純白の魔法少女はその身を紅く染め直す
11:帰り花は炎に焼かれる②
※暴力・性的描写があります。
*********
「遅かったじゃねぇか」
枝垂は、会議室のような場所にいた。
そこには、厚みのあるカーペットが引かれて大きな机がひとつ。会議室というよりは、応接間に近い。
その窓辺に、彼はいた。待ちくたびれたような声を出すも、無表情なため何を考えているのかはわからない。しかし、彼から放たれている威圧感は本物。さすが、ナイトメアで「リーダー」と呼ばれるだけのことはある。
ユキは、その人物に生半可な演技は通用しないと感じ、改めて気を引き締める。
「カイトにご飯あげていたの」
「そうか。ちゃんと飼いならせよ、あいつはお前のことを気に入ってる」
「うん。……リーダー、ただいま」
そう言って、”サツキ”は入り口から数歩だけ歩み寄り、枝垂に向かって腕を伸ばした。
彼女なら、こうするだろう。薬を入れられ、緊張の感情を奪われた彼女なら。
それを見た枝垂は、一瞬だけキョトンとした表情になった。
何か間違ったのだろうか?ユキがそう思うも、引き返せない。そのまま、腕を伸ばし彼を受け入れようと上目遣いで誘い続ける。すると、
「はは、お前は変わらねえなあ」
と、笑いながら”サツキ”に向かって歩いてきた。
それは、許しの感情の入った行動。そう確信したユキは、安堵の表情を浮かべつつ彼が近づいてくるのを待った。
しかし、そうではなかったらしい。次の瞬間……。
「がはっ……な、なんで」
「あ゙?俺が許すとでも思ってんの?」
「……う、う」
「甘く見られたもんだなあ!」
「おやおや。あまり壊さないでくださいよ、枝垂」
枝垂は、”サツキ”の鳩尾を拳でえぐるように重い一撃をかましてきた。
かろうじて踏ん張り倒れず済むも、その強い衝動で胃の中身が口から飛び出してくる。酸っぱい味が、ユキの口の中に広がっていった。
そんな光景を目の前にしても、八代の声色は変わらず。これが、日常茶飯事なのか。
今の一撃によって膝をついてしまった”サツキ”は、床に敷かれたカーペットの上に嘔吐を繰り返す。
「今までどこで何してきた?なぜ、メンターを切ったんだ?」
「……ぅ、あ」
「そんな悪い子に育てた覚えねぇぞ。拾ってもらった恩も忘れるような薄情者が!」
そう言って、枝垂は倒れた”サツキ”の髪の毛を強引に掴み無理やり起き上がらせてきた。引っ張られた頭皮は、鋭い痛みと小さな悲鳴を引き起こす。
答えは期待していないようで、そのままの姿勢で再度身体に蹴りを食らってしまった。とっさにお腹をかばうも、そのガードすら虚しいほどの力で。
何度も何度も、鈍い痛みが”サツキ”を襲う。
「うっ……ごめん、なさ、ああああぁぁ」
足を地面につけようとするも、力がうまく入らない。身体の重心が下に行くたび、髪の毛が強く引っ張られて悲鳴をあげることしかできなかった。
自身に埋め込まれた蛍石が、鈍く光を放つのをかろうじて確認する。この光は、どんな意味があるのだろうか。そこまで調べていないユキに、わかるはずもない。
「おい、なんか言えよ!ごめんなさいじゃねぇだろうが」
「……う、う。ぐ」
続けて、枝垂の手が”サツキ”の首を捉えてくる。彼の手が触れると、その部分が強く脈打っているのを感じ取れた。
”サツキ”は、すぐさまその声に反応すべく口を開ける。
「……好きにして、くださ」
「ああ、知らないよ……」
その言葉は、ユキが意識して出したものではない。しかし、自身の口からは、確かに「好きにして」と声を発した。これも、薬の効果なのだろうか。
そんな意識朦朧とした”サツキ”の言葉に反応したのは、壁に背をつけて見物している八代だった。
