《完結》腐敗した世界の空で、世界最強のドラゴンは、3人の少女を竜騎士に育てます。
13-3.覚者に隠された真意
戦。
バトリの言葉が、ロンの胸裏をザワつかせた。
「気色の悪いことを言いやがる」
あんなヤツと、シャルリスはよく上手に付き合えるものだ。
年表に視線を落とす。
このロト・ワールドの時代は、大きく分けると3つに区切ることが出来る。
帝国時代。
地上時代。
飛翔時代。
帝国時代はもっとも長く、今ではもうその情報のたいはんが失われてしまっている。人が大地の上で、ひたすら戦争を繰り広げていた時代だ。最終的にはひとつの帝国が、世界を統一した。
そして地上時代へと突入する。
地上時代の最初の年に、「食用人間」――いわゆる、バトリやマシュたちが造り上げられている。
それから333年間は、平和だったようだ。
ホントウに平和だったのかは知らないが、すくなくとも戦争のことは年表には書かれていない。
しかしその地上時代は、ひとつの事件によって終幕を迎える。
ゾンビの蔓延だ。
それによって、人は空へと飛び立った。
飛翔時代のはじまりだ。
飛翔時代はもうすぐ2000年が経過する。しかしそこでひとつ疑問に思うことがあった。
地上相当部隊の覚者が結成されたのが、今からおおよそ30年前なのだ。
なぜだ?
ロンたち覚者の目的は、地上にいるゾンビの掃討である。ならば、もっと早い段階に結成されていても良かったのではないか……と思うのだ。
「おい、聞こえるか。ハマメリス」
《なんでしょうか?》
イヤリングの向こうからは、すぐに応答があった。
「覚者が結成された理由はなんだ?」
《トウトツですね》
「急に気になってな」
《私は存じておりません。覚者長であるノウゼンハレンなら、あるいは知っているかもしれませんが》
「ノウゼンハレンは、今どこにいる?」
《帝都の城内におられます。皇帝陛下と何か話をしているようです》
「そいつは都合が良い」
わざわざノウゼンハレンに尋ねる必要もない。覚者を結成した皇帝に直接尋ねれば良いのだ。
《チョウドこちらも、ヘリコニアに伝えたいことがあります》
「なんだ?」
《現在帝都には5人の覚者がおります》
「半分以上じゃねェか。ずいぶんと欠勤してるんだな。地上の掃討は休暇ってわけか」
と、ロンは軽クチをたたいた。
ロンはシャルリスに付き添っている必要がある。しばらく地上の戦いに参加できていない。その負い目を隠すための冗談でもあった。
ロンの軽クチを無情にも、ハマメリスは無視してつづけた。
《覚者長ノウゼンハレン。裁縫者アジサイ。採掘者ミツマタ。半竜者ヘリコニアの4人にくわえて、研究者ヒペリカムが行きました》
「あの変態野郎か」
覚者をやっている以上は、いちおう付き合いがある。ゾンビに恋慕してるとかいう変態だ。
屍姦が好きなのだそうだ。
ホントウに覚者というのは、いろいろをねじ曲がってるヤツが多い。
《以前までクルスニクにて、シャルリス・ネクティリアの研究を行っていたと思うのですが、その設備を失ってしまいました》
「帝都に移動してきたからな。こっちの健康診断はどうなるんだ?」
《その件で、ヒペリカムに行かせました。彼のチカラは、シャルリス・ネクティリアの解明にも役立つと思います》
「あの変態にシャルリスを任せるのかよ」
思わず眠りこけているシャルリスのほうに視線を移した。朝日が窓辺からさしこんでいて、その光がちょうどシャルリスの顔面にふりそそいでいた。意外とマツゲが長いことがよくわかる。
《嫉妬しているのですか?》
「バカ言うな。どうしてオレが――」
《ヘリコニアには、幼児嗜好の疑惑がありますので》
「残念ながら、オレにそんな性癖はねェ。それにシャルリスはもう幼児って風貌でもないさ。時間は確実に過ぎてる」
何を思ったのか、ハマメリスの返答にしばし時間があった。
どうした? と、ロンはうながした。
《ホントウに幼児嗜好ではないのですか?》
わりとマジな語調尋ねてきた。
「おいおい。ガチでオレのことをロリコンだと思ってたのかよ。てっきり冗談で言われてるのかと思ってたんだがな」
《ではなぜ、ヘリコニアは異性と肉体関係を持たないのですか? その機会はいくらでもあったと思いますが》
いったいどんな意図で尋ねているのか。ハマメリスがどんな表情をしているのか、是非とも知りたいものだ。
が、いかんせんハマメリスの顔を、ロンは見たこともない。
「それはこっちの事情だ。あんまりセンサクするな」
《申し訳ありません。それでは連絡は以上です。シャルリスを城へ連れて行ってください。ヒペリカムが診断を行いますので》
「了解」
珍しく、ハマメリスの言葉から、感情らしきものがうかがえた。そんな気がする。
バトリの言葉が、ロンの胸裏をザワつかせた。
「気色の悪いことを言いやがる」
あんなヤツと、シャルリスはよく上手に付き合えるものだ。
年表に視線を落とす。
このロト・ワールドの時代は、大きく分けると3つに区切ることが出来る。
帝国時代。
地上時代。
飛翔時代。
帝国時代はもっとも長く、今ではもうその情報のたいはんが失われてしまっている。人が大地の上で、ひたすら戦争を繰り広げていた時代だ。最終的にはひとつの帝国が、世界を統一した。
そして地上時代へと突入する。
地上時代の最初の年に、「食用人間」――いわゆる、バトリやマシュたちが造り上げられている。
それから333年間は、平和だったようだ。
ホントウに平和だったのかは知らないが、すくなくとも戦争のことは年表には書かれていない。
しかしその地上時代は、ひとつの事件によって終幕を迎える。
ゾンビの蔓延だ。
それによって、人は空へと飛び立った。
飛翔時代のはじまりだ。
飛翔時代はもうすぐ2000年が経過する。しかしそこでひとつ疑問に思うことがあった。
地上相当部隊の覚者が結成されたのが、今からおおよそ30年前なのだ。
なぜだ?
