今まで視界にも入らなかった地味なクラスメイトが、実はかなりのイケメンチャラ男だったなんてことある!?(仮)

細木あすか

親子で支えられている家庭


「マリー」
「……」
「マリってばー」
「……」

あー! もう!
また勝手に部屋入ってきて!

学校帰りにベッドでグダグダしていた私は、ドアの前でいつも通り財布と買い物メモを持ったお姉ちゃんを睨みつける。

「はい、これ」
「……またあ?」
「いいじゃないの。お金余ったらあげるってお母さん言ってた」
「……もー。たまには、お姉ちゃんが行ってよね。最近ずっと私じゃないの」
「はいはい、感謝してますー」

最近、お母さんがした買い物の買い忘れがあると、絶対私に回ってくるの。余ったお金くれるならいいけどさ。外、暑いから嫌なんだよね。

「もっと感謝してよ」
「してるって。夕飯のエビフライ1つあげる」
「本当!? 行ってくる〜」

お姉ちゃん優しい!
混む前に行っちゃお。

「今日はマヨネーズ忘れたらしいから、コンビニ行っておいで。急ぎだって」
「わーい!」

スーパー行くより、コンビニのが好き! だって、狭いから探し物すぐ見つかるし、新商品あるし。
それに、スーパーだとおばちゃんたちがいっぱいいて息苦しいんだよね。

エビフライを約束した私は、ルンルン気分になって外行きの服に着替える。


***


「……」
「……」
「…………えっと」

やっぱり、こうなるよね。

迎えに行ったら、瑞季たちが固まっちゃった。
最初は「おにいちゃん!」ってはしゃいでたのに、橋下くんに気付いてからずっと無言。
双子、基本人見知りなのよ。青葉くんに懐いたのが珍しいの。

「とりあえず、家行こう。瑞季、要。今日は、こっちのお兄さんも一緒ね」
「……うん」
「うん……」

なんて言いながら、2人とも青葉くんの後ろに隠れちゃった。……なんで、私じゃないんだろう。

「よろしくな!」
「……うん」
「うん……」

橋下くんが挨拶しても、青葉くんの物陰から返事するだけ。大丈夫かしら?

「ごめんなさいね」
「いいよ、オレも小さい頃人見知りだったし。気持ちわかる」
「ありがとう」

きっと、家帰って彼が帽子脱いだら大騒ぎね。だって双子、橋下くん出てるドラマ観てるし。

にしても、子どもたちに囲まれてる青葉くん嬉しそう。子ども好きなのかな、扱いもうまいし。


***


「鈴木さん、こっちのデータ解析お願い」
「わかりました。鈴代さん分は終わりましたよ」
「早い! ありがとう」

はあ、また新規案件ね。
今日も帰れそうにないな。梓たち、大丈夫かしら。

私が時計を見ると、17時を回ったところだった。きっと今頃、みんなでスーパー行って帰路についてるわね。

「さて、やりますか!」
「その意気! 鈴木さんは仕事が早いから助かるわ」
「その分、お給料あげてくださいね」
「そうね! 次の査定で打診しないと」
「お願いします」

梓たちのためにも、私が稼がないと。夫からの仕送りはあるけど、そっちは貯金に回したいし。
あの子らが、将来やりたいことやれるようにお金は貯めておきたい。……それで、無理させてるのはわかってるけど。本当、ダメな親ね。

特に、梓。
あの子には、頭が上がらないわ。
最近、五月くんが来てくれてすごく助かってる。何かお礼しないと。……私が考えるより、梓が考えた方がいいかな。

そんなことを考えていると、机上に置いたスマホが震えた。

「……あら」

画面を見ると、メールマークが点滅してた。
しかも、数ヶ月ぶりの人から。

「…………瑞季たち、喜ぶかしら。梓に連絡しておこう」

案件へ着手する前に、私は娘にメールを入れた。
あの子、メール気づくかしら?

          

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