一方、枝垂は聞きたかった言葉をもらったようで、満足げな表情になって”サツキ”の髪の毛から手を離す。が、首に巻かれた手はそのまま。
「……ん゙ぅ」
「ちゃんと埋め合わせしろよ?」
キュッと首元が閉まり、一瞬息が止まる。
殴られた部分の痛みで、かろうじて意識を保つことに成功したユキは、次の瞬間、逃げなかったことを後悔した。
「……あ、嫌!やめて!!」
枝垂は、片方の手を器用に使い、唐突に”サツキ”の着ていた服を引き裂いてきた。
そんなに脆い素材ではないはずなのに、すぐに役割を果たせない服に変わっていく。
真っ白な下着があらわになり、必死に隠そうと手を持っていくのも虚しい行為。その手は、背後にいた八代の魔法によって後ろ手に縛られてしまう。
今は、痛みどころではない。首の締まる感覚もどうでも良い。ユキは、必死になって縛られた手に力を込めて逃れようとする。しかし、これも薬のせいなのか抵抗はできない。
部屋に置かれている白熱球の光に、ボロボロになった服の隙間から覗く裸体が照らされる。
「やっ……見ないで」
「石がなけりゃあ、もっと良い女なんだけどなあ」
「感度が落ちますよ」
「まあ、そうか」
成熟仕切れていない”サツキ”の裸体を見ながら、枝垂がギラついた瞳をしてくる。
それを見たユキは、反射的に逃げ出そうと出口へ向かう。しかし、それを彼が許すわけもない。
「あっ……」
「逃げんなよ、楽しもうぜ。久しぶりなんだから」
後ろを向いたのがいけなかったのかもしれない。
両手で腰を掴まれると、ユキはバランスを崩し床に手をついてしまった。その強い力は、腰だけを掴んで離さない。故に、自然と四つん這いの格好になってしまう。
「やだ!やだ!やめて!」
「暴れろ。もっと、楽しませてくれ」
「あ、あ、ああああああああ!!痛い!痛い!」
枝垂は、止まらなかった。
カチャッと金属音がしたと思えば、すぐに背後からユキの体内へと強引に入り込んでくる。快楽を求めた彼は、”サツキ”の悲鳴を聞いても「悦」にしかならないらしい。熱くなったそれは、ユキの身体を乱暴にかき回す。
「お前、ここ好きだったよなあ」
「あ、ああ!痛い、嫌だ!……ん、あ」
それを、目を見開き精一杯拒絶するユキ。必死に腰を掴む手から逃れようと抵抗するも、それは虚しいものでしかなかった。
全身の痛みに顔を歪ませていると、再度髪の毛を引っ張られる。強制的に前を向かされた”サツキ”は、目の前に居た八代と目が合ってしまう。しかし、
「良い表情ですよ」
そう言って、彼はにっこり笑うだけ。
サツキは、いつもこれに耐えていたのか。ふわふわとしたカーペットを両手で必死に掴みながらも、そう思う余裕がまだあることにユキ自身驚いた。
いや、他のことに意識を向けていないと、どうにかなってしまいそうなだけ。懸命に歯を食いしばり、その「痛み」から逃れようと抵抗する。しかし、蛍石の効果からは逃れようがなかった。
「相変わらずキツイな。ほら」
「あ、あ゙あ゙あぁぁあぁ!あああ、痛い、痛いよぉ!!」
「哭け!もっと、抵抗しろ!ほら、カイトに聞こえるように!」
「う、う……あ、ぁあ」
……カイトって誰だっけ。
ああ、あの一途な男の子か。やっぱり、さっきの提案を断るべきじゃなかったのかも。
ユキは、快楽に支配されつつある身体で、カイトのことを思い出す。
しかし、それは一瞬だけ。すぐさまどうでもよくなる。
体内をかき回されるたび、蛍石が反応して全身に電流が走る。声が枯れるのではないかと思うほど、”サツキ”は涎を垂らしながらも叫び声をあげ続けることしかできない。
「う、うあ、ああぁ……」
自分は、ここに何をしに来たのか。
それを思い出すたびに、まだ気絶してはいけないとユキは涙を溜めて再度歯をくいしばった。
