今まで視界にも入らなかった地味なクラスメイトが、実はかなりのイケメンチャラ男だったなんてことある!?(仮)

細木あすか

オレがきっかけ作らねえと!


「も、もしもし」
『お、梓! 今大丈夫か?』
「うん。洗い物してて気づかなかったの、ごめんなさい。何か用?」
『……それがさ』
「……?」

なんか、奥の方でカサカサ音がする?
橋下くん、どこにいるんだろう? まだ現場とか?

『んだよ、……じゃん』
「橋下くん?」
『あのさ。梓って……だーかーらー』
「……?」

誰かと居るみたい。もしかして、青葉くん?
いや、そんな頻繁に一緒に居るわけないか。仕事の合間にかけてくれてるから、忙しなかったり?

私が黙っていると、双子とパパが耳をすませてくる。片手で追い払ったら、双子はあきらめたみたいだけどパパがね。本当、野次馬根性丸出しなんだから。後で怒ろう。

「忙しいなら後ででも……」
『いや、待って! 大丈夫だから!』
「そ、そう……」
『あのさ、今日神城駅前に居た?』
「居たよ。駅前の喫茶店で、スポーツ科の先輩とケーキ食べたの」
「えー! ねえちゃん1人でケーキ食べたの!?」
「ずるーい!」
「しー! 通話中なんだから、静かにして!」

しまった!
双子たちにバレた!

でも付き合いで食べただけだし、良いよね。
それに、好きで食べたわけじゃ……。いえ、好きで食べたわ。2個も。

『あはは。瑞季ちゃんと要くんは元気だな。ちょっとこっちに元気分けて欲しいわ』
「ごめんなさい。……で、ケーキ、いえ、神城駅がどうしたの?」
『そこ、五月のマンションがある最寄り駅でさ。向かう途中に梓見つけたけど声かけそびれちまって』
「そうだったんだ! 知らなかった」
『今度来いよ、色々コスメとかシャンプー台とか置いてあるから面白ぇ……んだよ、いいじゃんか』
「誰かいるの?」
『あ、い、いや。誰も! 誰もいないぞ、はは!』
「そ、そう」
『っつーわけで、今度来いよな! 五月に言っておくから!』
「え、ちょ、ちょっと!」

……切れちゃった。
変なの。用件、なんだったんだろう。

というか、待って!
今、青葉くんの家にシャンプー台があるって言ってなかった!? ……どんな家なの!?


***


「ほら! オレが言った通りじゃんか!」

やっぱ、甘味関連だったぞ!
オレってば、エスパーなんじゃね?

にしても、やっぱ梓って危機感ねえよなあ。スポ専のやつに泣かされたのに、まだ一緒にいるとか。……オレもそうか。

オレの電話を近くで聞いていた五月は、なんだか複雑そうな顔でこっちを見ている。……なんだよ、もっと喜べって。
あ、わかった。オレが梓と連絡先交換してたのが気に食わねえんだ。いいじゃんか、そのくらい。

「……」
「よかったじゃん。オレに言うってことは、そのスポ専のやつとやましい関係なわけじゃねえってのもわかったし」
「掃除……」
「え?」
「鈴木さんがくるなら掃除しなきゃ」
「……え?」
「塵ひとつたりとも残さない」
「……は?」

そっち!?
ってか、塵ひとつは物理的に無理だろ!?
それより、今日梓が来るわけじゃねえぞ!?

五月は、そう小さな声で呟くとすぐに立ち上がってどこかに行ってしまった。
……なんかオレ、あいつの変なスイッチ押したか?

しかもこの家、掃除するほど物ないし、汚れてもねえぞ……。


***


『再来週空いてるんだけど、瑞稀ちゃんと要くんも一緒に遊びに来る?』

橋下くんと謎の電話をした30分後。
お風呂上がりに、部屋で寝転びながらスマホを見てると、青葉くんからそんなメッセージが来ていた。

え、いいの!?
行きたいけど……。誰かに見られたら、まずいんじゃないの? 神城駅って、結構うちの生徒多いらしいし。
もう気軽に話せないと思ってたから、嬉しいけど……いいの!?

「いった!?!!??」

私は、突然すぎる展開に慌ててしまい、またもやスマホを顔面に落としてしまう。
そろそろ学ぼうか、私。

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