不遇の魔道具師と星の王
第33話 馬脚を現す龍(2)
邪龍は、黒龍に変わった。見た目だけではない。全身から放たれていた瘴気はきれいさっぱり消え去り、代わりに全身を押しつぶしてくるかのような威圧感が俺たちを襲う。
『我の眠りを妨げたのは貴様らか?』
黒龍は突然俺たちの頭の中に直接話しかけてくる。俺は予想外のことに何も言うことができなかったが、マリアがその問いに答える。
『我々は自我を失い、人里に災厄をもたらさんとする魔に侵されたあなたを滅ぼしに来ました。しかし…』
『ふむ、貴様らは我に異端の血を取り込ませようとしたものではないと言うか。』
黒龍は疑いの目を一番近い場所にいる俺に向ける。ジーっと俺の眼を見つめる。俺は目をそらしたいと思ったが、何となくそらしてしまえば負けると思い、黒龍の大きな瞳を強く見返した。まるで俺の中のすべてを見透かすかのような黒龍の瞳は恐ろしく美しかった。
『であれば我を倒し力で示せ。』
黒龍は先ほどまでと同じように前足を大きく振り上げた。しかし、先ほどまでと違い、その瞳にはしっかりと理性を感じ取れる。つまり、目の前の龍は本気で俺たちを試そうとしている。
「《黒龍の咬撃》!」
『むっ!?』
俺は邪龍と戦っている間から貯め続けていた魔法を打ち出す。黒龍は突然目の前の小男から自信と同じような姿形の龍が飛び込んできて少し戸惑ったのか驚きの声を上げた。俺の魔法を皮切りに再びみんなの攻撃が黒龍に襲い掛かる。
「雷轟!」
「青龍の咬撃!」
俺の魔法が黒龍に当たると同時に、マリアとライムの魔法も襲い掛かる。同時に強力な攻撃魔法を受けた黒龍は全身からプスプスと煙を上げていたが、ダメージが入っているようには見えなかった。
『今のは少しばかり危ないと思ったぞ。なかなか良い攻撃だ。』
ダメージが入るどころか相手の攻撃を受けた感想をしゃべるくらいには余裕があるようだ。ならばと、マリアは次の手に移る。
魔力をありったけこめて火車と別雷を呼び出す。俺と二人でビマコを目指したときに呼び出したものとは比べ物にならないほどの大きさになった二体の使い魔は黒龍に向かって突貫する。
火車は猫の俊敏さを活かし、別雷は蛇の滑らかな動きを活かして黒龍に取り付き直接攻撃を叩き込む。直接強力な攻撃を叩き込まれて耐えきれなくなったのか黒龍は反撃に出る。
黒龍にまとわりついている別雷をはぎ取り、黒龍の周りを走りまわりながら攻撃している火車に投げつける。火車は別雷を上に跳躍し回避するがすでに跳びあがった先には黒龍の尾が高速で襲い掛かってきており、火車はその攻撃をもろに喰らってしまった。
使い魔二体が一瞬で倒され、魔力の残滓が空中に漂う。その中から今度は身の丈に合わない大剣を構えながら突撃していくマリア。転びそうなほど姿勢を低くし、黒龍の懐に迫る。俺は見よう見まねで邪龍の放った黒い槍を黒龍に向かって放つ。
案の定黒龍は俺の槍に意識を向け、すべてを迎撃した。不敵な笑みを浮かべ俺のことを見据える。俺は黒い槍をすべて防がれ、だがしかし微かに笑む。
黒龍はそこでやっと自身の懐に迫る大剣とマリアに気が付いた。慌てて大剣を防ごうとする黒龍。しかし、もうすでに最大限に加速された大剣を防ぐことはかなわず、黒龍は上半身と下半身を真っ二つに両断された。
それでは終わらず、マリアが勢いそのまま黒龍の懐を駆け抜けたと同時に三度目の雷帝が黒龍の両断された体に襲い掛かった。
