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不遇の魔道具師と星の王

緑野 りぃとる

第37話 家庭教師

 俺は5歳になった。初めて魔法を使った日からこれまでの2年間、毎日のように魔法と剣術の練習をしてきた。

 剣術はまだまだ体が出来上がっていないということもあって無茶な訓練はしていないが、魔法の方は以上に進歩していた。

 通算20年生きてきた知識を基に、魔法の原理について考えた結果、初級魔法を全て無詠唱で発動させることができるようになった。

 といっても、前世では魔法の知識なんて全くなかったため、活きたのは魔道具の付与魔法陣の知識だった。

 付与魔法陣は魔法陣に記す図形や線などの組み合わせによって効果を調整する。魔法の詠唱は、付与魔法陣の図形のような役割を担っているのだろう。

 詠唱によって、発生する事象の細かな設定を決めて、魔力を放出することで魔法としてこの世界に顕現する。

 なら、細かな設定を頭の中で思い描いて魔力を放出してみればどうだろうかと思いやってみたところ上手くいったのだ。

 そうやって毎日湯水のように魔力を使い果たして、ミヤに屋敷まで運ばれることも多々あった。魔導書にも書かれていたのだが、魔力の総量は何度も魔力を使い切ることで多くなるそうだ。

 俺は一石二鳥だと思って毎日のように初球魔法を無詠唱で発動させる練習をし続けたのだった。そして不自由なく初級の無詠唱ができるようになったある日、母から現役の冒険者で準一級魔道士の家庭教師に読んだことを告げられた。

 その場で魔術師の等級を聞き忘れてしまった俺は書庫で調べることにする。

 魔術師には等級が8つに分けられるそうだ。
上から順に、
 特級
 準特級
 一級
 準一級
 二級
 凖二級
 三級
 四級
 に分けられる。

 この等級は魔力の総量、使える魔法の等級、使える魔法の種類数、その他権能や独自の魔法などを総合的に見た上で分けられるそうだ。

 実績を積めばどんどん上に上がることができるそうだが、二級以上は才能と確かな努力をどちらも持ち合わせなければ上がることは難しいそうだ。

 そんな魔術師の中でも上位に位置する準一級魔術師が俺の家庭教師に来るそうだ。一体どんな人物なのだろうか?白髪の老人?鍋をコトコトしてそうな老婆?

 俺はワクワクしながらその家庭教師の到着を待った。そして俺が庭で魔法の練習をしながら待っていると、屋敷の正門の鐘が鳴らされる。

 ドキドキしながら待っていると、屋敷のほうからミヤが呼びに来た。

「フェルディナント坊ちゃま、家庭教師の先生がいらっしゃいましたよ。」
「はーい!」

 俺は走って正門まで向かう。正門にはすでに父と母が待っており、よく見えないが門の外にいる人と話しているようだった。

「お、フェディ!こっちだ!」

 父が手招きしながら俺のことを呼んでいるようなので遠慮なく正門まで走っていった。

「フェディ、この方がこれからフェディに魔法を教えてくださる先生だ。失礼のないようにな。」
「初めまして、アメリア・ヒルディです。これから私が教えられる限りではありますが魔法を教えますのでよろしくお願いします。」
「あ、フェルディナント・ヘルグリーンです。よろしくお願いします。」

 俺は彼女の姿を見る前にぺこりとお辞儀をした。そして顔を上げた途端衝撃の雷に打たれたのだ。彼女は見た目の年齢が12歳くらいの赤毛の美少女だった。俺がびっくりしていると、父から紹介が入りかける。

「ヒルディさんはこの年齢で本当にじゅ」
「すいませんカルテイラ様、自分の紹介はのちに自分でさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「あ、うん。大丈夫だよ。」

