今まで視界にも入らなかった地味なクラスメイトが、実はかなりのイケメンチャラ男だったなんてことある!?(仮)

細木あすか

親友は、強運の持ち主


「ね、梓〜。来週月曜日の放課後暇?」

そろそろ、期末テストの時期。

私は、週末に向けて対策ノートを作っていた。これがあると、家で勉強しやすいんだ。いちいち重たい教科書を持ち帰らなくていいし、テスト範囲も間違えないし。

「なあに、マリ。テスト勉強?」
「ブッブ〜」
「なによ、不真面目。テスト大丈夫なの?」

ノートにマーカーで印をつけていると、マリたちがやってきた。詩織は英単語、ふみかと由利ちゃんは携帯用問題集を片手に。
え、マリ?もちろん、手ぶらよ!

「大丈夫か大丈夫じゃないかで言えば、大丈夫じゃない」
「ほらもー。出題範囲まとめたノート見る?」
「見る!あ、でもジミーくん用なら遠慮するー」

……ああ。
マリたちにも、青葉くんとは勉強仲間ってことにしたんだ。忘れるところだったわ。
期末テストが近いから、一緒に居ても特に何も言われなくなったのよ。……あっちは、毎日誰かしらに睨まれてるらしいけどね。慣れたって言ってた。

「だから、青葉くんとはそんなんじゃ……」
「はいはいー。まあ、それは置いといて〜」
「自分で振っといてなによー」
「あはは〜」

まあ、深堀りされない方がありがたいけど。
特にふみかなんか、あれから色々ニヤけながら聞いてくるものだから誤魔化すのが大変なの。でも、前より元気になってるから良しとしよう。

それにね。
ふみか、放課後よく時間が空くようになったんだって。マリが「最近良く遊んでくれる!」って喜んでるわ。本当、マリは人懐っこくて可愛いんだから。

「でさー、来週月曜日なんけど」
「なにかあるの?」
「うん。駅ビルのコスメショップで、新作ネイルのイベントやるんだって!」
「へえ。でも整理券ないと入れないでしょ、そういうのって」
「じゃじゃ〜ん!」

私の発言に、マリは誇らしげな表情になって5枚のチケットを出してきた。そこには、「プラネットジェルネイル」の文字が。
プラネットって、発色の良いネイル出すんだよね。それの新作かな。
チケットのデザインも綺麗だし、めちゃくちゃ興味あるんだけど!

「わー、プラネットじゃないの!」
「そうなの!梓、前好きだって言ってたから」
「覚えててくれたのね」

マリのこういうところ、見習いたいよね。チラッと言ったことも覚えててくれるんだから。

「うん!プラネット、私も好きだから」
「それと、ゲストで来る芸能人もビックなの!」
「え、誰?」
「この人!」
「あ、マリの好きな人だ」

楽しそうに指差す先には、「ゲスト:セイラ」と書かれていた。あの年齢不詳の女優さんよね。
先週から始まった恋愛ドラマ、準主役で出てたの見たわ。瑞季がハマっちゃってね。そのドラマの漫画まで買ってたな。
そうそう、橋下くんも主人公の恋人役で出てたの。テレビ越しに見ると、やっぱり花があって魅入っちゃうよね。

「そうなの!セイラさんが来るなら行かなきゃ!」
「テスト前で部活ないから、私も行く!」
「詩織も?じゃあ、私も行きたいな」
「みんなで行こう」
「わーい!梓、月曜日なら来てくれると思ったんだ」
「ありがとう、マリ。ところで、そのチケットどうしたの?」

こんな、5枚も一気に用意できるわけないわよね。セイラさんが来るなら、激戦でしょう。
私が質問すると、マリはシレッと、

「プラネットのコスメ買って抽選で当たったの!しかもぴったり5枚〜」
「……え?」
「……すご」
「……嘘でしょ。誰かから貰ったかと思ってた」
「…………マリって、こういう懸賞昔から強いよね」
「ねー。宝くじは一向に当たらないけど」

なんて言いながら笑っている。

……マリ、ホントすごいの。前なんか三枝商店街の街角抽選で1等の温泉旅行当ててたし、コンビニでアイス買ったら「当たり」じゃなくて「大当たり」引いてたし。
それを聞いた私たちは、「マリの運が削られていく」ことにハラハラしながら彼女を見守っていた。……まあ、本人にしたら良い運の使い方か。

「じゃあ、イベント終わったら図書館行って勉強しようか」
「お、いいね。梓、先生になってよ」
「梓ちゃんの山掛け教えてほしいな」
「いいよ。やろう」
「逃れよ、赤点!」
「ちょっと、目標低すぎ!」

これで、月曜日の予定が埋まったわね。
……ああ、青葉くんにその日は友達と居るって連絡しとかないと。

そういえば、青葉くんの使ってる黒いリュックもセイラさんが宣伝してるやつよね。もしかして、彼もファンとか?
後で聞いてみよ。

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