後方からはやや大きめの弾丸、俺特製の斬裂弾が黒龍の下半身に命中し、弾丸の特性である《斬撃結界》によって黒龍の下半身を木っ端みじんに切り刻んだ。
黒龍はもはや戦闘を継続することは不可能に見えるほどの傷を負った。俺たちは即席の連携で黒龍を下した。さすがにこれでは黒龍も死んだだろうと思ったのだが…
『フハハハハ!これは愉快愉快!確かにこれほどの力を持つ者どもであれば我の力を姑息な手を使わずとも手にすることもできよう!』
 黒龍はなくなった下半身を一瞬で再生させ、変わらず堂々と立っていた。しかし、先ほどまでの威圧感は消え去り、命の危険を感じることはなくなった。
『貴様らの言葉、真実であったと認めよう。貴様らは悪ではない。』
黒龍は声高らかにそう宣言し、眩い光を放ち始めた。光はそのまま俺たちを包み込み俺たちの魂に何かを刻み込んだ。そして光が収まった時、俺たちは言葉にはできない全能感のような、安心感のようなものに包まれていた。
『貴様らは今をもって我の盟友となった。我の力を存分に活かすがいい。』
黒龍はそう言ってその場を立ち去ろうとした。そこをレベッカは大声をあげて引き止め、いったい俺たちに何をしたのかを聞き始めた。黒龍は律儀にその質問に答えていき、時間は過ぎていく。
黒龍も久々に人と話したのか、始めは固い言葉遣いだったのだが、レベッカの明るい口調とライムの物腰柔らかい接し方で徐々に態度も軟化していき、ついには友人と話しているかのような話し方になった。ついには黒龍は自身に擬態をかけて人間にしか見えない姿に変わり、俺たちについてくることになった。
俺たちは黒龍を連れてケレンケン山脈を降りる。その間も黒龍の知識をみんなが興味深く聞いていたり、逆に俺たちの話を興味深そうに黒龍は聞いたりした。そうやって楽しい時間はどんどん過ぎていく。
終焉を迎えるまであと3時間・・・・
『我の眠りを妨げたのは貴様らか?』
黒龍は突然俺たちの頭の中に直接話しかけてくる。俺は予想外のことに何も言うことができなかったが、マリアがその問いに答える。
『我々は自我を失い、人里に災厄をもたらさんとする魔に侵されたあなたを滅ぼしに来ました。しかし…』
『ふむ、貴様らは我に異端の血を取り込ませようとしたものではないと言うか。』
黒龍は疑いの目を一番近い場所にいる俺に向ける。ジーっと俺の眼を見つめる。俺は目をそらしたいと思ったが、何となくそらしてしまえば負けると思い、黒龍の大きな瞳を強く見返した。まるで俺の中のすべてを見透かすかのような黒龍の瞳は恐ろしく美しかった。
『であれば我を倒し力で示せ。』
黒龍は先ほどまでと同じように前足を大きく振り上げた。しかし、先ほどまでと違い、その瞳にはしっかりと理性を感じ取れる。つまり、目の前の龍は本気で俺たちを試そうとしている。
「《黒龍の咬撃》!」
『むっ!?』
俺は邪龍と戦っている間から貯め続けていた魔法を打ち出す。黒龍は突然目の前の小男から自信と同じような姿形の龍が飛び込んできて少し戸惑ったのか驚きの声を上げた。俺の魔法を皮切りに再びみんなの攻撃が黒龍に襲い掛かる。
「雷轟!」
「青龍の咬撃!」
俺の魔法が黒龍に当たると同時に、マリアとライムの魔法も襲い掛かる。同時に強力な攻撃魔法を受けた黒龍は全身からプスプスと煙を上げていたが、ダメージが入っているようには見えなかった。
『今のは少しばかり危ないと思ったぞ。なかなか良い攻撃だ。』
ダメージが入るどころか相手の攻撃を受けた感想をしゃべるくらいには余裕があるようだ。ならばと、マリアは次の手に移る。