ロンたち覚者の目的は、地上にいるゾンビの掃討である。ならば、もっと早い段階に結成されていても良かったのではないか……と思うのだ。
「おい、聞こえるか。ハマメリス」
《なんでしょうか?》
イヤリングの向こうからは、すぐに応答があった。
「覚者が結成された理由はなんだ?」
《トウトツですね》
「急に気になってな」
《私は存じておりません。覚者長であるノウゼンハレンなら、あるいは知っているかもしれませんが》
「ノウゼンハレンは、今どこにいる?」
《帝都の城内におられます。皇帝陛下と何か話をしているようです》
「そいつは都合が良い」
わざわざノウゼンハレンに尋ねる必要もない。覚者を結成した皇帝に直接尋ねれば良いのだ。
《チョウドこちらも、ヘリコニアに伝えたいことがあります》
「なんだ?」
《現在帝都には5人の覚者がおります》
「半分以上じゃねェか。ずいぶんと欠勤してるんだな。地上の掃討は休暇ってわけか」
と、ロンは軽クチをたたいた。
ロンはシャルリスに付き添っている必要がある。しばらく地上の戦いに参加できていない。その負い目を隠すための冗談でもあった。
ロンの軽クチを無情にも、ハマメリスは無視してつづけた。
《覚者長ノウゼンハレン。裁縫者アジサイ。採掘者ミツマタ。半竜者ヘリコニアの4人にくわえて、研究者ヒペリカムが行きました》
「あの変態野郎か」
覚者をやっている以上は、いちおう付き合いがある。ゾンビに恋慕してるとかいう変態だ。
屍姦が好きなのだそうだ。
ホントウに覚者というのは、いろいろをねじ曲がってるヤツが多い。
《以前までクルスニクにて、シャルリス・ネクティリアの研究を行っていたと思うのですが、その設備を失ってしまいました》
「帝都に移動してきたからな。こっちの健康診断はどうなるんだ?」
《その件で、ヒペリカムに行かせました。彼のチカラは、シャルリス・ネクティリアの解明にも役立つと思います》
「あの変態にシャルリスを任せるのかよ」
思わず眠りこけているシャルリスのほうに視線を移した。朝日が窓辺からさしこんでいて、その光がちょうどシャルリスの顔面にふりそそいでいた。意外とマツゲが長いことがよくわかる。
《嫉妬しているのですか?》
「バカ言うな。どうしてオレが――」
《ヘリコニアには、幼児嗜好の疑惑がありますので》
「残念ながら、オレにそんな性癖はねェ。それにシャルリスはもう幼児って風貌でもないさ。時間は確実に過ぎてる」
何を思ったのか、ハマメリスの返答にしばし時間があった。
どうした? と、ロンはうながした。
《ホントウに幼児嗜好ではないのですか?》
わりとマジな語調尋ねてきた。
「おいおい。ガチでオレのことをロリコンだと思ってたのかよ。てっきり冗談で言われてるのかと思ってたんだがな」
《ではなぜ、ヘリコニアは異性と肉体関係を持たないのですか? その機会はいくらでもあったと思いますが》
いったいどんな意図で尋ねているのか。ハマメリスがどんな表情をしているのか、是非とも知りたいものだ。
が、いかんせんハマメリスの顔を、ロンは見たこともない。
「それはこっちの事情だ。あんまりセンサクするな」
《申し訳ありません。それでは連絡は以上です。シャルリスを城へ連れて行ってください。ヒペリカムが診断を行いますので》
「了解」
珍しく、ハマメリスの言葉から、感情らしきものがうかがえた。そんな気がする。
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