しかし、そろそろユキは認めなくてはいけない。
行為を続けながらも、枝垂の手が容赦無く叩きつけて”サツキ”の身体に傷を増やしていく。そのたびに身体の奥が反応してしまっている、という事実を。
今、彼女の身体は、枝垂を求めつつあった。
「ふっ、ふぅ……あ、あぁぁあああぅんっ。んっ」
その痛みすら、快感の材料になっていく。
乱れた髪の毛が"サツキ"の視界を遮りパニックに近い心境に突き落とされるたび、叫び声の中に「甘い」響きが混ざり合う。
そんな"サツキ"の声の変化に気付いた枝垂は、楽しそうに腰の動きをはやめた。
「いや!来ないで!来ないで!あ、ああああぁぁぁあ!!!」
そして、”サツキ”は絶頂を迎えてしまった。
全身を痙攣させて力任せに叫び、頭を抱える。その瞳からは、我慢していた一粒の涙がこぼれ落ちていった。
同時に、体内へと温かい液体が注がれていったのを感じ取ったユキ。その表情は、終わった安堵よりも絶望に近い。自身に光る蛍石の激しい点滅具合を焦点の合わない瞳でボーッと見つめながら、崩れ落ちるようにカーペットへと身を落とした。
下半身から、白い体液と真っ赤な血を垂れ流しながら泣いている”サツキ”を見て、満足そうに笑い服を整える枝垂。
しかし、その表情は次の瞬間恐怖に変わることになる。
「……お前、誰だ?」
「おやおや」
そこには、ユキがいた。
ゆっくりと立ち上がり、ずり落ちた服も気にせず佇む彼女が。
今の衝動で、身体変化が解けたのだ。
ユキは、身なりを気にせず全身からドス黒いほどの魔力を放出させて立っていた。
「……はは、あははははははははは」
彼女は、泣いていた。
立ちながら泣いて、笑っていた。
全身を傷だらけにして、下半身をだらしなく濡らして。
その場が凍るような声で笑っていた。
          
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「遅かったじゃねぇか」
枝垂は、会議室のような場所にいた。
そこには、厚みのあるカーペットが引かれて大きな机がひとつ。会議室というよりは、応接間に近い。
その窓辺に、彼はいた。待ちくたびれたような声を出すも、無表情なため何を考えているのかはわからない。しかし、彼から放たれている威圧感は本物。さすが、ナイトメアで「リーダー」と呼ばれるだけのことはある。
ユキは、その人物に生半可な演技は通用しないと感じ、改めて気を引き締める。
「カイトにご飯あげていたの」
「そうか。ちゃんと飼いならせよ、あいつはお前のことを気に入ってる」
「うん。……リーダー、ただいま」
そう言って、”サツキ”は入り口から数歩だけ歩み寄り、枝垂に向かって腕を伸ばした。
彼女なら、こうするだろう。薬を入れられ、緊張の感情を奪われた彼女なら。
それを見た枝垂は、一瞬だけキョトンとした表情になった。
何か間違ったのだろうか?ユキがそう思うも、引き返せない。そのまま、腕を伸ばし彼を受け入れようと上目遣いで誘い続ける。すると、
「はは、お前は変わらねえなあ」
と、笑いながら”サツキ”に向かって歩いてきた。
それは、許しの感情の入った行動。そう確信したユキは、安堵の表情を浮かべつつ彼が近づいてくるのを待った。
しかし、そうではなかったらしい。次の瞬間……。
「がはっ……な、なんで」
「あ゙?俺が許すとでも思ってんの?」
「……う、う」
「甘く見られたもんだなあ!」
「おやおや。あまり壊さないでくださいよ、枝垂」
枝垂は、”サツキ”の鳩尾を拳でえぐるように重い一撃をかましてきた。
かろうじて踏ん張り倒れず済むも、その強い衝動で胃の中身が口から飛び出してくる。酸っぱい味が、ユキの口の中に広がっていった。
