ボサボサの紫色の髪の毛をかきむしっていた。
「ボクと《不死の魔力》の相性が良かった――ということっスか」
「まぁ、そう考えてくれて構わないよ。今日はこれぐらいにしておこう。ボクもやらなくちゃならないことが出来た。君の血液を利用して、新しい魔法を開発しようと思う」
「そんなことが出来るっスか」
「うん。たぶんね。時間はかかるけれど、近い将来にはきっと、役立つ魔法になるよ」
「どんな魔法が出来るんっスか?」
「たとえば、地上の瘴気をはらう魔法とかね。あると便利だろ。今日はご苦労さま」
ヒペリカムはそう言うと、生み出した魔法陣を凝視していた。
もう終わったのだろうか。
次から次へと色とりどりの魔法陣が展開されていく。
本気で瘴気を取っ払う魔法をつくりだすつもりなのだろうか。ホントウにそんな魔法が出来るのだろうか。気になったけれど、ヒペリカムは集中しているようだったし、話しかけるのは悪いかな、と思った。
ヒペリカムはそう言った。
さっきから、シャルリスの知らない魔法陣をいくつも展開していた。
魔法陣の放つ光によって、拷問室が彩られている。薄気味悪さは払拭されていた。
「何かわかったっスか」
自分のカラダが解明されていくのは、シャルリスにとっても嬉しいことだった。自分のカラダの状態がわからないというのは、不安でもあるのだ。それに解明されることによって、世界を救えるかもしれないのだ。
チョット前までは、バトリのことを自分の中から引きはがす方法も見出して欲しいと思っていた。
今は、あまりそうは思わない。
バトリとの同居に、慣れてきた。それに、バトリのチカラは、シャルリスの武器にもなる。
「君は、始祖と同じようなチカラを持っているということだよ」
「始祖って、【腐肉の暴食】とかマシュ・ルーマンのことっスか」
「《不死の魔力》は通常の人間には扱えない魔力だ。だから通常の人間に付与したときは、理性を失ったバケモノになる」
「ゾンビっすね」
うん、とヒペリカムはうなずいた。
「しかし始祖と言われる連中は、この《不死の魔力》を自在にあやつるチカラを持っている。だから理性を保つことが出来ているわけだ。《不死の魔力》を操ることによって、みずあらの肉体を変形させたり、増殖させたり、他人に付与したりする――ということだね」
「なるほど」
勉強はあまり好きではないけれど、自分のカラダのことなので、シャルリスはガンバって理解しようとつとめた。
「君も、同じだ」
と、ヒペリカムはシャルリスを指差した。
「ボクも?」
「君も《不死の魔力》を操ることが出来るんだ。だから、理性を失わないし、自在に肉を生やしたりすることも出来る。チョットやって見せてよ」
「どんな感じでもいいっスか?」
「うん」
シャルリスは自分の着ている布の鎧を引っ張って、右肩を露出させた。右肩から肉の腕が生えてくる。
「こんな感じっスね」
「おぉ! まさしくゾンビの腕だ……。うつくしいね」
と、ヒペリカムの紫色の目玉が、らんらんと輝いていた。風貌は不気味だけれど、目はとってもキレイだった。ロンやアジサイと同じだ。子供みたいにキラキラした目をしている。
「うつくしい――っスかね……」
そんなことを言われたのは、はじめてだ。
っていうか、自分で見てもグロテスクだと思う。
「オレは、生身の人間には触れないんだよ。対人接触は苦手なんだ。だけど、死んでるものには触れる。ゾンビとか、こういう腕とかね」
と、ヒペリカムはシャルリスの生えている肉の腕に触れてきた。死んでるのか。この腕は。たしかに白いし、生きた人間の腕には見えないけれど。
「じゃあ、人と握手とかできないっスか?」
「まあね。妻がゾンビになってから、そうなってしまったんだ。病気――なのかな。わからないけどね。この腕に感覚はあるのかい?」
「あるっスよ。ボクの体内にいる【腐肉の暴食】の意思で生やした物には、ボクの感覚はないっスけど、ボクの意思で発生させたものには、チャント感覚があるっス」
腕も自在にあやつれるし、翼だって生やすことが出来る。
竜読みの巫女が巨大種となったときがキッカケだった。バトリのチカラを借りた。それ以来、シャルリスはバトリのチカラを使うことを覚えた。バトリの意思ではなくて、シャルリスの意思で肉の翼だって操ることが出来るのだ。
「それもヤッパリ《不死の魔力》を利用してるわけだ」
「《不死の魔力》って言うのに、死んでるってのはチョット変な感じっスけど……」
「状態としては、死体みたいなものだからさ。ほら、生やしている腕は、こんなにも冷たいし」
と、ヒペリカムが、シャルリスの生やしている腕に頬ずりしてきた。チョット気味が悪い。
「そう――っスかね」
「失礼。つい興奮してしまった。つまり何が言いたいかって言うとね。君もまた始祖だってことだ」
「ボクが、始祖?」
「うん。《不死の魔力》を操って、他人をゾンビ化させることも、出来るはずだよ」
「マジっスか」
どうやってそんなチカラを使うのかわからないし、わかりたくもなかった。
「もう少し感覚をつかめば出来るだろうね。でも、他の人にはあまり言わないほうが良いよ。危険視されるだろうから」
自分でも、自分の存在が怖ろしくなってきた。これもすべては、バトリに寄生された影響なのだろう。
しかし――。
「どうしてボクは、そんなことが出来るんっスかね? だって普通は、ゾンビになっちゃうっスよね」
ヒペリカムはシャルリスの腕から離れると、神妙な表情になった。
「きっと何か重大な意味があるんだろうね。今は、適合した、ということぐらいしか言えないけれど」
と、ヒペリカムは、ボサボサの紫色の髪の毛をかきむしっていた。
「ボクと《不死の魔力》の相性が良かった――ということっスか」
「まぁ、そう考えてくれて構わないよ。今日はこれぐらいにしておこう。ボクもやらなくちゃならないことが出来た。君の血液を利用して、新しい魔法を開発しようと思う」
「そんなことが出来るっスか」
「うん。たぶんね。時間はかかるけれど、近い将来にはきっと、役立つ魔法になるよ」
「どんな魔法が出来るんっスか?」
「たとえば、地上の瘴気をはらう魔法とかね。あると便利だろ。今日はご苦労さま」
ヒペリカムはそう言うと、生み出した魔法陣を凝視していた。
もう終わったのだろうか。
次から次へと色とりどりの魔法陣が展開されていく。
本気で瘴気を取っ払う魔法をつくりだすつもりなのだろうか。ホントウにそんな魔法が出来るのだろうか。気になったけれど、ヒペリカムは集中しているようだったし、話しかけるのは悪いかな、と思った。
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