今まで視界にも入らなかった地味なクラスメイトが、実はかなりのイケメンチャラ男だったなんてことある!?(仮)

細木あすか

要件は何?


「ところで、2人ってどんな関係なんだ?」
「……」
「……」

……あれ、聞いたらダメだったか?

俺の質問に、2人は顔を合わせている。
なんだこいつら。もしかして、人に言えねえような仲なんじゃ……。

俺は、生唾を飲み込み、2人の口が開くのを静かに待った。

「セイラ繋がりで知り合った、腐れ縁ってやつ。小学校は違ったけど、中学からは一緒なんだ」
「なんだ、和哉には言ってあったのか」
「あ、そういうこと……」

俺が青葉の秘密を知ってるかどうかわかんなかったから、顔を合わせてたんだな。びっくりしたぜ。変な気を使うところだった。

にしても、奏って結構親しみやすいな。当たり前なんだけど、画面越しで見るよりずっとずっと人間味がある。

「仕事一緒に行こうと思って迎えに来たんだけど、いやあ、まさか五月のダチに会えるとは!」
「青葉、今から仕事か」
「22時からね」
「え、今……」
「18時だね」
「……そんな現場遠いのか?」
「いや。俺の飯漁りに来ただけでしょ?」
「いいじゃんか。五月の作る飯美味いんだよ」

そう言いながら、奏は俺の隣に座ってきた。やっぱ、同じ空間に芸能人がいるって感覚ないな。フレンドリーすぎる。
青葉が慣れている様子だから、きっといつもこんな感じなんだろうな。

「……料理もできんのかよ」
「眞田くんも食べてく?」
「い、いや……。家、帰んねえといけないから」
「そっか、残念」
「悪りぃな」

美味いんだろうけど、同級生……しかも男の手料理食べるって結構ハードル高いぞ。俺には、無理だ。
俺が断りを入れると、少しだけ寂しそうな顔して「また今度ね」と青葉は言った。

その言葉で反射的に立ち上がってしまった俺は、そのまま帰り支度をする。

「なんか、追い出した感じになって悪いな」
「いや。そろそろ帰らねぇと、弟がうるさいから」
「弟いいなあ。1人っ子だから、羨ましい」
「いたらいたで、うるさいけどな」
「はは! 弟さんによろしく」
「おう」
「また来てね。玄関まで送るよ」

コーヒーうまかったし、ソファの座り心地も良かった。ゆっくりできたからか、気分が軽い。

そんなこんなで俺は、青葉に見送られて高級マンションを後にした。

……でも、なんか忘れてる気がすんだよな。なんだったか? まあ、忘れるくらいだから、大した用事じゃねえな。
それより、午後から鈴木の様子がおかしかったから連絡してみよう。ライン交換したんだから、送ったって良いよな。体調心配するクラスメイトとして……。

「あ」

そうだ、思い出した!
青葉が、鈴木のこと好きかどうかを聞きにきたんじゃねえか! コーヒー飲みに行ったんじゃねえぞ!!


***


「美香さん、おはよう」
「おはよう、優奈ちゃん」

私がスタジオに入ると、同じ事務所の優奈ちゃんが声をかけてきた。
確か、私と2つ違い。年下なんだけど、明るくて楽しい子なんだ。……ちょっと、他の子の愚痴は多いけど。それも、笑って聞ける程度には陰気くさくない感じ。

「今日、五月くん来るんだって! 私、久しぶりだから緊張する」
「みたいだね」

そういえば、優奈ちゃんも五月くんと同い年だったな。でも、五月くんの方がずっとずっと大人びてる。……なんて、私の贔屓フィルターかも。

彼に会うのは、正直あまり嬉しくない。だってきっと、今日は別れ話をされるから。……付き合ってないんだけどね。付き合ってないのはわかってるけど、私にとっては「別れ話」。

「美香、嬉しくないの? いつもははしゃいでるのに」
「嬉しいよ? でも、今日はスタンドインだから五月くんにメイクしてもらえるわけじゃないし」
「まあねえ。今日、誰のスタンドイン?」
「アリスのうさぎ。ハートの女王の隣に居る」
「近い! 私は、その女王。頑張ろうね!」
「うん。また後で」

今日は、お菓子のCM撮影。
主役じゃないけど、こうやってスタンドインで現場踏むのだって大事なお仕事なんだ。お金はあまり貰えないけど。その分、ちゃんと挨拶して顔を覚えてもらわないと。

先に、控室に荷物置いてこよう。
その間に、五月くんが来るかもしれないし。

          

「今まで視界にも入らなかった地味なクラスメイトが、実はかなりのイケメンチャラ男だったなんてことある!?(仮)」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く