そんな光景を目の前にしても、八代の声色は変わらず。これが、日常茶飯事なのか。
今の一撃によって膝をついてしまった”サツキ”は、床に敷かれたカーペットの上に嘔吐を繰り返す。
「今までどこで何してきた?なぜ、メンターを切ったんだ?」
「……ぅ、あ」
「そんな悪い子に育てた覚えねぇぞ。拾ってもらった恩も忘れるような薄情者が!」
そう言って、枝垂は倒れた”サツキ”の髪の毛を強引に掴み無理やり起き上がらせてきた。引っ張られた頭皮は、鋭い痛みと小さな悲鳴を引き起こす。
答えは期待していないようで、そのままの姿勢で再度身体に蹴りを食らってしまった。とっさにお腹をかばうも、そのガードすら虚しいほどの力で。
何度も何度も、鈍い痛みが”サツキ”を襲う。
「うっ……ごめん、なさ、ああああぁぁ」
足を地面につけようとするも、力がうまく入らない。身体の重心が下に行くたび、髪の毛が強く引っ張られて悲鳴をあげることしかできなかった。
自身に埋め込まれた蛍石が、鈍く光を放つのをかろうじて確認する。この光は、どんな意味があるのだろうか。そこまで調べていないユキに、わかるはずもない。
「おい、なんか言えよ!ごめんなさいじゃねぇだろうが」
「……う、う。ぐ」
続けて、枝垂の手が”サツキ”の首を捉えてくる。彼の手が触れると、その部分が強く脈打っているのを感じ取れた。
”サツキ”は、すぐさまその声に反応すべく口を開ける。
「……好きにして、くださ」
「ああ、知らないよ……」
その言葉は、ユキが意識して出したものではない。しかし、自身の口からは、確かに「好きにして」と声を発した。これも、薬の効果なのだろうか。
そんな意識朦朧とした”サツキ”の言葉に反応したのは、壁に背をつけて見物している八代だった。
一方、枝垂は聞きたかった言葉をもらったようで、満足げな表情になって”サツキ”の髪の毛から手を離す。が、首に巻かれた手はそのまま。
「……ん゙ぅ」
「ちゃんと埋め合わせしろよ?」
キュッと首元が閉まり、一瞬息が止まる。
殴られた部分の痛みで、かろうじて意識を保つことに成功したユキは、次の瞬間、逃げなかったことを後悔した。
「……あ、嫌!やめて!!」
枝垂は、片方の手を器用に使い、唐突に”サツキ”の着ていた服を引き裂いてきた。
そんなに脆い素材ではないはずなのに、すぐに役割を果たせない服に変わっていく。
真っ白な下着があらわになり、必死に隠そうと手を持っていくのも虚しい行為。その手は、背後にいた八代の魔法によって後ろ手に縛られてしまう。
今は、痛みどころではない。首の締まる感覚もどうでも良い。ユキは、必死になって縛られた手に力を込めて逃れようとする。しかし、これも薬のせいなのか抵抗はできない。
部屋に置かれている白熱球の光に、ボロボロになった服の隙間から覗く裸体が照らされる。
「やっ……見ないで」
「石がなけりゃあ、もっと良い女なんだけどなあ」
「感度が落ちますよ」
「まあ、そうか」
成熟仕切れていない”サツキ”の裸体を見ながら、枝垂がギラついた瞳をしてくる。
それを見たユキは、反射的に逃げ出そうと出口へ向かう。しかし、それを彼が許すわけもない。
「あっ……」
「逃げんなよ、楽しもうぜ。久しぶりなんだから」
後ろを向いたのがいけなかったのかもしれない。
両手で腰を掴まれると、ユキはバランスを崩し床に手をついてしまった。その強い力は、腰だけを掴んで離さない。故に、自然と四つん這いの格好になってしまう。
「やだ!やだ!やめて!」
「暴れろ。もっと、楽しませてくれ」
「あ、あ、ああああああああ!!痛い!痛い!」
枝垂は、止まらなかった。