魔力をありったけこめて火車と別雷を呼び出す。俺と二人でビマコを目指したときに呼び出したものとは比べ物にならないほどの大きさになった二体の使い魔は黒龍に向かって突貫する。
火車は猫の俊敏さを活かし、別雷は蛇の滑らかな動きを活かして黒龍に取り付き直接攻撃を叩き込む。直接強力な攻撃を叩き込まれて耐えきれなくなったのか黒龍は反撃に出る。
黒龍にまとわりついている別雷をはぎ取り、黒龍の周りを走りまわりながら攻撃している火車に投げつける。火車は別雷を上に跳躍し回避するがすでに跳びあがった先には黒龍の尾が高速で襲い掛かってきており、火車はその攻撃をもろに喰らってしまった。
使い魔二体が一瞬で倒され、魔力の残滓が空中に漂う。その中から今度は身の丈に合わない大剣を構えながら突撃していくマリア。転びそうなほど姿勢を低くし、黒龍の懐に迫る。俺は見よう見まねで邪龍の放った黒い槍を黒龍に向かって放つ。
案の定黒龍は俺の槍に意識を向け、すべてを迎撃した。不敵な笑みを浮かべ俺のことを見据える。俺は黒い槍をすべて防がれ、だがしかし微かに笑む。
黒龍はそこでやっと自身の懐に迫る大剣とマリアに気が付いた。慌てて大剣を防ごうとする黒龍。しかし、もうすでに最大限に加速された大剣を防ぐことはかなわず、黒龍は上半身と下半身を真っ二つに両断された。
それでは終わらず、マリアが勢いそのまま黒龍の懐を駆け抜けたと同時に三度目の雷帝が黒龍の両断された体に襲い掛かった。
後方からはやや大きめの弾丸、俺特製の斬裂弾が黒龍の下半身に命中し、弾丸の特性である《斬撃結界》によって黒龍の下半身を木っ端みじんに切り刻んだ。
黒龍はもはや戦闘を継続することは不可能に見えるほどの傷を負った。俺たちは即席の連携で黒龍を下した。さすがにこれでは黒龍も死んだだろうと思ったのだが…
『フハハハハ!これは愉快愉快!確かにこれほどの力を持つ者どもであれば我の力を姑息な手を使わずとも手にすることもできよう!』
 黒龍はなくなった下半身を一瞬で再生させ、変わらず堂々と立っていた。しかし、先ほどまでの威圧感は消え去り、命の危険を感じることはなくなった。
『貴様らの言葉、真実であったと認めよう。貴様らは悪ではない。』
黒龍は声高らかにそう宣言し、眩い光を放ち始めた。光はそのまま俺たちを包み込み俺たちの魂に何かを刻み込んだ。そして光が収まった時、俺たちは言葉にはできない全能感のような、安心感のようなものに包まれていた。
『貴様らは今をもって我の盟友となった。我の力を存分に活かすがいい。』
黒龍はそう言ってその場を立ち去ろうとした。そこをレベッカは大声をあげて引き止め、いったい俺たちに何をしたのかを聞き始めた。黒龍は律儀にその質問に答えていき、時間は過ぎていく。
黒龍も久々に人と話したのか、始めは固い言葉遣いだったのだが、レベッカの明るい口調とライムの物腰柔らかい接し方で徐々に態度も軟化していき、ついには友人と話しているかのような話し方になった。ついには黒龍は自身に擬態をかけて人間にしか見えない姿に変わり、俺たちについてくることになった。
俺たちは黒龍を連れてケレンケン山脈を降りる。その間も黒龍の知識をみんなが興味深く聞いていたり、逆に俺たちの話を興味深そうに黒龍は聞いたりした。そうやって楽しい時間はどんどん過ぎていく。
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