今まで視界にも入らなかった地味なクラスメイトが、実はかなりのイケメンチャラ男だったなんてことある!?(仮)

細木あすか

どうしてこうなったの? 誰か説明して!



「……」

そろそろ18時。
私は、いつも通り夕飯の準備をしていた。
いつも通り2人を学童へ迎えに行って、いつも通り特売に突っ込んで戦利品をゲットして、家に帰ってきたの。

今日は、水餃子と中華スープと春雨サラダ。小麦粉とお酢、ひき肉が安かったのよね。……え、朝考えてたメニューと違う? い、いいじゃないの。
ハンバーグはやったばかりだから、今日は餃子を作るのよ! ニラとキャベツが確か冷蔵庫に余ってたから。ハンバーグは冷凍して明日の朝!

そう、いつも通り夕飯を作ってお風呂掃除して。それからそれから……。

「鈴木さんー、爪切りってどこですか? 要くんの爪が伸びてて、切りたいです」
「あ。えっと、爪切りはリビングの……」

いや、違う! こんなの「いつも通り」なわけあるもんですか!!

私は、なぜこんな展開になったのか必死に思考を巡らせつつ、普通に家にいる青葉くんへ返事をする。


***


案の定、横田くん (やっぱり、初めて話した)の用件は「付き合ってください」だった。
こういう時って、絶対「好きです」じゃないのよね。みんなして「付き合ってください」なの。なんでだろう?

「えー!! なんで!? 横田くんって、女子に人気あるんだよ!」
「人気あっても、私にとってはよく知らない人だもん」
「梓って淡白〜。ね、由利」
「う、うん……。もったいない」

もちろん、「ごめんなさい」って断ったわ。だって、知らない人と付き合うってなんか違うじゃない。
そしたら、「やっぱり」と言って笑ってたっけ。結構明るい良い子だったけどね。申し訳ないけど、今は誰かと付き合っている時間もない。

そんな戻ってきた私に、3人からのブーイングの嵐が吹き荒れた。
どうやら、横田くんとやらは人気がある人らしい。由利ちゃんまで驚いてる。

「でも、良く知らない人と付き合っても面白くないもんね」
「そうそう。私はまだみんなと遊んでいたい」
「うわーん! 梓大好き〜〜」
「何よ、マリ! 暑いからひっつかないで!」
「それより、梓。青葉くんと話してなかった?」
「え……?」

ひっつくマリを引き剥がそうと躍起になっていると、ふみかが質問してきた。やっぱり、バッチリ見られてたらしい。
家に来た、なんて言えない私は、

「あ、えっと。青葉くんの袖に糸くずついてたから教えてあげただけ」

と、とっさに嘘をついた。

「ふーん」
「梓と青葉くんって、なんだか似合わない! 並んでてすごい違和感あった!」
「あはは……」

どうやら、話の内容までは聞かれていなかったらしい。危ない危ない。私生活を知られるわけには行かないからね。

「はいー、席について」

そこに、タイミングよく先生がやってきた。ナイス先生! あ、でも……。
いけない! まだ授業の準備してない!
私は、「また後で」とマリたちに言って他のクラスメイトと同様、急いで席につく。

チラッと青葉くんを見ると、すでに彼は数Ⅱの準備をしてボーッとしてた。私は、机の脇にかけてある紙袋の中身を再度確認して、教科書とノート、筆記用具を取り出す。

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