カチャッと金属音がしたと思えば、すぐに背後からユキの体内へと強引に入り込んでくる。快楽を求めた彼は、”サツキ”の悲鳴を聞いても「悦」にしかならないらしい。熱くなったそれは、ユキの身体を乱暴にかき回す。
「お前、ここ好きだったよなあ」
「あ、ああ!痛い、嫌だ!……ん、あ」
それを、目を見開き精一杯拒絶するユキ。必死に腰を掴む手から逃れようと抵抗するも、それは虚しいものでしかなかった。
全身の痛みに顔を歪ませていると、再度髪の毛を引っ張られる。強制的に前を向かされた”サツキ”は、目の前に居た八代と目が合ってしまう。しかし、
「良い表情ですよ」
そう言って、彼はにっこり笑うだけ。
サツキは、いつもこれに耐えていたのか。ふわふわとしたカーペットを両手で必死に掴みながらも、そう思う余裕がまだあることにユキ自身驚いた。
いや、他のことに意識を向けていないと、どうにかなってしまいそうなだけ。懸命に歯を食いしばり、その「痛み」から逃れようと抵抗する。しかし、蛍石の効果からは逃れようがなかった。
「相変わらずキツイな。ほら」
「あ、あ゙あ゙あぁぁあぁ!あああ、痛い、痛いよぉ!!」
「哭け!もっと、抵抗しろ!ほら、カイトに聞こえるように!」
「う、う……あ、ぁあ」
……カイトって誰だっけ。
ああ、あの一途な男の子か。やっぱり、さっきの提案を断るべきじゃなかったのかも。
ユキは、快楽に支配されつつある身体で、カイトのことを思い出す。
しかし、それは一瞬だけ。すぐさまどうでもよくなる。
体内をかき回されるたび、蛍石が反応して全身に電流が走る。声が枯れるのではないかと思うほど、”サツキ”は涎を垂らしながらも叫び声をあげ続けることしかできない。
「う、うあ、ああぁ……」
自分は、ここに何をしに来たのか。
それを思い出すたびに、まだ気絶してはいけないとユキは涙を溜めて再度歯をくいしばった。
しかし、そろそろユキは認めなくてはいけない。
行為を続けながらも、枝垂の手が容赦無く叩きつけて”サツキ”の身体に傷を増やしていく。そのたびに身体の奥が反応してしまっている、という事実を。
今、彼女の身体は、枝垂を求めつつあった。
「ふっ、ふぅ……あ、あぁぁあああぅんっ。んっ」
その痛みすら、快感の材料になっていく。
乱れた髪の毛が"サツキ"の視界を遮りパニックに近い心境に突き落とされるたび、叫び声の中に「甘い」響きが混ざり合う。
そんな"サツキ"の声の変化に気付いた枝垂は、楽しそうに腰の動きをはやめた。
「いや!来ないで!来ないで!あ、ああああぁぁぁあ!!!」
そして、”サツキ”は絶頂を迎えてしまった。
全身を痙攣させて力任せに叫び、頭を抱える。その瞳からは、我慢していた一粒の涙がこぼれ落ちていった。
同時に、体内へと温かい液体が注がれていったのを感じ取ったユキ。その表情は、終わった安堵よりも絶望に近い。自身に光る蛍石の激しい点滅具合を焦点の合わない瞳でボーッと見つめながら、崩れ落ちるようにカーペットへと身を落とした。
下半身から、白い体液と真っ赤な血を垂れ流しながら泣いている”サツキ”を見て、満足そうに笑い服を整える枝垂。
しかし、その表情は次の瞬間恐怖に変わることになる。
「……お前、誰だ?」
「おやおや」
そこには、ユキがいた。
ゆっくりと立ち上がり、ずり落ちた服も気にせず佇む彼女が。
今の衝動で、身体変化が解けたのだ。
ユキは、身なりを気にせず全身からドス黒いほどの魔力を放出させて立っていた。
「……はは、あははははははははは」
彼女は、泣いていた。
立ちながら泣いて、笑っていた。
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