 父はちょっぴり紹介する口を遮られてしょんぼりしていた。

「それで、ヒルディさんは今日はどこに泊まるんですか?」
「とりあえず近くの宿でも取ろうかと思っています。」
「まだ宿をとっていないのでしたらこの屋敷に泊まっていってもらってもいいんですよ?」
「よろしいのでしょうか?」
「ええ。なんでしたらこれからフェディに指導していただく間ずっとこの屋敷を使っていただいて構いませんよ?フェディの生活を見て何か指導の参考になるかもしれませんしね。」
「でしたらお世話になります!」

 母がアメリアに屋敷に泊まらないかと交渉し始めたあたりで俺は退屈だなぁなんて思い始めていた。

「この屋敷に泊めていただけるのであれば予定変更です。フェルディナント君、あなたの現在の魔法の実力を確認したいので見せていただけますか?」
「あ、はい。」

 俺はぼーっとしていたので返事が1テンポ遅れてしまった。それを誤魔化すように俺は足早でいつも魔法の特訓をしている庭にアメリア先生を連れて行った。

 そのタイミングで父は正門を出ていき、母は屋敷の中へと戻っていった。ミヤも母について屋敷に戻っていったので、今はアメリアと二人っきりだ。

「…この近辺のご領主のご家族ということでしたが…。単なる親ばかというわけではないのでしょうか…?」

 俺にぎりぎり聞こえるか聞こえないかといった声量でぼそぼそとつぶやくアメリア。何となく彼女のジト目が少し見開き、俺のことをジーっと見てきた。

 おそらく彼女のジト目はデフォルトなんだろう。しかし、何か好感が持てる感じのジト目だった。もしかしたら俺のタイプってジト目の女の子なんだろうか?なんて軽いことを考えているうちに彼女の品定めが終わったのか口を開いた。

「では、さっきも言った通りあなたの使える魔法を見せていただけますか?」
「なんでもいいんですか?」
「はい。できれば使える魔法の中でも一番難易度の高いものでお願いします。そのほうが練度と魔力量を把握しやすいので。」
「分かりました。」

 俺は何を使ってやろうかと思って今使える魔法を脳内でリストアップして悩みこむ。前世では魔法を使える人間自体が珍しかったせいで魔法に関する常識というものがいまいちよくわかっていない。

 魔導書にはどの人間も適正こそあるもののすべての属性を扱うことが可能であると書かれていた。なのでどの属性の魔法を使っても彼女は驚いてくれないだろう。俺は何となく前世では結構ひっそりとやってきたので今度はユーモアとスマイルにあふれる世界にしていきたい。

 ということで俺はアメリアの度肝を抜くためのアイデアを思いついたので少し魔力を溜めて早速実行した。

 俺は両手を掲げて脳内でイメージする。右手には水の弾丸、左手には雷の弾丸。両手にそれぞれ魔法陣が現れたことを見計らって、その魔法陣を強引に一つにくっつける。

 するとボンッといった音と同時に白い煙が起こる。その白い煙を風で少し離れたところまで突風で飛ばす。もちろんこれも無詠唱だ。

 ある程度離れたところまで飛んで行ったあと、俺はその白い靄に向かって火球を打ち出す。火球は靄に触れた瞬間消え飛び、ポンッという音と同時に靄は光を放って消えた。

「…?!」

 俺の目論見通りアメリアはジト目を見開いて俺と白い靄があった場所を何度も見直した。

「あ、え、えーっと、フェルディナント君。」
「はい?」
「今のは私の見た限りだと水素燃焼に見えましたが間違いありませんか?」
「はい。」
「その知識はいったいどこで?」
「屋敷の書庫にあった本を読みふけっていたらたまたま見つけました。」

 実際は前世でいやというほど勉強した科学の知識なのだが、さすがにそのことをいうわけにもいかないのでそれっぽいウソをついておく。

 アメリアは俺に対する評価を少し変えてくれたのか、彼女が俺に向けていたジト目がちょっぴりジト目かな?ってくらいになった。

「これは私も張り切らないとですね!」

 アメリア先生をびっくりさせよう作戦は無事成功したのだった。

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