今まで視界にも入らなかった地味なクラスメイトが、実はかなりのイケメンチャラ男だったなんてことある!?(仮)

細木あすか

誰もいない中庭で



「ふみか、お待たせ」
「……梓」

私が中庭で待っていると、時間通りに梓がやってきた。
その隣には、なぜか青葉の姿が。前髪で目は見えないけど、なんだか無表情って感じで梓の手を握りしめている。……やっぱり、この2人付き合ってるのかな。

「やっほー、アズサちゃん」

いや、付き合ってないかも。
だって、隣にいるソラ先輩と私は付き合ってないし。

彼、梓に謝りたいって言ってついてきちゃったの。本当は、1人で謝りたかったんだけど。
でも、向こうも2人だからちょうどよかったかも。後で1人の時にちゃんと謝ろ。

「……なんでいるんですか」
「えー、朝会った時に行くよーって話したでしょう」
「……」

朝?
私の知らないところで、2人で会ってたのかな。それなら、その時謝ればよかったのに。

いつもは中庭でご飯食べる人が何人かいるんだけど、火曜と木曜は飲食禁止だから人が居ないんだ。見渡す限り、私たち以外に人は居ない。
とりあえず、まずは私から謝らないと。

「梓、あの、ソラ先輩から聞いたんだけど……その」

でも、私の口からは言葉が出てこない。その代わり、目からはどんどん涙が溢れてくる。
なんで、私が泣くの?私が加害者なんだよ。何も悪くない梓を巻き込んだ張本人なんだよ。早く泣き止まないと。

その思考に反して、涙は止まらない。

「……ごめんなさい。私が悪いのに、ごめん」
「なんでふみかが謝るの?私、ふみかには何もされてないよ」
「え、だって……」
「……?」

謝る私に対して、梓がキョトンとした表情になってそう言ってきた。

だって、私のせいで泣いてたんでしょ?
怖い思いさせちゃったんでしょ?

その言葉が出ない。
どう話したら良いか、あれほど昨日家で考えていたのに何も思い浮かばない。すると、ソラ先輩が私の両肩を掴みながら、

「ふみかちゃんよりも、まずは僕だよね。怖い思いさせちゃってごめんね。僕が教室戻った後も泣いてたって話聞いて、ちゃんと謝らないとなって思ってふみかちゃんについてきたんだ」

と、話をつなげてくれた。
やっぱり、ソラ先輩はすごいな。こうやって言葉がスラスラ出てくるの、羨ましい。
私は、考えれば考えるほど喉に何かが詰まった感じになって気付いたら泣いてるんだよね。この性格のせいで、友達に絶交されたこともある。でも、どうしても直らない。

「……私は別に。それより、ふみかとはどんな関係なんですか」
「……えっと」

どこまで話せば良いんだろう。
ここは、素直に全部話した方が良いかな。

肩を掴んでいるソラ先輩の手に力が入った。……自分で答えろってこと?
ソラ先輩は口を開こうとせず、私の後ろで静かにしている。

学校で、好きでもない相手と身体重ねてましたって言うの?
……梓、軽蔑するかな。もう、友達として話してくれなくなるかな。
ううん、それならまだ軽い方だ。先生に言われたらどうしよう。私、退学になっちゃう。

いや、違う。
ちゃんと言わないと。ここで保身に走ってどうするの。

「あの、私、1年の時からスポーツ科の更衣室使って……えっと」
「……ストップ」

意を決して私が口を開くと、今まで黙っていた青葉が入り込んできた。相変わらず、梓の手なんか握ってる。なんで、部外者なのに首を突っ込んでくるんだろう。せっかく、話そうと思ったのに。

「鈴木さん、俺が良いって言うまで静かにしてて。あと、外したら怒るからね」
「……え、ちょっと。青葉くん?」

何を思ったのか、青葉は梓から手を離すと、上着のポケットからイヤホンとスマホを取り出してきた。そして、イヤホンを梓の耳に入れスマホをいじり出す。
梓が驚いて青葉に声をかけてるけど、説明する気はないらしい。流石のソラ先輩も驚いてるみたいで、首を傾げてその様子を見ていた。

「……何してるの?」
「見ての通り」
「……?」

見ての通りって……。梓に音楽でも聴かせてるってこと?なんで今のタイミングで?
やっぱ、青葉ってよくわかんないな。

「鈴木さん、聞こえる?」
「……?」

あ、やっぱり音楽か何か聴かせてるんだ。なんでだろう。
青葉は、梓の前で声をかけている。でも、梓には聞こえていないらしく、首を傾げて青葉のことを見ていた。
私なら、イヤホン外すけどな。梓は、外そうとしない。

「その続き、俺が聞きます。鈴木さんには後で伝えるので」
「待ってよ、なんで「いいよ。僕も、その方が良いと思う」」

梓に声が届いてないことを確認した青葉は、私たちの方を向いてそう言ってきた。それに文句を言おうと私が口を開くと、ソラ先輩が言葉を被せてくる。
どうしてだかわからない私は、口を閉じた。すると、

「でも、人と話す時は目を見ながらって言われたことない?その格好、結構不快なんだけど」

と、ソラ先輩が少しだけ不機嫌な声で青葉に話しかける。
その言葉を聞いた青葉は小さくため息をつき、手首についてた髪ゴムで後ろ手に髪の毛を結いはじめた。

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