今まで視界にも入らなかった地味なクラスメイトが、実はかなりのイケメンチャラ男だったなんてことある!?(仮)
長期休みは、海外に?
「青葉ー、課題そっちの机でいい?」
「うん。東雲くんは?」
「あいつ、教科書忘れたから隣のクラスに借りに行った。すぐ帰ってくる」
「そしたら、そっちの机借りよう」
「おう」
ふふ、青葉くん楽しそう。
ちょうど私の真後ろでやっているから見えないけど、声だけでそうわかる。なんだか、私まで嬉しいわ。
「梓ー。どうしたの?」
「へ!?な、なにが?」
「何回も呼んだのに、返事ないんだもんー」
「あ、ごめん。読むのに集中してた」
いけないいけない。ちゃんと自分のことやらないとね!
今日の課題は、日本語の文章を英語に直すこと。しかも、ただ直すだけじゃないのよ。
グリム童話の中でも有名な『ヘンゼルとグレーテル』の日本語訳を英語に直すの。で、その後に英語で出版されている物語と照らし合わせて、間違い探しするところまでが課題!結構大掛かりよね。
元々、グリム童話ってドイツ語で書かれたものなんだって。私、てっきり英語で書かれたものだと思ってたから、びっくりしたわ。
「あのね、私としおりんが冒頭部分やるから、梓はふみかと2回目に遠くに放り出されたところから訳して。で、由利ちゃんが魔女のところ」
「OK。由利ちゃん、多いけど大丈夫?」
「うん!『ヘンゼルとグレーテル』は、英語もドイツ語も読んだことあるから」
「すご!それに、由利ちゃんは英語得意だもんね」
「大好き!だから、任せて」
由利ちゃんの読書好きは、外国語で書かれた本にも手を出すほどなんだね。本当にすごい!
ちなみに、1グループが全話やるわけじゃないのよ。全話を2グループでやるの。私たちは、前半部分担当!
「よし!じゃあ、やりますか!」
「おう!」
なんでこんなにやる気になってるかって?
だって、この課題終わらせたら、期末で赤点取らない限り評価「5」をくれるって言うんですもの。そりゃあ、やる気出るよね。
「うお!青葉、お前英語得意なのか」
「父親が海外で働いてて、長期休みとかはそっち行くから。英語できてないと、何もできないし」
「セレブ」
「セレブ」
「い、いや、そんなんじゃないよ」
……へえ、青葉くんって長いお休みの時は海外行くんだ。いいなあ、海外なんて行ったことないや。
……今年の夏休みも行くのかな。
そしたら、ちょっと寂しいな。
「梓ー!手を動かさないと、課題終わらない!」
「は、はい!やります!!」
「ふふ。梓ちゃん、なんだか上の空だね」
「そ、そんなことないよ。そんなこと……」
夏休みって、いつだかわからないけど集中講義あるよね。海外行くなら、それも出ないのかな。
そしたら、ノート取っておこう。帰国したら、青葉くんに渡すんだ。
……いやいや、まだ行くって決まってないじゃないの。
「じゃあ、梓!やるよ!」
「OK!よろしくね」
少しだけ感じた寂しさをなくすため、私は目の前の課題に取り掛かった。
          
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